2023.10.18

くるみん認定企業とは?メリット、取り組み事例、基準、マーク、プラチナ、えるぼしとの違いも解説

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働き方改革が進んで企業の社会的責任が問われる中、くるみん認定という制度に注目が集まっている。くるみんは、子育てや家庭生活との両立をサポートする企業を厚生労働大臣が認定するもので、女性の活躍を推進する施策などとともに、多くの企業が実際に導入している制度だ。
本記事では、くるみん認定制度の基本や、認定取得の基準、認定企業のメリット、認定企業の事例紹介、SDGsとの関連性、関連が深い「えるぼし」との類似点や異なる点についても解説する。

くるみん認定とは?

まずは、くるみんの制度が誕生した背景や詳細を解説する。

厚生労働大臣が「子育てサポート企業」と認めた証し

くるみん認定は、厚生労働省が「子育てサポート企業」と認めた場合に付与される制度だ。くるみんには「トライくるみんマーク」「くるみんマーク」「プラチナくるみんマーク」の3種類がある。

くるみんの申請基準には、従業員が子育てと仕事を両立しやすい環境作りを狙った「男性従業員の育児休暇取得」「年次有給休暇の取得促進」などの目標達成があるため、取得を目指すと同時に従業員が仕事と子育てを両立しやすい環境が整備できる。

参考:くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて |厚生労働省

くるみん認定制度が生まれた背景

くるみん認定が誕生した背景には、我が国における少子化の問題や労働人口の減少が挙げられる。少子化問題の改善には企業側の働きかけも不可欠であるとし、2005年に「次世代育成支援対策推進法」が施行され、その後の2007年には厚生労働省が認定する「くるみん認定制度」が開始された。

くるみんマークとは

「くるみんマーク」は、先述した3種類の認定の中で標準的な取得レベルの位置づけである。取得には一般事業主行動計画を策定し、目標達成を申請基準に含むが、この計画には労働環境や働き方改善とともに、企業側が子育てサポートの状況を改善することを狙った取り組みも含まれる。そのため、認定を取得すれば社内外に子育てのサポートに積極的な企業であることをアピールできるだろう。さらに、従業員の人材定着や、ワークライフバランスの改善、業務効率化など、多岐にわたるメリットが享受できる。

2023年(令和5年)8月末時点において、くるみんに認定された企業の数は4,279社となっている。

プラチナくるみんとは

プラチナくるみんは、くるみんの認定を受けた企業の中で、より高い水準の取り組みを行った結果として一定基準を満たした場合に認定される制度である。

プラチナくるみんは、男性労働者の育児休暇取得率や、出産した女性労働者の子が1歳になった時点での在職率などを要件に含める制度だ。公共調達の加点評価などは、くるみん認定よりも優遇される。

2023年(令和5年)8月末時点において、プラチナくるみんに認定された企業の数は584社となっている。

くるみん認定のメリット

くるみんの認定を取得するメリットは、人材獲得において有利になることや、助成金制度の適用、業務効率化など、多岐にわたる。くるみん認定取得の主なメリットを確認していこう。

人材獲得に有利な「くるみんマーク」の活用

労働人口が減少する中で、企業の人材獲得は死活問題といえる。

くるみん認定を取得すれば、企業の商品や広告、求人情報などに「くるみんマーク」を公表できるため、就職活動中の学生や求職者に対し、働きやすい職場環境が整っていることを示せる。厚生労働省の調査でも、くるみん認定のメリットに「学生に対するイメージアップ(49.2%)」「優秀な従業員の採用・確保ができるようになった(女性24.8%、男性10.6%)」といった回答が見られるように、くるみん認定は人材獲得に対して有利に働くのだ。

子育て制度の社内周知と人材の定着

くるみん認定を取得すると、女性が働きやすい職場であることをPRできる。女性が働いていく中で、結婚や子育てといったライフイベントを迎えながらも、家庭と仕事を両立しやすい環境であることが示されるからだ。

