パーソナルスペースとは、他人が侵入すると不快に感じる空間のことだ。個人によって広さが異なるため、慎重に距離を縮めていくことが重要である。この記事では、パーソナルスペースの基礎知識について解説する。必要性や仕事上での注意点も併せてチェックしよう。
目次
パーソナルスペースとは?広いと狭いの意味
パーソナルスペースとは、他人が入ってくると不快感を覚える空間のことである。まずは、パーソナルスペースの基礎知識を解説する。また、広いと狭いの意味を併せてチェックしよう。
パーソナルスペースとは
パーソナルスペースとは、他人が入ってくると不快に感じる空間のことだ。パーソナルスペースは、個人を取り囲むように存在しているものの、目には見えない空間であるため、周囲には理解されにくい。
また、パーソナルスペースは人それぞれによって範囲が異なるため、迂闊に入ってしまうと不快感を与えてしまい、拒否反応を示される場合もある。
例えば、男女においても異なるため注意が必要だ。男性の場合は、前方が広く、後ろが狭い傾向である。そのため、前から向かってくる人に対して警戒しやすいのが特徴だといえるだろう。一方、女性の場合は、自身を中心とした円形状にパーソナルスペースが広がっている。
年齢によってもパーソナルスペースは変化する。一般的に年齢が低ければ低いほど、パーソナルスペースが狭いといわれているのだ。赤ちゃんを思い出してみると、警戒心の低さがわかるだろう。
パーソナルスペースは12歳ごろから意識し始めて大きくなっていき、40歳ごろがピークだといわれている。
国籍や他人への依存度によっても変化するため、対人関係を築くときはパーソナルスペースについての理解を深めておくことが重要だといえるだろう。
パーソナルスペースが広いとは
パーソナルスペースが広いとは、他人との距離感が遠いことを指す。例えば、繊細で内向的な性格、大勢で行動するのが得意ではないといった特徴を持つ人は、パーソナルスペースが広いと判断できる。これらに該当する人は、気軽に他人と仲良くなれないため、コミュニケーションを取るのも一苦労する人もいるだろう。
そのため、パーソナルスペースが広い人と仲良くなるためには、少しずつ距離を縮めていくことが重要だといえる。いきなり相手の空間に侵入しないように注意しよう。
パーソナルスペースが狭いとは
反対に、パーソナルスペースが狭いとは、他人との距離感が近いことを指す。例えば、人付き合いが得意で友達が多いタイプの人は、パーソナルスペースが狭い人だと判断できるだろう。
パーソナルスペースの狭い人は、誰とでもすぐに仲良くなれる傾向がある。そのため、性別や年齢を問わず、誰とでも友達になれるだろう。
ただし、自分が持つパーソナルスペースが狭いが故に、他人のパーソナルスペースに侵入しやすいことに注意が必要だ。相手に不快感を与えてしまうと、その後の関係にも影響が生じる可能性も否定できない。そのため、相手のパーソナルスペースを尊重しつつ、距離を縮めていくのがおすすめである。
パーソナルスペース4つのカテゴリ
パーソナルスペースは、以下の4つのカテゴリに分けられる。
・ 密接距離
・ 個体距離
・ 社会距離
・ 公衆距離
密接距離とは、0~45cmまでの距離感のことである。会話だけではなく、スキンシップもできるため、恋人や家族といった親しい間柄の人が入れる空間といえるだろう。つまり、あまり親しくない人が密接距離に侵入すると、相手に強い不快感を与えるため注意が必要である。
個体距離とは、45~120cmまでの距離のことだ。手を伸ばすと触れ合える距離であることから、比較的親しい友人との間で保たれる距離だといえる。ただし、異性が個人距離に入ってしまうと、警戒されるかもしれない点に注意が必要だ。
社会距離とは、120~350cmまでの距離感のことである。テーブル越しの距離であるため、会社の同僚や上司といった仕事関係の人と話すときの距離感だと考えられる。また、比較的距離が離れているため、パーソナルスペースが広い人とも、接しやすいといえるだろう。
公衆距離とは、350cm以上離れた距離感のことだ。演説や講演会といった多数の人が集まるときの距離感だと考えられており、見ず知らずの相手と接しても不安を感じにくいだろう。また、距離が離れすぎているため、個人同士のやり取りは行いにくい。
なぜパーソナルスペースが必要なのか
次にビジネスにおける、パーソナルスペースの必要性を見てみよう。大きくは以下の3つを紹介する。
・ パーソナルスペースが浸食されるとストレスにつながる恐れ
・ 生産性の低下につながる恐れ
・ ハラスメントとなってしまう恐れ
パーソナルスペースが浸食されるとストレスにつながる恐れ
