ダイバーシティマネジメントとは、多様性を認めてそれぞれが活躍できる企業運営をおこなうことである。今回はダイバーシティマネジメントの意味や注目を集めている背景、ダイバーシティ&インクルージョンとの違いを紹介する。日本における主な取り組み事例も併せてチェックしよう。
目次
ダイバーシティマネジメントとは
ダイバーシティマネジメントとは、多様性を認め合うことでさまざまな人材の能力を最大限活かし、事業を成長させていくという企業運営の考え方である。日本ではもともと、日本人男性の正社員ばかりが活躍していた。これに対してダイバーシティマネジメントでは、女性や高齢者、外国人、障がい者など、多様な人材の特徴を理解して組織力向上につなげていく。
2020年度まで「新・ダイバーシティ経営企業100選」や「100選プライム」などの表彰制度を、経済産業省でおこなってきた。このことからわかるように、近年は国を挙げてダイバーシティ経営への取り組みを推進しているのである。以前の日本企業は同質性の高い従業員の集まりであることを武器にしていたが、違いがあることを強みにできるように変化してきているようだ。
このように、組織の多様性をもたらしていくことは、ESG経営や人的資本開示の一環で重視されており、これから推進していく企業にとっては不可欠なものである。
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ダイバーシティマネジメントをおこなうことでのメリットは、さまざまな意見やアイデアが出せるようになることだ。これにより、効率化や改善案のアイデアを出しやすくなったり、新しい視点で製品やサービスの企画ができたりする。また、多様性を認めることで社会的な企業の評価が高まり、採用力アップや顧客満足度の上昇に繋がる。
勤務体制の多様化により、従業員のモチベーションアップや離職率の低下も見込めるだろう。
ダイバーシティの意味を再確認
そもそもダイバーシティとは、英語で「diverse(多様な)」という形容詞を「Diversity」という名詞に変化させた、「多様性」を意味する言葉である。ビジネスシーンにおけるダイバーシティは、年齢や性別、人種、国籍、宗教などに関わらずに、多様性のある人材が幅広い働き方をすることを指す。
ダイバーシティは「表層的ダイバーシティ」と「深層的ダイバーシティ」の大きく2種類に分けられる。「表層的ダイバーシティ」とは生来持っている特徴や変えることが難しい属性のことで、人種や年齢、性別、障害、性的傾向などが該当する。対して「深層的ダイバーシティ」とは、表面的にはわかりにくい内面的な特徴のことで、宗教、学歴、母国語、職務経験、役職などを指すものだ。
マネジメントの意味を再確認
マネジメントの意味は「管理」や「経営」であり、ビジネスシーンでいうマネジメントとは組織の管理や運営を指している。マネジメントの定義は様々であるものの、ピーター・ドラッカーが定義した意味がとくに一般的に使われているだろう。
ドラッカーによると、マネジメントとは「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」で、マネージャーは「組織の成果に責任を持つ者」である。ヒト・モノ・カネ・情報といった組織のリソースを使い、目標を達成できるように取り組むことをマネジメントという。
人材が多様化しているなかで、一人ひとりに合わせられる仕組みづくりをして、できる限り組織が発展していけるようにするために、マネジメントが重要視されているのである。
ダイバーシティマネジメントが注目を集める背景
近年、ダイバーシティマネジメントが注目を集めている背景には、「人材獲得競争の激化」や「企業イメージの向上」、「ライフワークバランスへの意識の変化」があると考えられている。それぞれの背景を確認していこう。
人材獲得競争の激化
日本では近年少子高齢化の影響が強くなっている。生産年齢人口と呼ばれる15才以上65才未満の人口が少なくなっており、人材獲得競争が激化しているのだ。さらに、将来の日本は今以上に深刻な人手不足に陥るといわれている。
人手不足によって事業を断念せざるを得ない状況になってしまう可能性も指摘されており、安定して人材を確保するためにはダイバーシティマネジメントが重要だと考えられているのである。
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取り組みが企業イメージに直結するため
ダイバーシティマネジメントの取り組みが注目を集めている背景には、企業イメージに直結するという理由もある。とくにダイバーシティマネジメントの考え方がはじめに広まったアメリカでは、多様性のある企業づくりをしないと差別に対しての訴訟を起こされる可能性もあったため、企業イメージを守るためにも取り組む姿勢を見せることが重要だったのである。
日本でもダイバーシティマネジメントに取り組んでいると、多様性を認めて企業としての社会的責任を果たしているとして多くの人が好印象を持ちやすい。企業イメージが向上すると、ブランディングにつながり、消費者の購買意欲が促されたり人材が獲得しやすくなったりと採用ブランディングにも効果があるため、重要なポイントである。
実際に、ダイバーシティマネジメントをおこなっている企業で得られた恩恵として、「人材の獲得」や「業績の向上」、「ブランド力や評判の強化」を挙げる経営者が多かったようだ。
ライフワークバランスへの意識が高まっているため
ライフワークバランスへの意識が高まっていることも、ダイバーシティマネジメントの取り組みが広まっている背景である。近年、仕事と私生活が両立できるようなバランスを重要視するなど、働き方や雇用に対する意識が大幅に変化してきている。これはとくに若い世代で顕著な変化があった。
その影響により転職を考える人が多くなり人材が流動しやすくなったこと、女性が雇用される比率が高まったことなどから、ダイバーシティの取り組みによって変化に対応できるようにしているのである。
また、これにあわせて時や場所、仕事を問わずに働ける「フルコミットメント社員」と呼ばれる人材が減少していることも影響している。これにより、人材不足に陥らないようにダイバーシティマネジメントを進めていき、時短労働者やリモートワーカーなどとして働く人材も活用できる仕組みづくりが必要となっている。
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ダイバーシティ&インクルージョンとの違いは?
