2023.4.4

時短勤務(短時間勤務制度)とは?メリット・デメリットや、いつまで取れるのかを解説

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2009年の育児・介護休業法の改正により、企業は短時間勤務制度の導入が義務付けられた。仕事と家庭のバランスを取るのが難しい人たちを支える制度として注目を集めている。今回は、短時間勤務制度の概要やメリット・デメリットを解説する。

短時間勤務制度とは

短時間勤務制度とは、定められた労働時間よりも短縮して働ける制度のことである。2009年に改正された育児・介護休業法によって、時短勤務の導入が義務付けられている。短時間勤務制度の導入により、原則として1日の所定労働時間は6時間に短縮される。出勤・退勤時間の変更やフレックスタイム制、隔日勤務などの措置を併せて実施できるのが特徴だ。

短時間勤務制度が設けられた背景

短時間勤務制度が導入された背景には、少子高齢化問題がある。日本の社会では、仕事と子育てを両立できる環境が整備されていない。結婚や出産しても働きたいと考える人が一定数存在するものの、仕事と家庭を両立するのが難しいという理由から就労を諦める事例も少なくないのだ。また、仕事を諦める理由は、仕事と家庭を両立するのが難しいことだけではない。

短時間勤務制度が設けられた背景には、介護問題も挙げられる。これまで親の介護と仕事を両立するのが難しく、退職を余儀なくされる人も多かったのだ。日本では今後ますます高齢化が進む中、介護による退職の増加が予測されている。このような社会的な問題に対処するべく新設されたのが、短時間勤務制度なのだ。

関連記事:男性育休制度の現状と企業の取り組み、最新の改正育児介護休業法を解説

短時間勤務制度の対象者

育児時短勤務と介護時短勤務とでは対象者が異なるため、時短勤務の適用要件を確認して短時間勤務制度を適切に運用する必要がある。

【育児時短勤務の場合】
育児を理由に時短勤務したい場合は、以下の要件を全て満たす必要がある。

● 3歳未満の子を養育する従業員であって、短時間勤務をする期間に育児休業をしていないこと
● 日々雇用される従業員ではないこと
● 1日の所定労働時間が6時間以下ではないこと
● 労使協定によって適用除外とされた従業員でないこと

【介護時短勤務の場合】
介護時短勤務の対象になるのは、日々雇用される従業員以外の全ての人である。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし

短時間勤務制度が対象外のケース

労使協定で適用除外とされた社員に該当する場合は、短時間勤務制度の対象外になるため、制度の運用には十分に注意する必要がある。

【育児時短勤務の場合】
育児時短勤務の対象外となるのは、以下に該当する場合である。

● 当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない従業員
● 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
● 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する従業員

【介護時短勤務の場合】
介護時短勤務の対象外となるのは、労使協定が認められる場合だ。具体的には、勤続年数1年未満の従業員、または週の所定労働日数が2日以下の従業員に当たる場合である。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし

関連記事:有給休暇の5日間取得義務化とは?目的や対象、罰則を説明

短時間勤務制度の適用期間

短時間勤務制度で適用される期間は、育児時短勤務と介護時短勤務のどちらを取得するかによって異なる。以下でそれぞれの適用期間をチェックしよう。

育児の時短勤務

短時間勤務制度では、「対象の子どもが3歳の年齢に達するまで」を時短勤務の適用範囲と定めている。子どもの人数に決まりはなく、3歳未満の子どもが1人でもいれば短時間勤務制度の対象になるのだ。3歳以上の子どもがいる場合は短時間勤務制度の適用外になるものの、企業は代替措置として以下の制度を講ずる必要がある。

● 育児休業に関する制度に準ずる措置
● フレックスタイム制度
● 始業終業時間の繰り上げ・繰り下げ
● 事業所内保育施設の設置運営

参考:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし

介護の時短勤務

短時間勤務制度では、「対象家族1人につき、利用開始日から連続する3年以上、期間で2回以上利用できる」と定められている。原則として、企業の都合で短時間勤務制度に「通算3年未満まで」「期間内で1回のみ」といった制限を加えることはできない。

