【第三部】
メディアを使い倒す
~マーケティングプラットフォームとしての活用法~
東洋経済新報社 ビジネスプロモーション局 デジタル広報戦略担当部長 佐藤朋裕氏
東洋経済オンラインとは?
東洋経済オンラインは、月間2億PV、3000万UBとビジネス誌最大のアクセスを誇っております(外部配信を含めると月間3億のアクセス)。
ちなみに日経ビジネスは2500PV、ダイヤモンドは7000PV、プレジデントは5000PVです。
また東洋経済オンラインは、記事1本のパワーが非常に絶大で、1000万アクセスを超える記事もあります。
読者は学生から経営者まで非常に幅広く、自分ゴトにできる心に刺さるコンテンツが特徴です。
一般的にビジネス誌の読者層は、8割くらい男性が占めることが多いのですが、東洋経済オンラインの読者層は、男性57.2%、女性42.8%と男女に大きな差がありません。
これは女性を意識した記事を積極的に作っているのが、要因の一つになっていると思います。
7つのマーケティング戦略
東洋経済オンラインは2003年にオープンしたのですが、当初は会員制のサイトで決してアクセス数も多くはありませんでした。
それはそれでよかったのですが、雑誌の売上げが年々落ちてくるにしたがって、デジタルの強化が不可欠であるという考えに至り、編集者の経験と勘に頼っていた従来のメディアの作り方に、マーケティング(戦略とデータ)の考え方を掛け合わせることとなりました。
ここで東洋経済オンラインの7つのマーケティング戦略についてご紹介します。
1つ目は、リーチの拡大です。2012年11月にリニューアルした後、一番多いときで2億5000万PVを超えるなど、50倍のアクセスになりました。
2つ目は、読者のいるところに顔を出すということ。
それまでは読者を囲い込もうとしてきましたが、それでは限界がありました。
そこでリニューアルの際に会員制から誰でも見られるサイトに変えたのと同時に、分散型メディアとして自社の記事をfacebookやYAHOO、SmartNewsなどに提供し始めました。
3つ目は、ファクトをストーリーで語る。
しっかりと読ませる記事が多く、2020年現在、継続中の連載記事は「就職四季報プラスワン~就活生のためのホントの情報~」、「御社のオタクを紹介してください」、「会社を変える人材開発の極意」、「iPhoneの裏技」、「競馬好きエコノミストの市場深読み劇場」、「若者のための経済学」など45本に上ります。
さらに東洋経済の記者による経済・企業分析記事も強みです。
4つ目は、読者に面倒をかけないということ。
例えば、会員登録やログインは不要となっています。
5つ目は、守備範囲が広い。
ProFutureさんの記事をはじめ、読売新聞、日テレNEWS24など、他のメディアの記事も転載しています。
6つ目は、記事本数を絞る。
新聞社のサイトでは1日に1000本近く記事があがりますが、それに対して東洋経済オンラインは20本に厳選。
ストレートニュースは、新聞からの転載でカバーし、分析記事で勝負しています。
そして7つ目は、心に響くタイトルを選ぶということ。
「自信が持てない“仕事迷子”な大人が激増のワケ」、「過干渉な毒親から逃げ出した30代男の最終手段」、「ジャズに最適?“日本一小さい新幹線駅”活用法」など、読ませるタイトルを作るための30カ条の虎の巻を社内で共有しています。
新たな運営体制とビジネスモデルでメディアの在り方を変える
雑誌メディアは本来、編集と営業がいればビジネスは回るのですが、オンライン化したことに伴って、分析、システム、ブランドスタジオ、編集、広告営業という体制に変わりました。
中でも特に変わったのが広告です。
東洋経済オンラインは広告収入で成り立っていますが、一方で広告は嫌われ者の側面もあります。そこで、きちんと見てもらうためには、内容が面白いコンテンツ型の広告が必要だと判断し、「TOYO KEIZAI BRAND STUDIO」というものを立ち上げました。ここでWEBや雑誌に掲載する広告はもちろん、セミナーのコンテンツや書籍なども制作しています。
2012年からマーケティングの要素を取り入れたのですが、その後テクノロジーが進展し、現在重要になってきているのがデータの活用です。
そうしたデータを含め、コンテンツ、マーケティングと3つの要素で成り立っています。
これら3つの要素には、仮説をつくる、記憶に残る面白い話をつくる、読者の反応を分析する、改善する…という共通する4つのスキルがあります。これらを回していくことが何より重要です。
メディア自体が変わってきたことにより、企業とメディアの付き合い方も変わり、従来にない広告の手法も出てきました。
活用事例を一部ご紹介しますと、例えば、サイボウズさんの広告では、商品そのものには一切触れずに、オウンドメディアのサテライトとしてご活用いただいております。
またダイキンさんの広告では、長期にわたるブランディングのパートナーとしてご活用いただいております。
さらにAudiさんの広告では、オンラインに掲載したものを冊子に作り変えて、役員以上の方に配布しています。
【東洋経済新報社 編集局編集委員 田宮寛之氏よりご挨拶】
人材難が叫ばれる昨今、多くの企業が優秀な人材の確保に必死になっており、採用市場では仁義なき戦いが始まっているとも言えるでしょう。
そうした中、東洋経済では今後、採用ブランディング広告のビジネスに注力していきます。
私は長年編集局で記者を務めていますが、今まで編集局の記者と広告を担当するビジネスプロモーション局がコラボレーションして仕事をすることなど、ほとんどありませんでした。
しかし採用ブランディング広告のビジネスにおいては、両者がタッグを組んで、ワンチームとして協働していく所存です。精一杯頑張っていきますので、今後とも何卒よろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。