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2025.3.10
「エフェクチュエーション」は、インド人経営学者サラス・サラスバシー氏が提唱した、卓越した起業家に共通する意思決定プロセスや思考方法を体系化した市場創造の実行理論である。この理論は、単に起業家だけでなく、企業内で新製品開発や新規事業立ち上げに携わる人々にとっても有益な知見を提供している。
サラスバシー氏の研究によると、優れた起業家の89%がエフェクチュエーションの理論を実践している。この高い割合は、エフェクチュエーションが実際のビジネス現場で有効であることを示唆している。
エフェクチュエーションが注目を集めている理由の一つは、これまで抽象的に語られることの多かった起業家の特性を、具体的かつ学習可能なメソッドとして確立したことにある。従来、起業家の資質は生まれつきのものや環境に左右されると考えられていたが、エフェクチュエーションは、誰もが後天的に身につけられる思考プロセスとして提示されている。
さらに、エフェクチュエーションは従来のビジネスアプローチとは異なる方法論を提示している。一般的な目標設定型のアプローチではなく、現在利用可能な手段から出発し、そこから新たな可能性を創造していくという逆転の発想を提唱しているのだ。この新しい視点は、特に不確実性の高い現代のビジネス環境において、イノベーションを生み出す有効な手段として評価されている。
エフェクチュエーションの概念は、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる現代の不安定なビジネス環境下で、特に重要性を増している。予測困難な状況下でも新たなビジネスを創造できる起業家の思考法として大きな注目を集めているのだ。
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現代社会は、VUCA時代と呼ばれ、社会やビジネスの未来予測が困難になっている。
このような不確実性の高い環境下では、従来の方法だけでは市場へのアプローチに限界があることは明らかだ。
そこで注目を集めているのが、「エフェクチュエーション(Effectuation)」という新しい概念である。エフェクチュエーションはインド人経営学者のサラス・サラスバシー氏が提唱した理論で、優れた起業家に共通する意思決定プロセスや思考を体系化した市場創造の実行理論だ。
サラスバシー氏の研究によると、優れた起業家の89%がエフェクチュエーションの理論を実践している。しかし、この理論は起業家だけでなく、企業内で新製品やサービスを開発する人や新規事業の立ち上げに携わる人にとっても有益だ。
エフェクチュエーションが注目されている理由は主に2つある。
これまで抽象的に説明されることが多かった起業家の特性を、誰もが学習可能なメソッドとして確立した。
最初に目標を設定するのではなく、今ある手段から新たな可能性を創造していくという、従来とは異なるアプローチを提示している。
このように、エフェクチュエーションは、VUCA時代における企業のイノベーション創出に必要不可欠な概念として、今後さらに注目を集めていくと考えられる。従来のアプローチとの違いや具体的な原則については、以降のセクションで詳しく解説していく。
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エフェクチュエーションが注目を集めている背景には、従来のアプローチとは異なる新しい視点を提供している点が挙げられる。
これまで、特に大企業を中心に採用されてきたのは「コーゼーション(Causation)」と呼ばれる目標設定型の逆算的アプローチだった。このアプローチでは、「年間売上20億円」や「事業拡大」といった具体的な目標をまず設定し、それを達成するための最適な手段を後から検討していく。
コーゼーションは、将来をある程度予測できる環境下では効果的な方法である。しかし、VUCA時代と呼ばれる現代のように、不確実性が高く将来の予測が困難な状況下では、その有効性に疑問が投げかけられている。
そこで注目されているのが、エフェクチュエーションという新たな問題解決型アプローチだ。このアプローチは、コーゼーションとは対極的な考え方を採用している。エフェクチュエーションでは、手持ちの手段から出発し、それらを活用して新しいゴールを見出していくという方法を取る。
コーゼーションとエフェクチュエーションの違いは、思考の出発点にも表れている。
コーゼーションでは「目的」を達成するために「自分は何をすべきか?(What should I do?)」と考えるのに対し、エフェクチュエーションでは「自分は何ができるか?(What can I do?)」という観点から思考を始める。
エフェクチュエーションのアプローチでは、誰もが持っている「3つの資源」を洗い出すことから始める。これらの資源は、自分が今すでに持っている手段を明確にするために重要な要素となる。
具体的には、以下の3つの資源に焦点を当てる。
1.自分が誰であるのか?(特質、能力、属性)
2.何を知っているのか?(教育、専門性、経験)
