2020.12.14

採用マーケティングで動画を活用するメリットとポイントとは?

読了まで約 6

・活字より静止画、静止画より動画の時代

・新メディアの台頭により、力を増す動画マーケティングの力

・採用広告と企業広告、似て異なる両者の動画マーケティング

・採用活動で動画マーケティングを活用するメリットとは?

・採用マーケティングにおける動画制作の最も重要なポイントとは?

・採用活動での効果的な動画マーケティングとは?

採用にも使える動画マーケティングとは?

近年、活字から読み取る情報よりも、動画の視聴を通して情報を得ることを好む傾向の人が増えている。

2000年代に登場したYouTubeに代表されるインターネット上での動画共有サイトは、情報の「発信と収集」に対する人々の概念を根底から覆し、動画を用いた情報発信をより大衆化させ、ラジオやテレビといった従来型メディアの急速な陳腐化を進めるきっかけとなった。また、スマートフォンが普及した2010年代以降は、米Snapchatや中国発のTikTokなど、コンピュータを使用せず片手に収まるスマートフォン画面全体で「手軽に」情報を確認できるツールが、10代~20代の若い世代を中心に支持され、高いシェアを占めている。

また、電通が毎年発表する「日本の広告費」によると、2019年は初めてインターネット広告費がテレビメディア広告費を超したと発表しており、インターネットでの動画マーケティングの市場規模が急速に発達している今、企業のマーケティングにとって動画の活用は欠かせない時代に突入している。

潜在的な顧客ターゲット層へのアプローチ手段としての動画マーケティングの重要性は、これから加速度的に上昇していくと予測されるが、これは採用マーケティングにおいても同じである。

ここ数年、空前の「売り手市場」が続く中で、ひとりでも多くの優秀な人材獲得に向けた熾烈な競争を繰り広げる企業では、各社こぞって自社の魅力を訴求すべく採用マーケティングに取り組んできていた。しかし、「大学をはじめとした教育機関へ送る紙媒体の求人票や、掲載したオンライン求人媒体だと反応が芳しくない」といった声や、「就活イベントなどで集客した母集団が、自社の求める人材像とアンマッチしている」など、依然多くの採用における課題が解決できずにいる企業の声も多く聞かれる。

こうした中で、よりよく自社のことを理解してもらうことを目的として、採用マーケティングの一環として動画を活用する企業が増えてきている。動画はもちろん画像や文字情報に比べ、高い宣伝効果や訴求力が期待できる点がメリットだ。具体的には、イメージが難しい仕事の様子、社内の雰囲気や現場の緊張感、自社製品またはサービスを魅力的にアピールなど、動画でしか伝えられないコンテンツは数多くある。コロナ禍の前までは、大手就職会社によって年に数回催されていた大規模な就活エキスポや就活フォーラムなどでも、動画を活用したプレゼンを企業ブースで行う採用担当者も増えていた。

しかし、プロのディレクターや制作陣に動画制作を依頼するとなると、それは企業の採用予算にとっても決して安い買い物ではなく、それなりのコストが伴ってくる施策となる。企業はなぜ、コストがかかろうとも人材採用マーケティングにおける動画を使用した訴求に注力するのか。本稿では、採用マーケティングで動画を活用するメリットや主なポイントを紹介していく。

動画活用のメリット

採用マーケティングにおける動画活用が、一般的な動画広告と異なる点がある。それは、一般的な企業広告が、新しい自社サービスや製品の魅力を訴求する際に「より良く魅せる」ことにフォーカスすることで売り上げの最大化をはかるのに対して、採用における動画マーケティングは、「会社のリアルな姿を提示する」ことを通して「応募者の不安をなくす」ことで、採用側と求職者のアンマッチを最小化することを目指す点に特徴がある。

求職者が、これまで全く知らなかった、もしくは詳しく知ることがなかった企業に応募する際に、誰でも感じるであろう不安に対して、動画という大きな情報伝達力を持つ媒体を介して正しい情報を与えることで、その不安を払拭し、自社に好印象を与えることを主眼としているのだ。

