近年では、採用活動にリモート面接(Web面接)を導入する企業が増えてきた。リモート面接には、コスト削減や幅広い人材採用といったメリットが多数ある。その一方でデメリットも存在するため、解決策としてメタバースが注目されている。
メタバースは仮想空間で対面に近いコミュニケーションがとれるため、リモート面接の問題を解消する手段として期待されているのだ。この記事では、リモート面接が増加した背景やメリット、デメリットとともに、デメリットを解決するメタバースの活用について解説する。
目次
リモート面接が増加した背景とは?
近年では、採用活動にリモート面接を導入するケースが増えてきた。その背景には、コロナ禍によってテレワークが浸透したことが挙げられる。
コロナ禍においては、人と対面で会えなくなり、代替手段としてリモートワークを導入せざるを得なかったのだ。しかし、リモート面接には対面での面接にはない効果があるため、多くの企業でリモート面接が一般化してきた。
Indeedの調査によると、77%もの企業がオンラインを活用した採用フローを導入、または導入を予定していることが明らかになった。大企業の92%がすでにオンラインを活用した採用フローを導入しており、リモート面接を導入している企業は55%にもなる。
同調査によると、導入した企業の約76%がオンライン採用にポジティブな効果を感じている結果となった。具体的な効果には、応募者の増加や、採用コストの削減が挙げられている。
コロナ禍がきっかけではあるものの、効果の大きさによってリモート面接が増加したのだ。
参考:Indeed「人材採用プロセスのオンライン化」に関する調査」
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リモート面接のメリット・デメリットとは?
リモート面接には、コスト削減や幅広い人材採用につながるといったメリットがある。その反面、現実とのギャップが生じることによるデメリットも存在する。ここでは、リモート面接のメリットとデメリットについて解説する。
メ リット1.コスト削減につながる
リモート面接のメリットとして挙げられるのは、コストの削減だ。従来の対面による採用活動の場合、面接場所の準備費用や交通費が発生していた。大企業であれば別途面接会場を確保する必要があり、案内板の設置といった細かい会場設営も必要だった。
しかし、リモート面接であれば物理的な会場は必要ない。会場設営にかけていた費用や時間、応募者の交通費といったコストが不要になるのだ。
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メリット2.幅広い人材採用につながる
2つ目のメリットは、幅広い人材採用につながることだ。対面が必須の状況だと、遠方や海外の人材が面接を受けに来るのには時間がかかるため、それを理由に応募をためらう人も多かっただろう。
しかし、リモート面接であれば距離は関係ない。全国各地や海外に住んでいるといった遠方の人材に対し、アプローチをかけられる。アプローチをかける人材の幅が広がれば、母集団も大きくなり、ひいては幅広い人材の採用につながるのだ。
デメリット1.会社の雰囲気が伝わりにくい
デメリットには、実際の社内の雰囲気などが伝わりにくいことが挙げられる。対面の面接であれば応募者がオフィスに直接足を運ぶため、応募者は会社の雰囲気を感じられただろう。
しかし、リモート面接ではオフィスに足を運ばないため、応募者は会社の雰囲気がわからないまま入社することになる。そのため、入社後にギャップを感じるケースが発生しやすい。
ギャップを埋める対策として、SNSやホームページを使って自社の雰囲気や魅力を積極的に発信することも必要だろう。
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デメリット2.応募者の人柄を把握しにくい
リモート面接においては、応募者の人柄を把握しにくい点もデメリットとして挙げられる。リモート面接では、基本的には首から上の部分しか映らないことが多く、姿勢や仕草がわからない。そのため、面接官も応募者の雰囲気を感じ取れず、面接時には雰囲気の良い人材と思って採用したにもかかわらず、入社後にギャップを感じるケースもあるのだ。
対策として、面接後に来社の機会を設けたり、最終面接のみ対面にするといったリモートと対面を組み合わせた方法を採用したりすると良いだろう。
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リモート面接のデメリット解決策としてのメタバースの活用とは?
リモート面接には、現実とのギャップが生じやすいことにより発生するデメリットがあることは前述したとおりだ。リモートワークを導入している企業でも、コミュニケーションの希薄化が問題になっている。
そこで注目されているのがメタバースだ。仮想空間で対面に近いコミュニケーションをとれるメタバースは、リモート面接の問題を解消する手段として期待されている。
ここでは、リモート面接のデメリット解決に向けたメタバースの活用について解説する。
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メタバースの概要
メタバースとは、オンライン上に作られた3次元の仮想空間だ。アバターを自分の分身として仮想空間内で操作することにより、他者とコミュニケーションをとれ、実際の対面に近い活動ができる。
メタバースという言葉自体は、超を意味する「メタ(meta)」と、宇宙を意味する「ユニバース(universe)」から作られた造語だ。そのため元々は仮想空間そのものを表していたが、仮想空間でコミュニケーションをとれるツールの浸透により、オンラインの仮想空間を意味する言葉として浸透している。
メタバースの将来性とは?
