2023.6.2

クォーターライフクライシスとは?意味や5つのフェーズ、対策方法を解説

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クォーターライフクライシスとは、20代後半から30代が陥りがちな幸福の低迷期のことである。社会に出て生活に慣れてきた一方で理想と現実のギャップに違和感を感じたり、同年代や周囲の人と自分を比べて落ち込んだり、自分らしさを見失って自身はどう生きていくべきなのかさえ分からなくなる混乱したりする状態だ。

この記事では、クォーターライフクライシスの意味や原因、解決するためのヒントについて解説する。

クォーターライフクライシスとは

クォーターライフクライシスとは、20代後半から30代が陥りやすい幸福の低迷期のことだ。2001年頃から浸透し始め、アメリカやイギリスでは一般的な概念として広まっている。同年代の人が自分よりも輝いて見えたり、自分らしさを見失ったりする状態を指す。科学ライターの著書で提唱されて以来、アメリカやイギリスなどで広く浸透している。

人生の4分の1が過ぎる時期は、若者というカテゴリーに当てはまらなくなる一方で、一人前の大人として扱われないこともあるだろう。大人に移行しきれない焦燥感から人生について不安を感じたり、幸福感を得にくくなったりする人は多い。

実際に、2017年のLinkedIn Corporationの調査では、25歳〜33歳の7割以上がクォーターライフクライシスを経験していることが明らかになっている。

参考:LinkedIn Corporation「New LinkedIn research shows 75 percent of 25-33 year olds have experienced quarter-life crises」

クォーターライフクライシスの意味

クォーターライフクライシスの意味とは、まずそれぞれの言葉に分けて解釈すると以下のようになる。

● クォーター(quarter)=4分の1
● ライフ(life)=人生
● クライシス(crisis)=危機、重大局面

つまり、人生を100年と考えたときに、その4分の1の年月が経過した25歳頃の時期に、自分の人生における危機的な状況を感じるという意味だ。

どのような心理状態になっているのか

危機的な状況を感じる原因は人それぞれであるが、主に他人と比べて自分の人生に劣等感を感じる心理状態からくる現象のようだ。例えば「他人よりも自分は輝いていない」「同僚と比べて結果が出せていない」「自分だけが取り残されている」など、他人と比較することからくる不安感や焦燥感などが該当する。

なぜ25歳で不安を感じるのか

まずは25歳云々の前に、令和3年時点で内閣府が行った国民生活に関する世論調査において、不安を感じている人の割合が全年齢層で70%を超えている現状がある。

グラフ:日常生活での悩みや不安(年齢層別)

出典:内閣府 国民生活に関する世論調査 日常生活での悩みや不安(年齢層別)

こういった背景も鑑みつつ、そもそも20代は年齢的にも自分の将来に様々な不安を感じることが多い時期でもある。実際に20代のビジネスパーソン100人のアンケート結果でも、約8割が自分の将来に対して不安を感じていると回答している。

グラフ:20代に自分の将来に不安を感じることがあるか質問した結果

出典:Type 20代が抱える「将来の不安」ランキングBEST3!

ただでさえ20代は社会人となって間もない年齢で、仕事や人間関係で悩むことも多いだろう。それに加えて、結婚や出産などの重大イベントも重なり、やるべきことはどんどん増えていく。

特に、社会人3年目に当たる25歳頃は仕事の厳しさも肌で感じるようになり、モチベーションの低下を起こしやすい時期でもあることから、25歳の壁などと表現されることもある。こういった様々な要因が重なり、クォーターライフクライシス、いわゆる25歳頃に危機感を覚えるのではないかと言われているのだ。

平均寿命の長期化でクォーターライフクライシスに

クォーターライフクライシスは、平均寿命の長期化により引き起こされている現象だと言われている。冒頭でも述べた通り、人生100年時代となり高齢期の自由時間は10万時間にも上るとされている。

こういった時代背景もあり、25歳になった今、改めて将来のことを考えると定年を迎えた後も安心して生活ができるか不安に駆られる人は増加している。このような現状に対して危機感はさらに増し、次第に自分の人生に対して幸福を感じにくくなってきているのだ。

