■採用活動におけるミスマッチとは?
■ミスマッチが引き起こすデメリットとは?
■ミスマッチが発生する原因に共通する事象とは?
■ミスマッチが発生する4つの大きな原因とは?
■ミスマッチを減らす4つのポイント
■ミスマッチを減らせる、たったひとつのマインドセット
ミスマッチとは何か? そのデメリットとは
年々早期化が進み、優秀な人材の獲得競争が熾烈になっていく新卒採用市場。
2022年卒の採用戦線においても、早くも1dayインターンシップや業界研究セミナーを実施しつつ、多くの学生と接触することで母集団形成に臨む企業が多く見受けられる。
しかし、早期から積極的に採用活動を行い、やっとのことで内定出しから入社式までこぎ着けても、企業には近年大きな問題となりつつある課題が存在する――それが新卒社員による入社1年以内の早期離職だ。
入社したばかりの従業員による早期離職は、主に採用活動中のミスマッチが原因だといわれている。
つまり、働く個人側から見た場合、せっかく選考活動や内定者としての間は高かったモチベーションが、入社と同時にみるみるうちに低くなっていき、業務へのやる気が出ず、早期離職という選択肢が頭をよぎっていく。
早期離職を検討する新卒従業員の当人からすれば、第二新卒として、より自分に合った企業での再出発を見つけられるかもしれない。
しかし企業側から見た場合、ただでさえ採用難と人材不足が続く中で、せっかく予算と時間をかけて採用した求職者がミスマッチを感じて業務へのモチベーションが低い、あるいは最悪の場合、早期離職してしまうと、大きな痛手となる。
本稿では、そもそもミスマッチとは何なのかという点を踏まえつつ、起こり得る入社後のギャップとその理由について見ていく。
そして、企業が早期にミスマッチを防ぎつつ、早期離職を減少させるポイントはどこにあるのかについて確認していきたい。
ここでは、ミスマッチの定義と、採用でのミスマッチがもたらすデメリットについて見ていこう。
まずはミスマッチの定義からである。 一般にミスマッチ(mismatch)という用語は、釣り合わないこと、組み合わさらないこと、あるいは不都合なことという意味として使われる。
人事関連業務におけるミスマッチとは、企業が従業員へ求めることと、働く個人が企業へ求めることの内容に相違がある場合に使われる用語だ。
特に、期待と現実との間に埋まらないギャップが存在した場合に使われることが多い。
近しい言葉にアンマッチ(unmatch)があるが、これは企業が求める募集要項に合致する求職者がいない状態を表す用語で、近年ではミスマッチの一種として捉えられることもある。
次に、採用活動でのミスマッチがもたらすデメリットについて整理しておこう。
ミスマッチが引き起こすデメリットは主に3つあり、採用した人材の能力が発揮されないこと、採用した人材のやる気が下がっていくこと、そして、採用した人材がすぐに辞めてしまうことだ。
企業側が職場で求める職務内容と、採用された働く個人の能力がミスマッチである場合、当然採用された当人の能力が遺憾なく発揮されることはない。
また、企業側が働く環境について、実際のイメージが湧きやすい広報を行わない場合、組織や職場と採用された当人とのミスマッチを引き起こし、働くモチベーションの低下や、最悪の場合、早期離職につながりかねない。
くり返しとなるが、採用市場におけるいわゆる売り手市場が続く中で、欠員補充を行うことは決して容易ではなく、また膨大な採用コストや工数は、企業にとって大きな負担となる。
このため、早期離職を防ぐためには、企業と求職者のミスマッチが発生する原因を確認した上で、早期からミスマッチを減らしていくための効果的な対策をとっていくことが求められる。
そこで次項では、求職者が「こんなはずではなかった」と感じてしまう入社前後のギャップが発生する原因と、早期退職に陥ってしまう理由について見ていこう。
入社後のギャップが発生する4つの大きな理由
企業にとっては、採用難の中でせっかく採用した人材、あるいは、働く個人側からすると、自分の将来をここに決めたとの決意で入社した企業であるにも関わらず、入社後にミスマッチが発生してしまう大きな原因は主に4点考えられる。
それぞれの原因の根底に共通して横たわる課題は、働く個人と企業の双方が、入社前に抱いていた「期待」が、入社後の「現実」と大きく乖離していることにある。
風通しの良い職場と聞いていたはずが、いざ入社してみると旧来依然とした上意下達型の厳しい職場だった。 または、大きな裁量をもって仕事ができると聞いていたはずが、実際に任されるのは単純な作業ばかり、などといった具合だ。
そこで、本項では「なぜミスマッチが起きてしまうのか」について、4つの大きな原因をそれぞれ確認していこう。
1. 選考活動にて良いことだけ伝えている