介護時短勤務は分割して取得できるため、間に介護休業などほかの勤務制度を挟める。介護時短勤務の取得期間には上限がないため、労使間の話し合いで決めるのが一般的だ。

参考:厚生労働省「短時間勤務等の措置とは

短時間勤務制度のメリット・デメリット

短時間勤務制度には多くのメリットがある一方、考慮すべきデメリットがあるのも事実だ。社員が不安に感じるデメリットを放置すると、短時間勤務制度を利用しづらくなることも少なくない。時短勤務を取得しやすい職場環境を整えるためにも、社員の不安を軽減することが大切だ。ここでは、短時間勤務制度のメリット・デメリットをチェックしよう。

短時間勤務制度のメリット

短時間勤務制度で時短勤務を取り入れるメリットには、以下のことが挙げられる。

● 時間的な余裕が生まれる
● 優秀な人材を確保できる
● キャリアを維持・向上できる

以下でそれぞれのメリットを詳しくチェックしよう。

時間的な余裕が生まれる

短時間勤務制度を利用するメリットには、時短勤務により時間的な余裕が生まれることが挙げられる。通常の勤務時間よりも早く退社できるため、時間的に余裕を持って子どもを迎えに行けるのだ。介護が必要な家族の体調が悪いときは、病院まで連れて行ける。

時短勤務によって時間に追われる状況から抜け出せ、精神的な余裕が生まれることも多い。時短勤務する社員は、理想のワークライフバランスを実現しやすくなるのだ。

優秀な人材を確保できる

短時間勤務制度を利用する社員が増えれば、優秀な人材を確保できるメリットがある。日本は急激な少子高齢化が進んでおり、労働人口の減少で人材不足に悩む企業は少なくない。短時間勤務制度によって仕事と家庭の両立を実現しやすくなり、不本意な離職を防げるのだ。

育児や介護に直面しない社員も、短時間勤務制度を利用しやすい職場環境があれば安心して働き続けられる。求職者にも魅力的に映るため、優秀な人材を獲得しやすくなるだろう。

キャリアを維持・向上できる

育児や介護を理由に、これまで積み上げてきたキャリアを捨てずに済むのも短時間勤務制度のメリットといえる。時短勤務によって働く時間は短くなるものの、完全に仕事から離れるわけではない。

退職して仕事から完全に離れるとキャリアアップが困難になるが、育児や介護に専念したあとに復職すればキャリアを維持できる。育児や介護を理由にキャリアアップを諦める必要はなく、継続的なキャリア形成が可能になるのだ。

短時間勤務制度のデメリット

短時間勤務制度を利用するデメリットには、以下のことが挙げられる。

● 一時的に収入が減る
● 職場の人間関係に溝ができる
● 成長機会が奪われる

以下でそれぞれのメリットを詳しくチェックしよう。

一時的に収入が減る

短時間勤務制度を利用することで、一時的に収入が減ることに不安を感じる社員は少なくない。育児・介護休業法には原則として、短時間勤務制度の利用中に不利益取り扱いを禁止する条例がある。不利益取り扱いとは、時短勤務を取得した社員に対して一方的に降格や解雇することだ。

短時間勤務制度の取得によって業務時間が短縮した分以上に給与が減額されている場合は、不利益取り扱いとして法律違反になる。ただし、業務時間が短縮した分の減額は不利益取り扱いに該当しないため、短時間勤務制度の取得期間中は一時的に収入が減るのだ。

職場の人間関係に溝ができる

時短勤務することにより、職場の人間関係に溝が生まれたと悩む社員もいる。短時間勤務制度は、対象者であれば誰でも利用できる制度である。しかし、時短勤務で働く時間が短くなるため、どうしても周囲の業務負担が増えてしまうのだ。

