タレントプールとは、採用活動における人材情報を蓄えるデータベースのことを指す言葉だ。今現在だけでなく、将来を見据えた採用活動を戦略的に行うためには、タレントプールの構築と活用が不可欠である。この記事では、人材獲得競争で優位に立つ取り組みとして、なぜタレントプールの仕組みを採用すると効果的なのか、また具体的にどのように活用すれば良いかなどについて、わかりやすく説明する。
目次
タレントプールとは?
タレントプールの効果や活用方法などについて理解を深める前に、まずタレントプールとは一体どのようなものなのか、定義や基本的な知識などを押さえておこう。
タレントプールの意味とは
タレントプールは英語である。「タレントプール(Talent Pool)」の「Talent」は「才能・能力」という意味、そして「Pool」は「蓄える・貯水池」という意味だ。この2つの言葉を組み合わせた造語がタレントプールである。
つまり、採用活動におけるタレントプールとは、企業が必要としている、または将来的に必要となる可能性があるような能力を持った優秀な人材を、中期的、または長期的に蓄積したり確保したりする仕組みを意味する。
タレントプールのデータベースを保管する形は、紙であっても電子データであっても問題はない。しかし、必要になった場合にすぐ閲覧ができ、常に情報が刷新できるような状態にしておくことが大切である。
タレントプールのメリット・デメリット
次に、タレントプールのメリットやデメリットには、どのようなものがあるかについて見てみよう。
まず、タレントプールを活用するメリットとして、次のようなものがあげられる。
タイミングによる人材損失を減らすことができる
募集をかけた際に、採用枠の人数以上に優秀な人材が集まる場合がある。そのような場合、企業にとって有益な人材であっても、人数枠以上の採用ができないためあきらめざるを得ないということもあるだろう。
しかし、タレントプールを採用して、今回は採用できなかった人材を候補として残しておけば、将来的に人材が必要になった場合、候補者へのアプローチから採用活動までがスムーズに実施できるというメリットがある。また、退職者を再雇用する「アルムナイ」の組織化に役立つこともあり得る。
関連記事:「アルムナイ制度(企業の退職者を再雇用する制度)」が近年注目を集める理由とは?
候補人材の比較がしやすくなる
タレントプールに人材を蓄積しておけば、あらかじめ能力やスキルといったデータがすでにあるため、今回だけでなく今後の採用時においての候補人材の比較がしやすくなる点がメリットである。
採用にかかる費用の節約になる
例えば、人材紹介サービスなどに依頼して企業に必要な人材をスカウトする場合、それなりの費用がかかってしまう。しかし、タレントプールを取り入れることで、すでにアプローチしたい人材のデータベースがあれば、そのような費用は不要となる。
一方、タレントプールのデメリットとして、次のようなものがあげられる。
採用関連作業の負荷が増える
タレントプールを活用するためには、データの管理が欠かせない。そのため、適切にデータベースを刷新したり管理したりするために、ある程度の人員や工数が必要となる。
また、人材が必要となった折にタレントプールを活用するためには、登録している人材と継続的なコミュニケーションを取り続けなければならない。このような作業負担が増える点が、タレントプールのデメリットだと言えるだろう。
リファラル採用リストに傾く恐れがある
リファラル採用とは、すでに企業内で働いている社員による人材紹介をもとに採用活動を進めていく方法だ。タレントプールを作成するデメリットとして、このリファラル採用のリストに傾いてしまう恐れがあげられる。
社員から紹介されたリファラル採用の候補者とタレントプールへの登録者とが混在してしまうと、採用候補者を見定める際のバイアスになりかねない。
このような事態におちいらないためにも、タレントプールの登録者とリファラル採用候補者とは、明確に区別しておく必要があると言えるだろう。
関連記事
・リファラル採用のメリットとデメリットとは?日本企業の今後の動きについて
・リファラル採用が上手くいく会社といかない会社の違い
人材獲得でタレントプールが効果的な理由
タレントプールがどのようなものであるかがわかったところで、次に、タレントプールが人材獲得においてなぜ効果的であるのか、その理由についてより深く見てみよう。
企業間での人材獲得競争が激化しているため
少子化の進行や労働人口減少などによって売り手市場となり、自社のニーズにマッチした人材を必要なときにすぐ確保するのが難しくなってきている。そのため、企業間における優秀な人材の獲得競争が激化しているのが現状だ。
そのような状況であっても、あらかじめタレントプールを構築しておけば、社内で特定の能力やスキルを持った人材が必要になった際、すぐに目ぼしい登録者にアプローチをかけることができるのである。
特に不測の事態による欠員が生じた場合、急いで人員を補充しなければならないケースが多い。しかし、新しい人材の募集や採用にかけられる時間や労力は限られており、また企業間での人材獲得競争が激化しているため、すぐに欲しい人材を採れる機会は少ないだろう。
また、急場しのぎで採用したとしても、十分な選考ができなかった場合、ミスマッチが生じてしまい、期待していた活躍をしてもらえなかったり早期退職されたりする恐れがある。
しかし、タレントプールを活用すれば、そのように人材をはじめから探す必要はなくなる。人手不足による人材の取り合いを勝ち抜くために、タレントプールが注目されていると言えるのである。
関連記事:ミスマッチとは?企業やビジネスにおける定着率の高い組織をつくるための秘訣
採用に至らなかった人材が将来的にマッチする可能性がある
