2023.3.6

ストックオプション制度とは?人材確保・社員のモチベーションアップのための活用を解説

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ストックオプション制度をインセンティブ報酬のひとつとして導入する企業が増えている。今回は、ストックオプション制度の概要や導入する目的、導入が向いている企業などを紹介する。さらに活用する場合の注意点も解説するため、あわせてチェックしよう。

ストックオプション制度とは?

ストックオプション制度とは、社員や役員に対し、所定の価格で自社株を購入できる権利を付与する仕組みのことだ。購入する際の価格は企業が定めた金額で、権利行使価額と呼ばれる。また、購入できる期間や数量にも一定の規定がある。

ストックオプション制度は、株式報酬にあたるものだ。もともとはアメリカで導入が始まった制度で、日本でも1997年の商法改正によって認められるようになった。制度の導入によって、従業員のモチベーションアップにつながるなどのメリットが期待できる。

制度を導入した企業では、たとえば「今後5年間、我が社の株式を1株1,000円で購入可能」との権利を社員に与えられるようになる。ストックオプション制度を導入後、企業が飛躍的に成長して自社株の値段が大幅に上がったとしても、企業が以前に定めたままの価格で、社員は株を購入可能なのだ。この場合、ストックオプション制度を利用した社員は、大きな利益を獲得できるだろう。

ストックオプションを発行し、権利を付与してから、一定の期間が経過したあとに権利の行使が可能となる。一定の購入期間を設けるため、実際の株式の価格はその間にも変動するだろう。

そのため、企業がストックオプションでの購入価格を定める際は、今の株価などから将来の株価を予測して公正価値を算定する。さらに、行使に係る条件の付与によって実際に払い込む価格を引き下げ、発行価格を決定する。

ストックオプションでの購入価格を定めたあとで、自社株の価格が下がってしまうこともあるだろう。この場合、ストックオプションの権利を行使しないという選択も可能だ。ストックオプション制度は、所定の価格で自社株を購入できる権利が付与されるだけであるため、各々が購入するか否か判断できる。

つまり、ストックオプションでの購入価格よりも現在の株価が高ければ権利を行使し、規定の価格よりも現在の株価が低ければ権利を使わないようにできるのだ。そのため、基本的には社員にとって制度の利用が損となることはない。購入時に得をする場合にのみ権利を行使できるため、社員の利益となるインセンティブ制度として活用されている。

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ストックオプション制度を導入する目的とは?

ストックオプション制度は社員の利益となるだけではなく、企業にとってもさまざまなメリットのあるものだ。企業がストックオプション制度を導入する目的は、大きく分けると以下のとおりである。

● 人材確保
● 従業員の意欲向上
● 税制上の優遇

また経営陣の株式について、その持分比率が下がっている場合に、ストックオプションを活用して持分が回復することを狙って制度を導入するケースもある。それでは、ストックオプション制度を導入する目的を詳しく確認していこう。

(1) 人材確保

ストックオプション制度は、人材確保につなげる目的で導入されることがある。とくに資金のゆとりがないスタートアップ企業が導入する場合に多い目的だ。

通常、優秀な人材に入社してもらうためには大きな資金が必要である。ストックオプション制度を活用すると、将来の値上がり幅によっては大きなキャピタルゲインにできるだろう。そのため、値上がりを見込んだ報酬として権利を付与することで、直接的な資金負担のないインセンティブ制度としてアピールでき、優秀な人材の確保につなげられる可能性があるのだ。

また、ストックオプション制度を導入した場合、入社してからすぐに人材が流出してしまうことを防止できるという意味もある。入社後しばらく経過しないと、ストックオプションを行使できない。行使可能な時点よりも前に辞めてしまうと報酬が受け取れないため、すぐには辞めにくくなるのだ。

(2)従業員の意欲向上

ストックオプション制度は、従業員の意欲向上にも役立つ。制度の構造上、自社の株価があがるほど、ストックオプション制度によるキャピタルゲインが大きくなっていく。そのため、自社の株価をあげようとして、会社の業績アップに対するモチベーションを高められるのだ。

ストックオプション制度による権利は、社外の協力者に対しても付与できる。そのため、社外にいる協力者の当事者意識を高め、長期的な付き合いをすることにもつなげられるだろう。さらに、ストックオプションとしての報酬であれば、キャッシュアウトを防げるというメリットもある。

(3)税制上の優遇

ストックオプション制度の特徴として、税制上の優遇を受けられるという点もある。ただし、ストックオプションの種類によっては優遇が受けられない場合もあるため注意しよう。

税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションがあり、税制優遇措置のあるものは税制適格ストックオプションのほうだ。税制適格ストックオプションであれば、権利行使時は非課税であり、株式売却時のみ課税される。税制非適格ストックオプションでは、ストックオプションの権利行使時にも給与所得として課税されてしまう。

インセンティブ目的で導入される場合、基本的には税制適格ストックオプションであることが多い。税制適格ストックオプションは、証券会社の特定口座の対象外であり、行使した社員が損益計算して確定申告する必要があることに注意しよう。

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ストックオプション制度の導入が向いている企業とは?

