パルスサーベイとは、頻繁に実施される従業員調査のことである。簡単な質問に答えてもらうことで、従業員の満足度を調査できる。この記事では、パルスサーベイの基礎知識を解説する。実施するメリットや質問項目、事例も併せてチェックしよう。
目次
パルスサーベイとは?従業員調査のひとつ
まずは、パルスサーベイの基礎知識を確認しよう。ここでは、パルスサーベイに似たセンサスとの違いも併せて解説する。
パルスサーベイとは?
パルスサーベイとはパルス調査とも呼ばれ、従業員調査のひとつである。簡単な質問を5〜15問ほど行い、従業員の満足度調査に用いられる。
パルスとは日本語で「脈拍」を意味し、脈拍をチェックするように企業や個人の関係性を図るのが目的だ。
またパルスサーベイは、定期的に行われるのが特徴のひとつといえるだろう。企業によっては、週次や月次で行われることもあるのだ。頻繁に調査することで、より企業と個人の関係性を把握できる。
大規模調査は「センサス」
センサスとは、年に1〜2度開催される大規模調査のことである。パルスサーベイとは異なり、アンケートのボリュームが50〜150問ほどと多いのが特徴だ。そのため、パルスサーベイのように頻繁には開催されない。
センサスは設問が多いがゆえに、多くの人が集まる企業であっても、多角的に課題を見つけられると考えられてきた。しかし開催頻度が少なく、現場に反映されるまでに時間がかかるため、頻繁に実施されるパルスサーベイに注目が集まっている。
パルスサーベイ実施のメリット
パルスサーベイを実施するメリットは、以下の4つである。
・ 従業員満足度をすぐに調査できる
・ 従業員のエンゲージメント向上に活かせる
・ 新入社員のオンボーディングに役立てられる
・ 離職のリスクを早期に察知することにつながる
それぞれのメリットについて、詳しくチェックしよう。
従業員満足度をすぐに調査できる
パルスサーベイを行えば、従業員満足度をリアルタイムで調査できるのがメリットだ。週次や月次など定期的に調査するため、従業員の満足度を把握しやすくなる。
センサスのように年に1〜2度しか調査しない状態では、今の従業員の声をリアルタイムで聞くことは難しいだろう。しかしパルスサーベイであれば、現在進行形で発生しているトラブルや課題などにいち早く気付くきっかけになるのだ。
また、従業員の心は常に変化している。例えば、仕事上でのトラブルや私生活の悩みなども、従業員の意識に変化をもたらすだろう。そのため、意識の変化に応じて適切な対処ができるパルスサーベイは、魅力的な調査だといえる。
従業員のエンゲージメント向上に活かすことができる
パルスサーベイを実施すれば、従業員のエンゲージメントの向上に活かせるだろう。そもそもエンゲージメントとは、企業と従業員の信頼関係を示す言葉である。
従業員が企業に対してエンゲージメントを向上できれば、従業員の定着率や生産性、モチベーションのアップが期待できるのだ。そのため、パルスサーベイを実施して従業員の気持ちを把握することで、エンゲージメント向上につながるのである。
また、パルスサーベイは個人を特定せずに調査するものであるため、個人攻撃に発展しにくいのも特徴だといえるだろう。つまり、問題を報告しても個人的に攻撃されることがなく、対策を講じてもらえるため、結果として従業員のエンゲージメントが向上しやすくなる仕組みである。
関連記事:エンゲージメントとは?従業員の定着率をあげるためにできるエンゲージメント向上の施策
新入社員のオンボーディングに役立てることができる
パルスサーベイを実施すれば、新入社員のオンボーディングに役立てられる。オンボーディングとは、新しく加入したメンバーが早い段階で力を発揮できるように、既存のメンバーがサポートすることだ。
オンボーディングはアメリカで生まれた造語であり、日本では外資系の企業を中心に採用されている制度である。しかし、このオンボーディングは、新入社員が企業や職場に慣れることだけを目的にしているのではない。
上司や同僚を含めた企業全体で新入社員を受け入れ、既存の従業員と短期間で統合させることも目的としているのだ。そこでパルスサーベイを実施すれば、新入社員だけではなく既存の従業員の声も聞けるため、オンボーディングに役立てられるのだ。お互いの気持ちや問題点がわかれば、オンボーディングもうまく進められるだろう。
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離職のリスクを早期に察知することにつながる
パルスサーベイを実施すれば、離職のリスクを早期に察知できるだろう。例えば、パルスサーベイの設問にフリースペースを用意しておき、各々自由な意見を書いてもらうのである。そこに職場に対する不満や改善点などを記入してもらえれば、従業員の働きやすい職場環境を整えられる。
パルスサーベイは頻繁に実施しているため、即座に対応すれば企業に対する従業員のイメージも良くなるに違いない。つまり、パルスサーベイを実施し、改善できることをしていければ従業員のモチベーションの低下を防ぐことができる。結果、離職率の低下が期待でき、企業と従業員が信頼関係を築けるのだ。
特に優秀な人材を確保し続けるためには、離職のリスクを極力減らせるように注意する必要があるため、パルスサーベイは有効だといえるだろう。
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パルスサーベイの質問項目例
ここからは、パルスサーベイの質問項目例をチェックしよう。
質問は簡単でシンプルに。数も5~15問程度が目安
まず、パルスサーベイの質問は、簡単でシンプルな内容にしよう。週次や月次といったサイクルで実施するため、複雑な内容にしてしまうと従業員の負担になってしまう。
また、質問数も5〜15問が目安だ。パルスの意味である脈拍を測るかのように、1〜2分程度で終わる分量にするのがおすすめである。質問数が増えることも、従業員の負担になり得るだろう。
例)エンゲージメント向上
エンゲージメントが高い企業には、以下のような特徴がある。
・ 従業員が経営理念を理解し、共感している
・ 従業員が企業や上司から公正な評価を受けている
・ 従業員にとって働きやすい環境が整っている
つまり、これら3つの特徴を満たせば、エンゲージメントが向上すると考えられるだろう。そのため、パルスサーベイの質問を考える際は、企業と従業員の関係性や自己肯定感などが把握できるような内容にするといいだろう。
ここでは、エンゲージメント向上に関する質問項目例について解説する。
会社の方針、MVVを理解していますか?
