2022.8.30

システム思考とは?デザイン思考とともに注目される思考法をわかりやすく解説

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複雑化するビジネス環境での課題解決に役立つ手法として、システム思考が注目を集めている。物事のつながりや相互作用を図に落とし込む思考法であり、問題を根本的に解決できるのが特徴だ。この記事では、システム思考の意味や具体的なプロセス、ほかの思考法との関係などを解説する。

システム思考とは

システム思考(システムシンキング)とは、課題の解決や施策の検討に用いられる手法の一種である。特にビジネスシーンにおいては、事業を進めるうえでさまざまな事象が発生しうるため、システム思考で物事を俯瞰することが重要だ。

また、同じく問題解決に役立つデザイン思考と関連性があることから、システム思考に注目が集まっている。システム思考の意味や必要性、ほかの思考法との関係を理解しておこう。

システム思考とは?必要な理由

システム思考とは、解決すべき対象や問題をひとつの「システム」として捉え、さまざまな視点からアプローチすることによって解決を目指す方法論だ。相互に影響し合う事柄を図に落とし込むことで、目に見えるものだけにとらわれず、物事を本質的に解決することが可能となる。

システム思考は、用いるツールによって広義のシステム思考と狭義のシステム思考に分けられる。広義のシステム思考は定量分析を用いる手法であり、マサチューセッツ工科大学スローン経営学院の教授であるジェイ・フォレスター氏が提唱した「システムダイナミクス」がベースとなっている。

一方で狭義のシステム思考は、システム科学者のピーター・センゲ氏が普及させた概念だ。定性分析を用いる手法を提唱した著書がベストセラーとなり、その手法がシステム思考として経営や教育など、さまざまな分野で用いられるようになった。

システム思考が必要とされる理由として、ビジネス環境の複雑化が挙げられる。経済のグローバル化やダイバーシティ&インクルージョンの推進など、ビジネスを取り巻く環境には大きな変化が生じているだろう。

組織に多様な価値観をもつ人々が集まると、良くも悪くも相互に影響し合うことは避けられず、さまざまな問題が生じやすくなる。このように組織が複雑になる中、潜在的な原因を探って解決に導く手法としてシステム思考が注目されているのだ。

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システム思考とロジカルシンキング

ロジカルシンキング(論理的思考)とは、対象を要素に分解して原因を探り、それぞれの要素を分析することで問題解決につなげる思考法のことである。MECE(ミーシー)などロジカルシンキングを活用すると、物事を体系的に整理したり、因果関係を考えたりと、さまざまな視点から物事を検討することが可能となる。

関連記事:MECE(ミーシー)とは?ビジネスで使えるロジカルシンキングの基本を解説

システム思考とロジカルシンキングは性質が異なる思考法であり、相互に補完する関係であるのが特徴だ。システム思考で要素間の相互作用を考える際は、それぞれの主従関係や因果関係を検討するロジカルシンキングの視点が欠かせない。つまり、ロジカルシンキングはシステム思考の土台となる思考法である。

反対に、ロジカルシンキングは要素のつながりを点や線で捉えるものであり、要素間の相互作用は考慮しない。ロジカルシンキングで導き出した点や線を一枚絵に落とし込むためには、対象を面で捉えるシステム思考が必要なのだ。システム思考を活用すれば、ロジカルシンキングでは解決できない問題を深掘りできるだろう。

システム思考とデザイン思考

デザイン思考(デザインシンキング)とは、デザイナーがデザインする際に用いる考え方をビジネスにおける課題解決に転用したものだ。デザイン思考は以下の3つのコンセプトに基づいており、妥当性と再現性の高い解決策を導くために有効とされる。

・ ユーザーを起点にして考える
・ 対話やコミュニケーションに重きを置く
・ 繰り返して試行する

システム思考とデザイン思考は、どちらも問題解決を図るマインドセットであり、考え方のプロセスは類似している。ただし、システム思考が物事を起点にする思考法であるのに対し、デザイン思考はユーザー目線で考えるのが特徴だ。

システム思考とデザイン思考はフォーカスする対象が異なるため、同じようなプロセスでも違った側面から物事を見られる。両者を組み合わせて思考すれば、課題解決に向けてより効果的なアプローチができるだろう。

例えば、デザイン思考でユーザーニーズを満たすゴールを設定し、明確化された目標を達成するための手段をシステム思考で考えるといった活用方法が考えられる。

システム思考のためのツール例

システム思考を問題解決に役立てる際は、以下のツールやモデルがよく使われる。

・ 氷山モデル
・ ループ図

システム思考を実践するために、各ツールの構造や具体的なプロセスをおさえておこう。

氷山モデル

「氷山の一角」という言葉があるとおり、目に見えるものは物事の一部にしか過ぎない。氷山モデルは、システムを以下の4つの階層に分けて分析し、問題の全体像を把握するためのアプローチ方法である。