ダイバーシティに関連する概念であるインクルージョンとの違いもチェックしていこう。ダイバーシティ(Diversity)とは先述のとおり「多様性」のことであるが、インクルージョン(inclusion)には「包括・包合」という意味がある。ビジネスシーンでは、多様な人材が受け入れられて、個々の強みを活かしていけると実感できる状態のことを指している。
ダイバーシティは「多様性を認める考え方」であるのに対し、インクルージョンは、「包括したうえで、個々の強みを活かす考え方」だという違いがある。ダイバーシティも全体の成長を目指すために多様性がある組織づくりをするものであるが、それだけではかえってトラブルの原因になってしまうこともあるだろう。
そのためダイバーシティだけではなく、さらに個々の強みを活かしていける状態にするインクルージョンが重要だと考えられるようになり、「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉がトレンドだ。また、これを省略して「D&I」と表されることもあるようである。
また、ダイバーシティ&インクルージョンを実現させる採用手法のひとつとして、「ブラインド採用」を取り入れることにも注目が集まっている。
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日本における主な取り組み事例
ダイバーシティマネジメントの日本における主な取り組みとして、日本ユニシス株式会社やエーザイ株式会社、四国銀行の事例を見ていこう。事例として挙げたこれらの会社は、新・ダイバーシティ経営企業100選にも選ばれている、ダイバーシティマネジメントの取り組みが評価された企業である。
日本ユニシス株式会社
日本ユニシス株式会社では、今のビジネスも重要視しながら新しい考え方や視点で考えられるようにと、ダイバーシティマネジメントを重要視するようになった。ディスカッションなどにより違いがあることを実感し、素直に受け入れるという考え方である。
具体的な取り組みとしては、育児や介護と仕事が両立できるように、育児休職中の通信教育などのキャリア開発支援をおこなったり、女性社員の育成プログラムを実施したりしたことが評価されている。
エーザイ株式会社
エーザイ株式会社は1960年代からグローバル展開をしており、それにあわせてダイバーシティマネジメントをし続けている企業だ。エーザイ株式会社には個を尊重して理解するという企業理念がある。全世界での展開をしていることもあり、差別をなくす取り組みやマイノリティの方が活躍できる取り組みをしている。
育児休職を取得しやすくスムーズに復職しやすい職場風土にしたり、シェアオフィスなど就労できる場所の選択肢を増やしたりと、ダイバーシティマネジメントに積極的に取り組んでいる企業である。
四国銀行
四国銀行は女性の活躍や障がい者雇用の推進など、多様性のある人材が活躍できるようにマネジメントしている企業だ。働きがいのある職場環境づくりを推進したり、仕事と家庭の両立支援制度を充実させたりなど、さまざまな取り組みをおこなっている。
まとめ
ダイバーシティマネジメントとは、多様性を認め合うことでさまざまな人材の能力を最大限活かし、事業を成長させていくという企業運営の考え方である。日本ではもともと、日本人男性の正社員ばかりが活躍していたが、女性や高齢者、外国人、障がい者など、多様な人材の特徴を理解して組織力向上につなげていくことが重要である。
このようなダイバーシティマネジメントは、近年は国を挙げて取り組みを推進している。注目を集めている背景には、「人材獲得競争の激化」や「企業イメージの向上」、「ライフワークバランスへの意識の変化」などがあると考えられている。
事例の企業のようにダイバーシティ&インクルージョンに積極的に取り組み、人材確保や企業イメージの向上などに繋げていこう。