ストックオプション制度の導入は、IPOを目指すスタートアップ企業など、株価の大幅な上昇を見込める企業のほうが向いているといわれている。ストックオプションを活用した場合、売却時の株価が権利行使価額よりも高ければ高いほど利益になるためだ。

一方、すでに成熟した企業では、売却時の株価が短期間で大きく何倍にもなるほどにはあがりにくく、ストックオプション制度による利益確保は難しい。

とはいえ、利益以外の面ではすでに上場済みの企業もストックオプション制度に向いている面もある。具体的には、社員などが権利を行使して株式を購入したあとで、売りたいときに自由に売りやすい点だ。

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ストックオプション制度を用いる際の注意点

ストックオプション制度を活用する際は、以下の注意点に気をつけよう。

● 発行数の目安は発行済み株式の約10%
● 権利行使後に従業員が流出する恐れがある
● 権利付与基準の明確化

先述のとおり、ストックオプションによって株式を購入できても、その後自社が非上場のままでは、売りたいときに自由に売れなくなってしまう。上場を目指さない企業には適していないため、注意が必要だ。

それでは、ストックオプション制度の注意点を詳しくチェックしていこう。

(1) 発行数の目安は発行済み株式の約10%

ストックオプションによる株式の発行数は、発行済み株式の10%程度にとどめるべきだ。あまりに多くのストックオプションを発行した場合、行使する人数が多ければ、株式数が大幅に増加してしまう可能性がある。すると、1株あたりの利益が低下してしまい、株価が下落する恐れがあるため注意すべきなのだ。

とくに上場を目指すベンチャー企業などの場合には、上場までに発行できるストックオプションの総数が目安となる。投資家保護を目的として、大量には発行できないようになっているため注意しよう。

(2)権利行使後に従業員が流出する恐れがある

ストックオプションの権利行使後に、従業員の流出が起きる恐れがあることにも気をつけるべきだ。先述のとおり、ストックオプションを行使できる前に退職した場合、その権利を失うことになるため、入社後の人材流出を防止できる。しかし一方で、権利を行使してから従業員が流出するリスクが高まることには注意しよう。

人材の流出を防ぐために、べスティング条項の設定がおすすめだ。べスティング条項として、権利を行使できるタイミングを数回に分けて設定しておくことで、長期的な人材の流出防止につなげられる。

(3)権利付与基準の明確化

権利付与の基準があいまいになってしまうことにも注意が必要だ。ストックオプションを付与する条件を明確化しないと、従業員間で不公平感が生じてしまう恐れがある。会社の業績への貢献度や勤続年数などのはっきりとした基準を設けて、権利付与に対する納得感が得られる制度作りをしておこう。

また、事前の説明不足によって揉めごとになってしまう可能性もあるだろう。対策を検討しつつ、運用ルールを決めておくことをおすすめする。

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最後に

社員や役員に対して所定の価格で自社株を購入できる権利を付与するストックオプション制度の導入には、さまざまなメリットがある。たとえば、人材確保や従業員の意欲向上などだ。また従業員としても、大きなキャピタルゲインを得られる可能性があり、メリットがある制度といえる。

ただし、向いている企業と向いていない企業があるため、導入の際には注意が必要だ。ストックオプション制度の導入が向いているのは、上場を目指すスタートアップ企業、もしくはすでに上場済みの企業などであり、向いていないのは上場を目指さない企業である。

導入の際には、ストックオプションの発行数を発行済み株式の約10%にすること、権利行使後に従業員が流出しないようにべスティング条項を設定すること、権利付与基準を明確化することなどに気をつけよう。

ストックオプション制度をインセンティブ制度として活用すれば、直接的な資金の負担なく、優秀な人材の確保につなげられる。今回ご紹介したストックオプション制度の基礎的な知識や注意すべきポイントなどをしっかりと理解し、実際の企業活動で活用していこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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