2023.5.29

ピアボーナスとは?失敗しないための対策と導入企業の事例を紹介

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従業員同士が贈り合うボーナスをピアボーナスと言い、この仕組みを導入すると、組織風土の改善や従業員のモチベーション向上などにつながるとされている。

この記事では、ピアボーナスとはどのようなものなのか、具体的なピアボーナスに関するツールの紹介、実際にピアボーナスを導入している企業の事例、近年日本で普及している理由について解説する。さらに、ピアボーナス導入のメリットやデメリット、導入で失敗しないための対策もチェックしよう。

ピアボーナスとは従業員同士で贈り合えるボーナスのこと

ピアボーナスとは、「peer(仲間、同僚)」と「bonus(報酬)」の2つを組み合わせた言葉だ。通常のボーナスは企業から従業員に支給するが、ピアボーナスは従業員同士で贈り合うボーナスを指す。上司が部下を評価する形ではなく、従業員同士で感謝の気持ちとともにお互いを評価する、新たな報酬制度の形である。

とはいえピアボーナスは、従業員同士で直接お金のやり取りをするわけではない。アプリやシステム上で、何らかのアイテムに交換できるポイントや、少額の金券など、さまざまな形で贈り合う。また、給与や通常のボーナスとは別のインセンティブとして支払われることが多いため、「第3の給与」と呼ばれることもあるようだ。

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ピアボーナスの元祖はGoogle

ピアボーナスは、もともとアメリカのGoogle社が発祥の制度だといわれている。従業員の評価制度のひとつとしてGoogleが採り入れていると話題になり、導入する企業が増えたようだ。

Googleがピアボーナスを導入したのは、従業員同士が互いに承認し、讃え合うことによって心理的安全性が高まり、強いチームが形成されることを狙ったためである。

関連記事:チームのパフォーマンスを高める上で重要な心理的安全性(Psychological Safety)を解説

Googleのピアボーナスは150ドル(約2万円)と高額

Google内でピアボーナスとして贈れる金額は、1回150ドル(現在のレートで約2万円)と高額である。ただし、「同一人物には6ヵ月間ピアボーナスを贈れない」という条件が定められているそうだ。また、ピアボーナスを贈るためには上司の承認が必要であり、直属の上司や部下には報酬を贈れない、などの取り決めもある。

Googleによれば、ピアボーナスの導入によって数字の目標がなく成果が見えにくいような職種でも適切に評価をしやすくなったそうだ。Googleでは、ピアボーナスのほかにも、個人に焦点を当てた施策が多く講じられている。

サンクスカードとの違いは?

ピアボーナスと似た制度に、サンクスカードというものがある。サンクスカードとは、従業員同士で賞賛や感謝の気持ちを名刺サイズのカードにしたためて伝えあうもので、コミュニケーションの活性化や信頼関係の構築促進、自己肯定感の向上などにつながるとされている。

サンクスカードは、能動的に相手への気持ちを伝えることを重視した制度であり、ピアボーナスは成果や行動にふさわしい報酬を贈り合う制度である。両者の違いを端的にあらわすと、サンクスカードには報酬がつかず、ピアボーナスには報酬がつく形となる。

サンクスカードとピアボーナスは、上司からではなく従業員同士で評価しあうこと、システムを通して感謝の気持ちを伝えやすくなること、などの点が共通する。

ピアボーナスのツール例5選

サンクスカードの場合、手書きのメッセージカードを使うケースがあるが、ピアボーナス制度を導入する場合、ツールを活用することが多いだろう。ピアボーナスのツールには、以下のようなものがある。

● Unipos(ユニポス)
● OKWAVE GRATICA
● TUNAG
● TeamSuite
● thanks!

それぞれのツールの特徴を確認していこう。

Unipos(ユニポス)

Unipos(ユニポス)は、外部ツールとの連携機能が充実しているピアボーナスツールだ。投稿数を増やしてツールをうまく活用できるように、拍手機能などの工夫がされている。感謝と称賛の気持ちを直接贈ったり受け取ったりするだけでなく、その内容を見て第三者が拍手をすることで、メッセージを送られた人に対して少額のインセンティブが発生するのだ。

Uniposはベンチャー企業から大手企業まで幅広く導入しており、約200社もの企業が利用している。連携できるツールとして、Workplace、ChatWork、Microsoft Teams、Slackなどがある。

なお、当社ProFutureではピアボーナス制度をUniposで運用している。Unipos社の概要や取り組みについては、下記の事例紹介ページでまとめているので、ぜひ参考にしてほしい。

