永年勤続表彰とは、勤続年数が長い従業員に感謝と称賛を伝えるための表彰制度のことである。公平性を保った評価制度であることや、モチベーションに良い影響を与えることなど、導入のメリットは大きい。本記事では、永年勤続表彰の仕組みや例文、記念品などを紹介する。
目次
永年勤続表彰とは
多くの日本企業では、福利厚生やイベントの一環として永年勤続表彰を導入している。永年勤続表彰は従業員を公平に評価できる仕組みであり、従業員のモチベーション維持に効果的だ。ここでは、永年勤続表彰の概要や設定年数、導入のメリットについて解説する。
永年勤続表彰は社内表彰制度の代表例
永年勤続表彰は、社内表彰制度のひとつである。そもそも社内表彰制度とは、従業員の功績や貢献度を讃え、会社が表彰を行う制度を指す。表彰に関する法的なルールはなく、会社ごとに表彰の内容を決めても問題はない。
社内表彰制度の代表例である永年勤続表彰は、従業員の勤続年数を祝うための表彰制度である。従業員への感謝の言葉とともに、金一封や記念品などを贈るのが一般的だ。
永年勤続表彰が浸透した背景には、日本の終身雇用制度が関係している。かつての日本では、定年まで同じ企業で働くことが当たり前となっていたため、勤続年数が長い従業員を讃える文化が根付いたのであろう。
終身雇用制度はバブル崩壊とともに衰退したため、永年勤続表彰を不要とする声もある。しかし、従業員の離職防止や貢献意識の向上などのメリットがあるため、永年勤続表彰を導入している企業は少なくないだろう。
設定年数の例と相場
永年勤続表彰の対象となる勤続年数は企業によって異なるが、5年ごとや10年ごとに設定するケースが多い。または、入社から5年目に最初の表彰を行い、以降は10年目や20年目、30年目に表彰するパターンもある。
従業員数を多く抱える企業の場合、5年ごとなどの短いペースで表彰するとコストがかさむほか、管理の手間も発生するだろう。記念品などにかかる費用や管理面も考慮しながら、設定年数を検討することが重要だ。
ちなみに、最長の年数は30年または40年に設定するのが一般的である。以前は定年年齢が60歳となっており、大卒の場合は勤続年数が40年に満たないことが多いため、表彰は30年目までとするのが通例であった。
しかし、現在の定年年齢は65歳であり、今後も引き上げの可能性があるため、設定年数を40年に広げる動きもみられる。
永年勤続表彰の設定年数を理解したならば、記念品の相場についても知っておこう。産労総合研究所の調査によると、勤続年数に応じた記念品の価格相場は以下のとおりだ。
勤続年数 | 記念品の価格相場 |
5年 | 15,917円 |
10年 | 36,068円 |
20年 | 74,917円 |
30年 | 131,767円 |
40年 | 111,389円 |
ただし、調査は2006年に行われたものであり、金額の決め方は企業によって異なるため、ひとつの目安として考えることをおすすめする。
永年勤続表彰のメリット
永年勤続表彰を行うメリットとして、主に以下の3つが挙げられる。
・ 公平性を保った評価制度
・ 従業員の貢献意識の向上、離職防止
・ ホーソン効果によるモチベーションアップ
永年勤続表彰がもたらす効果を詳しく見ていこう。
公平性を保った評価制度
永年勤続表彰には、従業員を公平に評価できるというメリットがある。売り上げや契約数などの数値で評価する制度の場合、すべての従業員が表彰されるとは限らない。総務部や人事部など、成績を数値化しにくい部署に所属する従業員は、そもそも表彰の対象に含まれないこともあるだろう。
永年勤続表彰は一定の勤続年数に応じて表彰する仕組みであるため、すべての従業員に表彰のチャンスがある。公平性を保った評価制度であり、評価に対する不満の声が上がりにくいのが大きな利点だ。
従業員の貢献意識の向上、離職防止
永年勤続表彰は、企業と従業員の信頼関係にも良い影響を及ぼす。長く働いてくれたことへの感謝を言葉や記念品として表すことで、企業と従業員の絆が深まるだろう。従業員の貢献意識が刺激され、離職防止にもつながる。
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ホーソン効果によるモチベーションアップ
永年勤続表彰を導入する際は、表彰式を盛大に行ったり、社内報で受賞者の特集を組んだりするのがおすすめだ。他者から注目を集めた際には「期待に応えたい」という心理が働き、好結果につながることがある。このような現象はホーソン効果と呼ばれる。
永年勤続表彰の際にホーソン効果をうまく取り入れれば、従業員のさらなるモチベーションアップが期待できるだろう。また、受賞者の姿を見た若手社員が刺激を受けることで、組織全体の活性化にもつながるのだ。
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贈るものとして考えられるもの
永年勤続表彰のお祝いとして贈られるものは、企業によってさまざまである。一般的には以下を贈呈するケースが多いため、表彰を行う際の参考にしてみてはいかがだろうか。
・ リフレッシュ休暇などの有給休暇
・ 表彰状やトロフィー、盾
・ 賞与など金一封
・ 商品券やカタログギフト
リフレッシュ休暇などの有給休暇
