2021.8.30

テレワークとは?課題や調査から見る多様化が進む働き方を解説

読了まで約 7

■テレワークとは?

■リモートワーク、在宅勤務との違い

■テレワーク導入の企業側、労働者側のメリット

■テレワーク導入の企業側、労働者側のデメリット

■日本におけるテレワークの実際

■企業の業況感と多様な働き方導入の関連

テレワークとは?リモートワーク、在宅勤務との違いをおさらい

「緊急事態宣言」のもと、政府の再三にわたる「出勤者7割減」の要請にもかかわらず、平日の朝になればターミナル駅は多くの通勤者で溢れている。
出勤しない働き方として数年前から推奨されてきたテレワークも、コロナ対策として一時普及したものの、最近になって取りやめてオフィスへの出勤という形態に戻す企業も出ている。
一方で、テレワークをはじめとした多様な働き方を導入することは企業のレジリエンスを高め、事業継続計画(BCP)の策定にも有効だと言われている。

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では、そもそもテレワークとはなんなのか?
その目的や定義を周辺の概念とともにおさらいしておこう。
テレワーク」とは、「tele=離れたところ」と「work=働く」を組み合わせた造語であり、「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と国が定義している。
また、テレワークと似たような言葉に「リモートワーク」や「在宅勤務」がある。
「リモートワーク(remote-work)」は、カフェやコワーキングスペース、さらには地方など離れた場所で働くことを意味しており、そこには「時間」の概念は含まれていない。
さらに、テレワークとの1番の違いとしてあげられるのは、テレワークという言葉は内閣府が定義を定めているのに対して、リモートワークには明確な定義がされていないことにある。
そのため、公文書においてはリモートワークという言葉は用いられず、テレワークという言葉が使われる傾向にある。
「在宅勤務」は、文字通り自宅で会社の業務を行う勤務形態のことを指し、働く場所が限定されている点がテレワークとは異なる。
新型コロナウイルスの流行によって必要に迫られてテレワークを導入した企業も多かったものの、その導入によって、通勤などに使っていた時間の有効活用や効率化が可能となり、労働者は多様な働き方やプライベートの充実を実現させることができ、企業は優秀な人材の確保や生産性の向上を図ることができるため、労働者と企業、双方にとってプラスになる働き方であると言える。
そこで本稿では、テレワークについて、そのメリットやデメリット、導入の実際と多様な働き方の効用について解説をしていこう。

関連記事:コロナで企業のテレワーク運用はどのように変化したのか?更に効果的なテレワークの在り方とは

テレワークのメリットとデメリット

テレワーク導入のメリット、デメリットは企業側、労働者側の双方から見ることができるので、これを整理しておく。
デメリットについてはその対策も考察し、特に企業側で問題とされることが多い、労務管理や人事評価への課題についてもその対策を解説しよう。
まずは、テレワーク導入のメリットについて企業側、労働者側、それぞれの視点で見ていこう。

<企業側のメリット>
1. 生産性の向上を期待できる
テレワークを導入することにより、業務効率化が期待できる。
オフィスへの移動時間などを削減することにより生み出された時間を顧客対応に充てることができたり、オフィス以外の場所で勤務することで、電話や来客応対などがなくなるため、業務を中断せずに集中して働くことができ、結果として生産性の向上が可能になる。

2. 優秀な人材の確保や離職防止につながる
ICT・クラウドサービスの活用は、ワークライフバランスの向上に貢献する。
多様で柔軟な働き方をすることができる企業は、今まで条件面で就業を諦めていた優秀な人材の目に留まりやすく、即戦力となる人材を確保することが期待できる。
また、通勤に必要だった時間を、家族と過ごす時間に利用することができれば、育児や介護などの理由で、退職・休職を検討していた労働者の離職を防止することができる。

3. コストの削減ができる
ICT・クラウドサービスを活用してテレワークを推進することで、賃料をはじめとしたオフィスの管理にかかる費用や、労働者への交通費などコストの削減をすることが可能となる。

<労働者側のメリット>
1. 時間の有効活用ができる
テレワークによって、労働者はより柔軟な働き方ができるようになる。
通勤時間の削減によってプライベートの時間が増えるため、家族や友人と過ごしたり、趣味を楽しんだり、人生をより充実させることができる。
また、睡眠時間をしっかりと確保することができるため、健康的な生活を送ることもできるだろう。

2. ライフステージに合わせて働くことができる
働き続けていく中では、結婚や出産など、さまざまなライフステージの変化が生じてくる。
テレワークは時間をはじめとした働き方の自由度が高いため、プライベートと仕事の両立がしやすくなる。
育児はもちろん、家族の介護や、病気やケガによって自宅療養が必要となったときにも、仕事を辞めずに続けていく選択ができるのだ。

