分析や評価を意味する「アセスメント」は、人事領域でも使用されている用語だ。人材の能力評価に使用されており、適切な人員配置や採用時のミスマッチ防止には欠かせない。
人材アセスメントの導入により、評価の指標や人材のミスマッチ防止につながるといったメリットがある一方、労力がかかるといったデメリットも存在する。
この記事ではアセスメントについて、その定義や導入の効果、人材アセスメントの手法を解説する。
目次
アセスメントとは?人事領域での意味
アセスメントとは、評価や分析を意味する用語だ。医療や建設など様々な現場で使用されており、人事領域では人材の能力評価に使用されている。人事領域には2種類のアセスメントが存在しているが、1つのアセスメントしか実施していない企業が多いのが現状だ。
ここでは、アセスメントの意味や使用例、2種類のアセスメントについて解説する。
アセスメントとは
アセスメントとは「客観的に評価する」ことを意味する用語だ。元々は税金に関する場面で使用されていた。人事領域においては、人材の能力を評価する際に使用されている。
医療現場で患者の状況を分析する「看護アセスメント」や、建設現場で土地開発の影響を分析する「環境アセスメント」のように、〇〇アセスメントといった使われ方をするのが一般的だ。
人事領域におけるアセスメント
人事領域では、以下の2種類のアセスメントが存在する。
・ 人材アセスメント
・ 組織アセスメント
人材アセスメントは、従業員の適性や能力を定量的な基準で評価するものだ。これは組織内で適切な配置をすることを目的としている。定量的な基準がない場合、評価者の主観が入った評価になるだけではなく、評価自体が抽象的になってしまう。定量的に評価することで、人材の能力や適性を客観的に評価できるのだ。
組織アセスメントとは、組織内にどのような能力や適性を持っている人材が多いのかを分析することを指す。この手法では、活躍している人材や定着している人材を分析できる。
人材アセスメントと組織アセスメントは、連動することで効果が上がる。人材自体を分析し、組織に必要な人物像を抽出することで、採用活動にも活かせるのだ。
しかし多くの企業では、組織アセスメントを実施していない。組織においてどのような人材が必要なのかを知るためにも、組織アセスメントの重要さを理解することが必要だ。
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人材アセスメントのメリットとデメリット
人材アセスメントを導入することで、評価の指標ができることや、人員配置や採用時のミスマッチ防止につながるメリットが得られる。このメリットにより、従業員のモチベーションや生産性の向上にもつながる。
一方でアセスメントの実施には時間と労力がかかることや、従業員からの協力を得られにくいことはデメリットだ。ここでは、人材アセスメント導入時のメリットとデメリットについて解説する。
メリット
人材アセスメントのメリットとして、以下の2つが挙げられる。
・ 評価の指標ができる
・ 人員配置や採用時のミスマッチ防止につながる
先述のとおり、人材アセスメントとは人材の能力を定量的に評価するものだ。定量的な評価によって評価基準の指標ができるため、評価者によって評価の結果がバラつくことはない。アセスメント結果を元にフィードバックすれば、従業員のモチベーション向上にもつながるだろう。
アセスメント結果は、人員配置にも活かせる。客観的なデータを使って従業員一人ひとりの能力や適性を評価しているため、適材適所の人員配置を考える助けになるのだ。これまで、従業員自身や評価者が把握していなかった強みが明らかになるケースがある。それぞれに適した環境に従業員を配置できれば、生産性向上にも効果的だ。
また、人材アセスメントは採用活動にも効果的だ。採用活動を始める際には、採用条件を明確にする必要がある。しかし、その条件を勘や経験に頼っていた場合、組織が求める採用条件とは一致しない可能性が考えられるのだ。
前述したように、人材アセスメントとともに組織アセスメントを実施すれば、組織に必要な人物像を把握できる。採用後のミスマッチ防止にもつながるため、離職率の低下にも効果的だ。
デメリット
人材アセスメントのデメリットは、以下の2つだ。
・ 実施に時間と労力がかかる
・ 従業員からの協力を得られにくい
人材アセスメントの実施には時間と労力が必要だ。目標設定や項目、ツールの選定をしたうえで実施しなければならない。外部サービスや外部機関を利用するのならば、しっかりと選定したうえで依頼すべきだ。もちろん打ち合わせや調整も必要になる。
能力を測るだけではなく、結果の分析も欠かせない。従業員数が多い場合や担当者不足の場合、その負担はさらに増加するだろう。人材アセスメントを実施するにあたっては、体制や環境を事前に整備しておくべきである。
人材アセスメント導入時に、従業員からの協力を得られないケースがある。これは、従業員への説明不足が原因だ。
説明が不足していた場合、人材アセスメントを「従業員の優劣を判断するもの」と認識する従業員が一定数存在する。アセスメントは、あくまでも「適性」を見極めるものであり、優劣を判断するものではない。