厚生労働省の調査では「従業員の制度の認知度が向上した(28.6%)」「出産・育児を理由とした退職者が減少した(15.6%)」という結果があり、職場としても柔軟な働き方を提供する風土が整えられると考えられる。

業務効率化の推進

くるみん認定を受けるために策定をする「一般事業主行動計画」では、行動計画策定指針と自社の現状を照らし合わせ、従業員の労働環境や働き方の見直し、計画実行が求められる。

具体的には「残業時間の一定割合の削減目標」や「ノー残業デー制度の導入」「テレワーク制度の導入」などが例に挙げられる。このような理由から、くるみん認定の取得とともに、従業員の働きやすさの向上と業務効率化の推進にも寄与するといえるのだ。

くるみん助成金の活用

企業がくるみん認定を取得する大きなメリットとして、認定取得後に「くるみん助成金」への申請が可能となる点が挙げられる。

くるみん助成金とは、2021年(令和3年)10月に開始された制度である。1事業主あたり50万円を上限に、くるみん認定とくるみんプラス認定企業は1回の認定につき1回、プラチナくるみん認定とプラチナくるみんプラス認定企業は1年度ごとに1回申請できる助成金となっている。

「くるみんプラス」とは、2022年4月から新設された、不妊治療と仕事の両立に取り組む企業の認定制度である。通常のくるみんと同様に、トライくるみんプラス、くるみんプラス、プラチナくるみんプラスがある。

公共調達での加点評価

くるみん認定を取得した企業は、各府庁が公共調達(国が発注する工事や契約全般をいい、税金が原資である)を実施する際、認定取得企業として加点評価が受けられる。認定取得企業とは、ワークライフバランスの推進に積極的な企業であるとみなすもので、該当する企業の受注機会の増加を狙って設けられた背景がある。

プラチナくるみん認定企業の取り組み事例

厚生労働省は、女性の活躍推進と両立支援(仕事と家庭生活の両立)に積極的に取り組む企業の事例を随時公表している。その中から、以下の3社の事例を紹介する。

・池田泉州銀行(金融・保険業)

プラチナくるみんの認定を取得している池田泉州銀行は、女性管理職の割合向上と男女の育児休暇取得100%を目標とした行動計画を策定した。取り組みの結果として、2022年3月時点では管理職に占める女性割合は21.6%、育児休業取得率に関しても男性44.9%、女性100%の成果を上げている。

同社ではくるみんや、後述のえるぼし取得企業に向けた人財活躍応援融資 「輝きひろがる」という金融商品も展開している。

・日精樹脂工業 (製造業)

日精樹脂工業では、育児や介護を理由とした退職者がゼロ人になるよう「法定以上の育児短時間制度や時差出勤」「ファミリーサポート休暇」「産休前と復職前面談」などに取り組み、仕事と育児や介護の両立支援、女性の活躍推進を実施した。

従業員の男女比は、男性85%、女性15%ではあるが、同社ではこれまで30年ほどかけて社員が共働きや働きやすい環境づくりを進めている。

・青森ダイハツモータース(卸売・小売業)

青森ダイハツモータースは、ダイハツ工業株式会社の正規ディーラーとして、青森県内の各拠点で新車や中古車販売事業を展開している企業だ。同社は、青森県が企業のワークライフバランス推進に向けた企業であることを示す「あおもりイクボス宣言企業」にも登録されている。

また、同社が独自で導入した「短期間育児休業制度」「半日有給休暇制度」が成功し、仕事と子育てを両立するためのサポート体制をさらに手厚くしている。

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くるみんマークの種類と基準

くるみんの認定には「くるみん認定企業」「プラチナくるみん認定企業」「トライくるみん認定企業」があり、それぞれ異なる認定基準が設けられている。続いては、3つの認定と違いを紹介する。

