2022.6.27

ジョブ型雇用とは? メリットやデメリット、メンバーシップ型雇用との違いや企業事例を解説!

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業務内容を限定して雇用する「ジョブ型雇用」に注目が集まっている。これは、従来の雇用形態では、企業が抱える課題に対応できなくなっているのが原因だ。本記事では、ジョブ型雇用が注目を集めている背景を説明するとともに、メリットやデメリットについて解説していく。

ジョブ型雇用とは?注目を集める背景

ジョブ型雇用とは、業務内容を限定して人材を採用する雇用形態だ。従来のメンバーシップ型雇用では、専門的な人材の確保が困難なだけではなく、生産性向上やテレワークの普及、同一労働同一賃金の導入といった課題に対応するのは困難だろう。

その対策として、ジョブ型雇用が注目を集めているのだ。ここでは、ジョブ型雇用が注目を集める背景について解説する。

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専門的な人材の不足

ジョブ型雇用が注目を集める背景として、専門的な人材の不足が挙げられる。近年では、AIやIoT、ビッグデータといった技術革新が起こっており、企業にもこのような技術を持った人材の確保が必要だ。専門技術を持った人材がいれば企業の競争力が上がり、生産性向上にもつながる。

しかし、これまでのメンバーシップ型雇用では、専門技術に特化した人材を育成するのは簡単ではない。新たに専門技術に特化した人材を雇用するために、ジョブ型雇用が注目を集めているのだ。

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生産性向上が困難

生産性向上が困難になってきているのも、ジョブ型雇用が注目を集めている要因といえる。これまでのメンバーシップ型雇用は、高度経済成長期の時代背景に合わせて定着した雇用形態だ。

右肩上がりの経済成長が約束されていた時代では、終身雇用や年功序列の考え方が根幹にあるメンバーシップ型雇用が合っていたのも事実である。しかし、デフレが続く現代では、高齢化による人件費の高騰が問題となっている企業が多く存在する。

日本の労働生産性は、G7の中でも下位を継続している。この生産性の低さは、メンバーシップ型雇用を原因とする声も少なくない。メンバーシップ型雇用では、ジョブローテーションを採用している企業も多く存在する。

ジョブローテーションは総合的に仕事を学べる反面、必ずしも適材適所で配属するわけではないため、生産性が下がってしまうのだ。適材適所の人材配置をするためにも、ジョブ型雇用が注目を集めている。

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テレワークの普及

テレワークの普及もジョブ型雇用の注目度向上に起因している。メンバーシップ型雇用の場合、上司の裁量で仕事を割り振られることがほとんどだろう。上司は、部下の進捗状況や様子、プロセスをみながら業務を割り振ることで業務を管理していた。

しかしテレワークの普及により、部下の様子をみることが困難になり、業務管理に支障が出ている上司も少なくない。ジョブ型雇用であれば、業務内容が限定されているうえに技術を持っているため、プロセスを確認する必要がなくなるのだ。

テレワークにおける業務管理の効率化を図るためにも、ジョブ型雇用に注目が集まっている。

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同一労働同一賃金の導入

同一労働同一賃金の導入も、ジョブ型雇用が注目を集めている背景のひとつだ。2020年4月1日より、正社員と非正社員の待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」に関する法令が施行された。

同一労働同一賃金では成果や能力が同じであれば、非正社員にも正社員と同等の賃金を支払う必要がある。メンバーシップ型雇用の場合、年齢や経験年数によって賃金が設定されているケースが少なくない。そのため、同一労働同一賃金に対応するのは簡単ではないのだ。

ジョブ型雇用であれば、業務内容によって賃金が設定されるため、問題なく同一労働同一賃金に対応できる。同一労働同一賃金の導入が、ジョブ型雇用の導入を促進することになるだろう。

メンバーシップ型雇用との違い

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いは採用基準である。採用基準が異なることにより、教育方法や評価基準も異なってくる。ここでは、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いについて解説していく。

採用基準

ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いは採用基準だ。メンバーシップ型雇用は「人材に対して仕事をあてる」雇用形態であり、育成が前提となるため年齢や学歴、人柄といった潜在能力が採用の基準となる。そのため、採用するのは新卒をはじめとした若い人材になるのが一般的である。

対するジョブ型雇用は、「仕事に対して人材をあてる」雇用形態だ。育成が前提ではないため年齢や学歴ではなく、技術が採用基準となる。採用方式も中途採用が多くなるのが一般的だ。

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教育方法

従業員教育もジョブ型雇用とメンバーシップ雇用では違いがある。メンバーシップ雇用は教育を前提として採用しているため、集合研修やジョブローテーションによって従業員を教育するのが一般的だ。従業員全員が同じような教育を受けることで、ゼネラリストの育成を目指している。

ジョブ型雇用は教育を前提として採用していないため、従業員全員が同じような教育を受けることはない。教育内容も専門技術に特化したものになる。

評価基準

人事評価基準もジョブ型雇用とメンバーシップ雇用の違いのひとつだ。メンバーシップ雇用では終身雇用や年功序列が前提であるため、社歴や学歴が評価基準になっている。社歴に比例して給与も上がっていくのが一般的なのだ。

一方のジョブ型雇用においては、技術や成果が評価基準とされる。どんな技術を持っているか、どんな成果を出したかが評価の基準となって給与に反映されるのだ。

ジョブ型雇用に取り組むメリット・デメリットは?