永年勤続表彰では、リフレッシュ休暇などの有給休暇を贈呈するケースがある。リフレッシュ休暇とは、従業員の心身の疲労回復を目的とした休暇制度のことだ。
永年勤続表彰のお祝いとして付与される場合は、勤続年数に応じて休暇の日数が変動するのが一般的である。リフレッシュ休暇とともに慰労金や金一封が支給されるパターンも珍しくない。
勤続年数に応じたリフレッシュ休暇の目安 | |
勤続年数 | リフレッシュ休暇の日数 |
10年 | 5日 |
20年 | 6日 |
30年 | 7日 |
表彰状やトロフィー、盾
トロフィーや盾は永年勤続表彰の定番であり、「表彰状+トロフィー」や「表彰状+盾」のように、表彰状とセットで贈られることが多い。形に残る記念品はデスクなどに飾りやすく、いつでも目に入るために表彰の喜びを思い出してもらえるだろう。
トロフィーにはさまざまな種類があり、社名や受賞者の名前を彫刻で入れることも可能だ。盾もオリジナルの刻印ができるため、受賞者への感謝のメッセージを入れると喜ばれるだろう。
賞与など金一封
永年勤続表彰では、賞与などの金一封を授与するケースも多くみられる。金額に決まりはないが、勤続年数に応じて金額が大きくなるのが一般的である。ただし、記念品とセットで授与する場合は、現金のみの支給に比べて少ない金額となることが多い。
賞与などの現金を授与する代わりに、福利厚生代行サービス事業者が発行するポイントを贈るパターンも増えている。付与されたポイントは宿泊や商品の購入などに利用でき、従業員が自由に使い道を決められるのがメリットだ。
商品券やカタログギフト
従業員に喜ばれやすいお祝いの品として、商品券やカタログギフトが挙げられる。商品券は実用性が高く、従業員が自由に使えるため人気がある。勤続年数に応じて金額を調整しやすいほか、贈る相手の年代を選ばない点もメリットだろう。
特に金額が大きくなる場合は、商品券ではなく旅行券を贈るのもおすすめだ。旅行券と一緒にリフレッシュ休暇を付与し、長年の勤続に対する感謝の気持ちを込めるのもいいだろう。
商品券や旅行券を贈る場合は、使い勝手がいいように有効期限がないものを選ぶと親切である。
カタログギフトは、豊富な選択肢の中から欲しいものを自由に選んでもらえる。価格帯に幅があるため、勤続年数に応じてカタログギフトの価格を検討するといいだろう。
永年勤続表彰の課税対象とは?
永年勤続表彰で授与される賞与や記念品には、一部を除いて税金が課せられる。課税対象となるものとならないものを整理しておこう。
課税対象となるもの
以下のように、現金または換金性が高いものは課税対象として扱われる。
・ 賞与
・ 商品券
・ 旅行券(※換金した場合、換金金額に対して課税)
・ カタログギフト(記念品の価額に対して課税)
ただし、以下の条件を満たし、旅行券を使って実際に旅行した事実を証明できる場合は非課税となる。
(1) 旅行の実施は、旅行券の支給後1年以内とします。
(2) 旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含みます。)とします。
参考:国税庁「永年勤続記念旅行券の支給に伴う課税上の取扱いについて」
課税対象とならないもの
一般的に記念品としてふさわしいと認められる場合は、永年勤続表彰の際に授与しても課税されない。例として、旅行や観劇の招待費用などが挙げられる。ただし、非課税となるのは以下の条件を満たす場合に限られる。
(1) その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること。
(2) 勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること。
(3) 同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること。
参考:国税庁「No.2591 創業記念品や永年勤続表彰記念品の支給をしたとき」
表彰の例文
永年勤続表彰を導入する際は、表彰状や記念品に入れるメッセージを用意しておくことが重要だ。以下の例文を参考にして文章を考えてみよう。
表彰状
あなたは入社以来20年の永きにわたり職務に精励されました
よってその功労に感謝しここに表彰いたします
令和◯年〇月〇日
〇〇(社名)
代表取締役社長 〇〇
表彰状
(所属部署・役職名・組織名)
〇〇 殿
貴殿は入社以来30年の永きにわたりたゆまぬご努力を続けられ
社業発展に多大な貢献をされました
ここに金一封を贈り表彰します
令和◯年〇月〇日
〇〇(社名)
会長 〇〇
まとめ
永年勤続表彰は社内表彰制度の一種であり、勤続年数が長い従業員を讃えるための制度である。10年単位で表彰するケースが多く、最長は30年または40年に設定される。
一定の勤続年数に対して評価する仕組みであるため、すべての従業員に表彰のチャンスがあるのがメリットだ。「会社に頑張りを認めてもらえた」と従業員に自信をもってもらえれば、貢献意識の向上やモチベーションアップにつながるだろう。
永年勤続表彰では、表彰状とともにトロフィーや盾などの記念品が贈られる。形として残るもの以外に、賞与やリフレッシュ休暇、商品券などを贈るケースもある。
公平な評価制度を取り入れたい場合や、従業員のモチベーション維持に効果的な施策を講じたい場合には、永年勤続表彰を導入してみてはいかがだろうか。