採用計画とは、採用活動をおこなう際の指針を示すものである。綿密に計画を立てれば、採用後の企業と人材とのミスマッチを避ける効果が期待できるものだ。今回は、採用計画の基礎知識を紹介する。計画前にすべきことや、計画を立てる際の進め方も併せてチェックしよう。
目次
採用計画とは?その必要性
採用計画とは、採用活動をおこなううえでの指針を示すためのものである。企業の事業計画をもとに、「どの部署に」、「どのような人を」、「どのような方法を使って」、「いつまでに」、「何人採用するか」といった計画を立てる。具体的な採用プロセスを設計し、企業の事業計画との方向性を一致させることは、企業の経営目標の達成に役立つものだ。
このとき注意したいことは、事業計画と採用の方向性を合致させ、戦略的な採用計画を立てることである。経営理念や今後のビジョン、事業戦略などをもとに、企業の目標を達成するために必要な人材を確保する必要があるためだ。
なにも計画を立てずにその場しのぎの採用活動をしていると、自社のニーズと合わない人材を採用しかねないだろう。個人が持っているスキルや経験、さらには志向なども自社に合う人材探しのためには重要なポイントだ。採用後のミスマッチを避けるためにも、事前に綿密な採用計画を立てる必要があるといえる。
このように、採用計画をしっかりと立てることは、スムーズでミスマッチの少ない採用活動を進める効果がある。さらに採用がうまくいかなかった場合、課題をすぐに理解して原因を解消しやすくすることにも繋がるものだ。
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計画前にすべきこと
いきなり採用計画を立てる前に、企業の現状を把握しつつスムーズでミスマッチの少ない採用活動を進めるためにやっておくべきことがある。計画前にすべきことは、以下のとおりだ。
・ フレームワークなどで自社の採用課題を把握する
・ 自社にマッチしやすい人材像を洗い出す
フレームワークには3C分析や4C分析、SWOT分析などのさまざまな種類がある。フレームワークをうまく使い、自社の課題などの現状分析や細かなニーズの把握に役立てていこう。
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フレームワークなどで自社の採用課題を把握する
採用計画を考える前に、自社の採用課題を把握しよう。例えば「2023年卒採用における自社の課題」に関するHR総研調査では、「ターゲット層の応募者集め」と「内定者辞退の減少」などが多くあがっている。(ProFuture株式会社/HR総研)
■2023年卒採用における自社の課題(23卒と22卒を比較)
採用課題を明らかにするにはフレームワークなどを活用したい。採用マーケティングの際の代表的なフレームワークには、3C分析と4C分析、SWOT分析の3つがある。
このうち3C分析とは、自社のことや自社が提供する商品とサービスに関係する外部環境と、内部環境の分析ができるものだ。外部環境とは市場や顧客、競合を意味しており、内部環境とは自社内部のことを指している。これら「Customer(市場や顧客)」、「Competitor(競合)」、「Company(企業)」それぞれの頭文字をとって、3C分析と呼ばれている。
採用マーケティングの場合には、以下のように置き換えることができるだろう。
・Customer⇒自社が採用したい人材
・Competitor⇒ターゲット人材が興味・関心を持ちそうな競合他社、業界・業種
・Company⇒採用市場における自社の強み・弱み
関連記事:マーケティングで使える「3C分析」とは?意味や採用にも活用できる方法をわかりやすく解説!
4C分析とは、自社が提供する商品やサービスを顧客視点から分析する方法である。「Customer Value」、「Customer Cost」、「Convenience」、「Communication」と4つの頭文字をとった名称であり、つまりは顧客にとっての価値やコスト、利便性、顧客とのコミュニケーションといった4つの要素を整理するものだ。
採用マーケティングの場合には、顧客をターゲット人材視点に置き換え解釈すると良いだろう。
・Customer Value⇒自社に入社するメリット
・Customer Cost⇒自社に入社する際の懸念点やリスク
・Convenience⇒自社への応募や日程調整など、柔軟に対応してもらえるか
・Communication⇒自社の担当者とコミュニケーションが取れやすいか
関連記事:「4C分析」が採用候補者からの応募を集めるカギ?母集団形成につなげる方法を解説!
3C分析も4C分析も、分析する対象を採用マーケティングで設定したペルソナに変化させると、採用計画を立てる際に活用できる。採用計画の詳細を設計したり採用プロセスを検討したりする際におすすめのフレームワークだ。
またSWOT分析とは、企業のことを強みと弱みの両面から理解するために有効とされるフレームワークである。これは「Strength(強み)」、「Weakness(弱み)」、「Opportunity(機会)」、「Threat(脅威)」という4つの要因から分析していくものだ。これにより、内部環境要因による自社の強みや弱みと、外部環境要因によるチャンスや脅威となるものを洗い出すことが可能になるのである。
採用マーケティングの場合には、ターゲット人材から魅力的に映るように、自社のアピールすべき強みを明らかにすることができるだろう。
関連記事:「SWOT分析」とは?自社の強みを活かし、採用成果につなげる方法を解説!