次はデメリットについて見ていこう。

<企業側のデメリット>
1. 労務管理が難しい
テレワーク下では、社員の仕事ぶりを直接観察することができないため、業務の進捗確認や時間の管理など、労働実態を企業側で把握することが困難となる。
対策としては、業務の進捗管理をスムーズに行うためのプロジェクト管理ツールや、オフィス以外の場所からでもウェブブラウザやスマホアプリを通じて勤務時間の管理を行える勤怠管理システムなど、各種クラウドサービスを活用して労務管理を行うといったやり方がある。

関連記事:テレワーク・リモートワーク時代のチームビルディングを進めるために大切なこととは

2. 人事評価が難しい
労働者が勤務している様子を直接確認することができない、テレワーク時の評価基準が不明確である、といったような理由から、多くの企業がテレワーク時の人事評価の難しさを課題としてあげている。
対策としては、ウェブ会議ツールなど利用して面談を行うことで、より適切な評価を下すための機会を設ける、テレワーク時に対応した評価基準へ制度を変更することなどがあげられる。

関連記事:
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3. 情報漏えいのリスクが高まる
テレワークでは、従業員が社外で業務を行うため、機密情報が第3者に触れてしまうリスクが高まる。
情報漏えいは企業価値を大きく損ねる可能性もあるため、セキュリティソフト導入の徹底や、情報管理に関するルールの策定、従業員への情報セキュリティに関する教育の実施などを行う必要がある。

<労働者側のデメリット>
1. コミュニケーションが困難となる
オフィスで勤務している場合には、ちょっとした疑問や相談について周囲の人に気軽に尋ねることができたが、テレワークではそういった状況下にないため、周囲とのコミュニケーション不足を懸念する声も多く聞かれる。
テレワークの導入前に、チャットツールを用意するなど社員同士が気軽にコミュニケーションが取れるような方法を、きちんと確保しておく必要がある。

関連記事:テレワークで効果的なコミュニケーションは「雑談」!鉄板の雑談ネタ10選

2. オンとオフの切り替えが難しい
テレワークは、プライベート空間である自宅で仕事をすることも多々あるが、この場合、仕事とプライベートの区別がつきにくくなることが懸念される。
オフィス出勤時と同じ時間に起床して生活リズムを整える、パジャマのまま仕事をせず着替えて仕事モードのスイッチをオンにする、休憩時間にはしっかりと休息をとり、退勤時間できっちり仕事を切り上げるようにする、など社員にオンとオフの切り替えのコツを伝えて実践してもらうと良いだろう。

テレワーク導入の実際と多様な働き方の効用

中小企業におけるテレワークの実施状況や課題などを把握するために2021年5月に実施した、東京商工会議所の「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」によると、東京23区内の中小企業のテレワークの実施率は38.4%であり、前回緊急事態宣言時(2021年1月~3月)に比べ、27.8ポイント減少している。

参考:東京商工会議所「中小企業のテレワーク実施状況に関する調査」

また、2021年7月発表、日本生産性本部による第6回「働く人の意識調査」では、2020年7月調査以降、テレワーク実施率は変わらず2割程度で推移しているものの、テレワーカーの週当たり出勤日数は増えてオフィス回帰が進んでいるという結果も出ている。

参考:日本生産性本部「第6回『働く人の意識調査』」

一方、今年7月に発表された日経リサーチとHR総研による「企業の発展と社員の幸せを実現する、ニューノーマルな働き方」に関するアンケートの調査結果では、テレワークを含む「多様な働き方」の重視度が「上がった」という回答が6割を占め、その役割の大切さは認識されているようだ。(ProFuture株式会社/HR総研

■「多様な働き方」の重視度

グラフ:「多様な働き方」の重視度

同調査からコロナ禍における企業の業況感と多様な働き方導入の関連を紐解いてみよう。
コロナ禍以降の業況については、「変化なし」が34%で最も多く、次いで「悪化したが回復傾向にある」が32%、「悪化し、回復していない」が17%などとなっている。

■コロナ禍以降の業況

グラフ:コロナ禍以降の業況

また、コロナ禍での業況感別に「多様な働き方」の重視度について、「重視している」の割合を見ると、良化している企業の回答は50%、やや良化している企業は24%、次いで悪化したが、回復傾向にある企業が23%などで、変化なしの企業の10%より高い割合となっている。

■コロナ業況別 「多様な働き方」の重視度

グラフ:コロナ業況別「多様な働き方」の重視度

この結果から、「多様な働き方」の重視度は、企業のレジリエンス力に関係していることが推測される。
多様な働き方の中でも、「時間、場所に関わる働き方の多様化」に関わる導入制度・取組みの内容を、コロナ業況別に見てみると、すべての企業群において「テレワークの導入」が最も多く、コロナ禍の強い影響が伺える。
また、コロナ禍において業況が良化した企業群(「良化している」と「やや良化している」企業群)では、「多様な勤務時間の導入」と「柔軟な勤務制度の導入」が高い一方、悪化した企業群(「悪化したが、回復傾向にある」と「悪化し、回復していない」企業群)では、「残業時間の削減」や「有給休暇の消化促進」に取り組む割合が、比較的高くなっている。
この結果から、コロナ業況が良化している企業では、働き方のスタイルの自由度を高める制度導入を進めている傾向が高いことが推測できる。