もう一つ、タレントプールが人材獲得で効果的な理由がある。それは、これまでの採用活動において、実際の採用には至らなかったものの、将来的に自社が必要とする人材にマッチする可能性があるということだ。
例えば、過去に求人を出した際、条件や自社が求める人材にマッチした求職者が求人枠以上にいたとしよう。その際、求人枠の人数しか採用できないが、それ以外の人が不適切だというわけではない。
そこで、やむを得ず不採用とした人材をタレントプールに登録しておけば、将来、その人材のニーズが発生した際、優先的にアプローチすることができるというわけである。
タレントプールが構築されていなければ、せっかく自社に応募してきてくれた優秀な人材を逃すことになる。しかし、タレントプールを導入すれば、今すぐには採用できなくても、優秀な人材を将来の採用候補として残しておくことができるのだ。
タレントプールを活用する準備~実行のポイント
タレントプールの構築は、採用活動における母集団を形成する際だけでなく、採用活動を効率化したり企業間での人材競争に勝ち抜いたりするためにも効果的であることがわかった。
ここで気になるのが、そのようなタレントプール活用のためには、どのような準備をすれば良いのかということである。戦略的に採用活動を進めるために、タレントプールの構築が必要であることがわかっても、具体的な手段がわからなければ元も子もない。
そこで、ここではタレントプール構築の準備や、実行する際のポイントなどについて詳しく見てみよう。
どんな人材を採用したいかペルソナを明確にする
タレントプールを構築し、活用するための準備としてまず必要なのは、どのような人材を蓄積してきたいのかを明確にすることである。
タレントプールに登録する人材のペルソナをはっきりと決めず、手あたり次第データを蓄積したとしても、採用活動の際に効果的なタレントプールを構築することはできない。
将来、人材のニーズが発生しそうな部門やグループ、職種ごとに、どのようなスキルや資質が必要かを定義し、それに沿って登録する人を選んでいくのも一つの手だと言える。
ほかにも、内定を辞退した人や採用選考の最終段階で不採用となった人、社員によって紹介された人、派遣で働いたことがある人など、自社とどのような接点があったかによって登録を分けてもよいだろう。
タレントプールのデータは多いに越したことがないという考え方もある。しかし、闇雲にデータを集めても、タレントプールの効果を十分に発揮することはできない。どのような人材を求めるのかを意識しながら、登録する人材のペルソナを決めることが大切である。
関連記事:採用マーケティングで重要な「ペルソナ」とは?その設計方法や具体例を解説
様々な採用ツールや媒体を通じて候補者を集める
どのような人材をタレントプールに登録していくのかを明確にしたら、次は、これまでのデータや様々な採用ツールなどを使って候補者を集め、データベースの母集団を作っていくことが必要だ。
過去の採用活動における求職者以外にも、人材データを集める方法はいろいろある。一例をあげると、採用サイトナビへの直接登録や転職サイトなどから応募者の情報を取り込む、SNSなどを通して登録してもらうなどがある。
また、自社で開催したイベントや説明会、セミナー、勉強会などに参加した人も、タレントプールに登録する人材として有望だと言える。
しかし、個人情報も含まれるため、収集や管理に負担がかかることが多い。場合によってはタレントプールに登録する人材を集めるサービスなどを上手に利用し、効率的に構築していくのも一つの方法である。
関連記事:ソーシャルリクルーティングとは?概要と成功のポイントを解説
将来的な応募獲得に向けて、定期的なコミュニケーションを図る
データベースを集めて母集団を作成するだけでは、タレントプールとして機能しない。タレントプールに登録した人材と定期的なコミュニケーションを図ることで、有望な人材登録が維持できるのである。
継続的にコンタクトをとることで、登録者が求職中か就職済みかといった状況を把握できるだけでなく、自社の情報を伝えることもできる。
現在、採用の予定がないとしても、積極的にコミュニケーションを図ることでお互いの距離が縮まり、信頼感が増す。その結果、自社への興味や自社で働いてみたいという意欲につなげることもできるため、アプローチした際の成功率も高くなると考えられる。
つまり、このタレントプールに登録した人材との継続的かつ良好なコミュニケーションが、活用の成否を分けると言っても過言ではないだろう。
実際の採用に活用する
タレントプールを構築してから、自社で人材が必要な状況が生じた場合は、蓄積したデータベースの中から必要な条件に合った人材を抽出してアプローチを開始することになる。
採用したいポジションが空いた場合などに、必要となる人材へすぐにアプローチできることこそが、タレントプールを構築する意義である。いざという場合に登録データが古かったり違っていたりしないためにも、定期的な情報のアップデートが必要となる。
現在、空きポジションがなくても、ぜひ自社に入ってほしいといった優秀な人材であるならば、どのようなタイミングでも受け入れられる体制を整えている旨を伝え続けておいても良いだろう。
まとめ
タレントプールは、採用活動の入口である母集団形成に役立つだけでなく、人手不足による人材の争奪戦で勝ち残りや、将来的な人材補充時にも有効な仕組みである。そのため、これからの採用活動においては不可欠であると言えるだろう。
タレントプールの構築や維持には手間や費用がかかるが、構築方法や実践方法をしっかりと踏まえたうえで、戦略的に構築することが大切だ。タレントプールを有効活用し、採用活動の手間や費用を抑えるだけでなく、将来の人材補充の備えとしても活用しよう。