2022.7.22

リスキリングの意味は?リカレント教育との違い、取り組み事例5社を解説

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リスキリングとは、技術革新などの変化に対応するための知識やスキルの再開発、再教育をおこなうことである。今回は、リスキリングの意味や注目を集める背景、リカレント教育との違いを紹介する。既に取り組む企業の事例も解説しているため、併せてチェックしよう。

リスキリングとは?

近年、さまざまなプロセスのデジタル化や自動化が進んだことにより、それに対応できる高度な技術を持つ人材が不足し、企業は対応に頭を悩ませている。リスキリング(Re-skilling)とは、近年の技術革新などの変化に対応するために、業務上で必要となる新しい知識やスキルに関する職業能力の再開発、再教育をおこなうことである。

リスキリングについては、DX(デジタルトランスフォーメーション)と並行して話すことが多い。リスキリングとDX教育はイコールではないものの、関係が深い言葉である。企業のDX戦略において新しく必要とされるようになる業務や職種に社員が対応できるよう、知識やスキルを再習得させることを目的としてリスキリングを実施する企業が多い。

このように、DX時代の人材教育手法としてリスキリングが注目を集めている。一般的なリスキリングの定義は、「新しい職業に就くため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、新たなスキルを獲得することを目的とした教育」である。

リスキリングは、企業側の視点から語られることが多い言葉ではあるものの、学ぶ側である社員が意欲的に取り組めるかどうかも重要だ。似た概念として「リカレント教育」があるが、これについての詳細は後述する。

関連記事:DX人材育成で注目を集めるリスキリングとは?導入し成功させるためのポイント

リスキリングが注目を集める背景

リスキリングは、世界中で注目を集めている。近年、ビジネスモデルの変化や技術の革新が進み、デジタル時代が到来したといわれている。それにより事業やサービスが急激に変化しており、新たな時代に対応したスキルや知識を習得した人材を確保する必要性が高まっているのだ。

「第4次産業革命」とも呼ばれるほどの革新的な変化により、高度な技術を持つ人材のニーズが高いものの、人材が不足していて確保しづらい状況にある。この状況下で、一早くリスキリングをおこなっていた先駆者である、米国の通信会社AT&Tでは、技術職のニーズに対して80%以上を社内異動のみで対応できているのだ。

また、AT&Tで意欲的にリスキリングプログラムに参加する社員は、ほかの社員に比べて評価が高く、離職率は1.6倍も低かったというデータもある。

2020年におこなわれた世界経済フォーラムの年次総会、通称ダボス会議では、主要な議題のひとつに2030年までに全世界で10億人により良い教育、スキル、仕事を提供するという「リスキリング革命」が挙げられた。

また、独立行政法人情報処理推進機構が発表した「DX白書2021」によると、日本企業のうちで事業戦略において変革を担える人材が不足していることに、強い危機感を抱いている企業は70%を超えている。

リスキリングをおこなうと、業務効率化や新しいアイデアの創出、生産性の向上、採用コストの削減などのメリットがある。これらのようなさまざまなメリットがあるリスキリングは、企業にとって重要な手段なのだ。

そのうえ、新型コロナウイルスが流行したことによって、オンラインでの顧客対応やテレワークなど、既存の働き方では対応しきれないような変化をもたらしている。その影響を受けて従業員数が削減されるケースもあり、社員にとっても自身が必要とされる人材でいるために、リスキリングの重要性が高まっているのだ。

参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2021」

リスキリングとリカレント教育の違い

リスキリングに似た概念として、リカレント教育がある。これらの違いは、リスキリングが戦略的に従業員に学ぶ機会を与えるものであるのに対して、リカレント教育は社会に出てから一度仕事を離れ、大学などで教育を受け直してからまた仕事に戻るという循環を指すことである。

リスキリングはその特性上、基本的に働き続けながら新しい知識やスキルに関する職業能力の再開発をおこなうことになる。リスキリングは企業側が主体となって実施するが、リカレント教育は学ぶ人自体が主体である。社会人になってから学びなおし、新たな知識やスキルを習得するという点では似ているものの、その学び方は大きく異なっているものだ。

関連記事:リカレント教育とは?人生100年時代の生涯学習の重要性と企業が取り組むメリット

リスキリングに取り組む企業事例

リスキリングに取り組んでいる事例として、以下の企業を紹介する。

・ 株式会社サイバーエージェント
・ 株式会社パソナグループ
・ 富士通株式会社
・ 株式会社日立製作所
・ 株式会社三菱UFJ銀行

実際にリスキリングに取り組んでいる企業ではどのような対応をしているのか、これらの企業の例で確認していこう。

株式会社サイバーエージェント

株式会社サイバーエージェントでは、エンジニアの採用や育成を目的として、社外の人を対象とするアカデミーを発足している。アカデミーでは3ヶ月で特定領域の技術を習得できるようにカリキュラムを組んでおり、無料で受講可能だ。

