2021.9.7

採用マーケティングで重要な「ペルソナ」とは?その設計方法や具体例を解説

読了まで約 7

■そもそもペルソナとは何か?

■ペルソナを設定する2つの目的

■ペルソナ設定の3つのメリット

■ペルソナ設定で気を付けたい点とは?

■ペルソナ設定で自社業務について注視すべき2つのポイント

■ペルソナ設定で求職者が求めているニーズに気づく2つのポイント

ペルソナとはなにか? 採用における意味とは?

進む生産年齢人口の減少と、激化していく企業間の人材獲得競争との間で、採用市場は空前の人材難が叫ばれている。

企業としては、自社の求める人材像と合致する人を採用し、長く働いてもらいたいところだが、そもそも母集団が集まらない、内定を出しても辞退が多い、入社してもすぐ辞めてしまうなど、採用担当者の悩みは尽きることがない。

さらに、働く個人の多様性が増していることと、求職者が重視する点の多角化により、自社の求める人材像が明瞭でない場合、採用広報から内定出しまで採用計画がはっきりしないものとなってしまう可能性もある。

採用活動において自社の求める人材像を明確化し、そこに焦点を絞った施策を展開することは今や必要不可欠な工程であるとすらいえる。そこに「ペルソナ」を設定する意味もあるのだ。

そこで本稿では、採用市場における「ペルソナ」の意味や役割を明らかにしていくことで、採用活動において人事担当者が抱えがちな課題の視える化を試みたい。
まず、ペルソナの基本的な考え方と採用市場における考え方を見ていきつつ、類似する概念である「ターゲット」との違いについても見ていこう。

次に、採用計画においてペルソナを設定することによって得られる主なメリット、および懸念されるデメリットについて確認していく。
最後に、採用計画の中でペルソナを設定するタイミングや、実施におけるポイントについても解説する。

そもそもペルソナとは、企業が提供するプロダクトあるいはサービスの効率的な販売を目指して確立された概念で、主にマーケティング担当や営業部門で用いられてきた手法だ。

自社の潜在的な顧客を「ひとりの実在する人物」として見立て、この人物の年齢層、性別、価値観、居住地域、家族構成、行動特性などまでを細かく落とし込んでいくことで、自社のプロダクトやサービスを売りたい相手の具体的な人物像を設定していくことだ。
つまり、ペルソナ設定を行うことが、最も効率的で効果的な販売促進のマーケティング戦略立案を可能とするわけだ。
関連記事:マーケティングに欠かせないペルソナの設定 なぜ必要か?どうやるのか?

では、採用活動におけるペルソナとは、どのようなものだろうか。これは、採用したい人物像を明確に設定したものとなる。

人材の採用は企業にとって目的ではなく、企業課題解決に向けた手段であるべきだ。
逆に、採用活動において母集団や内定者数を達成することが目的となってしまう企業にありがちなのが、内定辞退者や早期離職者の発生だ。

このことから、ナビサイトなどを用いて「マス」に向けた情報発信を行うのみならず、自社の課題解決に役立つ人材を採用するための人材像(=ペルソナ)を落とし込んでいくことで、企業戦略の実行に向けた人材の採用が可能となる。

採用活動においてペルソナを設定する目的は主に2つある。
まずは、自社のトップからボトムまで、経営と現場の意見を集約していくことで、その時々における自社課題の解決に必要とされる人材像を把握することが目的となる。

現場では主に即戦力人材としての経験者を、経営陣は中長期を見据えた新卒などの若年層を必要とする場合など、それぞれの意見をすり合わせて、自社にとって最適なペルソナを設定することが必要となってくる。

次に、長く自社で働いてもらうために、採用した人材の早期離職を防ぐ目的がある。
応募してきた求職者が、自社の社風などと合うかどうかまで見極めることで、自社でのリテンション率の向上を目指すものだ。
関連記事:リテンションとは?採用マーケティングで使う場合の意味と具体的なメリット

一方で、求める像や狙うべき的(まと)という意味において、類似する概念に「ターゲット」という言葉がある。
ペルソナと混同されやすいが、マーケティングにおけるペルソナとターゲットとでは、明確な区別がなされる。

ここでは採用活動でのペルソナ設定の解説を目的とするため、ターゲットに関する詳述は割愛するが、大まかに説明すると、ターゲットは対象を「層」や「面」といったレイヤーで狙うものであり、ペルソナとはさらに踏み込んだ「点」や「個」に焦点を当てるピンポイントな狙いとなる。