ミッドライフクライシスとの違い

年齢に応じて生じる心理傾向には、ミッドライフクライシス(ミドルエイジクライシス)も挙げられる。中年の危機とも言われる通り、ミッドライフクライシスは40代から50代の中年世代に見られる心理状態だ。

40代から50代になると仕事や子育てが一段落するケースもあり、これまでの人生を見つめ直す時期を迎える。ミッドライフクライシスは、「自分とは何者か」「このままの生き方で良いのか」を問うことによって、将来に対する不安や葛藤を抱く状態を指す。

クォーターライフクライシスに対し、ミッドライフクライシスはより内面に目を向けるのが特徴だ。10代後半から20代前半に訪れる思春期と似ていることから、第二の思春期と呼ばれることもある。

クォーターライフクライシスへの関心が高まっている背景

クォーターライフクライシスへの関心が高まっている背景、そこにはクォーターライフクライシスの苦い経験を引きずったままのアラサーが世界中で急増している現状がある。

25歳前後に訪れるとされるクォーターライフクライシスだが、2023年時点で25歳の人たちはZ世代に分類される。この世代の人たちはデジタルネイティブと呼ばれ、幼少期よりSNSの投稿により他人の自慢話やリア充感満載の写真、幸せアピールなどを散々目の当たりにしてきているのだ。

そのような事情からも、以前の世代の人たちと比べてより他人と比較してしまうことが多い世代なのだ。こういった時代背景からも、クォーターライフクライシスへの関心が高まっているのである。

さらに、現在日本のZ世代における自殺率は主要先進国でトップとなり、若者のメンタルが危ないとまで言われているのだ。

スクリーンショット:日本の若者の自殺率は主要先進国でトップ

出典:TOKYO MX + 日本の若者の自殺率は主要先進国でトップ 今、若者のメンタルが危ない

近年、厚生労働省が若者の自殺を未然に防ぐべく「よりそいホットライン」や「いのちの電話」の積極的利用を呼びかけるなど対策を強化しているのだ。

こういった背景からも、Z世代に分類される20代の若者をクォーターライフクライシスから守るべく、サポート体制の在り方が問われているのである。

クォーターライフクライシスに陥りやすい人

クォーターライフクライシスに陥りやすい人とはどのような人なのだろうか。以下にまとめてみた。

● 人と比較をしてしまう人
● 人に言われたことしかできない人
● 気持ちの切り替えが下手な人
● 過去の出来事を引きずってしまう人

人と比較をしてしまう人

クォーターライフクライシスに陥ってしまう原因の一つとして挙げられているのが「他人との比較」だ。他人と比較して自分に劣等感や焦燥感を感じたときに、最も引き金を引きやすいとされている。

特にZ世代はSNSの存在もあり、クォーターライフクライシスの引き金を引きやすい環境に身を置かれていることも問題となっている。専門家の見解によると、クォーターライフクライシスは一時的な現象とされており、SNSなどで劣等感や焦燥感を頻繁に感じるようになったときは、一時的にやめるなどの対策が有効とされている。

人に言われたことしかできない人

人に言われたことしかできない人、いわゆるマニュアル通りの行動しかできない人も注意が必要だ。言わば他人の意見に流される傾向があり、マウントを取られることも多くなる。そのような状況に身を置かれるようになると、クォーターライフクライシスに陥りやすくなる。

かといって過度に他人に抵抗する必要はなく、自分は自分であるという「自分らしさ」を失わなければそれでいいのだ。事実、自分らしさを見失わずに毅然とした態度で生活を送っていれば、危機的な状況は自然と解消されるという意見もあるぐらいなのだ。

気持ちの切り替えが下手な人

気持ちの切り替えが下手な人も精神的負荷が大きく、クォーターライフクライシスに陥りやすいとされる。こういった場合は、少し人との距離をおいて気分転換することも気持ちを切り替える手段として有効だ。

趣味に没頭するもよし、運動するもよし、しばらく旅行に出かけるのもありだ。とにかく上手な息抜きをこまめに行い、精神的バランスを保つことがストレス軽減にはもってこいなのだ。

