■カタルシスとは?その語源
■カタルシス効果とは?
■日常生活におけるカタルシス効果の例
■ビジネスにおけるカタルシス効果の活用例
■カタルシス効果をビジネスで活かすポイント
■採用シーンや研修での応用
カタルシスとは何か? 語源と効果
ストレスの多い現代社会。
自分でもよくわからないまま悶々として元気が出ない、何となくやる気が出ない、何だか分からなけれど不安を感じる、怒りが収まらない、人に対する恨みの気持ちが消えない、など漠然とした不快感を持ったことがある人は多いのではないだろうか。
そんなときに、たまたま見た映画や読んだ小説が、まるで自分の苦しさや悲しさを代弁してくれていると感じることがある。
このように自分の中から澱を吐き出すような感覚が「カタルシス」だ。
カタルシスの効果を理解して活用することで、人は心が浄化されて精神的な緊張状態がほぐれるといわれている。
そこで、カタルシスとはなにか、どのような効果があるのかについて見ていこう。
カタルシスの歴史は古代ギリシャにまでさかのぼり、その語源はギリシャ用語の「kathar」だとされている。
「kathar」は、古代ギリシャで不浄を清める手段として用いられていた儀礼のことを示し、「排泄」「浄化」の意味合いを持つ言葉であった。
その後、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが、著書である「詩学」において、「悲劇はカタルシス(浄化)を達成する」と説いたことで、この悲劇論が転じて、カタルシスは現在のような「精神の浄化」という心理学的な意味で広く使われることとなった。
では、カタルシス効果は一体どのような内容を意味するのであろうか。
カタルシス効果とは「精神の浄化(カタルシス)により、今ある症状が改善されること」で、心の中にある不安や、不快な感情、怒りや、つらさ、などを開放することで気持ちを軽くする現象のことを指す。
カタルシスは心理学用語であるが、現在では「鬱積した感情が解放されること」を意味する言葉として、より一般的に使われるようになっており、近年ではビジネスの場でも、カタルシス効果をマーケティング手法の1つとして活用する企業が現れ始めている。
そこで本稿では、カタルシス効果について、日常生活における効果の具体例、採用活動や研修などに活かすための方法について解説していこう。
日常生活におけるカタルシス効果の例
最近は、長時間労働や睡眠不足、人間関係の問題など職場でのメンタルヘルス問題を抱える人が増えている。
また、日常生活においても恋愛問題や、家庭不和などでストレス状態にある人も多い。
そこで、日常生活におけるカタルシス効果の具体的な例を紹介しよう。
上手にカタルシス効果を使えば、どんよりした気持ちをスッキリさせることができるだろう。
1. 音楽を聴く
失恋をしたときや何かに失敗して落ち込んでいるとき、明るい歌を聞けば元気が出るのでは? と考える人もいるだろう。
しかし、カタルシス効果を狙うのであれば、明るい曲を聞くのは逆効果となるのだ。
たとえば、失恋をしたときには失恋ソングを聴くなど、悲しみに浸って、感情のままに涙を流してしまう方がカタルシス効果を得ることができる。
人間の心理には「同質の原理」があり、そのときの自分の気持ちに合ったもの聴くことで、心の中にある膿みが出やすくなり、精神的に良い方向に向かうことができると言われているのだ。
2. 映画を観る
映画を観るだけでもカタルシス効果を得られることがある。
よくあるのが、映画の登場人物と自分を重ね合わせることで、自分の中の問題が解決できたような気持ちになったり、なぜだかスッキリとした気持ちになることだ。
たとえば、ヒーローものの映画を観ることで、圧倒的に不利な状況や抑圧された状態から、最後に大逆転の勝利を収める様子を見ることで、観客はカタルシスを味わうことができる。
社会においては必ずしも正義が勝つことはなく、理不尽さを感じることが多くある。
したがって、正義が勝つ映画を見ることで、今まで経験した悔しい気持ちを晴らせたような気分になることができるのだ。
映画で爽快な気分になることもカタルシス効果と言えるだろう。
3. カラオケに行く
カラオケで思い切り歌うことでもカタルシス効果を得ることができる。
職場での失敗や人間関係のトラブル、失恋など何か嫌な気持ちになることがあったとき、友人とカラオケに行くよりも、1人でカラオケに行く方がストレス発散になることがある。
他人と一緒だと自分の好きな曲、歌いたい曲を思い切り歌えないこともあるからだ。
心の鬱憤は大きな声で叫んだり歌ったり、泣いたりすることで実質外に出ていく。
そのときの気分に任せて自分の好きな曲を選び、大声で歌い、歌詞や曲調と一体化することで、カタルシス効果を得られるはずだ。
4. 話を聞いてもらう
信頼できる人にじっくりと話を聞いてもらうことでもカタルシス効果を得ることができる。
しかし、話をしても興味がないような反応をされたり、否定されたりしては、かえって逆効果となるため、信頼できる人を選ぶ必要がある。
普段、言いたいことを我慢してばかりしていると、少しのことでイライラしやすくなってしまう。
そういった、普段であれば口に出せないことや、抑制している感情を言葉にして、それを受け止めてもらうことで、カタルシス効果を得られ、ストレスを軽減することができるだろう。
もし、話す相手が見つからない場合は、気持ちをノートなどに書き出してみたり、絵に描いて表現してみたりするだけでもカタルシス効果を得ることができる。
ビジネスシーンや採用活動、研修などに活かすには?