くるみんマークの3つの種類

くるみんマークのそれぞれの主な認定基準や特徴は、以下のようにまとめられる。なお、労働者数が300人以下の一般事業主の場合、別途基準が定められている。

  主な認定基準、特徴
くるみんマーク

・3つの種類の中で標準的な基準としての位置づけで、10つの認定基準が定められている

・計画期間中の女性の育児休業取得率が女性70%以上

・計画期間中に配偶者が出産した男性労働者の育児休業等の取得割合10%以上かつ1人以上、育児休業等に類似する企業独自の休暇制度の取得割合20%以上

・3歳から就学前までの子どもがいる従業員に対し、労働時間の短縮に関する措置の実施

プラチナくるみんマーク

・「くるみん」「トライくるみん」認定企業の中で、特に積極的に子育てサポート企業であることを認定するもの

・計画期間中に配偶者が出産した男性労働者の育児休業等の取得割合30%以上、育児休業等に類似する企業独自の休暇制度の取得割合50%以上

・子を出産した女性労働者のうち、子の1歳の誕生日までの在職率割合90%以上

トライくるみんマーク

・「くるみん」認定要件を緩和したもの

・計画期間中に配偶者が出産した男性労働者の育児休業等の取得割合7%以上と、育児休業等に類似する企業独自の休暇制度の取得割合合計が15%以上かつ1人以上

参考:厚生労働省「一般事業主行動計画の策定・届出等について

プラスマークの追加基準

2022年(令和4)4月1日のくるみんの認定制度(次世代育成支援対策推進法施行規則)改定とともに、新たな認定制度に追加されたのが「プラス」制度とプラスマークの付与である。プラスマークは子育てに加え、不妊治療と仕事の両立に取り組む企業を認定するものとして新設され、関係する4つの認定基準が追加された。

マークの年数と星に関する情報

くるみんマークは、企業がこれまでくるみんの認定をどのような形で取得してきたかを示すものである。マーク上部には最新の認定年度が書かれ、マーク内の星の数は、これまでの認定回数を示している。

2022年4月1日より新しいマークが導入されたが、導入前に認定された企業も再度認定申請を行えば現行のマークを利用できる。

くるみん認定の取得手順

ここでは、実際にくるみん認定を取得する手順を紹介する。

一般事業主行動計画の策定

まずは従業員にヒアリングなどを行い、職場の現状を把握したうえで一般事業主行動計画を作成する。行動計画には職場の現状や、従業員のニーズに即した内容が求められるため、仕事と子育ての両立やワークライフバランスに関する項目を中心に、子育て支援が実現できるような目標や実施期間を設定していく。

計画を進めるにあたって明らかになった課題には優先順位をつけけ、次に目標を決め、定量的な数値を定める。「制度の導入」を目標とする場合は、基準を上回る目標値の設定が重要となる。

行動計画の公表と周知

行動計画を策定したら、策定からおおむね3か月以内に一般に公表をする。公表先は厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」への掲載や、自社のホームページ、県や各自治体の広報誌などが候補として挙げられるだろう。

同じタイミングで自社の従業員にも行動計画を周知し、計画内容事業所ごとに掲示板などの目に留まりやすい場所に掲示するといいだろう。なお、認定取得の申請時には公表日や周知した日付を示す書類が必要なため、公表した日付がわかる画面(各種Webページの画面など)を忘れずに印刷しておこう。

参考:厚生労働省「両立支援のひろば

行動計画の届け出と実施

一般への公表や従業員への周知とともに、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ「一般事業主行動計画策定・変更届」(様式第一号)行動計画を、「郵送」「持参」「電子申請」のいずれかで届け出る必要がある。同時に、行動計画に掲げた目標達成に向け、取り組みを実施していく。

認定申請とマークの付与

計画書で定めた実施期間が終了したら、行動目標の数値や申請の認定基準を満たしたか確認する。要件を満たす場合、申請時と同じところへ必要書類を添付し「郵送」「持参」「電子申請」いずれかの方法で認定申請を行う。審査の過程で、申請内容の問い合わせや追加資料の提出を求められる場合もある。