採用活動の全体を通して入社後のギャップ、ミスマッチなどを生じさせる最も大きな原因とは、求人時に企業の良い面のみを伝えすぎることである。
優秀な人材獲得をめぐって熾烈な採用競争が続く中で、少しでも優れた従業員を採用していきたい企業の気持ちは、もっともだ。
しかし、求職者を「獲得する」ことが目的となってしまうと、採用活動は入社後のミスマッチを生む原因を作りかねない。
つまり、自社のネガティブな部分について、ある程度求職者に見えるかたちで提示しない、あるいは採用面接時に質問された場合、うやむやに誤魔化した上で、自社の良い面を強調するなどといった行為がこれにあたる。 まさに、応募数をいかに増やすかという点と、入社後のリテンション向上を目指す点でのバランスが求められる部分だといえよう。
2. 求職者に対する情報の提供が足りていない
中途と新卒を問わず、求職者に対する情報の提供不足は、採用段階において、入社後のギャップを生み出す大きな要因のひとつだ。
これは、応募してきた求職者への情報提供が適切に行われなかった場合、あるいは提供された情報が極端に少ないなど、明らかに求職者が企業を判断する材料に欠いていたケースなどを指す。
求職者への情報提供が適切でなかった場合、入社後の「思っていた仕事内容と違っていた」といった「期待と現実の乖離」を強く促す材料となってしまいかねない。
また、求職者への情報提供が不十分であった場合、「座学が一切なく、いきなりOJTでの訓練で仕事を覚えることができなかった」などといった入社後のギャップを感じさせる要因となってしまう。
3. 面接での相互理解が不足している
採用活動における、面接などの選考段階で発生する可能性のあるミスマッチとして、企業と求職者の相互理解が不足しているという点がある。
これは、企業が応募者に求めるスキルと、求職者が企業において活かしていきたい(または成長させていきたい)スキルに乖離がある場合に発生するものだ。
このミスマッチが発生する主な原因は、前述した企業の採用広報における適切な情報提供ができていない点に加え、企業の採用選考基準が「見える化」されていない点にある。
社内で選考基準が見える化されていないと、採用担当によって、自社に合致する人材像だと感じる点が異なることになり、選考を通過する人材にもバラつきが生じる。
企業としての選考基準はしっかりと明確化して、自社内の従業員に浸透させる必要がある。
4. 入社後のフォローが十分でない
年間休日、給与、福利厚生や各種制度などについては、入社前に情報を提供することが可能だが、入社後に職場で接するであろう同僚や上司などとの人間関係は、実際入社してみないと分からない部分だ。
採用担当を含む人事部門では、入社後の然るべきフォロー体制や、いつでも相談しやすい仕組みづくりが求められるところだ。
しかし、このようなフォローが足りていないと、ミスマッチが発生しても察知ができず、さらなるモチベーション低下と早期離職を招く要因となっていく可能性がある。
関連記事:入社後のミスマッチ防止などケース別解説!今や採用広報が欠かせないのはなぜか
採用のミスマッチを防ぎ、離職率を低下させるポイント
ここまで、入社後のミスマッチなどが企業に与えるデメリット、およびこれらの主な発生原因について見てきた。
ここでは、いかに企業と求職者間のミスマッチを減らし、早期離職などを減少させていくかについて、4つのポイントを見ていきたい。
1. 「RJP」を意識しながら企業情報の提供に努めること
良い面だけではなく、自社のネガティブな面についても情報提供していくことを、「RJP(Realistic Job Preview)」という。
入社後のミスマッチが、自社のネガティブな面を起因とする場合が多いことから、これを最小化していくために、入社前の採用活動において情報を開示していくことを目的としている。
「思っていたものと違った」、「こんなことは聞いていない」などといった声をなくしていき、これらを理由として早期離職に至ることがないよう、ネガティブな面も含めた総合的な企業情報の開示がポイントとなってくる。
2. より意義のある面接時間を作り上げていくこと
選考活動における面接時に、企業と求職者の双方が誤解や齟齬、見えないミスマッチなどを最小化していくため、企業は次の2つの点を意識することが望ましいといえる。
まず、面接の冒頭で自社が今回採用活動を行っている背景や、企業としての人材ニーズ、そして自社の将来戦略などについて、求職者へ丁寧な説明を行い、応募にあたって誤解などがないか確認することだ。
次に、可能な限り現場担当部門と採用担当部門の双方から複数名で面接を行い、採用担当部門も配属予定の現場担当が求職者に求めている能力や経験などをしっかり把握していることである。
3. リファラル採用などを導入して入社前の相互理解を深めること