業務量に不公平を感じる社員が多くなると職場の人間関係に溝ができてしまい、時短勤務する社員が働きづらくなることも少なくない。企業には時短勤務する社員だけではなく、サポートする周囲の社員も気持ちよく働ける職場環境を作ることが求められる。

成長機会が奪われる

短時間勤務制度によってキャリア形成を維持できるメリットがあるものの、働く時間が短いため成長機会が奪われるという悩みを抱える社員もいる。時短勤務する社員は労働時間が限られるため、業務量には十分に配慮して振り分けなければいけない。

しかし、負担を減らすために業務量を減らした結果、時短勤務する社員の成長機会を奪ってしまう問題が起きるのだ。時短勤務する社員の中には、周囲との業務量の差に自分だけ置いていかれるような感覚に陥る人もいる。時短勤務する本人をはじめ、周囲と相談しながら適切な業務量を決める必要があるだろう。

関連記事:ワークライフバランスは古い?定義や取り組み事例、リモート時代に適した新たな考え方を解説!

短時間勤務制度の導入事例

短時間勤務制度を効果的に運用したいのならば、成功事例を参考にするのがおすすめだ。ここでは、短時間勤務制度の導入事例を紹介する。

株式会社ワコール

株式会社ワコールでは時短勤務する社員だけではなく、周囲でサポートするメンバーの働きがいのある職場を目指した制度の整備に取り組んでいる。育児時短勤務は、固定短時間勤務に加えて、業務の繁閑や従業員の事情に応じて選択的に短時間勤務を行える選択短時間勤務を導入しているのが特徴だ。

子どもが小学1年生の学年末に達するまで取得できる。介護時短勤務も固定短時間勤務と選択短時間勤務から選択可能で、取得回数に制限は設けられていない。短時間勤務制度を利用しやすい環境作りを推進しており、過去5年間で利用者が増えている。

参考:株式会社ワコール「-重要な取り組み領域-ワークライフバランスの推進

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社では、仕事と育児の両立支援に向けた柔軟な勤務時間制度に取り組んでいる。子どもが小学4年生になるまでの間、1日の所定労働時間を4時間・6時間・7時間の中から選び、時短勤務する勤務時間短縮制度がある。

家庭の事情に応じて労働時間を社員自身が決められるため、柔軟な働き方が可能になるのだ。介護に関しても労働時間を4時間・6時間・7時間の中から自由に選べる。4年間まで利用可能で、家庭の状況に合わせて利用できるのも特徴だ。

参考:トヨタ自動車株式会社「愛知の「働き方改革」取組事例 トヨタ自動車株式会社

ソニー株式会社

ソニー株式会社では、社員が出産や育児、介護をしながら仕事に取り組める土壌作りとして、両立支援制度を導入している。なかでも、育児短時間勤務は複数の出勤時間を選択できるのが特徴だ。時短勤務する社員は、実働6時間の短時間勤務・固定短時間勤務・フレックスタイムから選べる。

介護短時間勤務も複数の出勤時間が選択可能で、家族の状態に合わせて利用できる。1ヶ月単位で働き方を変えられるため、家庭の状況に応じて調整できるのも魅力だ。無理なく生活のリズムを作れるため、仕事と家庭の両立に支障をきたす心配もない。

参考:ソニー株式会社「ソニーネットワークコミュニケーションズ 両立支援制度

まとめ

労働人口の減少や働き方改革が進む中で、多くの企業が社員に対して柔軟な働き方を認めている。なかでも、労働時間を短縮できる短時間勤務制度は、仕事と家庭の両立が難しいと悩む社員を支える有効な施策として取り組む企業も多い。

しかし、短時間勤務制度を利用するにあたって、職場の人間関係に溝ができたり成長機会が奪われたりなど、デメリットに感じる社員がいることも事実だ。利用者を増やしたいのならば、時短勤務する社員が抱える悩みや課題を解決することが求められるだろう。

関連記事:キャリア形成とは?重要性や社員のキャリア形成の進め方を人事視点で解説!

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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