2022.12.26

業務命令とは?業務命令拒否は違法か?「正当な理由」についても解説

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従業員は業務命令に従う必要があるものの、正当性を認められた場合には拒否も可能だ。今回は、業務命令や会社側の根拠などを紹介する。拒否は違法かどうかや拒否可能となるような正当性のある理由、業務命令を出す方法まで解説するため、あわせてチェックしよう。

業務命令とは?

そもそも業務命令とは、業務遂行のために使用者が従業員に対して行う指示や命令のことを指す。会社は従業員との間に存在する雇用契約にもとづいて、労働義務の遂行に関する指揮命令を行う権利、つまり労務指揮権を持っている。たとえば、業務命令として就労や出張、残業、配置転換などさまざまな命令をする。

多数の従業員を雇用して組織的に活動していくうえで、業務命令は必要不可欠なものだ。労働者は労働契約を結び指揮命令に従って働くことに合意しているため、業務命令に従わないのであれば契約違反や責務不履行となる可能性がある。

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会社が業務命令を行う根拠とは?

会社が従業員に業務命令を行える根拠は、労働契約を結んだことで業務命令権を持っていることにある。労働契約や就業規則での合意がある状態であれば、使用者側は業務命令権の範囲で指示や命令を出せるため、従業員はこれに従う必要があるのだ。

会社は、日常の労務指揮権や出張・出向命令権、懲戒権などの業務命令権を持っている。正当な理由がないのにもかかわらず、業務命令に従わないのであれば、契約違反や責務不履行となる可能性があるだろう。そのため、就業規則などによって懲戒処分の対象となる。

命令について、従業員から「どのような根拠があって、私に対してその命令を出しているのでしょうか」などと訊かれるケースがある。とくに、労働組合に加入済みで会社に対して普段から反抗的な態度をとっている社員の場合には、返答次第では厄介なことになる可能性があるため注意が必要だ。

以下、会社が業務命令を行う根拠を法律にもとづいて説明した例である。

会社と労働者が労働契約を締結したことで、労働者はその労働力の処分を使用者である会社に委ねている状態だ。これにより、会社は労働者への業務命令権を持つといえる。業務命令権の種類には、合意がなくとも労働者に対して持つ「労務指揮権」と呼ばれるものと、労働者の合意を得なければならない業務命令権がある。

労務指揮権には、労務遂行に必要な指示や命令が含まれている。業務指示や他事業場への出張命令はこの労務指揮権に該当し、採用時に労働者に明示しない場合であっても指示命令ができる。

一方で、労働者の合意が必要なほうは、労働契約の締結時に同意が必要である。通常、この内容は就業規則などに規定されている。

労働者は、労働契約や就業規則の規定に合意していて業務上の必要性や合理性がある内容であれば、業務命令に従う必要がある。もしも従業員が業務命令を拒否する場合は、懲戒処分となる可能性があるだろう。

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業務命令拒否は違法か?

業務命令に関連する法律には、労働契約の基本的なルールを定めた法律である「労働契約法」がある。労働契約法の第六条には、労働契約とは労働者が使用者に使用されて労働し、使用者が賃金を支払うことを両者が合意することで成立する契約であることが定められている。

つまり、原則として従業員は業務命令に従わなければならない。従業員は、使用者の指揮命令に従って労働することを労働契約の締結時に合意した状態であるため、業務命令に従わない場合には労働契約や就業規則違反となる。

また、契約上の義務に反して命令に従わない以上、民法415条で定められている契約上の債務不履行責任を問われる。このように、業務命令違反や債務不履行として、懲戒処分につながる可能性があるのだ。業務命令を拒否した場合には、口頭注意や出勤停止、減給などのほか、重い事態であれば解雇になるケースもある。

ただし、従業員が業務命令を拒否したならば、かならず違反だといえるわけではない。命令を拒否したことに関する正当性があると判断された場合には、業務命令拒否が認められる可能性がある。

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参考:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73aa9536&dataType=0&pageNo=1
参考:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

業務命令拒否が認められる「正当な理由」とは?