パーソナルスペースに無断で侵入されると、ストレスにつながる恐れがあるため注意が必要だ。特に、親しい間柄ではない場合、急にパーソナルスペースに踏み込まれてしまうと、相手に苦手意識を持つ人もいる。
相手にストレスを与えないためには、相手の性格や行動パターンを理解したうえで、距離感を少しずつ縮めていくことが重要である。一度、マイナスなイメージを抱かれてしまうと、挽回するのは容易ではない。そのため、相手との関係性を見極めながら、時間をかけて行動することが大切だ。
生産性の低下につながる恐れ
パーソナルスペースに無断で侵入すると、生産性の低下につながる可能性がある。パーソナルスペースへの浸食は、先述したとおり、ストレスの原因になるため、快適な仕事環境とはいえない。
例えば、「部署内で円滑な人間関係を築いて、仕事の成果を出したい」と考えている場合、無断で相手のパーソナルスペースに侵入すれば、良好な人間関係は得にくくなるだろう。
ほかにも、商談相手のパーソナルスペースに浸食すれば、相手が不快感を覚えて、うまく取引が進まない可能性も考えられる。そのため、仕事を効率よく行っていくうえでも、パーソナルスペースは必要だといえる。
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ハラスメントとなってしまう恐れ
急にパーソナルスペースに入ってしまうと、ハラスメントと判断される可能性がある。特に、相手が異性の場合は、慎重な行動が重要だといえるだろう。
例えば、仕事上で良好な関係を築けたからといって、プライベートでも遠慮なくパーソナルスペースに侵入していいわけではない。仕事とプライベートを混同して考えていると、ハラスメントといわれる原因ともなり得るため注意が必要だ。
ほかにも、上司が部下を指導するときに、あまりにも距離感が近いとハラスメントに感じられてしまうため、程よい距離を保つことが重要だといえるだろう。
オフィスでの注意点
仕事上での注意点は、オフィスレイアウトの工夫と関係性による座る位置の工夫である。それぞれの注意点を詳しく解説する。
オフィスレイアウトの工夫
オフィスレイアウトの工夫は、以下の3つである。
・ 十分な距離
・ パーテーションなど仕切り
・ コミュニケーションスペース
それぞれのポイントについて解説する。
十分な距離
オフィスレイアウトを考える際は、120cmのパーソナルスペースが確保できるレイアウトがポイントである。手を伸ばし合っても届かない距離であるため、ストレスを感じにくい状況で仕事を進められるだろう。
パーテーションなど仕切り
従業員の増加や会社のスペースの関係上、お互いのパーソナルスペースを確保できない場合は、パーテーションなどを活用して仕切るのもひとつの方法である。仕切りがあれば、距離が近くても、パーソナルスペースを維持しやすく、集中して仕事に取り組めるだろう。
コミュニケーションスペース
相手とコミュニケーションを取りながら仕事を進めたい場合は、120cmのパーソナルスペースよりも近い距離に座ってみよう。例えば、新規プロジェクトの立ち上げによって結成されたチームのメンバーと親密になりたい場合は、円卓を利用して仕事を進めるのがおすすめである。
パーソナルスペースに入ることで、心理的な距離感が近い状態で仕事を進められるため、コミュニケーションも取りやすくなる。しかし、先述したとおり、無断でパーソナルスペースに侵入すると警戒されてしまうため、相手の反応を見ながら行動することが大切だ。
関係性により座る位置の工夫(対面、横並び、直角)
相手との関係性に合わせて、座る位置を工夫するのがおすすめである。例えば、相手としっかりと向き合って話をしたい場合は、対面に座るのが有効だ。また、相手と共同作業を行う場合は、対面ではなく横並びに座ることで、スムーズに作業を進められるだろう。
ほかにも、雑談を交えながら仕事を進めたい場合は、テーブルの角を利用した直角に座るのがポイントである。お互いの視線がぶつかりにくいため、緊張感が和らぐ効果が期待できる。以上のように、相手との関係性によって座る位置を考慮すれば、より円滑に業務を遂行できるのだ。
まとめ
パーソナルスペースとは、他人が侵入すると不快感を覚えたり、拒否反応を示したりする空間のことである。目に見えない空間であるため理解されにくいものの、むやみに侵入すれば、その後の関係性にも影響を及ぼすため注意が必要である。
パーソナルスペースは、職場でも重要視すべき事柄だ。相手との関係性によって適切なオフィスレイアウトを配置したり、座る位置を工夫したりすることで、仕事の生産性にもつながるだろう。そのため、プライベートだけではなく、仕事を進めていくうえでもパーソナルスペースについて深く理解を深めることが大切だ。