2022.11.30

従業員が人事異動を拒否したら?対応方法を会社視点から解説

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企業は従業員の処遇を決める権限を持っている。そのため、従業員は発令された人事異動を原則として拒否できない。しかし、正当な理由がある場合に限っては拒否も認められることがある。

この記事では、人事異動の拒否が認められる条件や従業員に拒否された場合の対応、トラブルを防止する方法について解説する。

人事異動とは?人事施策として実施する目的

人事異動とは、従業員の部署や事業所、役職を変更することだ。ただし、人事異動には法的な定義が存在しないので違法、罰則などの措置がない。そのため、会社によっては子会社やグループ会社に出向や転籍といった人事異動がケースとして存在する。

人事異動を行う一般的な目的は以下の3つだ。

・ 事業方針
・ 人材育成
・ 組織の活性化

新規事業の立ち上げや強化したい部署、人員不足の部署といった事業方針による人事異動は、どの会社でも行われている。スキル向上や経験を積むといった人材育成を理由とした人事異動も珍しいケースではない。

また、組織の活性化を理由に人事異動を行うケースも存在する。異動する人材が主役ではなく、ノウハウの伝達や業務効率化、問題解決といった組織に対するアクションを目的とするケースもある。

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従業員は人事異動を拒否できる?

日本では、企業から発令された人事異動を拒否できないのが原則である。ただし、正当な理由がある場合に限っては拒否も認められている。ここでは、人事異動を拒否できない理由や拒否した場合の処遇、拒否できる条件について解説する。

原則として拒否できない

従業員は、企業から発令された人事異動を原則として拒否できない。なぜなら、企業は従業員に対し、処遇を決定する権限を認められているからである。正当な理由がなく拒否した場合、懲戒処分の対象となって降格や減給、懲戒解雇になる可能性がある。

その反面、雇用した従業員を簡単には解雇できない。これは企業による統制を受ける見返りに、従業員は雇用の継続という恩恵を受けるという関係を意味する。

正当な理由があれば拒否できる

正当な理由であれば、人事異動の拒否も認められる。人事異動の発令は、雇用条件の範囲内でのみ認められている。そのため、雇用契約で勤務地や職種が限定されていて、それ以外の場所や職種への異動を命じられた場合には拒否できる。契約所定の範囲を超える人事異動を命じた場合には、企業側の違反となる。

条件の範囲内であっても、やむを得ない事情がある場合は拒否が可能だ。「介護をできる者がほかにいない」「病気を治療できる病院が決まっている」といった事情があるのにもかかわらず異動を命じられた場合には、拒否できる正当な理由として認められる。

ただし「業務内容が嫌」「引っ越したくない」といった理由は、個人的な問題であるため正当な理由として認められない。

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拒否されたときの対応方法

人事異動は原則として拒否できない旨を伝えていたとしても、従業員から拒否される可能性はゼロではない。拒否されることを想定し、以下の対応をすることで問題を解決できる。

・ 拒否をする理由を探る
・ 就業規則・雇用契約書に問題がないか確認する
・ 人事異動が必要な理由を伝える
・ 場合によっては昇給や昇格、解雇などあらゆる策を検討する
・ 専門家や専門機関に相談する

ここでは、人事異動を拒否されたときの対応方法について解説する。

拒否をする理由を探る

従業員に人事異動を拒否された場合、まずは拒否する理由を探ることからはじめよう。正当な理由があるのにもかかわらず人事異動を強行した場合、違法と判断される恐れもあるためだ。

ただし、拒否する理由は具体的でなければならない。「親の介護をするため」だけでは、理由として具体性に欠ける。介護が必要な頻度、要介護認定やほかに介護できる人の有無といった内容を具体的に確認し、異動した場合にどのような問題が発生するのかを把握したうえで、処遇を決定する必要がある。

就業規則・雇用契約書の内容に抵触しないか確認する

就業規則や雇用契約書に問題がないかを確認することも大切だ。前述したように、人事異動は契約条件の範囲内でのみ許されている。契約条件を超える範囲で人事異動を強行した場合、従業員から「不当な人事異動を行った」と訴えられる可能性もあるのだ。

また、就業規則に異動を拒否できない旨が記載されていない場合にも、拒否が認められるケースがある。雇用契約書や就業規則を確認したうえで処遇を決定する必要があるのだ。

人事異動が必要な理由を伝える

正当な理由がないにもかかわらず人事異動を拒否された場合、人事異動が必要な理由を伝えることが大切だ。この場合、原則として拒否できないことを伝えたうえで、従業員の性格や状況に応じて「なぜ人事異動するのか」を説明する必要がある。

手当やスキルアップ、異動後の条件といった従業員のメリットを伝えれば、受け入れてもらえる確率は上がるだろう。伝え方を工夫することが従業員に納得してもらうポイントだ。

場合によっては昇給や昇格、解雇などあらゆる策を検討する

場合によっては、昇給や昇格、解雇といった策を検討することも必要だ。正当な理由がなければ拒否できないとはいえ、本人が納得せずに人事異動を強行した場合、モチベーションが下がる可能性も考えられる。

