採用広報とは、企業の採用に関わる情報について発信することだ。近年さらに重要視されている方法で、メディアやツールの多様化によって企業からの情報発信がしやすくなっている。今回は採用広報とはどのようなものかを紹介する。採用広報でチェックしたいポイントもあわせて確認しよう。
目次
採用広報について
採用広報とは、近年さらに重要視されているものだ。まずはじめに、採用広報についての基礎知識からチェックしていこう。
そもそも広報とは?
そもそも「広報」とは、企業の情報について社内外へ発信することを指す。「Public Relation」の頭文字を取って「PR」と表現される場合も多いものである。
厳密にいえば「広報とPRとは違うものだ」という考え方もあるようだ。しかし、どちらも企業名や事業内容など、その企業に関する情報をできる限り多くの相手に知ってもらうためにおこなっていることには違いがない。
広報の役割や実施する目的には、さまざまなものがある。自社ブランドのイメージを拡散して世間に広く認知してもらうこと、株主や顧客、取引先、従業員などの関係者との良好な関係を保つこと、メディアとのつながりを持つことなどだ。
採用における広報とは
採用における広報とは、企業が求める人材に自社で働くイメージをもってもらえるような情報発信をおこなうことだ。経団連では採用における広報活動について、採用を目的に業界情報や企業情報などを学生に対して広く発信していく活動だと定義している。
採用広報で発信していく情報は、募集要項や具体的な仕事内容、職場の雰囲気、働き方、実際に働いている人の声、企業理念などだ。求職者や転職潜在層をターゲットとしてさまざまな情報を配信し、その企業の魅力や働いた場合のイメージを伝え、就職先や転職先の選択肢にしてもらうことを目的として活動しているのである。
これらの広報活動は、従来からおこなわれていたものだ。しかし、近年は採用広報という呼び方をされるようになり、改めて採用市場における注目を集めるようになった。
もともとの活動では、現場での説明会やパンフレットの配布など、実際に対面した状態での活動が主であった。しかし、近年では採用に関する活動もオンライン化している。就活サイトへの掲載や公式採用サイトの特設、オンライン説明会、SNSやオウンドメディアでの情報発信、ダイレクトリクルーティング(ダイレクトソーシング)などがその一例だ。
求職者がソーシャルメディアやインターネットで求人情報を収集しやすくなったこともあり、オンラインでの採用広報が重要視されているようである。また、新型コロナウイルスの感染防止策としてオンライン化が進んでいる状況にある。
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採用広報の目的
採用広報が注目を集める背景と、採用広報に取り組む目的についても詳しくチェックしていこう。
注目を集める背景
採用広報が注目を集めることには、さまざまな理由がある。とくに大きな理由となっているのは、採用したい人材を確保する難易度が以前よりも高くなっていることだろう。
実際に、リーマンショック以降は大卒求人倍率が落ち込んでいたものの、2013年には上昇に転じた。求人倍率が上昇して採用しにくくなるにつれて、採用広報に関する注目度もどんどん伸びていったという背景がある。
近年は労働人口が減少していることなどの要因により、求職者の側が有利な売り手市場となっていた際の採用広報をし始めた理由についてのアンケートでは、「通常どおりの求人をしても、有効応募数がなかなか集まらなかったため」と答えた企業が多いようだ。
また求職者が求人情報だけではなく、その企業の価値や考え方などを重視して転職先を選択するようになってきているのも理由の1つであろう。自社で働く意味やストーリーをうまく伝えられるかが重要になり、積極的な情報発信がおこなわれている。
メディアやツールの多様化により、企業から発信をおこなう難易度が低くなったという背景もある。特別なメディアに登録しなくても自社SNSからでも可能になるなど、情報発信が手軽になったのだ。また、求人サイトの狭い掲載枠だけではなく、オウンドメディアなどで伝えたいメッセージをそのまま伝えられるようになったことも変化のひとつである。
採用広報に取り組む目的
採用広報に取り組む大きな目的は、もちろん求人に応募してくれる求職者数を増やすためだろう。そのほかに自社の認知度を上げること、求職者の志望動機を強めること、選考がスピーディーになること、企業が求める人材と求職者のやりたい仕事とのミスマッチを回避することも採用広報に取り組む目的だ。
自社の認知度を上げると、積極的に転職活動をしている層だけではなく、潜在的に転職の可能性がある層へもリーチできる。企業の認知度がアップすると、今後転職を検討した際に自社に入りたいと思ってもらえる可能性が高まるだろう。
また求職者が興味を持ち、「この会社に入りたい」という想いを強く持たせることも目的のひとつだ。志望動機を強められれば、内定後に求職者側が承諾するまでの時間を削減できる。そのうえ、企業が求める人物像や企業文化に合った人材が入社する確率を増やせるのだ。
企業への理解を深められることで、企業が求める人材と求職者のやりたい仕事とのミスマッチが起きることも防げる。ミスマッチが起きると早々に離職してしまうケースもあるため、将来のビジョンや課題に関しても伝えるようにすると、入社後の定着率アップが期待できるだろう。
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採用広報を進めるポイント
採用広報を進めるうえでチェックすべきポイントは主に3つあり、以下のとおりである。
・ 自社の魅力を伝えられているか?