業務命令拒否が認められる「正当な理由」があるならば、会社の業務命令自体が無効となる。無効となるような不当な命令によって懲戒処分を行った場合には、民法709条の不法行為責任を会社側が問われる可能性があり、その懲戒処分も無効となるのだ。そのため、業務命令が不当といえる理由があるならば、命令を拒否できると考えられる。

拒否が認められる正当な理由とは、以下のような命令の場合である。

● コンプライアンス違反に該当する
● パワハラやいやがらせに該当する

また、客観的に見て業務命令が業務の必要性や合理性を欠いている場合にも、その命令の拘束力が否定される可能性が十分にある。もしも従業員側が正当な理由を提示したにもかかわらず、会社側が業務命令の拒否を認めずに懲戒処分を行った場合には、会社側が違法な行為をしたことになるため、注意しなければならない。

それでは、拒否が認められる理由について、それぞれ詳しくチェックしておこう。

参考:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

業務命令がコンプライアンス違反に該当する場合

もしもコンプライアンスに違反するような内容ならば、拒否する正当な理由だとして認められやすい。コンプライアンスとは「法令遵守」を意味し、法律や倫理観を守りながら企業活動を行うことを指す。法令や会社規則に違反するような虚偽報告や横領、偽造などの違反行為への荷担を指示する内容については、業務命令の正当性が認められない。

業務命令がパワハラやいやがらせに該当する場合

内容がパワハラ(パワーハラスメント)やいやがらせ、ほかの社員への見せしめとする行為に該当する場合にも、業務命令が無効だとして拒否できる可能性が高い。人格を否定する発言や、正当な理由もないのにもかかわらず別室隔離や自宅研修をさせる、自己都合による退職に仕向けようとして休日出勤させることなどが、これらに該当する。

会社の業務遂行に必要ではないにもかかわらずこのようなことをした場合には、業務命令が無効、もしくは違反行為であると判断されることがある。

また、パワハラやいやがらせにまでは該当しない場合であっても、先述したような業務の必要性や合理性を欠いた場合には、無効な業務命令だといえる。たとえば、一部の者に当番が集中したうえに、肉体的・精神的負担を課すほどの理由や効果に乏しい命令であれば、違法な業務命令だとして損害賠償を命じている判例がある。

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業務命令を出す方法とは?

業務命令を出す方法は、大きく分けると以下のとおりである。

方法①:口頭
方法②:書面
方法③:オンライン上での伝達

また、業務命令をスムーズに出すためには、「5W1Hを明確にしたうえで一つずつ指示を出すこと」と「指示する際に優先順位と期限を設けること」が大切なポイントだ。複数の指示をまとめて出すと伝達ミスや聞き漏らし、混乱を招きやすくなってしまうため、注意が必要である。

それでは、業務命令を出す際のそれぞれの方法について、詳しくチェックしていこう。

方法①:口頭

業務命令を出す際に口頭で伝えると、どのような業務をしてほしいのかを相手に伝えやすく、認識の齟齬を防いでわかりやすい説明ができる点がメリットである。ただし、業務命令についてしっかりとした記録が残らないというデメリットがあることには注意が必要だ。命令の内容を忘れられる可能性などがあるため、業務命令を伝える相手にメモを取ってもらったうえで、最後にきちんと伝わっているかどうか内容を確認するといいだろう。

方法②:書面

書面で通達する方法で業務命令を出した場合には、具体的な数字や数値目標までも正確に伝えられるというメリットがある。口頭で伝える方法と書面で通達する方法は、とくに一般的に使われている方法だ。できる限り書面を用意しつつ口頭でも伝えるようにすると、業務命令の内容について相手に誤解されることなく正確に理解してもらえるようになるだろう。

方法③:オンライン上での伝達

業務命令を出したいときには、ツールを利用してオンライン上で伝達する方法も使える。オンライン会議ツールやチャットツールを介して、指示を伝えたり書面をPDFファイルで送ったりして、オンライン上で業務命令を伝えられる。テレワークなど、直接従業員と顔をあわせて話せないような状況下ではとくに重宝される方法だ。

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まとめ

業務命令とは、業務を遂行するために従業員に対して使用者が行う指示や命令のことを指す。会社は従業員と雇用契約を結ぶことで労働義務の遂行に関する指揮命令を行う権利を持っており、業務命令として就労や出張などさまざまな命令ができる。

契約締結によって、労働者は指揮命令に従って働くと合意しているため、業務命令に従わないのであれば契約違反や責務不履行となる可能性がある。

ただし、従業員が業務命令を拒否したならば、かならず違反だといえるわけではない。正当性が認められた場合には、業務命令拒否が認められる可能性がある。

拒否が認められる正当な理由とは、以下のようなものだ。

● 業務命令がコンプライアンス違反に該当する場合
● 業務命令がパワハラやいやがらせに該当する場合

上記の理由であっても、状況によっては正当性が認められるケースと認められないケースがある。また、パワハラやいやがらせ、コンプライアンス違反にまでは該当しない場合であっても、業務の必要性や合理性を欠いた内容であれば業務命令が無効となる可能性がある。

業務命令を行う根拠や命令拒否で正当性が認められる場合の理由、業務命令を出す方法などもしっかりと理解し、実際の企業活動で活用していこう。

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監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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