3.誰を知っているのか?(社会的ネットワーク)
このプロセスを通じて、<資源を洗い出す⇒行動する⇒他者と繋がることで相互作用が働き新たなものを生み出す>というエフェクチュエーション的なサイクルが形成される。このサイクルを回すことで、当初は想像もできなかった可能性を見出すことができるのだ。
ただし、エフェクチュエーションとコーゼーションは、どちらか一方が常に優れているというわけではない。新規事業の立ち上げや、0から1を生み出すような革新的なプロジェクトにはエフェクチュエーションが適している一方で、既存事業の拡大や1から10へのスケールアップにはコーゼーションが有効とされている。つまり、状況や目的に応じて適切なアプローチを選択し、使い分けていくことが重要なのである。
起業家やイノベーターに特定の能力や属性は存在しないため、自分自身の特徴や独自の魅力を明らかにして、それを利用する。各個人が持つユニークな性質や才能、経験から得た技能などを、ビジネスの創造や発展に活かすことが重要である。
これらの個人的な要素は、他者との差別化を図る上で大きな強みとなり得る。自己分析を通じて自身の強みを把握し、それをビジネスの中核に据えることで、独自性のある価値提供が可能となる。
個人が持つ知識や経験の内容や量は、それぞれの人生によって異なるため、同じスタートや環境でのベンチャーでもゴールは違ったものになる。これは、個人の独自性を活かすことの重要性を示している。
たとえば、同じ業界で起業する場合でも、ある人は特定の技術に精通しているかもしれないし、別の人は幅広い業界知識を持っているかもしれない。こうした個人の特性が、新しいビジネスの方向性や成功の可能性を左右する要因となる。
新しい取り組みを始めるときに最大の資源となるのは、自身が持っている人脈だ。
直接的な知り合いである家族や友人、他者を通じて繋がった人々などがあげられ、その人たちが持つ手段を、自らの手段に加えることも可能であろう。また、ビジネスパートナーや取引先、業界内の知己なども重要な社会的ネットワークの一部として考えられる。
これらの人的つながりを活用することで、自身の持つリソースを大きく拡張し、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性が広がるのである。
前項で紹介したように、手持ちの手段からスタートし、それらを使って何ができるかを考える、というエフェクチュエーションは、以下の五つの原則から構成される。これらの原則は、不確実性の高い環境下で新たな価値を創造するための指針となる。各原則は互いに関連し合い、全体として効果的な意思決定と行動のフレームワークを形成している。順番に紹介していこう。
エフェクチュエーションの5つの原則は、それぞれが独立しているわけではなく、相互に補完し合う関係にある。これらの原則を適切に組み合わせることで、起業家や新規事業担当者は、予測困難な状況下でも柔軟かつ効果的に行動することができる。また、これらの原則は、大企業における新規事業開発やイノベーション創出にも応用可能であり、VUCA時代における経営戦略の重要な要素として注目されている。
新しい方法ではなく既存の手段を用いて、新しい何かを生み出すこと。この原則は、目標やプランによって手段を選択する目標設定型アプローチとは異なり、企業や組織がすでに保有している人材のスキルや技術力、ノウハウ、人脈などの手段を用いた問題解決型のアプローチを行う。
優れた起業家は、わずかな可能性に過ぎなかったものからでもビジネスチャンスを生み出すことができるのだ。この原則は、既存のリソースを最大限に活用し、新たな価値を創造することを重視している。例えば、社内の技術力や人材の強みを見直し、それらを組み合わせることで新製品や新サービスを開発するといったアプローチが考えられる。
また、この原則は、リスクを最小限に抑えつつ新しいビジネスを展開する方法としても有効だ。なぜなら、すでに手元にある資源を活用するため、新たな投資や大きな変更を必要としないからである。
仮に損失が生じても致命的にはならないコストを予め設定すること。従来のように、将来期待できる利益をベースに戦略を練るのではなく、どこまでの損失であれば許容できるのかを決めておき、それを上回らないように行動する。
大きなリターンに魅力を感じる人も多いが、リターンが大きければその分リスクも大きくなる。優秀な投資家は、はじめから巨額の投資を行うのではなく、リスクの小さな少額投資から始め、すぐに切り替えることができるような小さな失敗を重ねて学習することで次のプロセスへと進んでいくのだ。
この原則は、新規事業や起業において特に重要である。なぜなら、不確実性の高い環境下では、予測通りに事業が進むことは稀だからだ。許容可能な損失を設定することで、過度なリスクを取ることなく、柔軟に方向転換や撤退の判断ができるようになる。また、この考え方は、失敗を恐れずに挑戦する姿勢を促進し、イノベーションを生み出す土壌を作り出すことにもつながる。
クレイジーキルトの原則は、多様なステークホルダーとの協力関係を築き、共に目標に向かって進んでいく考え方である。この原則では、顧客、競合他社、協力会社、従業員など、ビジネスに関わる様々な主体を潜在的なパートナーとして捉える。
