・採用オウンドメディアを導入するにあたって検討しておきたいポイント。
・自社と近い価値観や必要なスキルを持ったエンゲージメントの高い人材を獲得するには。
・オウンドメディア運用に欠かせないふたつの「キモ」とは?
・運用担当者はどういった観点で選任すればいいのか。
・どうやって情報を集め、コンテンツとして拡散するのか。
・長期的に運用するために準備しておくべきこととは?
オウンドメディア導入時に確認しておくべきこと
新たに自社オリジナルの採用メディアを立ち上げて、求職者に向けて自社の魅力を発信する採用オウンドメディアに注目が集まっている。
採近年はSNSなどを通じて、求職者は就職ナビなど既存媒体の定型的な情報だけでなく、社員構成や価値観など、企業内部のリアルな情報を収集しはじめている。
採こうしたニーズを的確に捉えた企業が、続々と採用オウンドメディアを立ち上げ、様々な形で情報発信を始めているのだ。
では、採用オウンドメディアを導入し実際に運用していくにはどのようなポイントを押さえればいいだろう。
採用オウンドメディアを導入するにあたって、最初に確認すべきは「なぜオウンドメディアを導入するのか」という【目的】が明確になっているか、ということ。
採そしてその前提として自社の採用活動における【課題】を洗い出し、どの課題を解決するためにオウンドメディアを導入するのか、ということを把握しておく必要がある。
オウンドメディアの役割を十分理解した上で、何を成果とするのかを明確にしておきたい。
次に重要なのは、募集する【職務】と自社の【価値観】をしっかり把握し、整理ができているか、ということ。
まず、【職務】に関しては、従来の募集要項にあるような「仕事内容(概要)」「勤務地」「勤務時間」「給与」「福利厚生」といった一通りの情報だけでなく、より詳細な情報を発信する必要がある。
例えば、
●プロジェクトストーリーや社員紹介などを通じたリアルな仕事内容
●職務の目的や達成すべき目標
●与えられる責任や権限の範囲
●入社後に社内外で関わりを持つ人や組織
●その職務で必要とされるスキルや資格、経験
などだ。
そして【価値観】に関しては、自社と求職者との間で共有できるようなコンテンツを発信し、求職者の共感を得るようにしたい。
従来は企業理念や行動指針などが示されてきたが、それだけでは共感できるコンテンツとはなりにくい。
より踏み込んだトピックとして、
●自社が意思決定する際のプロセスや考え方、何を大切にしているか
●どのような評価制度があり、どう機能しているのか
●ダイバーシティに対するアプローチ、具体的な施策
●研修(教育)制度の特徴と目的
●オフィス環境や社内イベントの紹介
などが考えられる。
この段階でできるだけ内容の濃い情報を用意しておくことで、導入後の運用を円滑にし、自社と近い価値観や必要なスキルを持ったエンゲージメントの高い人材を獲得できる可能性を高めることができる。
オウンドメディア運用のキモは「ヒト」と「ネタ」
【課題】【目的】【職務】【価値観】が明確になってオウンドメディアの運用を開始しても、発信数や更新頻度が低かったり、担当者の負担が大きかったりすればオウンドメディアを続けていくことは困難になる。
オウンドメディアの導入に際してもっとも大切なのはターゲットにリーチする良質なコンテンツである「ネタ」をそろえることだが、そのコンテンツを支える「ヒト」の存在も同じように大きい。
運用できるヒトがいなければいくらいいネタをそろえていてもメディアを続けることはできない。
採用オウンドメディアの担当者はできればチームか専任であることが望ましいが、兼任であってもメディアの発信や投稿に時間と労力をかけられるだけのリソースがないと長続きしない。
そして大切なのはその担当者が自社のオウンドメディアに対して愛着を持ち、熱心に取り組む思いを持っていること。
SNSなどでは担当者の「個性」や「語り口」でファンが増えることも多いからだ。
また「ヒト」とは担当者だけを意味するものではない。
オウンドメディアはその名の通り自社で育てていくものなので、担当者の上司や同僚はもちろん、経営層を含めた社員の全てとその家族など全社をあげてメディアに関わるという「ヒト」の情熱と応援が欠かせない。