従業員の能力を客観的に把握し、適切な人員配置をすることで生産性を上げるのが狙いだ。従業員に協力してもらうためにも、アセスメントを実施する目的や効果を伝えて理解してもらう必要がある。そのためには、質疑応答ができる説明会の開催が効果的だ。
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代表的な人材アセスメントの例
ここでは、代表的な人材アセスメントについて紹介する。適性検査や性格診断以外に、360度評価や研修も人材アセスメントとして活用されている。
適性検査や性格診断では、テストにより能力や性格を測るが、360度評価やアセスメント研修では、他人から評価を受けることが特徴だ。どのような情報が欲しいのかによって、使い分けると効果が見込める。
適性やストレス耐性などを測る「適性検査」
代表的な人材アセスメントとして、適性検査が挙げられる。適性検査は、対象者の能力や性格を診断するアセスメントだ。株式会社リクルートマネジメントソリューションズが提供する「SPI」が有名な適性検査で、多くの企業で採用時に利用されている。
適性検査の内容は、能力検査と性格検査に大別され、それぞれ以下の能力を測っている。
能力検査
・ 一般常識
・ 知的能力
・ 論理的思考力
・ 情報処理力
性格検査
・ 人間性
・ 考え方
・ 価値観
・ ストレス耐性
自己評価と他者評価をあわせた「360度評価」
360度評価は、普段関係する様々な人たちから評価を受ける評価方法であり、多面評価とも呼ばれている。評価者は上司だけではなく、部下や同僚、人事担当者、さらには自分自身までと、幅広い評価者がいることが特徴だ。
上司ひとりから評価されるわけではないため、評価対象者にとっては納得せざるを得ない評価となる。自己評価との違いを知ることで、自分の強みや改善点を確認できる点はメリットだ。
ただし、デメリットも存在する。評価者となる同僚や部下が評価能力を持っていない場合、その評価が正しいとはいえない。普段から近い関係性にあるため、主観が入ったり、本音ではない評価をしてしまったりといったケースも考えられるだろう。
評価を気にするあまり、上司が部下に強く指示を出せなくなるといったケースも存在する。否定的な評価をした結果、人間関係が悪化する可能性も考えられる。評価者としての教育や、匿名での評価にするといった工夫も必要だ。
360度評価においては、役職や部署によって設問を分けるのが一般的となっている。それぞれ以下のような項目を設定するのが一般的だ。
管理職
・ リーダーシップ
・ チームビルディング
・ 人材育成に関連した項目
管理職以外
・ 業務遂行能力
・ コミュニケーション能力
・ 主体性
・ 協調性
・ 問題解決力
エニアグラムなどの「性格診断」
性格診断もアセスメントのひとつだ。性格診断のひとつ「エニアグラム」は、パーソナリティを以下の9種類に分け、どれに当てはまるのかを診断する。
・ 改革する人
・ 助ける人
・ 人を達成する人
・ 個性的な人
・ 調べる人
・ 忠実な人
・ 熱中する人
・ 挑戦する人
・ 平和をもたらす人
エニアグラムによる評価は、適切な人員配置に活かす以外にも、自分自身の特性を理解できるといったメリットが得られる。そのため人材アセスメントだけではなく、研修でも活用されている。人材のタイプを分類できるため、組織アセスメントにも応用できるだろう。
インバスケットなどの「アセスメント研修」
アセスメント研修は、実際の業務に近い環境下で研修を実施し、その中での対象者の振る舞いを観察する手法だ。特別な訓練を受けた「アセッサー」が研修中の受講態度やコミュニケーションを観察し、判定項目を評価する。
知識や能力の向上を狙いとした研修とは異なり、第三者の視点から対象者の業務への考え方や態度を見極められる。アセスメント研修で使われることが多いゲームは「インバスケットゲーム」だ。インバスケットゲームは、制限時間内に複数の課題を処理するビジネスシミュレーションゲームで、課題には正解がない。
制限時間内に全課題を処理することも不可能な時間設定になっており、より多くの課題を処理するための優先順位のつけ方や、問題発見能力、分析能力、迅速性を見極められる。
課題内容は、クレーム対応や部下からの相談といったものが主流だ。そのため、昇進や昇格のテストとしても活用されている。
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まとめ
アセスメントとは評価や分析を意味するものであり、人事領域では人材の能力評価に使用されている。人事領域には人材アセスメントと組織アセスメントの2つがあるが、人材アセスメントしか実施していない企業が多いのが現状だ。
人材アセスメントの導入により、評価の指標ができることはもちろん、人員配置や採用時のミスマッチ防止につながるといったメリットが得られる。その一方、実施に時間と労力がかかることや、従業員からの協力を得られにくいといったデメリットも存在する。
人材アセスメントには適性検査や性格診断以外にも、360度評価や研修といった手法も存在する。どのような情報が欲しいのかを確認し、目的によって使い分けることで適切な人員配置に活用できるだろう。