エンジニアの採用市場が激化しており、母数が増えないままでニーズばかりが増していることに危機感を感じていたことから、アカデミーをスタートさせたという。2012年にもアカデミーをおこなっており、それを履修してから入社したエンジニアが、現在では要職に就いて活躍している。社内でのリスキリングはもちろんだが、社外でも取り組みをおこなうことで優秀な人材を手に入れたり、業界全体の底上げをはかったりしていけるのだ。

エンジニアを目指すのは、学習意欲の高い人たちが多いといわれている。それでもネットなどの情報をもとに勉強をしていくと体系的に学びにくいなどの課題がある。そのため、このような機会に受講したいと考える人が多いようで、たくさんの応募が集まった。

社内でもリスキリングセンターを立ち上げ、エンジニアがキャリアアップやキャリアチェンジにつなげていけるように、高度な専門領域に至るまでサポートしている。

株式会社パソナグループ

株式会社パソナグループではグループ内の従業員を対象に、DX推進人材育成プログラムであるリスキリング・イニシアティブを実施した。6ヶ月間でDXの基礎を学び、社内の課題解決に向けた実践的なアプリの開発に取り組むというものである。これにより、現場のニーズに即した課題解決へのモチベーションが高まったのだ。

また、グループ横断型のDX人材育成プログラムもおこなっている。プログラムごとにレベル分けがされているため、学ぶ人それぞれの理解度にあわせて学習できるだろう。

富士通株式会社

富士通株式会社でもデジタル人材の育成を目的とした教育プログラムを開講している。受講期間の目安は半年から1年で、海外のさまざまな国の人材も含めてグローバル基準で通用する人材の育成に取り組む。

教育プログラムの内容には「基礎編」と「応用編」、「実践編」の3階層が用意されている。たとえば応用編では、顧客の課題を解決できるように、自社で蓄積したノウハウを体系的に教えるなどしている。実践編では、社内のプロジェクトメンバーとして実際に課題解決に取り組めるようになっており、どんどんレベルアップしていけるのが魅力だ。

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所には、グループの人材育成を総合的に担う日立アカデミーがある。日立アカデミーでは、さまざまなスキルを向上させるプログラムを開発しており、2019年度末時点でデジタル関連の学習プログラムが約100コースも用意されている。

日立製作所では、社員全員が自分の業務領域でどのようにデジタルを活用できるかを考えられる人材になってほしいと考えている。日立製作所と日立アカデミーが連携して提供している基礎教育プログラムでは、学習をスタートする段階のベーシックプログラムよりもさらに手前の研修を用意し、つまづきにくくなるよう工夫しているのが特徴だ。

株式会社三菱UFJ銀行

株式会社三菱UFJ銀行では、リスキリングと外部の専門スキルを持った人材採用に取り組んでいる。この2つのうち、とくに力を入れているのが社内でのリスキリングである。

銀行のビジネスを理解している社員自身がデジタルを活用できるようになることを目的に、三菱UFJ銀行は全行員を対象にデジタルリテラシーの教育をおこなっているのだ。指定の外部資格を取得できれば行内称号を付与し、条件を満たした社員には3年間で最大90万円を支給するなど、リスキリングへのモチベーションをアップさせるように工夫している。

また、コア人材を対象とした専門スキル教育もあわせて実施している。ビジネス・テクノロジー・デザインの3つのスキルを身に付けて、DXをけん引できる人材育成をおこなっているのが特徴だ。

まとめ

リスキリングとは、近年の技術革新などの変化に対応するために、業務上で必要となる新しい知識やスキルに関する職業能力の再開発、再教育をおこなうことである。

リスキリングはDXと並行して話すことが多い。これは、企業のDX戦略で新しく必要とされるようになる業務や職種に社員が対応できるよう、知識やスキルを再習得させることを目的としてリスキリングを実施する企業が多いためだ。

近年は「第4次産業革命」とも呼ばれるほどの革新的な変化があり、高度な技術を持つ人材のニーズが高いが、人材が不足していて確保しづらい状況にある。この状況下で、リスキリングの先駆者であるAT&Tでは、技術職の80%以上を社内異動のみで対応できているなど、リスキリングの効果を確認できている。

日本では、変革を担える人材が不足していることに強い危機感を抱いている企業が70%を超えているといわれるほど、高度な技術を持つ人材が求められている。人材確保が難しいデジタル人材を自社社員で対応できるリスキリングの必要性を理解し、事業戦略に役立てていこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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