2023.2.24

男性育休制度の現状と企業の取り組み、最新の改正育児介護休業法を解説

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男性育休制度とは「育児介護休業法」による育休制度のことで、2021(令和3)年6月に改正され、2022(令和4)年4月から段階的に施行されている。男性育休制度は、男女が平等に働ける社会参加を目指し、男性の育児休業取得を促進することが目的だ。

男性従業員の育児休業取得は増加しているものの、女性従業員と比較すると大きな開きがある。企業には、育児休業制度の意義や内容を理解し、女性だけでなく、男性の育児休業も取得しやすい環境の構築が求められている。

この記事では、男性育休制度の概要や現状、企業が取り組むポイントについて解説する。

男性育休制度とは?育児介護休業法による育休制度の概要

男性育休制度とは、育児休業や介護休業が必要な労働者を守る法律「育児介護休業法」による育休制度のことだ。子育てや家族の介護が必要な従業員に対し、仕事と家庭の両立を支援する目的で制定された。

育児介護休業法は2021年6月に改正され、2022年4月1日から段階的に施行されている。今回の改正では、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、個別の周知、意向確認の措置が義務化された。目的は、男性の育児休業取得を促進するためだ。その背景として、育児や介護を理由に退職せざるを得ない女性従業員の存在が挙げられる。

2015年に国立社会保障・人口問題研究所が行った調査によると、就業していた女性従業員の46.9%が子育てを理由に退職したことが明らかになった。

男女平等に働ける社会参加を目指すためには、女性従業員に出産後も継続して働いてもらう環境を整備する必要がある。女性の活躍できる環境を整備するために法律が改正され、男性の育児休業取得を促進できる育児休業制度が創設されたのだ。

参考:国立社会保障・人口問題研究所 「第15回出生動向基本調査(夫婦調査

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男性育休制度の現状

男性従業員の育児休業取得は増加傾向にあるものの、女性従業員と比較すると大きな開きがある。男性従業員の育児休業取得を阻害する要因のひとつとして、パタニティ・ハラスメント(パタハラ)が挙げられる。

パタニティ・ハラスメントは社会問題にもなっており、対策が必要な問題だ。ここでは、男性従業員の育児休業制度を巡る現状について解説する。

8 割以上の男性が未取得

男性育休制度はあるものの、男性の育児休業は8割以上が未取得となっている。2020年に厚生労働省が実施した調査によると、2018年10月1日から2019年9月30日までの間に、育児休業を取得した男性従業員の割合は12.65%という結果になった。

2019年に実施した前回の調査では7.48%であり、育児休業を取得する男性従業員は増加傾向となっている。しかし、女性従業員の割合は81.6%となっており、男女間で大きな開きがあることがわかる。

参考:厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調

パタニティ・ハラスメント(パタハラ)が発生

男性従業員に対し、パタニティ・ハラスメントが発生しているケースも存在する。パタニティ・ハラスメントとは、育児のために休業や時短勤務、フレックスタイムなどの制度を利用しようとする男性の従業員に対し、嫌がらせをする行為だ。

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厚生労働省の調査によると、育児休業を取得しようとした男性従業員の26.2%が、育児休業の取得を阻害される経験があると回答している。また、パタニティ・ハラスメントを受けた男性従業員のうち、42.7%は「育児休業の取得を諦めた」と回答している。

パタニティ・ハラスメントの発生は、男性従業員の育児休業取得を阻害する要因のひとつとして社会問題にもなっているのだ。

参考:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調

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男性育休制度に関する2022年以降 の施行内容とは?

2022年以降、以下の3段階にわたって男性育児休業制度に関連する法律が施行された。

● 2022年4月
● 2022年10月
● 2023年4月

どれも育児休業を取得しやすい職場環境の整備が目的だ。ここでは、段階ごとの男性育休制度に関する施行内容について解説する。

2022 年4月施行の内容

2022年4月からは、以下の内容が施行される。

● 雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
● 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

育児休業を取得しやすい環境を整備する規定として、以下のような研修や相談窓口の設置といった方法が提示された。

● 育児休業に対する研修の実施
● 育児休業に対する相談窓口の設置
● 自社の育児休業取得事例の収集と提供
● 自社の育児休業取得促進に対する方針の周知

上記の中から、いずれかを実施する必要がある。複数の方法を選択すると良いだろう。

企業には、従業員やその配偶者が妊娠したと申し出があった場合、従業員に対し育児休業制度の取得意思を確認する義務も課せられた。

また、育児・介護休業取得要件も緩和され、これまで育児や介護休業を取得する要件とされていた「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上ある者」が廃止となった。「1歳6ヵ月までの間に契約満了することが明らかでない者」のみが適用となる。

これらの改正は、企業規模に関わらずすべての事業主が対象だ。努力義務から義務に改正されたことにより、怠った場合は行政労働局による指導勧告の対象になる。是正されない場合、企業名が公表される可能性もあるため注意が必要だ。

2022 年10月施行の内容

2022年10月からは、以下の内容が改正された。

● 出生時育児休業の創設
● 育児休業の分割取得

出生時育休制度は、通称「男性育休」「産後パパ育休」と呼ばれている。子どもの出生後8週間以内に、父親である男性従業員が育児休業を最大4週間(28日)、2回に分けて取得できる制度だ。これまでの「パパ休暇」制度に代わり創設された。