マーケティングや営業活動などビジネスの現場で、顧客との信頼関係を築くことができずに行き詰まることがある。
相手がこちらに対して心を開いてくれなければ、いくら施策を展開しても、力んで営業をしても、望んだ結果は得られない。
ここでカタルシス効果を活用すれば、顧客との距離が縮まり、より効果的な施策や営業活動が行えるようになるのだ。
そこで、ビジネスにおけるカタルシス効果の活用例、カタルシス効果をビジネスで活かすポイント、採用活動や研修などへの応用法を解説する。
まず、ビジネスにおけるカタルシス効果の活用例について見ていこう。
<ビジネスにおけるカタルシス効果の活用例>
1. 顧客との距離を縮めたいとき
ビジネスにおいて顧客との距離を縮めたい場合は、なるべく聞き手にまわり、顧客の悩みや不安を引き出すことに専念すると良い。
顧客は自分の悩みや不安を口にすることで、カタルシス効果によって気分が軽くなり、真摯に話を聞いてくれた営業担当者に対して好印象を抱く可能性が高いからだ。
「皆様のお話を伺っていると、〇〇について悩まれている方が多いようなのですが、△△様はいかがですか?」など、顧客が悩みや不安を吐露しやすい雰囲気作りを心掛けると良いだろう。
2. 販売を促進したいとき
商品やサービスの販売につなげたい場合にも、カタルシス効果を活用することができる。
前述したように、顧客の不安や悩みを真摯に聞くことで、営業担当者に対する顧客の警戒心は弱まるため、本音を引き出しやすい状態になる。
また、一貫性の原理も働くことで、「悩みを聞いてくれるこの人は、信頼できる人だ」という印象を持ってくれるはずだ。
もし、顧客が自分の求めているものや解決したい悩みについて言及したら、すかさず解決案として自社の商品・サービスを提案してみる。
より確実な販売促進につなげるためにも、「お客様が今抱えていらっしゃるお悩みは、すぐに解決されたいですよね?」などと質問してみると良いだろう。
次にカタルシス効果をビジネスで活かすポイントについて見ていこう。
<カタルシス効果をビジネスで活かすポイント>
1. 信頼関係を築くこと
カタルシス効果を活用するためには、顧客との間に信頼関係を築くことが大切である。
いくら高度な心理テクニックを用いたとしても、信頼を得ていない相手に悩みや不安を打ち明けてもらうことは難しいからだ。
信頼関係を築くためにも、顧客の話を聞く姿勢を意識し、話の内容に関心を持っていることが伝わるように、適度に相槌や質問を挟むようにする。
また、相手の言葉にオウム返しをすることで、ミラーリング効果を得られ、親近感を持ってもらいやすくなる。
たとえば、「〇〇に困っているんだよね」と言われたら「〇〇にお困りなのですね」などと返すことでも効果が期待できる。
2. 自己開示をする
相手から、より深い話を引き出すためには、まずこちらから自己開示をすることも重要だ。
先にこちら側の情報を話した後に質問をすることで、相手には無意識に「情報をくれたから、こちらも何か返すべきだ」という返報性の心理が働くのだ。
「私は山登りが趣味なのですが、〇〇様は何か趣味がおありですか?」など、まず自分の情報を提示してから相手に質問をすると関係の構築に役立つだろう。
3. 聞き上手になる
前述の活用例でも紹介したように、会話においては基本的に聞き手にまわるスタンスが大切だ。
相手の目を見ながら適度に相槌を打つなど、こちらが興味を持っていることを示すようにすると良いだろう。
また、「そうですよね」「おっしゃる通りです」など、相手のことを肯定する言葉をかけてあげることも効果的だ。
相手は、自分が抱えている心配や不安を率直に口にするだけで、カタルシス効果によって気持ちが楽になり、こちらに対して好意を持ちやすくなる。
また、カタルシス効果は採用シーンや研修でも応用ができる。
採用シーンの例としては、企業のビジョンを紹介するイメージ映像に、社会的なメッセージを込める、または、まだ言語化されていない労働に関する人々の漠然とした気持ちを、採用キャッチコピーとして発信することなどがあげられる。