・ 伝えるべきターゲットが合っているか?
・ 発信するツール・媒体は最適か?
それぞれ詳しく内容を確認していこう。
自社の魅力を伝えられているか?
採用広報でチェックすべき1つ目のポイントは、自社の魅力を伝えられているかどうかだ。採用広報を進める前に、まずは自社の魅力を見つけることが重要である。魅力として発信すべきことがわからないままでは、相手を惹きつけるような情報発信は難しいだろう。
細かなことであっても、自社の魅力だと感じられることを見つけよう。「社会に貢献できるビジネスモデルである」、「社員全員の仲が良い」、「おやつの時間がある」など、なんでも思いつくままに洗い出してみるのがおすすめだ。そしてしっかりと言語化し、相手に伝えられるようになるまで考えるようにしよう。
伝えるべきターゲットが合っているか?
せっかく情報発信をおこなっていても、伝えたいターゲットに情報が届かないようでは効果が発揮できないだろう。伝えるべきターゲットに興味を持ってもらえるような情報が発信できているかどうか、そもそもターゲットにするべき対象はペルソナを明確にできているのかどうかをチェックしておくことが重要だ。
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仮のペルソナ設定で、何歳で、どのようなスキルを持ち、どういった志向性がある人で、当社のどのようなことに魅力を感じてほしいのかなどを考えていく。
人物像が明確になったならば、今度はどのような魅力を伝えれば入社して働きたいと思ってもらえるのかを想像しよう。相手の心に刺さらない魅力ばかりを伝えても、興味を持ってもらいにくいものである。「在宅勤務ができる」など、ペルソナがどのようなことを求めているのかを考えてから、社内で採用ターゲット層の共通イメージを持ち、情報を発信しよう。
なお、採用広報をおこなう際には、特定のターゲットを狙って広告を表示できるようなペイドメディアでの広告配信なども可能である。
発信するツール・媒体は最適か?
先述のとおり、採用広報で情報を発信するために使えるメディアやツールが多様化している。そのため、自社SNSやオウンドメディアなど多くの選択肢のなかから情報発信の場を選択できるようになった。
しかし、広報活動の選択肢が増えた分、メディア戦略で活用するメディアやツールが自社の採用計画にあっているのかも重要だといえる。情報発信をおこなっているツールや媒体が自社の目的にあっているのか、ターゲット層に見てもらえるメディア媒体はどれなのかを検討し、採用広報の効果を得られるようにしよう。
SNSから採用広報の情報を発信した場合の例を挙げる。SNSは日常的に使う人がたくさんいる媒体であり、シェア機能を使った拡散性が高く、コストをかけずに多くの人々に情報を見てもらいやすいことがメリットだ。デメリットは、更新頻度を高くしないとほかの情報に埋もれて目立たなくなってしまうことである。
SNSでの採用広報をおこなう場合には、画像や動画も載せられることで雰囲気がイメージしやすくなるものの、継続的に情報発信する労力が必要であることを理解しておくべきだろう。
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まとめ
採用広報とは、企業が求める人材に自社で働きたいと思ってもらえるような情報発信をおこなうことだ。経団連では採用における広報活動について、採用を目的に業界情報や企業情報などを学生などに対して広く発信していく活動だと定義している。
採用広報で発信する情報は、募集要項や具体的な仕事内容だけではない。職場の雰囲気や働き方、実際に働いている人の声などさまざまな情報を配信している。
採用広報に取り組む目的には、求人に応募してくれる求職者数を増やすこと、自社の認知度を上げること、求職者の志望動機を強めることなどが挙げられる。また、入社する前から企業に関する情報が確認でき、イメージしやすくなることにより、企業が求める人材と求職者のやりたい仕事とのミスマッチを回避できるようになるメリットもあるだろう。
採用広報を進めるうえでチェックしたいポイントは、自社の魅力を伝えられているか、伝えるべきターゲットが合っているか、発信するツールや媒体が適切かどうかだ。効果的な採用広報をおこなうためのポイントを確認し、実際の採用活動で活かしていこう。