また、育児・介護休業法の改正により、通常の「育児休業」が分割取得できるようになった。出生時育休制度は通常の育児休業とは別に新設されたため、通常の育児休業と合わせて、合計4回まで取得できる。この制度の創設により、短期・長期を組み合わせた柔軟な休業取得ができるだろう。

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2023 年4月施行の内容

2023年4月からは、大企業を対象に育児休業取得状況の公表が義務化される。この改正は、育児休業の周知や意向確認の義務化と同様に、育児休業を取得しやすい環境整備が目的だ。

従業員数が1,000人以上の企業には、年に1度、育児休業取得状況の公表が義務付けられた。以下の状況を、インターネットなどの一般の人が閲覧できる媒体で公表することが必要となる。

● 男性の育児休業取得率
● 男性の育児休業および育児目的の休暇取得率

この数値は、SDGsやESG投資と同様に、企業の社会的な評価基準にもなると予想されている。数値が高ければ、企業イメージも上がり、人材獲得にもつながるだろう。

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改正された育児介護休業法により企業が取り組むべきポイントとは?

改正された育児介護休業法により、企業が取り組むべきポイントとして、以下の3つが挙げられる。

● 社内ルールの整備
● 社員への周知
● 業務分配や人員配置、サポート体制の見直し

どれも、従業員が育児休業を気軽に取得できる環境づくりにつながることだ。ここでは、それぞれのポイントについて解説する。

社内ルールの整備

企業が取り組むべきポイントとして、社内ルールの整備が挙げられる。前述したように、「育児休業取得率の公表義務化」以外の改正は、すべての企業に適用される内容だ。

そのため、育児休業に対する制度が充分ではない企業は、就業規則や労使協定で規定しなければならない。改正内容を理解し、自社の就業規則を確認したうえで、必要に応じて改定が必要だ。

ただし、ルールを整備しただけでは育児休業を取得しやすい職場環境にはならない。形骸化した制度にしないためにも、経営陣などの理解も必要だ。経営陣が賛同しないままルールを整備した場合、育児休業の取得が従業員にとって評価が下がる原因になる可能性も考えられる。

経営陣が男性従業員の育児休業を促すメッセージを発信すれば、従業員も育児休業取得が企業の方針であると理解できる。経営陣が育児休業の必要性を理解し、管理者層へと理解を広げていくことにより、男性従業員が育児休業を取得しやすい職場環境になるだろう。

従業員への周知

育児休業を取得しやすい職場環境にするためには、従業員への周知が欠かせない。育児休業取得に対する社内ルールを整備しても、従業員に周知されなければ制度を利用することは難しい。

研修の実施や相談窓口の設置により、育児休業制度があることを周知すれば、制度を利用しようと思う従業員が出てくる。男性従業員に対するパタニティ・ハラスメントへの対策も重要だ。

押さえておきたいのは、従業員が気軽に利用できる雰囲気や仕組みをつくることだ。育児休業を取得した従業員の事例や、育児休業の柔軟な利用方法を社内報で公開すれば、制度の存在が認知される。育児休業を取得できる対象者が発生した場合、育児休業の案内をするようなフローも効果的だ。

従業員全員が育児休業について理解を深め、育児休業取得が当たり前の環境になれば、パタニティ・ハラスメントの防止にもつながるだろう。

業務分配や人員配置、サポート体制の見直し

会社として育児休業を推進するには、業務配分や人員配置、サポート体制の見直しも必要だ。育児休業の理解が深まっても、業務の都合により育児休業の取得をためらう従業員も存在する。

気軽に育児休業を取得できる環境にするためには、管理者の育児休業取得への理解を深めなければならない。育児休業を取得する従業員が出ることを想定した業務配分や人員配置をすれば、従業員は気兼ねなく育児休業を取得できるだろう。

業務配分や人員配置の権限を持っている管理職は、他の従業員以上に部下の育児参加をサポートする意味や環境づくりの大切さを理解する必要がある。社内研修だけではなく、外部講師や社外セミナーなどを利用し、社外からの教育を受ければ、環境づくりの大切さを理解してもらえるだろう。

まとめ

男性育休制度とは「育児介護休業法」による育休制度のことだ。育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、個別の周知、意向確認の措置が義務化された。

育児や介護を理由に退職せざるを得ない女性従業員の存在を背景に、男女が平等に働ける社会参加を目指し、男性の育児休業取得を促進するために制定された。

男性従業員の育児休業取得は増加しているものの、女性従業員と比較すると大きな開きがある。阻害する要因のひとつとなっているパタニティ・ハラスメントは社会問題にもなっており、対策が必要な問題だ。

企業は「社内ルールの整備」「社員への周知」「業務分配や人員配置、サポート体制の見直し」といった課題に取り組む必要がある。

育児休業の取得推進は子育て世代への支援だけではなく、従業員の満足度向上や定着率向上、企業のイメージアップにもつながる取り組みだ。

制度の意義や内容を理解し、育児休業を取得しやすい環境を構築することが、企業に課せられている。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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