2021.5.14

シナジー効果とは?ビジネスで注目される理由と具体的な成功例

読了まで約 6

■VUCA時代に重要視される事業課題の解決方法とは

■「1+1」ではなく「1+1+α」となる「シナジー効果」

■シナジー効果の3つの種類とメリット

■「M&A」などでシナジー効果を得る場合の注意点

■シナジー効果の成功事例と失敗事例

シナジー効果がビジネスの現場で注目される背景とは?

VUCA時代と呼ばれる現代社会において、消費者のニーズはますます多様化・複雑化し、企業の価値提供に対するハードルは高まり続けている。
しかも、製品やサービスの創出と改善に要求されるスピードは日に日に速まっているため、経営の効率化や新たな価値を生み出すための努力をなくして企業の成長と存続はありえないだろう。
こうした状況を背景に、ビジネスの現場では「シナジー効果」による事業課題の解決方法がますます重要視されている。
「シナジー効果」とはいわゆる相乗効果のことで、ビジネスシーンにおいては複数の企業あるいは事業部門などが共同することで「各々の力の和の効果が正確な合計の数字よりも上回ること」を意味する言葉である。
要するに、互いに協力することで個別に活動した時よりもいい結果を出す状態を指す。
「1+1」ではなく、「1+1+α」となるシナジー効果は、単純に算出される数字より大きな効果を生み出すことができるため、生産性や質の向上など、業務の効率化の面においての成果が期待できるのだ。
シナジー効果によって企業の全体最適化や効率化を図ることは、今後も続いていくであろうVUCA時代で、企業がより高い成果を発揮しつつ生き残っていくために重要な鍵となるだろう。
本稿では、シナジー効果によるメリットや具体的な成功と失敗例について紹介していこう。

シナジー効果の種類によるメリットと手法

シナジー効果には「事業シナジー」「財務シナジー」「組織シナジー」の3種類があり、得られるメリットも種類によって異なる。
まずは、それぞれの種類についての概要とメリットを紹介していこう。

<シナジー効果の3つの種類とメリット>
1. 事業シナジー
複数の企業・組織が提携することで実現する、事業推進に対して働くシナジー効果である。
提携することで、新たな価値の創造や生産性の向上を見込める。
得られるメリットは「コスト削減」「スケールメリット」「人材獲得」があげられる。
・ コスト削減:企業や組織の統合により各事業の部門や投資先など重複している箇所の見直しやカット、削減を行うことができる。
・ スケールメリット:企業規模の拡大によって、1回の生産量を増やすことで仕入れや生産の効率化を図り、純利益を増やすことができる。
・ 人材獲得:複数の企業や組織が連携して人材の募集と獲得を行うことで優秀な人材の確保につながり、人事面が活性化する。
たとえば、専門性の高い人材を確保することによって、新たな技術やノウハウを企業にもたらし、多角的な視点を持つ人材を確保することで現在抱えている課題を解決するヒントや方法を得ることができる。また、企業内に新しい風を吹かせることでイノベーションが起こりやすい企業風土の形成が期待できる、などが人材獲得のメリットとしてあげられる。
2. 財務シナジー
お金や税金に対して働くシナジー効果であり、主にM&Aにおいて得られる効果である。
得られるメリットは「余剰資金活用」「節税対策」があげられる。
・ 余剰資金活用:合併や買収を行うことで増加した余剰資金を有効活用することができる。
今後成長が見込めるベンチャー企業などに投資を行う、人材確保のために資金を使うことで、結果的にそれがプラスとなって返ってくる可能性が期待できる。
・ 節税対策:企業のM&Aにおいて、繰越欠損金などの債務を受け継いで自社に計上することで利益額の圧縮ができ、節税効果が見込める。
3. 組織シナジー
別々の企業や組織が協働関係を築くことで、1つの組織として得られるシナジー効果である。
チームワークのよい組織では互いに切磋琢磨し、短所を補いながら長所を活かしていくことができるため、「生産性の向上」「業務の効率化」「モチベーション向上」などのメリットが期待できる。
・ 生産性の向上:互いに協力して、アイデアを出し合ったり役割分担を行うことでそれぞれが個別で活動する以上の実力を発揮することができ、生産性の向上につながる。
・ 業務の効率化:互いに切磋琢磨できる環境に身を置くことで個々のレベルが上がり、全体のパフォーマンスも向上するため効率的に利益を生み出すことが期待できる。
効率化の一例として、企業内で別々に存在した複数の事業部門を集約し、共同で事業を行うことで経営のスリム化を図るシェアードサービスがあげられ、対象となる部門は、情報システム、経理、人事、総務など間接部門に多い傾向がある。
部門を集約することで、業務の効率化を実現するだけでなく、人件費や諸経費なども削減できるため、コスト面でも効果がある。
シェアードサービスの形態としては、グループ内に別会社を設立して、グループ各社で発生する間接業務を全てシェアードサービス会社に移行する場合もあれば、本社にシェアードサービス部門を設置して、各地にある支社・支店・工場などの拠点に関する間接業務を全て代行するという場合もある。
また、シェアードサービスをグループ会社ではない全く別の企業にアウトソーシングすする、シェアードサービス業務専門の事業を立ち上げるという場合もある。
・ モチベーション向上:高いパフォーマンスを発揮できるような環境で働くことは、従業員のモチベーション向上につながる経営手法だ。