採用活動に置き換えて考えると、どれだけ深掘りして人物像を設定していくかの違いだといえよう。

ペルソナを設定するメリットと注意すべき点

次に、採用活動においてペルソナ設定を行うことで期待できる3つのメリットと、ペルソナ設定を行う上で注意すべき点についてみていこう。
まずは、ペルソナ設定を行うことによって考えられる3つのメリットからだ。

1.求職者の視点に立った採用活動を行うきっかけになる
まずあげられるメリットは、ペルソナ設定を行う過程で、求める人物像と同じくらい自社を見直す機会にもなることだ。
求職者視点でも採用活動を見ることができるようになることから、企業側の発信情報は、求職者が求めているコンテンツかどうかなどが分かってくる。

求職者の価値観が多様化している世の中であり、決して企業が発信する情報ばかり求められているとは限らない現代だからこそ、多様な視点で自社の採用活動を見つめ直すことが望まれる。

ペルソナ設定の作業を通じて、採用担当者や面接を担当する現場従業員などが、求職者の視点に立って改めて自社の魅力を見直す良い機会であるという意味で、ペルソナ設定を行うメリットは大きい。

2.採用担当者の判断基準を統一することができる
テクノロジーの進化とともに、採用活動における手法は日々多様化しつつある。
採用広報から内定者フォローや新入社員研修に至るまで、決めなければいけない手法や予算取りなど、採用担当者の業務はますます複雑化していくことだろう。
ペルソナ設定を行うことで、人物像の採用基準を、ある程度統一化、均一化することが可能だ。

明瞭なペルソナがあれば、判断軸に基づいて有効な採用広報施策などを選出していくことが可能となることから、ペルソナ設定を行うことは有効だといえよう。

また、採用活動においても判断に迷いが生じる場面が多々あるが、そのような時でも設定されたペルソナに立ち返ることで、戦略上のブレを最小限に留めることが期待できるという点で、ペルソナ設定はメリットが大きい。

3. 部署や職位ごとに求める人材のズレ解消に役立つ
採用活動では、しばしば経営陣と現場従業員、あるいは部署部門ごとに求める人材像が異なり、全体として採用した人材にズレが生ずることがある。

たとえば、新入社員を受け入れる現場の声を無視して経営陣が採用した者が、結局社風に合わず早期離職などとなると、採用担当や現場部門への負担も大きい。
ペルソナ設定を行うにあたり、管理層と現場従業員の声をすり合わせることで、採用したい人材のイメージを明確にする効果が期待できる。

重要なのは、実務を担当する人事を含めた三者で丁寧な議論を交わし、納得のいく採用活動を行うことだといえよう。

既述の通りメリットの大きい採用活動におけるペルソナ設定だが、気を付けたいポイントも存在するため、おさえておきたい。
ペルソナ設定を実施していく上でのポイントは複数あり、次項で詳述するが、実施にあたって注意すべき点はシンプルに1つだけである。それはずばり「ペルソナを細分化し過ぎないこと」だ。

細かすぎるペルソナ設定では、採用活動を行っていく上で逆に妨げとなってしまう場合が多い。
採用に大きな相関が認められない設定や、過度にニッチな設定は、結局どのような人物を採りたいのか、判断がつかなくなってしまう恐れがあるため、避けたいところだ。
これらは、ペルソナ設定を行うことそのものを目的化してしまい、採用活動が結局のところ企業課題の解決のためであることを見失っている状態にあるといえる。

ペルソナ設定という行為は、あくまでも企業戦略を実行するための人材獲得に向けた手段にすぎず、どのような人物を求めているのかという認識を統一することが目的であること常に忘れないようにしたい。

ペルソナ設定での4つの実践ポイント

ここまで採用活動におけるペルソナ設定について、そして採用活動においてペルソナ設定を行うことのメリットや注意すべき点について見てきた。ここでは、実際に採用活動でペルソナ設定を行う上での実践ポイントを4つ紹介しておきたい。ステップごとに考えていくことで、ペルソナ設定を行うことが容易になるだろう。

1. 自社の業務遂行に欠かせない要素を検討する
まずは、自社の人材募集を行う前に、今回募集することとなった職種の業務遂行に欠かせない要素を「スキル」や「性格」などで洗い出していくことが最優先となる。

スキルは、特に「なくてはならない能力」を中心にまとめていき、「あったらよい」というものについては、一旦省いて考えることが望ましい。

性格についても同じく、当該業務をやり遂げる上で、相性がよいであろう性格を見出すことが要となってくる。
歓迎条件ではなく、必須条件の選出が、ペルソナ設定を行う上で最も重要な実践ポイントだ。