審査を経て、無事に「子育てサポート企業」として認められると、認定した旨を記した通知書や、くるみんマークのデータが送付される。

プラチナくるみん認定の取得

くるみん認定を受けると、「プラチナくるみん」の認定取得も可能になる。プラチナくるみんは、職場の環境づくりや実績を要する制度で、くるみんよりもさらに手厚い子育てサポート企業であることを示すものだ。

プラチナくるみんの認定項目は12の項目があり、プラチナくるみんの取得を目指す場合は、再度期間を設けて目標達成に向けた取り組みを実施する。実施期間が終了し、認定基準を満たす成果が得られていたら、各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)へ申請し、審査を待つ流れとなる。

くるみん認定とSDGsの関連性

くるみん認定の取得は、SDGsの目標達成にも寄与する取り組みである。ここでは、くるみんとSDGsの関係性を紹介する。

SDGsとは?

SDGs(Sustainable Development Goals)は「持続可能な開発目標」と呼ばれ、2016年から2030年までに世界中で達成すべきとする30の目標が掲げられている。

世界では貧困や紛争、気候変動のほか感染症などさまざまな課題に直面している。現状のままでは人々が生活し続けるのが危ぶまれるため、「17の目標」と実行に向けた「169のターゲット」に加え、具体的な実施手段やフォローアップ、レビューで取り組みを求める内容がまとめられている。

くるみん認定とSDGs目標8「働きがいも経済成長も」

くるみんの認定取得は、SDGs目標8「働きがいも経済成長も」につながる。働きがいや経済成長の狙いには「持続可能な経済成長、雇用拡大」「すべての従業員が働きがいを感じながら生産性向上」という意味合いもある。

これらはくるみん認定に向けた目標とも共通するため、認定への取り組みを実施することはSDGsにも寄与するといえるのだ。

くるみん認定とSDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

くるみんの認定取得はSDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とも関係する。
目標5では、すべての女性の能力を最大限に発揮でき、性別にかかわらず平等に機会が与えられる社会づくりを目標としている。これは、くるみん認定で求められる女性が働きやすい環境づくりやジェンダー平等、男女平等という共通点からも、認定への取り組みは目標8と同様SDGsにも通じるだろう。

くるみん認定の取得がもたらす社会的インパクト

くるみん認定の取得は、SDGsへ貢献するとともに、企業の社会的責任(CSR)の強化策としても注目されている。くるみんの認定やSDGsの目標達成への取り組みは、企業が求められるCSRに応える取り組みともいえるからだ。

くるみん認定の取得に向けた取り組みは、従業員だけでなく、ステークホルダーや消費者まで、社会全般に向けたインパクトを与える反響が期待できるのである。

「えるぼし」との類似点と違いは?

女性の従業員に向けた企業の取り組みを認定する制度には、くるみんのほかに「えるぼし」の認定制度もある。

えるぼしは「女性の活躍推進」に積極的な企業を認定するもので、くるみんは子育てや出産時のサポート企業を認定するという違いがある。いずれも厚生労働大臣が認定するものだが、くるみんの場合は女性に限らず男性従業員の子育てサポートとも関連するのが、えるぼしとの大きな違いだろう。

関連記事:えるぼし認定で得られる企業のメリットとは?基準やマーク、プラチナ、くるみんとの違いも解説

まとめ:認定基準を確認して「くるみん」の認定を目指そう

少子高齢化に伴って労働人口が減少する中、今後日本が労働力を確保するためには、女性のさらなる活躍が欠かせない。女性が働きやすい職場環境を構築することは、すべての従業員が働きやすい環境を作ることと同義である。

くるみんの認定を取得すれば、企業イメージ向上によって労働力を確保しやすくなり、事業においても融資を利用する際に優遇されるなど、いくつものメリットが存在する。まずは自社の現状を見直し、基準を一つずつ満たすような組織づくりに取り組んでいこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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