優れた起業家は、一見すると競合相手と思われる企業でさえも、協力可能なパートナーとして見なす柔軟な姿勢を持つ。このアプローチにより、予期せぬシナジー効果が生まれ、新たなビジネスチャンスが創出される可能性が高まる。
マーケティングの観点からも、クレイジーキルトの原則は有効である。多様な人々との出会いを通じて、高いポテンシャルを持つユーザーを発見し、そのニーズに合わせた商品やサービスのプロトタイプを提供することができる。これにより、急速に変化する市場環境や競合状況に柔軟に対応することが可能となる。
また、この原則は、リソースの共有や相互補完的な関係構築にも役立つ。それぞれのパートナーが持つ強みを活かし、弱みを補完し合うことで、単独では達成困難な目標も実現可能になる。
クレイジーキルトの原則を実践することで、企業は予測不能な時代においても、柔軟かつ強固なビジネスネットワークを構築し、持続可能な成長を遂げることができるだろう。
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アメリカのことわざに「When life gives you lemons, make lemonade.」というものがあり、これは「人生がレモンを与えたときには、レモネードを作りなさい。」という意味だ。
レモネードの原則はこのことわざのように、使い物にならない欠陥品でも工夫を凝らして、新たな価値を持つ製品へと生まれ変わらせるという考え方である。優秀な起業家は、ぱっと見た限りでは失敗作に思えるものでも、視点を変えたりポジティブな捉え方をすることによって、新しい製品のアイデアにつなげることができるのだ。
エフェクチュエーションでは現場の社員やリーダー層も含め、失敗を成功に繋げる行動を重要視している。この原則は、予期せぬ出来事や障害を、むしろチャンスとして捉え直す柔軟な思考と行動を促す。
つまり、ビジネスにおける「レモン」とも言える問題や課題を、創造的に解決し、新たな価値を生み出す「レモネード」へと変換する力を養うことを目指している。
先述の4つの原則を網羅した原則でもあり、状況に応じて臨機応変な行動をすること。常に数値を確認し臨機応変な対応をするパイロットのように、不測の事態に備え、外部環境の変化に対して柔軟に行動することが重要だ。
将来は自分たちで変えることができるという世界観を意味しており、未来は発見されたり、予測されたりするものではなく、ビジネスの実践者自らの戦略によって築き上げられていく、という姿勢の考え方だ。この原則は、起業家や新規事業担当者が、不確実な環境下でも主体的に行動し、自らの手で未来を創造していくことの重要性を強調している。
激変する市場や予測不能な領域で高い効果を発揮するエフェクチュエーション。不確実性の高いVUCA時代である現代において、状況を臨機応変に判断しながらゴールを目指すこの概念は、これからの時代に企業がイノベーションを起こすための経営戦略としてますます注目を集めていくだろう。
さらに、この原則は組織全体の思考様式としても活用でき、従業員一人ひとりが主体的に行動し、変化に適応していく組織文化の醸成にも寄与すると考えられる。
エフェクチュエーションは、VUCA時代の現代において注目を集めるアントレプレナーシップの新たな潮流である。インド人経営学者サラス・サラスバシー氏が提唱したこの理論は、優れた起業家に共通する意思決定プロセスや思考を体系化した市場創造の実行理論であり、個人の起業家だけでなく、大企業の新規事業開拓にも適用可能な概念として評価されている。
エフェクチュエーションが注目される理由の一つは、これまで一般化が困難とされていた起業家の思考プロセスを体系化し、誰もが学習可能なメソッドとして確立した点にある。現代の成功する起業家の特徴として、目標設定よりも既存の手段から新たな可能性を創造するアプローチが挙げられる。
従来の目標設定型アプローチであるコーゼーションとは対照的に、エフェクチュエーションは手持ちの手段から新しいゴールを発見する問題解決型アプローチである。不確実性の高いVUCA時代において、この新しいアプローチの有効性が認識されている。
エフェクチュエーションでは、「自分は何ができるか?」という観点から、3つの資源(特質・能力・属性、教育・専門性・経験、社会的ネットワーク)を洗い出す。これらの資源を基に、新たな可能性を探索していく。
エフェクチュエーションは5つの原則で構成されている。すなわち、手中の鳥の原則、許容可能な損失の原則、クレイジーキルトの原則、レモネードの原則、飛行機の中のパイロットの原則、である。これらの原則を実践することで、不確実性の高い環境下でも効果的にイノベーションを創出することが期待される。エフェクチュエーションは、今後の経営戦略において重要な役割を果たすと考えられる。
ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。
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