逆に上司が担当者任せにして協力的でない場合や、兼任である担当者の業務が忙しくメディアにリソースを割けない場合などは魅力ある情報発信ができず、当初の目的を達成することは難しいだろう。
そして「ネタ」探しの問題も同様に、全社をあげて取り組むことで魅力あるメディアに育てることができる。
普段の業務で感じたちょっとした自社自慢であるとか、福利厚生制度が利用しやすくなりました、など細かな情報を頻繁に発信することで求職者の共感が得られるからだ。
ネタの拡散にあたってもできるだけ多くのヒトで行うことが望ましい。
SNSを利用したオウンドメディアでは拡散こそがターゲットへ届く最大の手段となる。
担当者自身が発信力を高めるのはもちろん、経営陣も含めた社内のヒトが喜んでシェアに協力してくれる雰囲気と体制作りが重要だ。
息切れしない運用のために
採用オウンドメディアの最大の目的はリードの獲得にある。マーケティングにおけるリードは見込み顧客だが、採用活動でのリードは「自社の求める人材」となる。
リードを獲得するためには、
1.細かいターゲット設定とそれぞれのターゲットに向けたコンテンツを作り、
2.そのコンテンツを読んだユーザーにどのようなアクションを起こしてもらいたいのか(例えば自社セミナーへの参加など)をあらかじめ細かく想定しておくと良い。
主なターゲット層には次のようなものがある。
・求職顕在層
採用メディアをはじめ、エージェントやハローワークなどで情報収集をはじめているターゲット層なので獲得には他者との競合が激しい。
・求職潜在層
就職や転職を意識してはいるが、まだ具体的なアクションを起こしていない層、または自社を就職の対象とは見なしていない層。
競合に先駆けてこの層に働きかけていけば多くのリードを獲得できる。
この層にはファン作りのための共感できるコンテンツ提供が有効と考えられる。
また、知人や先輩などからのアプローチでリファラル採用へのきっかけとすることもできる。
・自社の社員(とその家族)
前述したように採用マーケティングでは自社の社員もそのターゲットに含まれる。
社員に自社のファンになってもらうためのコンテンツ作りや社員がパフォーマンスを発揮しやすいコミュニケーション活動を行なっていくことで、社員はオウンドメディア上で良質な情報発信者となる。
社員からの情報提供コンテンツは求職潜在層へのアプローチとして有効だ。
・退職者
採用マーケティングにおいては、退職者も採用候補となり得る。
一度退職した元社員とSNSなどでつながりを保ち、再雇用する仕組みを組み込んでおけば急に経験者を募集しなければならない時などに活用が可能だ。
・過去不採用になった応募者、内定辞退者
選考途中で不採用になった、あるいは内定を辞退した応募者もターゲットになり得る。
お互いに時を経ることでスキルマッチやカルチャーマッチなどができる可能性があるからだ。
こういった幅広い繋がりを資源として維持し、そこに有効なコンテンツを提供し続け行くことでより多くのリードを獲得することができるようになる。
こうしてターゲット層別に長期的に情報発信できるコンテンツをあらかじめ作成しておくことで息切れしないオウンドメディア運用が可能となる。
まとめ
・採用オウンドメディア導入時には、自社の採用活動における【課題】と「なぜオウンドメディアを導入するのか」という【目的】とを明確にしておく。
・導入前に内容の濃い情報を用意しておくことで、導入後の運用を円滑にし、自社と近い価値観や必要なスキルを持ったエンゲージメントの高い人材を獲得できる可能性を高めることができる。
・オウンドメディアでは、担当者やその上司や同僚はもちろん、経営層を含めた社員の全てとその家族など全社をあげてメディアに関わるという情熱と応援が欠かせない。
・情報発信においても、担当者自身が発信力を高めるのはもちろん、経営陣も含めた社内のヒトが喜んでシェアに協力してくれる雰囲気と体制作りが重要である。
・オウンドメディアにおいてリードを獲得するためには、
1.細かいターゲット設定とそれぞれのターゲットに向けたコンテンツを作り、
2.そのコンテンツを読んだユーザーにどのようなアクションを起こしてもらいたいのかをあらかじめ細かく想定しておく。
・求職顕在層から入社自体者までをふくめた幅広いターゲット層別に長期的に情報発信できるコンテンツをあらかじめ作成しておくことで息切れしないオウンドメディア運用が可能となる。