人事異動を拒否するからには、金銭面や家庭の事情など従業員なりの理由があるのだ。昇給や昇格、家族へのサポートといった条件を従業員と調整することで、円満に人事異動を行える。

ただし、話し合いを重ねても人事異動を拒否する場合には、業務命令違反による懲戒処分の検討も必要だ。場合によっては解雇に至る可能性もあるだろう。懲戒解雇をする場合、その理由や処分が解雇に相当する内容なのかを厳しく判断される。

そのため懲戒解雇に踏み切る場合には、就業規則に則って正しい手順で対応することが大切だ。

専門家や専門機関に相談する

人事異動を受け入れてもらえない場合や懲戒処分に踏み切る場合、専門家や専門機関に相談することも大切だ。相談先としては以下が挙げられる。

・ 社会保険労務士(社労士)
・ 社労士会労働紛争解決センター
・ 弁護士

顧問社労士がいる場合、その社労士に相談することが先決だ。顧問社労士であれば自社の状況を把握しているため、どのような対応をすればいいのかを的確に提示してくれるだろう。自社と労働関係法令のどちらにも精通している社労士に相談することで、早期解決につながる。

相談できる社労士がいない場合には、社労士会労働紛争解決センターに相談するのもひとつの方法だ。社労士会労働紛争解決センターの「あっせん手続き」を利用すれば、会社側と従業員側が直接対面せずに和解に向けた対応を進めてくれる。費用を抑えたうえで迅速に解決できるため、相談する価値のある機関だ。

従業員に訴えられた場合は、弁護士に相談する必要がある。社労士では紛争解決に対応できる範囲に限界があるため、内容によっては対応できない場合も考えられる。法律や紛争の専門家である弁護士がトラブル発生時の適切な相談先だ。

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人事異動に関するトラブルを未然に防ぐには?

人事異動に関するトラブルは、以下の対応をすることで未然に防止できる。

・ 就業規則や雇用契約書の記載内容を見直す
・ 従業員の業務や家庭の状況を把握する
・ 人事異動の必要性を理解してもらう

人事異動を強行するのではなく、従業員に納得してもらえる状況をつくることがポイントだ。ここでは、人事異動に関するトラブルを未然に防ぐ方法について解説する。

就業規則や雇用契約書の記載内容を見直す

人事異動に関するトラブルを防ぐためには、就業規則や雇用契約書の記載内容を見直しておくことがポイントだ。就業規則の人事異動に関する内容は、問題が発生しない限り一般的な内容になっており、実態に沿っていないケースがある。人事異動に関連する規定を見直し、自社の実態に沿った内容に改定することが必要だ。

雇用契約書の内容についても見直す必要がある。記載の範囲を超える異動の可能性がある場合は、その旨を記載することでトラブル防止につながるのだ。

従業員の業務や家庭の状況を把握する

従業員の業務や家庭の状況を把握することも、トラブルを防止するポイントだ。育児介護休業法や労働契約法によって、人事異動に対する配慮を求められる可能性が高まっている。

従業員にとって望まない人事異動を命じた場合、企業側に非がなくても退職につながるケースもあるだろう。人材の流出は企業にとっては損失となる。ミスマッチを防止するためにも、従業員の業務に対する姿勢や考え方、家庭の事情を把握し、従業員に適した人事異動を考えることも重要だ。

人事異動の必要性を理解してもらう

人事異動の必要性を理解してもらうことを忘れてはならない。どんなに正当な理由でも、必要性を伝えていないことで、人事異動に納得してもらえないケースも考えられる。

必要性を理解してもらうには、納得してもらえるだけの材料を準備することが必要だ。「人事異動が必要となる組織体制なのか」「目的や効果は明確になっているか」を見直し、日頃から周知することで、人事異動の必要性を理解してもらえるはずだ。

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まとめ

人事異動とは従業員の部署や事業所、役職を変更することであり、会社によっては子会社やグループ会社への出向や転籍をする場合もある。その目的は事業方針や人材育成、組織の活性化であるのが一般的だ。

日本では、原則として会社が命じた人事異動を従業員が拒否できない。ただし、雇用条件を超える範囲や、やむを得ない事情がある場合は拒否できる。

正当な理由がない場合であっても、従業員から人事異動を拒否される可能性はゼロではない。拒否された場合にはその理由を探り、就業規則や雇用契約書に問題がないかを確認することが大切だ。

人事異動が必要な理由を伝えたうえで、昇給や昇格、解雇といったあらゆる策を検討する必要もある。場合によっては、専門家や専門機関への相談も検討すべきだろう。

人事異動を行う際には「就業規則や雇用契約書の見直し」「従業員の業務や家庭の状況を把握」「人事異動の必要性を理解してもらう」といった対策をとることで、トラブルを未然に防止できる。人事異動を強行するのではなく、受け入れてもらえるような環境を作ることがポイントだ。

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監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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