過去の出来事を引きずってしまう人

過去の出来事をついつい引きずってしまう人も、クォーターライフクライシスの引き金がすぐそこにあると言っていいだろう。「あのときにああしていれば」「やっぱあっちにすればよかった」と悩み続けていても過去を変えることはできないのだ。

こういった過去の失敗を忘れられず積み重ねてしまうと、焦燥感に駆られることが多くなり、クォーターライフクライシスに陥りやすくなる。大切なのは過去を悔やむことではなく、そうなってしまった現状を変えるためにこれからどうすればよいのかを考えることなのだ。

関連記事:カタルシス効果とは?意味や事例、メリットをわかりやすく解説

クォーターライフクライシスの原因

クォーターライフクライシスは、思い描いていた生き方と現実が乖離し、理想の人生を送れていないことへのストレスを感じた際に陥りやすい。

社会人として働き始めると、様々な壁にぶつかることがあるだろう。例えば、「就職した会社が激務だった」「思っていたよりも経済的な余裕がない」などが挙げられる。

社会に出てから理想と現実のギャップを感じ、クォーターライフクライシスに陥る人は少なくない。特に意欲的な人ほど計画通りに生きられないことに混乱し、不安や葛藤が生じやすいとされる。

また、インターネットの普及もクォーターライフクライシスが増加した原因の一つである。現代は情報へのアクセスが容易になり、SNSなどで同年代の成功を目にする機会が多くなった。その結果、自分と他者を比較して劣等感を抱き、人生に対して焦りを感じる人が増えているのだ。

クォーターライフクライシスの5つのフェーズ

クォーターライフクライシス研究の第一人者であるオリバー・ロビンソン氏は、自身の論文の中でクォーターライフクライシスを5つのフェーズに分類している。

【フェーズ1】
仕事や恋愛などにおいて、「自らの選択が自分自身を閉じ込めているのではないか」と感じること。

【フェーズ2】
フェーズ1に陥っている自分自身を問題視すること。「現状を打開しなければ」「思い切って行動すれば、なんとかなるのではないか」と感じ始める。

【フェーズ3】
仕事を辞める・恋人と別れるなど、自分自身を不自由にしているものと決別すること。あらゆるものと距離を置いて、自分自身を見つめ直す状態。

【フェーズ4】
ゆっくりとしたペースでありながら、着実に人生を再建すること。

【フェーズ5】
興味や関心のあることに対し、熱心に取り組むこと。

参考:Oliver Robinson 「Emerging adulthood, early adulthood and quarter-life crisis: Updating Erikson for the 21st Century」

クォーターライフクライシスの対策

クォーターライフクライシスは20代後半から30代の通過儀礼とも言われているため、避けることは難しい。自分自身の生き方に迷ったり、理想と現実のギャップに混乱したりすることは、誰にでも起こり得る現象なのだ。

迷いと混乱から抜け出すためには、クォーターライフクライシスの乗り越え方を理解する必要がある。以下のヒントを参考にして、ポジティブな気持ちを取り戻そう。

● 自分自身と向き合う
● サンクコスト効果を避ける
● メンターを見つける
● 自分と他者を比べることをやめる

自分自身と向き合う

クォーターライフクライシスを克服するためには、先述のフェーズ1で生じた「閉じ込められている感覚」を解消することが重要だ。まずは自分自身と向き合い、自分を不自由にするものは何かを考えてみよう。

仕事や人間関係など、自分を閉じ込めるものは人によって様々である。仕事に行き詰まりを感じているなら、転職して環境を変えることが不安や焦りの解消につながるかもしれない。恋愛が不自由さの原因になっている場合は、パートナーと話し合ったり、関係を清算したりするなどが有効である。

クォーターライフクライシスに陥った際は、自分自身が抱える悩みを整理し、適切な解決策を探るべきだ。自分自身を正しく理解することでフェーズ1からフェーズ3への移行がスムーズになり、人生を再建しやすくなるだろう。

サンクコスト効果を避ける

サンクコスト効果を避けることも、クォーターライフクライシスの解決につながるヒントである。

多くの人は、自分らしい人生を送れていないと感じた際にクォーターライフクライシスに陥りやすい。自分らしく生きられない理由には、サンクコスト効果が働いている可能性がある。