また、一度制作した動画は自社の会社説明会や就活セミナーの企業ブース、その他座談会やグループディスカッションなど採用活動のあらゆる場面で活用することができる。

そのため、会社の規模感や印象といったポジティブなブランドイメージの定着をはかることや、実際に働く様子や働き方を紹介することで仕事への親近感を醸成すること、そして会社の事業や職種を理解してもらうことで入社後の即戦力化を目指すなどの効果を期待できる。ここでは、細かく採用活動に動画マーケティングを活用するメリットを見ていく。

1.  ネット検索結果の掲載順位を向上させ、より多くの層へリーチし、応募母集団を底上げする
オンライン動画プラットフォーマーの米Brightcove社によれば、自社ウェブサイトに動画を掲載すると自然検索時のトラフィックが157%増加することから、自社サイトの動画コンテンツ充実度が自然検索を通したトラフィック数向上に直結していることがわかる。また、動画コンテンツは他のコンテンツ種別に比べて12倍多く共有と拡散がなされるという調査結果もあり、文章や静止画のみのコンテンツに比べてより多くの層へリーチすることが期待できる。さらに、動画のある求人広告が、ない広告と比べても応募率が34%向上するとしたCareerBuilder社の調査データがあることから、オンラインでの採用施策に動画マーケティングを採用することは企業にとってメリットが大きいといえる。

2. 求職者との良質なコミュニケーションを通して、採用でのミスマッチを最小化する
採用マーケティングにおける動画活用は、前述のとおりインターネット検索での掲載順位や情報拡散の容易さ、そして応募率の向上に資することから、採用活動の主要プロセスである「認知・検討・興味・応募・選考・採用」の最初である認知段階で主に活躍する。しかし静止画と文字で構成されたパンフレット以上に印象を与えることから、採用活動の他の段階、たとえば興味や応募といった段階でも「従業員のリアルな仕事風景」などを伝えることで用いることができ、動画の訴求力は採用活動の後半戦でも大いに活用できる。また、求職者にとっても動画を通じて企業カルチャーが自分と合うかどうかの判断材料になったり、より具体的な仕事へのイメージが湧きやすくなるなど、企業と求職者の双方にとってメリットが大きい。

3. 採用活動の時間を短縮し、採用活動全体でのコスト削減を目指す
動画による訴求力を採用活動で最大限活用していくことで、従来のように無数の求人媒体へ採用予算を割き、求人広告を掲載したり、自社とマッチしない人材の書類選考や面接に割り当てる従業員のマンパワーなどにおける時間と予算のコストを削減する効果は大きく見込めるであろう。採用活動において動画マーケティングを活用し、多くの時間と労力を割いて掲載する求人媒体広告やミスマッチ人材の書類・面接選考から解放されることで、自社採用サイトへのトラフィックを増加させて効率よく応募率を高めながら、より多くの時間を自社の求める人材との選考活動や、内定者フォローなどに充てることが可能となる。

動画作成の方法とポイント

ここまで採用活動の施策として動画マーケティングを用いることのメリットを考えてきたが、採用サイトやオウンドメディアにおいて動画を活用する際には、どのようなことに留意しつつ、どのようなどのようなプロセスで掲載をするべきだろうか。

ほとんどのケースでは、動画を通じて「自社の魅力を求職者に訴求すること」を軸としていることから、従業員インタビューや職場の様子を切り込んだ映像などで、自社の姿を具体的に知るきっかけの提供となる。しかし、ただ動画を作れば採用活動で功を奏するかというと、そうは甘くない。動画を用いた採用活動でのマーケティングにも、採用活動を成功させるためのカギとなるポイントが存在する。ここでは、動画による採用マーケティングの手法をいくつか紹介していく。

1.  採用施策としての制作目的の明確化
動画を用いたマーケティングは、全て「目的」から逆算して企画が練り上げられていく。そのため、採用施策として動画活用が成功するかどうかは、まず制作目的を突き詰めるところに掛かっていると言っても過言ではない。「その動画で何がしたいのか」、「どういった人材に向けて発信するのか」、「採用活動のどの段階で用いるのか」、「そもそも本当に動画である必要はあるのか」など、時として制作自体の必要性も疑いつつ、動画の制作目的を明確化させていく作業は、怠ることができない最も重要なキーポイントとなる。たとえば、採用プロセスの最初である「認知」段階で冗長で説明口調の動画を用いる場合、採用における自社ブランディングの失敗と求職者のパッシングを招く可能性がある。目的から逆算して動画の尺(再生時間)や技法を選び、組み合わせていくことで、はじめて動画での効果的な訴求が実現できるのだ。