■コロナ業況別 「時間、場所に関わる働き方の多様化」の導入制度・取組み

グラフ:コロナ業況別「時間、場所に関わる働き方の多様化」の導入制度・取組み

次に、「時間、場所に関わる働き方の多様化」の取組み等によるメリットをコロナ業況別に見ると、「コロナ感染リスクの低減」が最も多く、コロナ禍における「テレワークの導入」の目的として、当然の結果となっているが、それ以外のメリットを見ると、「生産性の向上」、「社員満足度の向上」、「エンゲージメントの向上」などが、良化した企業群で多くあげられている。
つまり、コロナ禍において業況が良くなっている企業ほど、多様な働き方を取り入れ、そのメリットを享受しているということだ。

■コロナ業況別 「時間、場所に関わる働き方の多様化」取組み等によるメリット

グラフ:コロナ業況別「時間、場所に関わる働き方の多様化」取組み等によるメリット

テレワークは、今や日本の企業にとって、感染症予防の観点だけでなく、さまざまなメリットを期待できる重要な働き方のひとつに位置づけられている。
メリットやデメリットなどをしっかりと理解し、自社に合ったかたちで取り入れていくことが望ましいだろう。

まとめ

・出勤しない働き方として数年前から推奨されてきたテレワークも、コロナ対策として一時普及したものの、最近になって取りやめてオフィスへの出勤に戻す企業も出てきているが、一方で、テレワークをはじめとした多様な働き方を導入することは企業のリジリエンスを高め、事業継続計画(BCP)の策定にも有効だと言われている。「テレワーク」とは、「tele=離れたところ」と「work=働く」を組み合わせた造語であり、「ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」と国が定義している。

・テレワークと似たような言葉に「リモートワーク」や「在宅勤務」がある。「リモートワーク(remote-work)」は、カフェやコワーキングスペースなど離れた場所で働くことを意味しており、そこには「時間」の概念は含まれていない。また、テレワークという言葉は内閣府が定義を定めているのに対して、リモートワークには明確な定義がされていないことにも違いがある。「在宅勤務」は、文字通り自宅で会社の業務を行う勤務形態のことを指し、働く場所が限定されている点がテレワークとは異なる。

・テレワーク導入の企業側、労働者側、それぞれのメリットは次のとおりだ。<企業側のメリット>1.生産性の向上を期待できる、2.優秀な人材の確保や離職防止につながる、3.コストの削減ができる。<労働者側のメリット>1.時間の有効活用ができる、2.ライフステージに合わせて働くことができる。

・テレワーク導入の企業側、労働者側、それぞれのデメリットは次のとおりだ。<企業側のデメリット>1.労務管理が難しい、2.人事評価が難しい、3.情報漏えいのリスクが高まる。<労働者側のデメリット>1.コミュニケーションが困難となる、2.オンとオフの切り替えが難しい。これらの課題については、それぞれ対策が必要となる。

・東京商工会議所の調査結果によると、テレワークの実施率は66.2%であり、昨年の緊急事態宣言時と比較して1.1ポイント下落している。また、日本生産性本部の調査では、テレワーク実施率は変わらず2割程度で推移しているものの、テレワーカーの週当たり出勤日数は増えてオフィス回帰が進んでいるという結果も出ている。一方で、今年7月に発表された日経リサーチとHR総研によるアンケートの調査結果では、テレワークを含む「多様な働き方」の重視度が「上がった」という回答が6割を占め、その役割の大切さは認識されているようだ。

・日経リサーチとHR総研によるアンケートの調査結果を見ると、コロナ禍以降の業況については、「変化なし」が34%で最も多く、コロナ業況別に「多様な働き方」の重視度について、「重視している」の割合を見ると、良化している企業の回答は50%、やや良化している企業は24%と、変化なしの企業の10%より高い割合となっており、「多様な働き方」の重視度は、企業のレジリエンス力に関係していることが推測される。また、コロナ禍において業況が良化した企業では、働き方のスタイルの自由度を高める制度導入を進めている傾向が高いことがわかった。「時間、場所に関わる働き方の多様化」の取組み等によるメリットをコロナ業況別に見ると、「コロナ感染リスクの低減」以外のメリットは、「生産性の向上」、「社員満足度の向上」、「エンゲージメントの向上」などが、良化した企業群で多くあげられている。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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