2. 要素を持ち合わせる人材の採用市場での希少性を検討する
1つ目のポイントを押さえることで、自社の業務を遂行していくにあたって欠かせない要素の洗い出しができた。
2つ目のポイントは、この要素をあわせ持つ人材が世の中にどれくらいいるのかについて、大掴みに把握することにある。

あくまでも、大掴みに把握することであり、明瞭な数値化を行う必要はないことから、たとえば営業部門で人材を募集するとなった場合、「○○のような性格で○○なマインドを持つ人物」は「採用市場で事欠かすことはないだろう」と見当をつける程度でよい。

くり返しとなるが、厳密な数値化ではなく、およそこれぐらいいるだろう、という算段をつけるのみで問題ない。

3. 求職者がなぜ就職活動を行うのかという理由を検討する
この段階で、自社に必要な人材がどれくらいの割合でいるのかが大掴みにわかったはずだ。
そこで、次は求める人材像がどのような理由で求職活動を行っているのかを検討することが求められる。
どのような点に課題感を抱きながら求職活動を行っているのかについて、よく深掘りして考えていくことがポイントとなる。

たとえば、給与が上がる見込みなのか、あるいは休みが多くもらえることなのか、残業が少なめであることなのか、はたまた社風が穏やかであり人間関係がギクシャクしないことなのか。

自社が求める人材へ訴求できる自社の魅力という4つ目のポイントにも通じるが、ペルソナ設定を行う上で、その人物は「なぜ求職活動を行っているか」という点をしっかり検討していくことが重要となる。

4. 求職者がなぜ自社に応募するのかという理由を検討する
最後に、求める人材が業務を遂行する上でどのような点について課題を抱えそうなのかに思いを馳せてみる。
これを自社で解決し、大きく成長してもらう、あるいは自社に貢献してもらうにはどうすればよいかという視点から、自社の魅力を洗い出していくことがポイントとなる。

給与が動機となる従業員であれば、「給与アップ」というキーワードが自社への応募のきっかけになり、公休が多いことが魅力に感じる場合は、「プライベートの充実」などが自社に魅力を感じる点となることだろう。

丁寧に自社の魅力を多方面から洗い出していくことで、求人像と自社魅力の結び付けを図ることが重要だ。

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まとめ

・ペルソナとはもともとマーケティング用語であり、企業が効率的かつ効果的な販売を目指し、販促対象を「ひとりの人物」として捉え、その人物像を細かく設定していくことだ。
転じて、採用活動では自社の課題解決に役立つ人物像(=ペルソナ)を設定することで、企業戦略の実行に欠かせない人材獲得に役立つ採用戦略として運用されることが多い。

・採用活動でペルソナ設定を行う目的は大きく分けて2つある。1つ目は、企業の経営陣から現場従業員に至るまで、新たに招き入れる人材に求めることのすり合わせを行い、自社にとってベストな人材獲得を目指すことにある。
2つ目は、最適なペルソナ設定を行うことで、自社で長く働いてもらい、内定辞退や早期離職を減らしていくことを目指すことにある。

・ペルソナ設定を行うメリットは主に3つある。
1つ目に、ペルソナ設定を通じて求職者の視点に立った採用活動を行うことで、従業員各々が自社の魅力を再発見するきっかけになること。
2つ目に、採用担当者の判断基準を統一することで、採用活動で迷ったことがあった時もペルソナに立ち返れること。
3つ目に、人事、部署、役職と現場など、ステークホルダーごとに異なる人材像のズレ解消に役立つことである。

・ペルソナ設定を行う上で注意すべき点は「ペルソナを細かく設定しすぎないこと」だ。
採用活動に関係のない設定や、細かすぎる設定は、かえって採用活動の妨げとなり、結局のところペルソナ設定が目的と化している例だといえよう。
ペルソナ設定はあくまで採用活動を円滑にする手段にすぎず、これをうまく運用していくことが重要だ。

・自社の業務遂行能力をみるペルソナを設定する上で、実施ポイントは主に2つある。
まず、自社業務の遂行に欠かせない、必須能力としてのスキルや、業務遂行に適した性格などを洗い出すこと。
次に、要素を持ち合わせる人材が採用市場に存在する数を大掴みに把握することで、採用市場における自社が求める人材像の希少性について、社内での共通認識を抱くことだ。

・ペルソナ設定を実践していく上で、求職者のニーズと自社の魅力を結びつけるポイントは2つある。まず、求職者がなぜ就職活動を行うのかという理由をしっかり吟味すること。
次に、求職者がなぜ自社に応募するのかという理由を検討することで、自社の魅力を認識し、これを採用活動における強みに転換していくことだ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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