2. 採用活動での目的に沿った動画の制作
採用活動においての一施策として、動画制作の目的が明瞭なものとなった段階で、はじめて動画マーケティングの具体的な制作計画が始まる。前述したとおり、採用計画において、動画は自社を認知してもらう段階での使用シーンが最も多くなるが、採用スキーム全体をとおして効果的に用いることが可能だ。そのため、「認知」段階では、求職者に知ってもらうための自社ブランディング動画、「興味・応募」段階では、応募率を向上させるために自社の具体的な魅力を訴求する動画、「選考・採用」以降の段階では、最終選考へ進んでもらったり内定承諾を促す(いわば採用におけるコンバージョンの獲得)ため自社への志望度を更に向上させる動画など、採用活動のプロセスごとに最適な内容と尺を決定しながらターゲットを絞った動画を用意することがポイントだ。

3. 採用施策や計画に応じた動画の公開場所を策定
目的に応じて制作された動画を、オンライン・オフラインを問わずどのような場で公開するかも、動画マーケティングを成功させる大きな要素のひとつだ。たとえば、前出のより広い人材に自社を認知してもらうきっかけを創出する企業ブランディング動画は、Facebook/Instagram/Messengerのストーリー広告やTikTok広告で拡散させ、短い尺で抽象的な動画、または高い話題性をもたらす変わった切り口から自社を紹介する内容などが好ましい。

関心をもった求職者を自社の採用サイトやオウンドメディア、ランディングページなどに誘導した後は、自社で働くことへの熱意や仕事への魅力が伝わる強いストーリー性のある訴求動画をページ内に埋め込むことで、求職者の潜在的な興味を具体的な応募動機へと昇華させることを目指す。

その後応募に至った人材へは、選考過程において徐々に具体性を増す自社の説明動画を用意し入社後の仕事イメージを醸成することで、採用活動の全プロセスを通して動画マーケティングを効果的な採用施策として用いることができる。

まとめ

・活字や静止画よりも読み取れる情報量が多く、手軽であることから、動画による情報収集を好む傾向が増えた近年、コンピュータやスマートフォンの普及に伴うYouTubeのような動画共有サイトやTikTokなどの動画SNSの急速な普及により、動画マーケティングの市場がここ数年で大きく拡大している。

・これらデジタル時代のニューメディアでは、潜在的な顧客ターゲット層へのアプローチ手段としての動画マーケティングの重要度を企業に自覚させるに至っており、採用マーケティングも例に漏れず、採用施策としての動画の活用が多くの採用課題を解決する手段として注目されている。

・一般的なテレビなどで流れる企業広告では、自社商品やサービスを「より良く魅せる」ことにフォーカスするが、採用広告でこれを行うとミスマッチにより長期的視点で俯瞰すると大きなコスト負担増となり得る。そのため、採用広告では敢えて自社の「リアル」な職場や従業員の仕事の様子を発信することで、求職者とのミスマッチを最小化することを最も大きな狙いとする。

・企業が採用活動で動画マーケティングを活用するメリットは大きく、前出のミスマッチ防止に加え、自社採用サイトへの動画埋め込みからネット検索結果の掲載順位や、自社サイトへのトラフィック向上を通じた応募者数増加が期待できたり、求める人材を効率的に集客することで無駄な書類・面接選考から解放され、より多くの時間を優秀な人材の選考に充てられるなどが挙げられる。

・採用施策として動画を活用する際のポイントは、動画を制作する必然性すら疑うほどのクリティカルシンキングを用いた目的の明瞭化である。はっきりとした動画制作目的が存在してこそ、はじめてその目的を達成するための動画内容が検討でき、採用マーケティングに用いる動画の内容や制作技法、動画の長さなどが決まる。

・動画制作の目的を明確化し、採用活動のプロセス毎に合致した動画を制作した上で、制作された動画の尺や内容に応じて最も高いマーケティング効果が得られる場(自社サイトや動画SNS上など)で公開することで、採用活動の全ての段階で、動画を効果的に用いた採用マーケティングが実現する。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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