2022.7.29

パタハラの意味は?事例やチェックしておきたい関連調査、法律を解説

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パタハラ(パタニティハラスメント)とは、育児に関する制度を利用する男性社員へのハラスメント行為である。価値観やライフスタイルが多様化する現代において、パタハラは重要な社会問題として注目されている。パタハラの定義や事例、関連する法律などを見ていこう。

パタハラとは?社会問題になっている理由

積極的に育児をする男性が増えている一方で、「パタハラ」が社会問題となっている。社内でパタハラが横行すると、男性の育休取得が妨げられたり、訴訟問題に発展したりする可能性がある。

パタハラが起こらないように、まずはパタハラの定義を理解しておこう。ここでは、パタハラの定義、マタハラやケアハラとの違い、パタハラが問題視される理由について解説する。

パタハラとは

パタハラとは、「パタニティ(=父性)」と「ハラスメント(=嫌がらせ)」を組み合わせた略語である。育休を取得する男性社員に対し、上司や同僚が行うハラスメント行為を指す。

育休取得の妨害以外では、育児支援を目的としたフレックスタイム制度や短時間勤務制度を利用する男性社員への嫌がらせもパタハラに含まれる。具体的な基準として、以下の5つの条件にひとつでも当てはまる場合はパタハラと認定される可能性が高い。

【条件1】
男性社員による育休取得の申請を会社が認めない

【条件2】
育休取得を希望する男性社員に対し、育休取得を諦めさせるために「ほかの社員に対する迷惑行為である」などの言葉をかける

【条件3】
育休取得を考えている男性社員に対し、「男性の育休取得は前例がない」「育児をするのは男性ではなく女性だ」などの発言をする

【条件4】
育休明けの男性社員に対し、人事権を不当に行使する(不当な人事異動や降格・減給、仕事を与えないなど)

【条件5】
男性社員が育休を申請して取得する際に退職を迫ったり、解雇をほのめかしたりする

マタハラとは

「マタハラ(マタニティハラスメント)」とは、妊娠中または出産後の女性社員に対するハラスメント行為を意味する。女性社員が産休や育休を申請して取得する際に、上司や同僚が精神的な嫌がらせをしたり、不当な人事権を行使したりすることだ。

パタハラもマタハラも育児に関連したハラスメント行為であるが、被害を受ける人の性別に違いがあると覚えておこう。

ケアハラも休業取得に対する嫌がらせ行為のひとつ

パタハラやマタハラと似た性質を持つのが「ケアハラ(ケアハラスメント)」だ。ケアハラとは、介護休業や介護時短制度を利用する社員への嫌がらせ行為である。

特定の性別に対するパタハラやマタハラに対し、ケアハラを受ける人の性別は男女を問わない。パタハラ・マタハラ・ケアハラは、いずれも家族のライフイベントに関するハラスメントであることから、「ファミハラ(ファミリーハラスメント)」と総称されることもある。

なぜパタハラが問題になっているのか

パタハラが社会問題として注目される背景には、育児に対する価値観の変化やダイバーシティの発展などが関係している。近年は女性の社会進出を後押しする動きが活発化しており、共働き世帯の増加につながった。

次第に「育児は女性がするもの」という固定観念が薄れ、男性の積極的な育児参加を求める声が高まっている。そのような現状を受け、男性社員の育休取得を支援する企業が増えているのだ。

しかし、男性社員の育児参加に否定的な意見を持つ人が全くいないわけではない。企業が男性社員の育休取得制度の整備に取り組んだとしても、パタハラによって男性社員の育児参加が妨げられる可能性は十分にある。

男性社員が育児に関わりやすい環境を整えるためには、育休取得制度の整備はもちろん、パタハラを防ぐことが重要な課題となっているのだ。

パタハラの事例

パタハラの防止に取り組むためには、どのような言動がパタハラ認定されるのかを知っておくべきだろう。ここでは、企業の事例を紹介する。

化学メーカー

パタハラ問題は、社員の妻によるSNSの投稿が発端となって拡散された。育休復帰から2日で地方への転勤を命じられたことが投稿され、最終的には企業が公式に見解を発表するほどの社会問題に発展している。

本件では育休明けの遠方への転勤が争点になっているが、通常の人事異動のルールに則っているのであれば、必ずしもパタハラには該当しない。実際に、企業側は社員に対する転勤辞令が不当なものではなかったと発表している。

法的には問題のない人事異動でも、SNSで炎上騒動が起こったことにより、同社としてはブランドイメージが傷つく結果となった。パタハラを未然に防ぐのはもちろんのこと、社員側のSNS投稿が企業の社会的信用の失墜につながるリスクにも注意すべきだろう。