自社にマッチしやすい人材像を洗い出す
フレームワークなどの活用によって自社の採用課題を把握できたならば、続いては自社にマッチしやすい人材像を洗い出していこう。つまり、採用マーケティングで重要だといわれる「ペルソナ」を設定する作業である。
採用市場におけるペルソナとは、自社が欲しているニーズを明確にし、そのニーズに合った人材を採用するために設定する人材像のことだ。年齢層や性別、居住地域、価値観、行動特性などを設定し、対象を絞って施策を展開していくと、自社のニーズや企業の文化にマッチしやすい人材を採用しやすくなる。
効率的で効果的な採用活動を実施するためにも、まずは人材像を洗い出してみよう。
また、配属予定となる部門が欲している人物像の意向もあわせて確認しておくといいだろう。これを疎かにすると、採用した人材が馴染めずに力を発揮できない原因となるうえに、早期離職につながる可能性がある。
採用計画を立てる際は事前に各部門のニーズを確認し、大まかな段階での採用計画を部門責任者に先にチェックをしてもらいつつ微調整をおこなうといいだろう。
なお、理想の人物像を言語化すると、コミュニケーション能力が高い人物など他社も希望している人物像になってしまいやすいものだ。人材の取り合いになってしまわないように、自社に合った人物像をさらに詳しくして人材要件を定めよう。
関連記事:採用マーケティングで重要な「ペルソナ」とは?その設計方法や具体例を解説
採用計画設定の進め方
実際に採用計画を設定する際の進め方は、以下のとおりである。
・ 採用目標の設定~集めるべき母集団のボリュームを把握
・ 採用予算の確定
・ 選考方法の検討
・ 実施するサービス・施策の選定
それぞれのやり方を詳しくチェックしていこう。
採用目標の設定~集めるべき母集団のボリュームを把握
実際に採用計画を設定する際は、まず採用目標を定めるところから始めよう。部署ごとに確認し、求めている採用人数を理解してから適切な目標採用人数を決定する。併せて、どのような人材を求めているのかを確認しておこう。
近年は理系の人材に対するニーズが高まっており、人材確保が難しくなっている。理系人材の採用を目標とする場合には、獲得に向けた難易度を考慮したうえで目標達成に向けた戦略を考えよう。
採用予算の確定
採用目標の設定をおこなったならば、そのために必要となる全体としての採用予算を定めていく。過去の採用事例を参考にしつつ、応募単価や採用単価の目標を決定するといいだろう。
採用活動で必要となる費用には、応募者の対応や面接をするためにかかる人件費や交通費、説明会の会場費、求人広告費、その他採用関連ツールの契約費などがある。
選考方法の検討
応募者の能力や人物像を正確に評価するために、選考方法の検討も重要なポイントだ。選考方法は企業が求めている人物像や、かけられる採用コストなどによっても違うため、採用活動をおこなう企業によって異なるものである。総合的に検討し、自社にあった選考方法を検討しよう。
ちなみに基本的な選考方法には、書類選考や筆記試験、面接などの手法が用いられている。筆記試験では就業にあたって必要となる知識や適性を確認し、面接の受け答えによって総合的な見極めをおこなうが、これらの組み合わせも企業によって異なる。
書類選考や筆記試験、面接といった段階ごとにおける合格基準を事前に明確にしておくようにしよう。
実施するサービス・施策の選定
続いて、採用活動をおこなううえで実施するサービスや施策を選定していく。たとえば、学生へのアプローチ方法や人材を募集する媒体、採用ツールなどを定めていこう。
学生へのアプローチ方法には、採用担当者自身から学生にアプローチをおこなう方法、集団での説明会、少人数や個別での面談、転職フェアや合同企業説明会などの就職イベントへの参加などがある。
人材を募集する媒体は、ハローワークや学校へのアプローチだけではない。就職サイトや転職サイトの求人広告、人材紹介会社などによる人材紹介、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、オウンドメディアやSNSによる採用などさまざまなものがある。このうち、リファラル採用とは社員紹介制度のことだ。
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近年ではコロナ禍の影響もあり、採用活動をオンラインでおこなう企業が増えている。オンラインでおこなうメリットは、幅広いエリアの学生に対して採用活動を実施できること、会議室の手配などの手間が省けることなどが挙げられるだろう。
しかし、オンラインでおこなう採用活動は便利な一方で課題もある。コミュニケーション不足に陥りやすいこと、職場の雰囲気や環境がわからないことによるミスマッチ、選考対象が増えることによる影響などが事前に考慮しておきたいポイントだ。
職場の雰囲気や環境が伝わるようなコンテンツを作ったり、説明会で伝えるはずだった内容を動画にまとめたりなどと工夫し、ミスマッチを回避できるようにしよう。
関連記事:求職者が『見たい!』と思う、採用オウンドメディアのコンテンツ例を解説
まとめ
採用計画とは採用活動の指針を示すためのもので、企業の事業計画や経営理念、今後のビジョン、事業戦略などをもとに作られる。必要な人材確保のために、「いつまでに、どの部署に、どのような人を、どのような方法を使って、何人採用するか」といった計画を立て、現場にも確認しつつ採用計画とニーズとのすり合わせをおこなおう。
スムーズでミスマッチの少ない採用活動を進めるためには、採用計画を練る前に企業の現状を把握するべきである。採用計画を立てる前に、フレームワークなどで自社の採用課題を把握したり、自社にマッチしやすい人材像を洗い出したりしよう。フレームワークには3C分析や4C分析、SWOT分析などさまざまな種類があるため、自社の目的に合った方法を活用して細かな分析をおこなえるようにしよう。
実際に採用計画を設定する際には、採用目標の設定と予算の確定、選考方法の検討、採用活動で実施するサービスや施策の選定などを検討する。近年はコロナ禍の影響もあって、採用活動をオンラインでおこなう企業が増えている。オンラインでの採用活動にはメリットのほかデメリットもあるため、職場の雰囲気や環境が伝わるようなコンテンツを作るなどしてミスマッチを回避しよう。