ジョブ型雇用には、採用時のミスマッチを防止できるメリットがある反面、業務内容が限定されるため、異動ができないといったデメリットも存在する。ジョブ型雇用を導入する場合は、メリットとデメリットを理解することが大切だ。ここでは、ジョブ型雇用に取り組む際のメリットとデメリットについて解説していく。

メリット

ジョブ型雇用のメリットは、採用時のミスマッチを防止できることだ。企業は、不足している業務内容に対して人材を募集するため、業務内容に適した人材を採用できる。ミスマッチを防止できるのは、大きなメリットといえるだろう。

技術だけではなく、社会人スキルが高い人材を採用できるのもメリットといえる。技術を持った人材には、社会人経験を積んでいるケースが多い。高い社会人スキルを持っていることで、マネジメントをする場合でも目標設定や進捗管理がやりやすくなり、リモートワークにも問題なく対応できるだろう。

また、専門技術と社会人スキルが高い人材には業務効率や品質の向上も期待でき、ひいては生産性の向上にもつながる。

ジョブ型雇用の高まりで注目されているのがキャリア自律だ。キャリア自律とは、働く個人が自身のキャリアに関心をもち、主体的にキャリア形成を行っている状態を指す。個々の従業員が、自身の強みや弱みを把握し、自己理解を深めた上で、自律的に業務内外で研鑽に励むことは結果的に企業としてのパフォーマンスを高める。そのため、従業員のキャリア自律を企業が人事制度面から支援することは企業にとってもメリットが大きいとされている。

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デメリット

ジョブ型雇用のデメリットは、業務内容が限定されることだ。契約時点で業務内容や勤務地が決められているため、異動や転勤ができないのが一般的である。業務内容を変更する場合は、契約を結び直すことになるのだ。

業務内容が限定されることで、技術が不足していた場合や他社の待遇が良い場合、転職してしまうケースが多いこともデメリットといえるだろう。

ジョブ型雇用に取り組む企業事例

国内でもジョブ型雇用に取り組む企業が増えてきている。富士通や日立がデジタル人材の確保を狙いとしている一方、三菱ケミカルでは大規模な会社ならではの悩みを解決するのが狙いだ。ここでは、ジョブ型雇用に取り組む企業事例を紹介する。

富士通株式会社

富士通株式会社では、2020年に国内の管理職1万5,000人に対してジョブ型を先行導入した。ジョブ型雇用拡大の狙いは、ITサービスの事業モデルを転換するためだ。従来の「請負型」から「提案型」のサービスに転換するため、DXに必要な技術を持つ人材の獲得を目指している。

特に、人工知能(AI)関連の専門人材は、IT以外の業界からも引き合いが強いため、技術を持つ人材を獲得しやすいジョブ型雇用に移行しているのだ。

日立製作所

日立製作所は2024年度中を目標として、完全なジョブ型雇用に移行することを発表した。中途採用が増加し、新卒採用の割合が低下していることや、世界でも戦える競争力をつける必要性が出てきたことが、ジョブ型雇用への移行に踏み切った要因だ。

従業員の技術向上と並行し、デジタル人材の採用強化をすることも発表しており、採用もジョブ型雇用を意識したものに移行していくだろう。

三菱ケミカル株式会社

三菱ケミカル株式会社は、2020年に人事制度の大改革を実施した。そのひとつがジョブ型雇用の導入だ。年功ではなく成果で評価することで、社員の働き方に対する自主性を高める狙いがある。社内異動に関しても公募制とし、2021年からはジョブ型の評価基準を採用した。

ただしこの人事制度改革をおこなったのは、三菱ケミカル独自の問題が潜んでいたためでもある。2017年に三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンが統合して発足後、日本化成と日本合成化学工業を吸収したため、母体となる企業が5社となった。

当然、どこにどんな人材がいるのかを把握できるはずがない。ジョブ型雇用の導入により、社員たちが適材適所で働ける環境を整えることも狙いのひとつだったのだ。

まとめ

ジョブ型雇用とは、業務内容を限定して人材を採用する雇用形態である。従来のメンバーシップ型雇用では、専門的な人材の確保だけではなく、生産性向上やテレワークの普及、同一労働同一賃金の導入といった課題への対応も困難だ。その対策として注目を集めているのがジョブ型雇用である。

ジョブ型雇用は、採用時のミスマッチ防止がメリットである反面、業務内容が限定されるため、異動ができないといったデメリットも存在する。ジョブ型雇用を導入する場合は、メリットとデメリットを理解することが大切だ。

国内でもジョブ型雇用を導入する企業が増えてきているが、目的は企業によって異なっている。ジョブ型雇用の特性を理解し、自社に適した雇用形態を導入することが大切である。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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