昨今の企業では、「心の浄化作用」を意味するカタルシス効果をメンタルヘルスに活用している。この記事ではカタルシス効果とは何か、意味や由来、実際の例、メリットなどをわかりやすく紹介する。さらに、活用に必要なスキルや注意点も解説するため、併せてチェックしよう。
目次
カタルシス効果とは
「カタルシス効果」とは、心の中に溜まっていた不安や不快感、いらいらなどを解放させることで、気分がすっきりする現象のことを指す。そもそも「カタルシス」とは、心の中にある不安やいらいら、悲しさ、もやもやした感情などを何らかのきっかけで吐き出し、解放させることである。語源となったのは、ギリシア語で「浄化」を意味する言葉だとされており、カタルシス効果のことを「心の浄化作用」と表現する場合もある。
それでは、カタルシス効果の意味や由来から、さらに詳しくチェックしていこう。
カタルシス効果の意味
カタルシス効果とは、心の中にあるもやもやなどのネガティブな感情を解放して、すっきりさせることを意味する言葉だ。精神医学用語や心理学用語としても使われていて、心の緊張を解く治療方法として採り入れられている。
ネガティブな感情は、心の中だけに抑え込もうとすると、かえって強いストレスを感じてしまうことがあるものだ。マイナスの感情を口にするだけでも、ストレスが緩和されて気持ちが軽くなることがある。このような「言葉にしたらすっきりした」と感じる経験は、カタルシス効果によるものなのだ。
映画を見て思い切り泣くなどの自己完結による方法でも、人に話を聞いてもらうことでも、カタルシスによる効果を得られる。心理カウンセリングの治療の際も、アドバイスよりも患者の話を聞くことによるカタルシス効果を活用しているほど、効果の高いものだ。
カタルシス効果の由来
カタルシスとは、元々「浄化」「瀉血」「排泄」を意味する古代ギリシャの医学用語であった。このうち瀉血とは、汚れた血液を体の外へ排出することを指す。薬剤で胃の中のものを吐き出させたり、下痢によって排泄させたりするなど、人体から「けがれ」を出すという意味で使われていた。
その後、哲学者であり演劇にも通じていたアリストテレスによって、カタルシスの意味が変化した。アリストテレスは、「悲劇を見ることで言葉にならない苦しみや悲しみを代弁してもらい、自分の外に吐き出せるのだ」と解釈した際に、カタルシスという言葉を用いたのだ。これ以降、「魂の浄化」「精神的な浄化」という意味でも使われるようになっていった。
精神科領域においては、「煙突掃除療法」とも呼ばれるようになった。負の感情を溜め込むと正常な感情や真の欲求が抑圧されてしまい、心身に影響を及ぼしてしまうというものだ。本人も気づかないでいる感情を開放させることで、コンプレックスの解消にもつながると言われている。
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カタルシス効果の事例
カタルシス効果の事例は、以下の通りだ。
<誰かに悩みを話したとき>
誰かに悩んでいることを相談したり、共感してもらったりすると、カタルシス効果が働いて感情がすっきりすることがある。カウンセリングだけではなく、友人とランチに行って話すだけでも効果的だ。信頼できる人に悩みを相談して理解してもらえると、特に心の浄化作用が起こりやすい。
<映画や音楽、本などを楽しむとき>
映画や音楽、本などでもカタルシス効果が働きやすい。自分と同じような境遇の人が出てくる映画を観賞したり、自分と似た経験に関する歌を聞いたりすると、日頃よりも感情移入しやすくなることがある。これらもカタルシス効果によるものである。
つられて涙を流した場合には、よりカタルシス効果を得られてすっきりしやすい。
<恋愛のとき>
恋愛に関する悩みを相談したときに、カタルシス効果が働く。さらにカタルシス効果には、悩みを相談した相手に対して、「安心できる」などの好意を持ちやすくなる効果もある。
<スポーツを観戦したとき>
スポーツを観戦したときにも、みんなが一体になって盛り上がれるときなどに、感情を発散できてカタルシス効果が得られる。
このように、カタルシス効果は様々なシーンで発揮される。
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カタルシス効果のメリット
カタルシス効果によって得られるメリットは、以下の通りだ。
<ストレス解消効果がある>
カタルシス効果によって抑えられていたものが解放され、自分の感情を浄化できると、ストレス解消につながる。頭も心もすっきりとするため、前向きな気持ちで冷静に物事を考えられるようになるだろう。
<心身の健康につながる>
気持ちを押し殺したままでは、体の健康にも影響したり、攻撃性を強めてしまったりすることがある。適切に自分の感情を開放することによって、心身を健康に保てるのだ。
<信頼関係を築きやすい>
相談を受けたときに相手の話を遮らずによく聞くと、相手に安心感を覚えてもらいやすい。ビジネスシーンでも、周りとの信頼関係を築きやすくなる。
<QOL(Quality of Life)が向上する>