・ 出来事
・ パターン
・ 構造
・ メンタルモデル

出来事

出来事とは、問題の表面的な部分や、目に見えて注目されやすい現象を指す。氷山モデルにおける出来事は思考のスタート地点であり、問題の根本的な原因を探るためには、出来事を深掘りする必要がある。

パターン

パターンとは、何らかの出来事が起こった際に、どのような傾向が見られるかを確認するプロセスである。パターンは行動や変化を指しており、出来事の背景にある行動や時間的な変化などを探っていく。

例えば、採用募集をかけても候補者が集まらないという課題を抱えているケースでは、「出来事=候補者が集まらないこと」が成り立つ。そのうえで、なぜ候補者が集まらないのかを考えた際、パターンの例には「そもそも採用募集を見てもらえていないこと」が挙げられる。

このように出来事の発端となるパターンを探ることで、解決すべき問題を具体的にイメージしやすくなるのだ。

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構造

出来事とパターンを把握したならば、次にパターンを生み出す構造を明らかにしていく。採用課題において採用募集を見てもらえないことをパターンと仮定した場合、パターンを引き起こす構造として「効果的な採用手法を選択できていないこと」が挙げられる。

例えば、紙媒体の求人雑誌に掲載するのか、自社サイトに採用ページを設けるのかによって、出会える求職者が変わってくるだろう。求める人材と採用手法のミスマッチが起こっていることが、パターンを生み出す構造と考えられるのだ。

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メンタルモデル

構造の分析後はメンタルモデルを洗い出し、多角的な視点でアプローチするプロセスへと移行する。メンタルモデルは構造を引き起こす関係者のことで、構造を解決するためにはメンタルモデルから変えていく必要があるのだ。

上述した採用課題の例では、採用担当者の知識不足によって可能性が高いと考えられる。根本的な原因を解決するためには、採用担当者向けの研修を実施し、採用強化を図るのが有効だろう。

このように「出来事→パターン→構造」の順番で問題を深掘りし、根本的な原因を探り当てることによって、問題を解決に導くことが可能となる。

ループ図

ループ図は、氷山モデルの構造を可視化する際に用いられるツールである。出来事を引き起こす構造をサークル状に配置することで、構造の流れを把握するのに役立つ。

また、出来事を取り巻く複数の要素を矢印でつなぎ、それぞれの因果関係を分析する際にも用いられる。各要素の因果関係を可視化すると、ある要素が変化した際に全体が受ける影響をつかみやすくなり、問題解決のためにはどの要素を変化させればいいのかが判断できるだろう。

システム思考を組織に活かすメリット

システム思考を組織に活かすメリットとして、以下の3つが挙げられる。

● 可視化ができる
● 全体像の把握ができる
● 共通の認識を持つことができる

システム思考のプロセスとともに、実践によって得られるメリットをおさえておこう。

可視化ができる

システム思考を用いると、物事のつながりを可視化できる。ビジネスシーンでは意思決定をする場面が多くあるが、物事の一部分だけを見て判断を下すと、ほかの要素に悪い影響が及ぶ可能性がある。

プラスになると見込んで実施した施策でも、結果的に許容範囲を超えるリスクを引き起こすかもしれない。システム思考によって要素間の因果関係を明らかにし、相互作用を視覚的に把握できれば、リスクの許容範囲内でより効果的な判断ができるだろう。

全体像の把握ができる

全体像を把握しやすくなることも、システム思考を取り入れるメリットである。問題を解決するためには、問題の背景にある根本的な原因を突き止める必要がある。

システム思考はさまざまな視点から物事を分析する思考法であり、複雑化したシステムを大局的に捉えることが可能だ。システム思考によって問題の全体像を俯瞰すれば、解決に向けて効果的なアプローチができるだろう。

共通の認識を持つことができる

システム思考によって物事の全体像を整理することは、組織内で共通の認識をもつことにもつながる。組織では、部門の垣根を超えて業務を進めたり、さまざまな役職の人が同じプロジェクトのメンバーになったりすることもあるだろう。立場や役職が異なる人が集まった際に、フォーカスするポイントや考え方が一致しないことは珍しくない。

問題をより良い形で解決するためには、組織に属する人同士の認識をそろえることが重要である。システム思考で物事を整理し、要素間のつながりや重要度を明らかにすれば、客観的な視点で議論ができるようになり、より良い意思決定が可能となるだろう。

まとめ

システム思考とは、解決すべき事柄をひとつのシステムとして捉え、因果関係や相互作用を分析して問題解決を目指す手法である。対象を要素に切り分けて分析するロジカルシンキングや、ユーザーを起点とするデザイン思考と組み合わせることで、より効果的なアプローチが可能となる。

システム思考を実践する際は、代表的なツールである氷山モデルやループ図を取り入れるのがおすすめだ。システム思考によって物事のつながりや全体像を俯瞰し、複雑化するビジネス環境での課題解決に役立てよう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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