関連記事:BtoBはとにかく事例!認知ゼロの状態から徹底した導入事例 ベンチャーから大手企業へリーチ拡大に成功した要因とは(Unipos株式会社のHRプロ活用事例)

GRATICA(グラティカ)

GRATICA(グラティカ)は、日本最大級のQ&Aサイトである「OKWAVE」を運営する企業が提供しているツールだ。

サンクスカードが主体であるものの、カードにチップを添えられるようになっていて、そのチップでスポンサー企業の優待品と交換したり、慈善団体へ寄付したりできる。自社のニーズにあわせて無料プランと有料プランが選べるほか、有料の場合は活用支援サービスの使用も可能だ。

TUNAG(ツナグ)

TUNAG(ツナグ)は、施策の設計から運用、改善までをワンストップで支援するサービスで、サンクスカード機能のほかに「社内ポイント」のシステムも提供している。

自社独自のエンゲージメント施策を設計できるため、組織の規模や業態、現在の課題などへの最適化が可能だ。ツールを従業員が日常的に利用できるように、チャットやカレンダー、アンケート、受け付け機能など、さまざまな機能が充実していることも特徴である。

TeamSticker(チームステッカー)

TeamSticker (チームステッカー)(旧TeamSuite)は、デジタルサンクスカードやデジタルギフトが贈り合えるツールだ。サンクスカードには、楽しいデザインのオリジナルステッカーを貼ることもできる。Microsoft Teamsなどの既存のビジネスツールと連携できることも魅力といえるだろう。

thanks!

thanks!はSpecial thanks!機能によって感謝の気持ちとポイントを贈り合うことができるピアボーナスツールだ。ポイントはTポイントやdポイント、Pontaポイント、Amazonギフト券などに交換できる。初期費用0円で導入可能なプランも用意されているのも特徴といえるだろう。店舗運営企業における導入事例がとくに多いようだ。

ピアボーナスや社内通貨を導入している企業事例

実際にピアボーナスや社内仮想通貨を利用している事例には、以下のような企業がある。

● メルカリ:メルチップ(mertip)
● LIG:LIGコイン制度
● じげん:GAT

それぞれの事例を確認していこう。

メルカリ:メルチップ

フリマアプリを運営する株式会社メルカリでは、Unipos(ユニポス)を利用してメルチップ(mertip)という名前のピアボーナスを従業員同士で贈り合っている。

贈れるメルチップの量は毎週月曜日にリセットされるため、「1週間のうちにメルチップを必ず贈ろう」という心理になる従業員が多いようだ。

メッセージ累計数ランキングの上位者は、気軽なコミュニケーションツールとしてメルチップを活用している。

LIG:LIGコイン

Web制作やWebメディアなどを運営している株式会社LIGには、LIGコイン制度なるものが用意されている。LIGコインとは、定量だけでは測れないような企業への貢献を、社内通貨に還元する制度のことだ。

たとえば、自社で運営するメディアの記事を期日内に入稿することで、20,000LIGコインがもらえる。一方で、無断のまま入稿期日に遅れてしまうと、50,000LIGコインがマイナスとなる。

じげん:GAT

Webメディアの企画運営を行う株式会社じげんでは、GATという社内通貨制度を実施している。感謝の気持ちを書いた一言メッセージとともに、社内通貨であるGATを従業員間でプレゼントでき、貯まったポイントはAmazonポイントなどに交換することも可能だ。

このGATという仕組みは、過去にテレビ番組において、社員同士のコミュニケーション力アップにつながるユニークな人事システムとして紹介されたこともあるそうだ。

なぜ日本でもピアボーナスが普及しているのか

ピアボーナスは、アメリカをはじめとした海外の企業で広く活用されている制度であり、日本の企業でも近年普及している。

日本でもピアボーナスが注目されている理由には、働き方改革が少なからず影響しているだろう。働き方改革は、働き方の多様化や労働力確保による課題の解決を目的として推進されているものだ。働き方改革の推進のためには、業務の生産性を各々で向上させる必要がある。そこでピアボーナスの導入により、従業員エンゲージメントを高め、仕事へのモチベーションを高い状態にして、生産性向上につなげようとしているのだ。

また、コロナ禍を経て、リモート・テレワーク・在宅勤務が急増したことも、ピアボーナスの普及を後押しした要因だろう。従業員間のコミュニケーション不足が多くの企業で課題となったのだ。ピアボーナスでは、従業員同士の感謝や称賛の気持ちを伝えて報酬を贈り合うため、直接顔を合わせなくてもコミュニケーションを活発化させられるのだ。