「会社の方針やMVVを理解していますか」と質問すれば、企業と従業員の足並みが揃っているかを判断できるだろう。MVVとはミッションやビジョン、バリューのことであり、企業の目指す姿や大切にしている価値観などを表したものだ。
会社の方針やMVVを社内で共有すれば、従業員の取るべき行動が明確化する。その結果として企業への信頼度が上昇し、エンゲージメントの向上につながるのだ。
そのため、パルスサーベイの質問によって会社の方針やMVVへの理解度が低いと判明したならば、マニュアルを作成したり、朝礼で確認しあったりといった対策を講じられる。
関連記事:ミッションとは?ビジョンとの違いやなぜ必要なのかを解説
仕事上で自身が認められ、尊重されていると感じられますか?
「仕事上で自身が認められ、尊重されていると感じられますか」と質問すれば、公正な評価を受けているか否かといった従業員の満足度を判断できる。
質問には「はい」か「いいえ」で答えるだけではなく、「会社に対して不満に思っている部分」や「良いと思っている部分」を自由に書ける欄を設けておけば、より具体的な意見を聞けるだろう。
経営層が信頼に値する判断をしていると思いますか?
「経営層が信頼に値する判断をしていると思いますか」と質問すれば、会社のビジョンや方針に関する思いを聞けるだろう。もしも「信頼できない」といった回答が多ければ、エンゲージメントを向上させる努力をしなければいけない。
また「経営層が信頼できる」といった声が多ければ、各従業員のエンゲージメントが高く、働きやすい環境を整えられているとも判断できるのだ。
パルスサーベイの活用事例
ここからは、パルスサーベイの活用事例を3つ紹介しよう。
自社開発したソフトバンク
パルスサーベイの活用事例1つ目は、パルスサーベイを自社開発したソフトバンクを紹介する。ソフトバンクでは人事本部がゼロからパルスサーベイを開発し、2019年社内に浸透させた。
ソフトバンクでは、2004年より従業員の満足度調査を実施していたものの、その手法がセンサスであったため、個人の意見をより反映しやすいパルスサーベイの開発に乗り出したのだ。
パルスサーベイを導入したことで、上司と部下のコミュニケーションが活性化し、従業員の状態を把握しやすくなった。本人の同意の下、上司に情報を開示することで、上司が部下の現状を理解できるようになったのだ。
また、頻繁に行われるパルスサーベイによって、スコアの変化もわかりやすい。調査結果に大きな変化があれば、「最近なにかあったのか」といった声かけもできる。有益なコミュニケーションを積み上げることで、従業員のエンゲージメントも向上しやすくなったのである。
参考:なぜ、ソフトバンクの人事本部はゼロからパルスサーベイを開発したのか?
エンゲージメント向上を目指す、日清食品ホールディングス
パルスサーベイを活用した事例の2つ目は、日清食品ホールディングスである。日清食品ホールディングスでは、優秀な人材を確保できても突然退職してしまうことがあった。退職者に理由を聞いてみたところ、ずっと1人で悩んでいたことが発覚し、しかもその事実を上司や人事は把握していなかったことがわかった。
そこで日清ホールディングスは、従業員1人ひとりとの細やかなコミュニケーションを取るために、パルスサーベイを開始したのである。上司と部下の1on1ミーティングであれば個人が特定されるものの、パルスサーベイであれば秘匿性が保たれる。
日清食品ホールディングスでは、1on1ミーティングとパルスサーベイの両方を活用しながら、エンゲージメントの向上を目指している。
参考:社員とのエンゲージメント向上を目指す。日清食品HDのPULSE SURVEY活用方法
3問を毎月、サイバーエージェント
パルスサーベイの活用事例3つ目は、サイバーエージェントである。サイバーエージェントでは、毎月3問の質問に答えさせることで、従業員のコンディションを把握している。1問目と2問目は毎月固定の質問となっており、個人やチームの今のコンディションを把握する内容になっているのだ。
3問目は状況によって設定できる特別質問となっており、役員とすり合わせを行いながら決めている。そのため、今従業員に聞いておきたいことや確認したいことを、その都度質問することでコンディションを把握しているのだ。
参考:サイバーエージェント流「社員がイキイキ働ける会社」のつくりかた。
まとめ
パルスサーベイとは、頻繁に行われる従業員調査のことである。週次や月次ごとに実施することで、従業員の今の状態を把握できるのだ。パルスサーベイを実施すれば、エンゲージメントの向上に役立てられたり、新入社員のオンボーディングに活用できたりする。
パルスサーベイにおいて質問項目を考える際は、従業員の負担とならないように簡単な内容を考えよう。数も5〜15問を目安にしておくと負担軽減につながる。今回紹介した活用事例を参考に、パルスサーベイの導入を検討してみるといいだろう。