スポーツ用品メーカー

育休を取得した男性社員が会社に対して慰謝料請求の訴訟を起こしている。事の発端は、男性社員が育休明けに地方への出向を言い渡され、復帰前とは大きく異なる業務を任されたことだ。のちに本社に戻ったものの業務命令はなく、重要度の低い仕事をするようになった。

男性社員はこれらの扱いが不当であること、育休取得を希望するほかの社員への見せしめであることを主張し、労働組合に加入して裁判を起こした。最終的には男性社員と企業との和解が成立し、企業側は育休取得の環境整備に努めるとコメントしている。

パタハラにまつわる調査、法律

パタハラの定義や事例を理解したところで、実際に日本ではどれくらいの人がパタハラ被害に遭っているのかも気になるところだろう。ここでは厚生労働省の調査をもとに、パタハラ被害にあった経験者の割合を紹介する。

また、パタハラの顕在化もひとつの要因として、2022年4月には改正育児・介護休業法が施行される。パタハラにまつわる調査や法律について把握し、パタハラへの理解を深めよう。

2021年4月発表の厚生労働省調査「パタハラ被害の経験は4人に1人」

2021年4月、厚生労働省は職場のハラスメントに関する実態調査の報告書を公表した。調査の対象者は全国の企業や団体で働く20〜64歳の男女で、男性の育児休業等ハラスメントに関しては500人の男性が回答している。

調査によると、過去5年間に勤務先で育児に関する制度を利用しようとした男性のうち、26.2%がパタハラ被害を経験したことが明らかになった。つまり、4人に1人がパタハラ被害に遭っていることが読み取れる。

パタハラ経験者の割合は、従業員規模99人以下の企業が特に高く、反対に従業員規模が1,000人以下の企業では低い結果であった。ハラスメントの内容には、育児に関する制度の利用を上司や同僚に阻害されたことが多く挙げられている。

実際に、パタハラが原因で育休取得を諦めた人の割合は42.7%にも上る。そのほかにも、「残業免除、時間外労働の制限、深夜業の制限」や「所定労働時間の短縮、始業時刻変更等の措置」を諦める人も多く見られた。

パタハラ被害による心身の影響としては、65.6%が「怒りや不満、不安などを感じた」と回答している。また、「仕事に対する意欲が減退した」と回答する人は53.4%もいた。

パタハラ発覚後の企業の対応についても調査されており、「あなたに事実確認のためのヒア
リングを行った」の割合は43.3%、「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」は40.3%となっている。

一方で、20.9%の人が企業の対応について「特に何もしなかった」と評価している。

参考:厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」

2022年4月には改正育児・介護休業法が施行

男女ともに仕事と育児を両立できる社会を目指して、2022年4月から段階的に改正育児・介護休業法が施行される。主なポイントは以下の5つだ。

1. 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
2. 男性の育休取得率の公表の義務化
3. 育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、妊娠・出産を申し出た労働者に対する制度の周知や意向確認の義務付け
4. 育児休業の分割取得
5. 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

上記のうち、ここでは(1)と(2)の改正について詳しく解説する。

参考:厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の 一部を改正する法律案の概要」

産後パパ育休(出生時育児休業)

産後パパ育休(出生時育児休業)は新たに創設される制度で、2022年10月1日から施行される。現行の育休とは別に取得でき、対象期間は出生から8週間以内、取得可能日数は4週間までだ。労使協定を締結している場合に限り、労働者の合意の範囲内であれば、休業中に働くことも可能である。

産後パパ育休を取得する場合は、原則として休業の2週間前までに申し出る必要がある。育休を2回に分割して取得できるため、現行制度に比べて休業期間を柔軟に設定できるようになった。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

大企業で男性育休の取得率公表の義務化

2023年4月1日からは、育児休業取得状況の公表の義務化が施行される。具体的には、1,000人超の従業員を雇用する企業の場合、男性の育児休業等の取得状況を年1回公表しなければいけない。

育休取得の実績を企業が発信することで、男性が当たり前に育休を取得できる社会が実現するとともに、パタハラの減少にもつながるだろう。

参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

まとめ

近年は、育休取得を希望する男性社員への嫌がらせを意味する「パタハラ」が社会問題となっている。厚生労働省の調査では、男性社員の4人に1人がパタハラ被害を経験したことが明らかになった。

社内でパタハラが横行すると、男性社員の育児参加の妨げになりうる。実際に、パタハラがきっかけで育休取得を諦める人は少なくない。

「育児は女性がするもの」という考え方は薄れてきているが、男性の育児参加に否定的な人がいることもまた事実だ。有名な企業であっても、パタハラと認定される事例はいくつか起こっている。

このような状況を受け、2022年4月からは改正育児・介護休業法が徐々に施行される。育児に対する価値観やライフスタイルが多様化する今、組織単位での仕組み作りは必要不可欠だ。今後は育児に参加したい男性社員を企業として支援し、制度の整備やパタハラ防止の対策に取り組むべきだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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