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ピアボーナス導入で得られる4つの効果・メリット

ピアボーナスを導入することで期待できる効果やメリットは、以下のようなものだ。

● 組織風土の改善
● 従業員同士のコミュニケーションの活性化
● 仕事の評価への納得感を高める
● 周囲からの評価の可視化

組織風土の改善

お互いを称賛し合う仕組みであるピアボーナスを導入すると、称賛の文化の醸成につながる。そのような環境になると従業員の承認欲求が満たされ、企業やチームメンバーに対する愛着心が増幅する可能性がある。

従業員同士のコミュニケーションの活性化
ピアボーナスの導入には、従業員同士のコミュニケーションを活性化できる効果もある。各部門がどのような貢献やサポートをしてくれているのかがわかり、組織のサイロ化を防止し、部署や役割単位での最適化ではなく、企業全体としての最適化もしやすくなる。

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仕事の評価への納得感を高める

ピアボーナスの導入によって、これまで評価がしにくかった、業績に直結しない行動なども評価されやすくなり、従業員の納得感を高められる可能性がある。また、仕事への評価が変わることで、離職率の低下や優秀な人材の流出防止にもつながる。

周囲からの評価の可視化

実際に周りからどのようなことが評価されているのかがピアボーナスの行き来で可視化できるため、従業員が良いことを自主的におこないやすくなるというメリットもある。

ピアボーナス導入の懸念事項・デメリット

ピアボーナスの導入にはメリットだけでなく、当然ながらデメリットもある。導入にあたって懸念となる事項やデメリットは、以下のとおりだ。

● 部門や個人間のやり取りにかたよりが出やすい
● 形骸化するリスクがある
● 導入にはコストがかかる
● 一度導入すると廃止しにくい

ピアボーナスは、制度をよく使うチームと形骸化してしまうチームの差が出やすく、利用者にかたよりが出やすい。特定の従業員に報酬が集まりすぎる、密かにサポートに徹している従業員が評価されにくい、などの課題を見つけたら、ツール提供会社の支援サービスやカスタマーサクセスなどを利用して改善に取り組もう。

導入コストのほかに、福利厚生費としてのコストがかかることにも注意が必要だ。また、導入後に廃止をすると、貢献や称賛の文化を重視しない会社だという、良くない印象を従業員や取引先などに与える可能性がある。そのため、一度導入すると廃止しにくいシステムだということも考慮すべきだろう。

関連記事:カスタマーサクセスとは!具体的な定義や手法を解説

ピアボーナスの導入で失敗しないためには?

ピアボーナスの運用に失敗しないためには、盛り上がる仕組みづくりや、ツール会社のカスタマーサービスの活用などが重要である。

たとえば、導入したばかりで使いなれていない時期には、率先してピアボーナスを使うメンバーを設定すると良いだろう。また、新入社員へのwelcomeピアボーナスや、季節のイベントと紐付けたピアボーナスなど、イベント開催などを行うと、社内に浸透しやすくなるはずだ。

マネージャーや役職者なども活用イベントなどに積極的に参加して、部下をきちんと称賛し、見えにくい頑張りを確認し、会議で良い投稿を取り上げる、などを行えば、ピアボーナスの活性化につながるだろう。

もちろん、誰もが使いやすく、機能性のすぐれたピアボーナスシステムを選択することも重要だ。ツール会社のカスタマーサービスやカスタマーサクセスなどを利活用し、有効な使い方の提案を受けてみると良いだろう。

まとめ:ピアボーナスの活用で組織改善や活性化を目指そう

ピアボーナスとは、従業員同士で贈り合えるボーナスのことだ。もともとはアメリカのGoogle社が発祥とされており、日本でも昨今の働き方改革や、リモート勤務の急増などの影響から、ピアボーナスを導入する企業が増えている。

ピアボーナスの導入により、従業員同士で讃え合うポジティブな空気を醸成でき、コミュニケーションの活性化や、仕事の評価への納得感を高められる、などのメリットが得られる。その一方で懸念事項もあるため、失敗しないためのポイントを理解してから導入することが重要だ。

今回紹介したピアボーナスのメリットやデメリット、ツール集、企業の導入事例、失敗しないためのポイントなどをしっかりと理解したうえで、実際の企業活動に役立てていこう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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