サンクコスト効果とは、「やってきたことが無駄になるのは避けたい」という心理だ。今までにかけたコストを無駄にしないために、さらにコストをかけてしまう状態を指す。

サンクコスト効果が働くと、人生における選択肢の幅が制限されかねない。例えば、「学歴に見合った仕事に就かなければ」と思い込み、やりたくもない仕事を辞められないケースが挙げられる。

学歴や職歴、スキルなどに縛られると、自分らしい選択をするのは難しいだろう。自分らしさを尊重するためには、経験やスキルを手放すことをもったいないと感じるのではなく、これからの人生の糧になると考えることが大切だ。

予めサンクコストは0であると仮定しておくと、サンクコスト効果を回避しやすくなる。または、人生の目標を明確にしたり、他者の客観的な意見を聞いたりすると、サンクコスト効果に左右されずに判断できるだろう。

メンターを見つける

クォーターライフクライシスの解決には、メンターの存在も大きな効果をもたらす。メンターとは、新入社員や転入社員をサポートする先輩社員のことだ。サポートされる後輩社員はメンティーと呼ばれる。

メンターは助言者を意味しており、気軽に相談できる存在としてメンティーを支える。早期離職の防止や自立の促進などの効果があることから、メンター制度を取り入れている企業は多い。人生について迷いが生じた際は、メンターに相談してみるといいだろう。

自社にメンター制度がなくても、メンターを見つける方法はある。例えば、人と出会う機会を積極的に増やし、「この人のようになりたい」と思える人を探すのがおすすめだ。憧れの人や尊敬できる人と関わり、彼らの生き方を真似することは、自分の人生に好影響をもたらすだろう。

良書に出会うことも、メンターを見つける方法の一つである。本には著者の知識や経験が詰め込まれている。本をメンターにすれば、直接話を聞きに行かなくても様々な考え方や知恵が学べるのだ。

どのような本を読めばいいのか分からない場合は、名言をまとめた本を読むのがおすすめである。名言を残した人の中から気になる人をピックアップし、その人の自伝や著書を読んでみよう。

人であっても本であっても、メンターを持つことで人生の目標を定めやすくなる。ゴールが明確であれば、たとえクォーターライフクライシスに陥ったとしても、混乱状態から抜け出しやすいだろう。

自分と他者を比べることをやめる

クォーターライフクライシスを克服するためには、自分と他者を比べることはやめるべきだ。成功している同年代の姿を見て、自分のほうが劣っていると感じる人は少なくないだろう。

しかし、誰しもが自分の人生を歩んでおり、個々の人生は優劣をつけられるものではない。自分自身の人生に集中するためには、「同年代が成功しているからといって、自分が落ち込む必要はない」と言い聞かせることが重要だ。

どうしても比べてしまう場合は、成功談を知らせるニュースやSNSの投稿を遠ざけよう。自分と他者の人生を比較せず、自分の生き方を尊重することが、クォーターライフクライシスを抜け出すために有効な手段である。

関連記事
サンクコスト効果とは。コンコルド効果と同じ?日常生活やビジネスシーンでの例
メンターとメンティーとは?制度として導入する目的や注意点

まとめ

クォーターライフクライシスとは、20代後半から30代が陥りがちな心理傾向のことである。思い描いていた人生を送れていないことに戸惑い、焦燥感によって幸福感が低迷する状態を指す。25歳から33歳の約7割がクォーターライフクライシスに陥っているというデータもあるほど、若者にとっては身近な課題である。

インターネットが普及している現代では、同年代の成功が目につきやすく、つい自分と他者を比べてしまう人もいるだろう。他者との比較によって劣等感が刺激され、クォーターライフクライシスに陥るケースは少なくない。

クォーターライフクライシスを克服するためには、自分自身を閉じ込めているものを認識することが重要だ。悩みを明らかにすることで、より良く生きるための解決策を見出しやすくなるだろう。

また、サンクコスト効果を回避したり、メンターを見つけたりすることも有効である。クォーターライフクライシスに陥った際は、人生について深く考える機会と捉え、自分自身と向き合ってみよう。

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監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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