2020.6.1

【HR総研 所長 × 人材研究所 曽和氏 × 東洋経済】 2022年卒の採用市場を勝ち抜く『採用マーケティング』

読了まで約 14

【第四部】
視点を変えると採用マーケティングの基本が見えてくる

ProFuture株式会社 マーケティングソリューション部 フェロー 俣野隆行

「ウサギとカメ」の話から得られる教訓


まず最初に「ウサギとカメ」の話をさせていただきます。
これは絶え間なく努力すれば成果が得られるというイソップの話ですが、見方を変えると色々な内容が見えてきます。
もともとはウサギとカメが競争をして、ウサギが油断して寝ている間にカメがゴールしてしまうという話です。
これをウサギの視点から見てみましょう。

ウサギがなぜ負けたかというと、競争だったにもかかわらず、ウサギはゴールを見ないでカメを見ました。
ここで目的を見間違えたわけです。
ここから目的を見失ってはいけないという教訓が得られます。

一方、カメが勝った要因は、まぐれです。普通に競争をしたら、カメがウサギに勝つことなどできません。
ここから得られる教訓は、カメはもう少し自分を分析しておいたほうがよかったということでしょう。
例えば事前に「自分のほうが絶対的に不利だから、途中に池を入れてよ」と頼んでおくなど、戦略を持って自分の特徴を理解した戦い方をする必要があったと思います。


弊社が行っているマーケティング活動は、自社が提供する製品やサービスの素晴らしさを市場に伝えて、お客様に自分たちを選んでもらうというものですが、皆様が行っている採用活動も同様です。
自社について理解・共感してもらって、入社してもらうという流れが理想だと思います。

つまり人事部もマーケティング部も、自社の魅力を市場に訴求するという同じ目的のために活動しているわけです。
部門が違うため違う種類の仕事だと認識しがちですが、同じ目的を別の見方で見ている場合、他組織のやり方も参考になります。
つまり本日お伝えしたいことは、採用領域でもマーケティングのテクニックを活用すれば、より一層の効率アップを図れるということです。

いかに自社の魅力を市場に伝えるか


ではマーケティングでは、どのようにして自社の魅力を市場に伝えているのでしょうか。
一般的なマーケティング活動のイメージといえば、リサーチ(数量調査、データ収集など)、ブランド作り(広告、PRなど)、コンタクト獲得(セミナーやイベントの開催など)、営業支援(カタログ作成など)等が挙げられます。
これらを単発的に行うことも重要ですが、より効果性を上げるためには、いろいろと組み合わせて実施したり、より戦略的な活動をすることが重要です。例えば、自分がパン屋を経営しているとしたら、どのような戦略で戦うでしょうか。

大手のパン会社と全面的に争っても勝てるわけがありません。であれば、市場を地域・性別・年代・種類など細かく分類し、自分の得意分野を絞り、さらにその中で「自分たちはパンのワクワクを伝えていこう」といった戦略を立てていく。

つまり自分が勝てるフィールドを見極める戦略が問われるわけです。
これを「セグメンテーション:市場を細分化する」、「ターゲティング:細分化した中からフォーカスすべき市場を決める」、「ポジショニング:決めた市場の中で自分はどのような位置にいるのか明確にする」――略して「STP」と言います。
そしてメッセージをコンテンツ化して、それをWebサイトやセミナーを通じて伝えていくわけです。

Webマーケティングの重要性と活用のポイント


コンテンツを広げていく方法はいろいろとありますが、なかでも最近注目されているのがWebマーケティングです。
昨今、若い人たちはデジタルネイティブになっており、また感度の高い人ほどWebからの情報取得に余念がありません。

皆さんも昔と比べて、買い物の仕方や情報の取得方法が変わってきていませんか?
昔は何か物が欲しいときは、お店に足を運び、そこで選んで買いました。
しかし昨今のお客様は、まずWebで調べて、比較検討までして、購買プロセスの60~70%のプロセスを店に行く前に済ませています。そうなってくると、Webで情報を発信しない手はありません。

しかしWebの中にはすでに情報が氾濫しています。
そういった中で、単にこちらが伝えたいことだけを載せたのでは、見てもらえません。
受け手側にとって、価値のある情報を伝える必要があるのです。

情報提供の形には、プッシュ型とプロ型があります。プッシュ型は、自分の言いたいことをどんどん載せていく方法で、一方のプル型は、世の中の課題や市場のニーズなどを踏まえて、その答えや解決策を提示し、受け手に納得してもらうという方法です。

どちらが良いか悪いかではなく、コンテンツによって出し方を変えてみるといいでしょう。
また、どんなに良いコンテンツであっても、見てもらえなければ意味がありません。
そのためには、メディアを使いこなす必要がありますが、その際は広く告知したいのか、あるいはピンポイントに告知したいのかなど、目的をもってメディアを選び、効果的・効率的に活用してください。

データを取得する価値とは?


Webマーケティングは、情報収集に最適です。
誰がどんなコンテンツをどれくらい見ているのか、この人はWebサイトに何回来てくれたのかなど、一度ログインしてもらえば、その人の興味や行動履歴が相当わかります。
またマーケティングオートメーションという言葉をお聞きになったことがあるかと思いますが、誰がどんなコンテンツを見たか、裏でスコアリングする仕組みがあるので、その情報を営業や人事などに提供して、連携するといった使い方も可能です。

ではなぜデータが取れると良いのでしょうか。
それはPDCAを回せるからです。
ただし思い付きで回すのではなく、きちんと目的をもって計画的にサイクルを回すことが重要になります。
マーケティングは、それ自体が学問になるくらい体系化されているため、論理的な思考や多彩なフレームワークが用意されています。
その枠組みを利用すれば、うまくいかない原因や課題解決を理論的に追及することが可能です。

繰り返しになりますが、マーケティングにしろ人事にしろ目的が一緒であれば、使えるものはどんどん使っていきましょう。
ビジネスにおいて絶対的な正解はありません。
その時々で最も良い答えを探し出す必要があります。

しかし今や環境変化が激しく、「良い答え」も高速で変化するため、短時間で「良い答え」を導き出し続けることが不可欠でしょう。
そこで頼りになるのが、マーケティング的発想力なのです。
人事部でもマーケティングの手法を導入すれば、より効率的に情報を取得することが可能になりますので、ぜひご検討いただければと思います。ご静聴ありがとうございました。

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監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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