それらに共感した求職者が集まれば、優秀な人材の獲得にもつながるだろう。
カタルシス効果を狙った研修では、参加者が自分の気持ちを他のメンバーに率直に伝える場を設けることで、自身の内面を解放することを促し、コミュニケーションの活性化やチームワークの向上を目指すという手法も有効だ。
ここまでカタルシス効果について解説をしてきた。
カタルシス効果を上手く活用することで、ストレスが軽減され、日常生活だけでなく、ビジネスシーンにおいても良い効果が期待できるだろう。
まとめ
・ストレスの多い現代社会では、漠然とした不快感を持ったことがある人は多くいるだろう。そんなときに、たまたま出会った映画や小説が、まるで自分の苦しさや悲しさを代弁してくれていると感じることがある。このように自分の中から澱を吐き出すような感覚が「カタルシス」だ。カタルシスの語源は古代ギリシャ用語の「kathar」だとされており、「排泄」「浄化」の意味合いを持つ言葉であったが、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの著書「詩学」の中の悲劇論が転じて、カタルシスは現在のような「精神の浄化」という心理学的な意味で広く使われることとなった。
・カタルシス効果とは、「精神の浄化(カタルシス)」により、心の中にある不安や、不快な感情、怒りや、つらさ、などを開放することで気持ちを軽くする現象のことを指す。カタルシスは心理学用語であるが、現在では「鬱積した感情が解放されること」を意味する言葉として、より一般的に使われるようになっており、近年ではビジネスの場でも、カタルシス効果をマーケティング手法の1つとして活用する企業が現れ始めている。
・最近は、職場の労働環境や人間関係の問題、日常生活での家庭不和や恋愛問題など、さまざまな理由によってメンタルヘルス問題を抱える人が増えている。上手にカタルシス効果を使えば、どんよりした気持ちをスッキリさせることができるだろう。そこで、日常生活におけるカタルシス効果の具体的な例を紹介しよう。1.音楽を聴く、2.映画を観る、3.カラオケに行く、4.話を聞いてもらう。
・ビジネスにおけるカタルシス効果の活用例は次のようなものがあげられる。【1.顧客との距離を縮めたいとき】顧客との距離を縮めたい場合は、聞き手にまわる。顧客は自分の悩みや不安を口にすることで、カタルシス効果によって気分が軽くなり、真摯に話を聞いてくれた営業担当者に対して好印象を抱く可能性が高い。【2.販売を促進したいとき】顧客の不安や悩みを真摯に聞くことで、営業担当者に対する顧客の警戒心は弱まり、本音を引き出しやすい状態になるため、結果としてニーズに合わせた提案が可能となる。
・カタルシス効果をビジネスで活かすポイントは次のとおりだ。【1.信頼関係を築くこと】いくら心理テクニックを用いたとしても、信頼を得ていない相手に悩みや不安を打ち明けてもらうことは難しいからだ。【2.自己開示をする】先にこちら側の情報を話した後に質問をすることで、相手には返報性の心理が働くため、質問をしやすくなる。【3.聞き上手になる】相手は、自分が抱えている心配や不安を率直に口にするだけで、カタルシス効果によって気持ちが楽になり、こちらに対して好意を持ちやすくなる。
・採用シーンでの応用例としては、企業のビジョンを紹介する映像に、社会的なメッセージを込める、または、まだ言語化されていない労働に関する人々の漠然とした気持ちを、採用キャッチコピーとして発信することなどがあげられる。それらに共感した求職者が集まれば、優秀な人材の獲得にもつながるだろう。カタルシス効果を狙った研修の例としては、参加者が自分の気持ちを他のメンバーに率直に伝える場を設けることで、自身の内面を解放することを促し、コミュニケーションの活性化やチームワークの向上を目指す。