QOLとは、生活の質のことである。QOLを決める要素は、「良好な人間関係」「心身の健康」「やりがいのある仕事」などだ。心の中に溜まっていたネガティブな感情を浄化させることで心身を健康にできれば、QOLの向上にもつながるだろう。
カタルシス効果は、緊張感やストレスの緩和につながるなど、企業におけるメンタルヘルスケアにおいても有効だ。ビジネスシーンでも上手く採り入れていくと良いだろう。
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カタルシス効果の活用に必要なスキル
カタルシス効果を上手にビジネスシーンなどで活用したいのであれば、以下のスキルが必要だ。
<コミュニケーションスキル>
相手が話しやすいように上手い質問を考えるなど、コミュニケーションスキルの高さはカタルシス効果の活用に必要だ。「もっと話したい」と相手に思ってもらえるほど話しやすい状態ならば、カタルシス効果をしっかりと引き出せるだろう。
<傾聴力>
自分の意見を言うのではなく、相手の話したいペースに合わせて話に耳を傾けるスキルも重要である。傾聴力は「積極的傾聴」とも呼ばれており、相手が本当に話したい内容を上手く引き出して理解できることは、カウンセリングや面談の際に必要なスキルだ。対話の途中で沈黙があっても温かく見守り、内容を遮ったり否定したりせずに話を聞いてみるようにすると良いだろう。
<思考力>
どのようにコミュニケーションを取れば良いのかを考える力も大切だ。「言わなくてもこう思っているだろう」と勝手に判断してしまうのではなく、相手の立場に立ってしっかりと思考を働かせるようにしよう。
<表現力>
自らが話し手となる場合には、相手に対して上手く気持ちを伝えらえるように、言語化できる表現力が必要となる。ジェスチャーも含めて、自分なりの表現ができるとカタルシス効果を得やすくなるだろう。
自分でカタルシス効果を得たい場合には、これまでに自分の心がポジティブになれたりリラックスできたりした経験を再現できるように、自分を見つめ直してみると良いだろう。感情移入する映画や聴くとポジティブになれる音楽、幸せな気持ちになれる写真などを理解していれば、カタルシス効果による心の浄化をしやすくなる。
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カタルシス効果を活用する際の注意点
このように、カタルシス効果には様々なメリットがあるため、ビジネスシーンで活用すれば、職場環境をより良い状態にできるものだ。ただし、カタルシス効果を活用する際には以下のような注意点もあるため、気をつけておくべきである。
<自分の意見を押し付けない>
カタルシス効果では、相手の話したネガティブな感情に共感することが重要だ。決して自分の意見を押し付けたりせず、「そうなんだね」と相槌を打つなどして、ただ受け止めると良いだろう。特に反対意見を伝えてしまうと、相手は「自分の話をわかってもらえない」と感じてしまうため、カタルシス効果を得られずに関係が悪化する恐れがある。
<無理に聞き出さない>
相手にカタルシス効果を感じてもらいたいと思っても、無理に聞き出してはいけないことに注意しておこう。相手が望んでいなければ、無理に聞き出すことが逆効果になる恐れがある。まずは相手との信頼関係を築くことなどから始めると良いだろう。
<心理的安全性の確保>
安心して自分の考えや気持ちを話せるような状況を作っておくことも重要だ。カタルシス効果を得るために話をしたいのであれば、相手が話しやすい場所や雰囲気であるかなどを検討しておこう。
これらの注意点を理解した上で実施しないとカタルシス効果が得られず、さらに相手の信頼を損なう結果となる恐れがある。カタルシス効果によってストレスの解消や心身の健康などにつなげたいのならば、しっかりと気をつけた上で実施しよう。
また、もしも自分が相談したい場合には、打ち明ける相手をしっかりと選ぶことが重要だ。自分の本音を吐き出せる相手かどうかを考えて、ある程度仲が良い相手に話すと良いだろう。一方的に意見を言わずに、じっくり話を聞いてくれる人かどうかも考えておくことをおすすめする。
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まとめ
カタルシス効果とは、心の中にあるもやもやなどのネガティブな感情を解放して、すっきりさせることである。例えば「言葉にしたら気持ちがすっきりした」と感じた経験は、カタルシス効果によるものだ。
カタルシスによる効果を得られるのは、「誰かに悩みを話したとき」「映画を見て思い切り泣いたとき」「音楽を楽しんだとき」「スポーツを観戦したとき」など、様々なシーンがある。また、ビジネスシーンでも上手くカタルシス効果を採り入れることで、周りとの信頼関係を築きやすくなる、緊張感やストレスの緩和につながるなどの効果を得られる。
ただし、カタルシス効果を得ようとする場合には注意すべきポイントがいくつかある。今回ご紹介した内容をしっかりと理解した上で、実際の企業活動で活用していこう。