また、シナジー効果を得るには、主に「M&A」、「グループ一体化経営」、「経営多角化戦略」、「事業提携」の4つの手法があるが、進める上では注意点がある。
特にM&Aにおいては、準備や手続きが不十分であったことによって、次のようなデメリットが生じる可能性がある。
・重大なミスやシステム障害などが発生する。
・社内事情が悪化することで優秀な人材が離職してしまう。
・対立や混乱によって業務にも悪影響が生じ、顧客が離れてしまう。
・経営者や企業に愛着を持っていた従業員のモチベーションが低下する。
このような状況に陥ってしまった場合、かえって企業価値の低下を招いてしまうリスクがある。
そうした事態を防ぎ、M&Aの成功を握る鍵となるのが「PMI」の構築だ。
「PMI(Post Merger Integration)」とは、計画したM&Aによる統合効果を最大化するための統合プロセスとマネジメントを指す。
統合の対象範囲は、経営、業務、意識など統合に関わるすべてであり、M&Aによる効果を確実に発揮させるためにも、早い段階で課題やリスクの事前検証を行い、その結果を反映させたマネジメントを行うことが必要となる。
PMIでは、経営のトップ層が経営理念の共有、無駄なコストの見直し、経営システムの統一化、さらには企業文化や風土の統合を果たすことで、従業員の能力やモチベーションを向上させ、シナジー効果の実現へとつなげていくのだ。
PMIを効果的に構築し、M&Aにおける戦略や目的について企業全体で共有することで統合がスムーズに行われ、成功につながるだろう。

シナジー効果の成功例と失敗例とは

では、実際の企業はこうしたシナジー効果をどのように活用しているのだろうか? 具体的な活動方針やノウハウを見ていこう。

<シナジー効果の成功事例と失敗事例>

LIXILグループ
トステムやINAXなどが統合して誕生したLIXILグループはグループ一体経営によるシナジー効果を狙った事例にあげられる。
M&Aを繰り返し行い、各社で異なる会計システムを用いていたが、2012年に子会社105社の会計システム統合し、経営スピードの向上を図った。
また、会計システムの統合によって経理処理が子会社間で共通になったため、経理に携わる従業員のローテーションも可能になった。
これは事業シナジー、財務シナジー、組織シナジーのそれぞれのメリットが生かされた好例といえる。