メタバースについては、多くの企業や機関が将来の市場に対する予測を立てている。金融テクノロジー会社「ブルームバーグ」は、2024年には「8,000億ドル規模にまで拡大」するという予想を発表した。
メタバースの将来性は大きく、ゲームや仮想通貨といった事業を手がける企業の多くが、メタバース市場でビジネスチャンスを広げようとしている。メタバースはコミュニケーションをとる以外にも、物の売買や社会活動、研究開発の分野でも展開できる可能性を秘めているのだ。
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活用方法
メタバースの活用により、リモート面接のメリットを享受したまま、デメリットの解消もできる。前述したように、メタバースでは「アバター」を自分の分身として操作する。
ビデオチャットを利用したリモート面接の場合だと、画面を見ながらタイミングを伺う必要があるため、対面よりも気軽に話しかけられないことが問題だ。特に集団でのリモート面接で個別質問をする際には、周囲から注目されているプレッシャーを感じる人もいるだろう。
しかし、メタバースはアバターを介してコミュニケーションをとるため、会話に対する心理的なハードルが下がる。遠隔地にいながらも、実際の対面に近い状態でコミュニケーションをとれるのだ。そのため、応募者からの会話を引き出しやすくなることもメタバースのメリットといえる。
またメタバースには、人を集めやすいというメリットも存在する。面接だけではなく、採用説明会や交流会といったイベントにも活用できることが予想される。
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リモート面接にメタバースを活用する際の注意点
リモート面接にメタバースを活用する際の注意点として、以下の3つが挙げられる。
● 目的に応じて使い分ける
● 簡単にアクセスできるようにする
● 帰属意識を醸成する
これらの注意点を意識すれば、より効果的にメタバースを活用できるだろう。ここでは、3つの注意点について詳しく解説する。
目的に応じて使い分ける
メタバースを活用する際の注意点として挙げられるのは、目的に応じて使い分けることだ。メタバースは装飾や演出の自由度が高く、仮想空間内を好みに合わせたデザインにできる。
ただし、メタバースの空間を本来の企業イメージとは異なるデザインにした場合、実態から離れた印象を持たれてしまう可能性がある。そのため、メタバースを活用する場合は利用目的を明確にし、その目的に合わせた仮想空間を作る必要があるだろう。
例えば、説明会で自社を認知してもらうことが目的であれば、世界観が伝わるようなデザインにしても良い。しかし、面接で活用することが目的であれば、現実に近いデザインにした方が、自社の雰囲気を感じ取ってもらえるだろう。
目的に応じて仮想空間のデザインを使い分ければ、より効果的な印象を応募者に与えられるのだ。
簡単にアクセスできるようにする
簡単にアクセスできるメタバースをつくることもポイントだ。いくらクオリティが高くても、VRゴーグルが必要なメタバースであれば、手軽には利用できない。多くの人材に利用してもらうためには、簡単にアクセスできるメタバースが必要なのだ。
Webブラウザを利用してアクセスできるメタバースであれば、スマートフォンやPCなどから手軽にアクセスできる。SNSで宣伝し、URLリンクから直接メタバースにアクセスしてもらうことも可能だろう。少ない手数でアクセスできるメタバースの提供を考えることが大切だ。
帰属意識を醸成する
自社に対する帰属意識を醸成することも重要だ。リモート面接を導入した場合、対面で顔を合わせる機会が減少するため、自社に対する帰属意識を持たせにくいことが課題となる。
積極的にコミュニケーションをとるだけでは、自社に対する帰属意識を持ってもらうことは難しい。メタバースの空間の中にコミュニティを作るなど、仲間意識を持つような取り組みをすることで、帰属意識を醸成できるだろう。
まとめ
近年ではコロナ禍によりテレワークが浸透し、採用活動にリモート面接を導入する企業が増えている。リモート面接には、対面での面接にはないメリットがあるため、人との接触が解禁された昨今でもリモート面接の採用が一般的になった。
リモート面接には、コスト削減や幅広い人材採用といったメリットがある一方、現実とのギャップが生じることによるデメリットも存在する。
その対策として、メタバースの導入が注目されている。メタバースは、仮想空間で対面に近いコミュニケーションをとれるため、リモート面接の問題を解消する手段として期待されているのだ。
ただし、リモート面接にメタバースを活用する際は、目的に応じた使い分けやアクセシビリティ、帰属意識の醸成といった点に注意する必要がある。
注意点を意識し、差別化を図れるようなメタバースを作れば、より効果的なリモート面接を実施できるだろう。