既述した「RJP」にも通じるが、採用手法を多様化させていくのもミスマッチを防ぐ上で重要だ。
特に、自社の既存従業員からの紹介で採用活動が行われるリファラル採用は、入社後のミスマッチを減らしていくことが期待できる施策のひとつだといえよう。
既に働いている従業員から直接自社の印象を良い面やネガティブな面の双方を知りうることで、よりマッチング精度が高くなると同時に、従業員側も自社に関心を抱いている求職者が自社にマッチしているかを、時間をかけて確認していくことが可能となる。
関連記事:リファラル採用が上手くいく会社といかない会社の違い
4. 入社が確定してからのフォローを欠かさないこと
採用通知を出し、入社の承諾を得られた時点で採用活動が終了するわけではなく、これはあくまで自社の従業員として活躍してもらうスタートに過ぎない。
採用できたとしても、ミスマッチが生じて早期離職になってしまったら元も子もないため、採用担当からは入社して担当部署へ配属されるまで、しっかりフォローを行っていくことが求められているといえよう。
入社直前の内定者、あるいは入社後間もない従業員は、最も近い立ち位置で自社を客観視できる貴重な人材に他ならない。
このため、ミスマッチがないかどうかのフォローをしつつ、採用活動や自社の印象全般などをフィードバックしてもらうことで、次回以降の採用活動に活かしていくことも期待できよう。
ここまで、ミスマッチが生じるさまざまな原因をみてきたが、それぞれの根底に共通することは、採用することが目的と化してしまい、入社後にミスマッチやギャップが生じた場合、結果として早期離職につながりかねないことだ。
ここからいえることは、採用活動を通じて企業と求職者のミスマッチを減らしていくため、企業が行うべきことは、あくまでも「採用をもって求人のゴールとしないこと」である。
無論、採用難が続いており、優秀な人材が応募してきた場合、ぜひ企業としても採用したい気持ちが強く働くこともあるだろう。
しかし、企業の採用活動を成功させていき、ミスマッチを最小化するためには、自社の求める人材像に合致しているかどうかという点と、応募してきた求職者が自社に求める点は何なのかという、2つの点をしっかり吟味する姿勢が求められているといえよう。
まとめ
・ミスマッチとは、不釣り合いであることや、組み合わさらない状態などを指す言葉だ。
採用活動では、企業と人材の求める内容が合致しないこと、特に期待と現実との間に埋まらないギャップがある状態を指して使われる。アンマッチという近しい用語も存在するが、これは企業が求める人材像に合致する求職者がいない状態を表し、ミスマッチの一種として捉える。
・採用活動におけるミスマッチが、採用された人材の入社後に引き起こすデメリットは3つある。
1つ目は、採用された人材が、思う存分その能力を発揮できないこと。
2つ目は、職場環境と従業員とのミスマッチが原因で、採用された人材のやる気が低下すること。
3つ目は、前述2つの理由により、最悪の場合、早期離職してしまうことだ。
・入社後のミスマッチが発生してしまう原因に共通している課題は、従業員が入社前に抱いていた自社への「期待」が、入社後の「現実」と大きく乖離してしまっていることになる。
これらは、企業の採用活動中に起きるものと、入社後に思いがけず発生するものとがあるが、どちらも企業のネガティブな面を情報開示していないことに起因としていることが多い。
・具体的な入社後のミスマッチが起きる4つの大きな原因は次の通りだ。
1つ目に、選考活動にて良いことだけ伝え過ぎていること。
2つ目に、求職者に対する情報の提供が不適切、あるいは足りていないこと。
3つ目に、面接時に、企業と求職者の相互理解が不足していること。
4つ目に、入社後の人事部門から従業員へのフォローが十分でないこと。
・企業と求職者間のミスマッチを減らし、早期離職などを減少させていく4つのポイントは、次の通りだ。
1つ目は、「RJP」を意識しながらネガティブな面を含めた企業情報の提供に努めること。
2つ目は、依然の誤解や齟齬を確認しつつ、より意義のある面接時間を作り上げていくこと。
3つ目は、既存従業員の紹介などで成り立つリファラル採用を通じて入社前の相互理解を深めること。
4つ目は、入社の承諾を得られてから、入社後の配属に至るまで、フォローを欠かさないこと。
・ミスマッチが発生する原因に共通する根本は、採用することが目的化していることにある。そのため、採用活動を通じて企業と求職者のミスマッチを減らしていくため、企業が行うべきことは、「求人のゴールを採用としないこと」だ。ミスマッチを最小化するためには、自社の求める人材像に合致しているかどうかという点と、応募してきた求職者が自社に求める点は何なのかという、2つの点を確認しつつ選考活動を行うことが求められる。