一方、買収先企業が経営不振から回復できずに、事業拡大の目的を達成できなかったケースもある。
ソフトウェアの開発・販売を行っているA社では、開発ベンダーであるB社の携帯端末事情を買収した。
B社は、以前は携帯端末において世界的なシェアを誇る企業であったが、スマートフォン時代の到来により、他社に押されて業績が低迷していた。
そこで、A社は早期にスマートフォン事業に参入するため、通信デバイスについてのノウハウを持つB社の買収に踏み切ったが、M&Aを行った後もB社の業績は回復せず、A社が想定したほどの貢献することはできなかったため、A社はM&Aによるシナジー効果を得ることはできなかった。
結果としてA社は買収価格を上回る金額の減損処理を行い、多くのリストラを実施することでカバーする事態となった。
これは事業シナジーの中でもスケールメリットを活かしきれず、新たなイノベーションも生み出せなかった失敗事例だといえる。

ここまでシナジー効果について解説をしてきた。
シナジー効果を有効的に利用することで、売上アップやコスト削減、生産性の向上などさまざまな効果が期待でき、企業の成長に大きく貢献するだろう。
しかし、甘い考えで施策を進めてしまうことで、社風の違いや、新事業をうまく運営できないことなどが原因となり、かえって負債が増加したり、価値が減少してしまう恐れもある。
シナジー効果の真の価値を発揮させるためにも、施策を進める前にリスクの想定、方針や計画を入念に考え、明確にすることが重要だ。

まとめ

・VUCA時代である現代社会において、消費者による企業の価値提供に対するハードルは高まり続けており、かつ製品やサービスの創出や改善にはスピーディーな対応が求められている中で、企業が成長を続け存続していくためには、経営の効率化や新たな価値創造など、企業努力が欠かせない。このような状況下で、ビジネスの現場で注目されているのが「シナジー効果」による事業課題の解決だ。

・相乗効果を意味する「シナジー効果」は、ビジネスシーンでは複数の企業や事業が共同することで個別に活動した時よりもいい結果を出す状態のことを指す。「1+1」ではなく、「1+1+α」となるシナジー効果は単純に足し算される数字よりも大きな効果を生み出すことができるため、企業にさまざまなメリットをもたらす。VUCA時代においてシナジー効果を有効に作用させることは企業が成果を出し続けていくための鍵となるだろう。

・シナジー効果には3つの種類があり、得られるメリットもそれぞれ異なる。それは次のとおりだ。1.事業シナジー[メリット]コスト削減、スケールメリット、人材獲得、2.財務シナジー[メリット]余剰資金活用、節税対策、3.組織シナジー[メリット]生産性の向上、業務の効率化、モチベーション向上。

・また、シナジー効果を得るには、主に「M&A」、「グループ一体化経営」、「経営多角化戦略」の4つの手法があるが、進める上では注意点もある。
特にM&Aにおいてはプロセスが不十分なことによってさまざまな問題が生じ、結果として優秀な人材の離職や顧客離れ、従業員のモチベーション低下などを招き、企業価値を低下させてしまう恐れがある。M&Aを成功させるためには効果的なPMIを構築し、統合効果を最大化させることが重要な鍵となる。

・シナジー効果を活用して成功した事例として、LIXILグループがあげられる。子会社105社の会計システムを統合することで、グループ一体経営によるシナジー効果を狙い、経営スピードの向上と従業員ローテーションを可能にした。一方で失敗事例も存在し、M&A実施後も買収先企業が経営不振から回復できずに、想定したほどのシナジー効果を得ることができず、結果として買収価格を上回る金額の減損処理を行うこととなってしまった企業もある。

・シナジー効果を活用することでさまざまな効果が期待できるため、企業の成長に大きくつながるだろう。しかし、甘い考えで施策を進めてしまうことによって、かえって負債が増加したり、価値の減少を招いてしまう恐れもあるため、施策を進める前にリスクの想定を行い、方針や計画を明確にするなど、シナジー効果を最大限に発揮させるための入念な準備を行うことが重要だ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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