2022.5.11

フリーライダーとは?問題となっている理由や身近な例、対策としてできること

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ビジネスシーンにおけるフリーライダーとは、十分な仕事をせずに報酬を受け取る人や、他者の手柄を自分のものにする人を意味する。組織に怠惰な社員がいると、チームワークの乱れやモチベーションの低下を引き起こしかねない。

フリーライダーの意味や問題点、社員がフリーライダー化しないための対策などを理解しておこう。

フリーライダーとは?問題の理由と身近な例

近年、企業における「フリーライダー問題」が重要視されている。本来、フリーライダーは「ただ乗り(=対価を払わずに公共財を利用すること)」を指す言葉だが、ビジネスシーンでの意味合いは少々異なる。

社内にフリーライダーがいると、さまざまな問題を引き起こしかねない。対策を講じる前に、まずはフリーライダーの意味や具体例を確認しておこう。

フリーライダーとは

フリーライダーは、「コストをかけずに利益を得る人」を意味する。わかりやすく言い換えると、自分の仕事をこなさずに給料をもらう人や、他人の手柄を横取りする人のことだ。

不労所得者もフリーライダーに含まれるが、フリーライダー問題を論じる際は、そのような意味合いはもたない。フリーライダーは組織にとって迷惑な社員であり、マイナスな影響をもたらす存在とされている。

フリーライダーが発生する主な原因は、終身雇用制度や年功序列の評価制度、余剰人員の存在だ。終身雇用を前提とした企業や、年功序列で評価が決まる環境では、本人のスキルが昇進に影響しないケースが多い。

つまり、成果を出さなくても組織に所属し続けることが可能であり、よほどのことがなければ解雇される心配もないだろう。そのような状況では、「自身の役割を果たさなくても報酬をもらえる」と考える社員が現れ、フリーライダー化してしまうのだ。

また、終身雇用とメンバーシップ型雇用を導入している企業では、継続雇用を保障しているなどの事情から、余剰人員が生まれやすい。余剰人員が存在する場合、仕事を人任せにしやすくなるため、意欲のない社員がフリーライダーになる可能性が高まるだろう。

関連記事:メンバーシップ型雇用は薄れゆく?ジョブ型雇用への転換で企業が求められることとは

問題の理由

かつては「給料泥棒」と呼ばれていたように、企業におけるフリーライダーは昔から存在していた。それでは、なぜ今になって問題視する声が高まっているのかが気になるところだろう。

フリーライダー問題が浮かび上がっている理由には、雇用形態や業務内容の変化、人口減少などが挙げられる。近年は働き方が多様化しているため、または働く人の数が不足しているため、フリーライダーの教育に時間をかけたり、適切に対処したりすることが難しくなっているのだ。

詳しくは後述するが、フリーライダーが社内に存在すると、他の社員のモチベーション低下などにつながりやすい。その結果、他の社員までもがフリーライダー化する危険性もはらんでいる。

フリーライダーは現代社会における大きな課題であり、企業では対策を講じることが求められているのだ。

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ビジネス上の身近な例

フリーライダー問題をイメージしやすいように、ビジネスシーンでの具体例を見ていこう。

1. 最低限の仕事はこなすが、自ら進んで仕事を探そうとはしない
2. 他人の手柄を横取りし、自身の成果として評価を受ける
3. 自己評価と実際のスキルが乖離している
4. 何かと理由をつけて、負担が増えそうな仕事を回避しようとする

1は、ベテラン社員に多い傾向がある。年功序列などの評価制度によって一定の階級に上がったら、それ以上のスキルアップは目指さず、仕事を部下に丸投げするタイプだ。現在の階級にしがみつく性質があるため、新しい仕事にチャレンジする意欲を見せるケースは少ない。

2は、若手や中堅社員が陥りがちなタイプだ。他の社員の手柄を自分の成果だと主張し、自分を良く見せることに固執する傾向がある。一方で、何らかのトラブルが発生した際には、「自分のせいではない」と責任逃れをすることも多い。

3は、自身の能力を過信しているベテラン社員に多い傾向がある。自己評価と実際の能力が見合っていないにもかかわらず、注意やアドバイスを素直に受け取れないことが多い。また、他者に対して攻撃的に接するのも特徴の一つである。自己評価を正しく認識できず、誤った状態で自身を過大評価してしまうという心理現象は、認知バイアスの一種である「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれる。

関連記事:ダニング=クルーガー効果とは?陥らないために対策できること

4は、負担が増えそうな仕事やリスクのある業務を回避し、現状維持を優先するタイプだ。自身の業務はもちろん、部下の提案に対しても何らかの理由をつけて否定し、可能な限り責任を負わないように立ち回る。組織の成長を阻む存在であり、部下に及ぼす影響も大きい。

フリーライダーが引き起こす問題

フリーライダーが存在する組織は、さまざまなリスクを抱えているといえるだろう。主な問題として、以下の3つが挙げられる。

1. 生産性が低下する
2. チームワークが乱れる
3. 優秀な社員の離職につながる

フリーライダーの存在は、他の社員や組織に悪影響を及ぼしかねない。フリーライダーによって生じる問題について、さらに詳しく見ていこう。

生産性が低下する

フリーライダーはチームに対する貢献度が低いため、チームの生産性が低下しやすい。また、フリーライダーが怠惰であるほど、チームのメンバーにかかる負荷が重くなるだろう。

組織がフリーライダーの存在を黙認していれば、「怠けていても許されるなら、頑張って仕事をしても損するだけだ」と考える社員も出てくる。その結果、他の社員もフリーライダー化してしまい、チーム全体の生産性がさらに下がってしまうだろう。

関連記事:コロナ禍でのリモートワーク。生産性向上のためのポイントとは

チームワークが乱れる

フリーライダーの存在は、チームワークの乱れにもつながる。上述のとおり、フリーライダーは負担を負わずに評価されたり、他者の成果を横取りしたりする傾向がある。

このような行為が認められている場合、他の社員が不満を抱くことは容易に想像できるだろう。他の社員がマイナスな感情を抱えている状態では、コミュニケーションの問題が生じたり、業務効率が低下したりする可能性が高い。

怠惰な社員への不満が蓄積し、チームの雰囲気が険悪になることも考えられる。フリーライダーがいる状態では良好なチームワークを構築することが難しく、組織全体のモチベーション低下にもつながるのだ。

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優秀な社員の離職につながる

チームにフリーライダーがいると、優秀な社員が離職する可能性が高くなる。フリーライダーが投げ出した仕事は、仕事ができる社員に割り振られるケースが多い。

そのような理不尽な状態が続いた場合は、ストレスが溜まったり、仕事にやりがいを感じられなくなったりして、組織に所属する意味を見失いがちだ。その結果、離職や転職を考えるきっかけとなり、組織から優秀な社員が去ってしまうだろう。

社員をフリーライダーにしないためにできること

フリーライダー問題は、円滑な組織運営を阻む要因になりうる。生産性やモチベーションを維持するためにも、社員がフリーライダー化しない仕組みを整備する必要があるだろう。具体的な対策として、以下の4つを取り入れるのが賢明だ。

1. OKRによる目標設定
2. 職務分掌や業務分掌、ジョブディスクリプションを整備する
3. 評価制度の新設、見直し
4. トップマネジメントの実施

OKRによる目標設定

社員のフリーライダー化を防止するためには、OKRによる目標設定を実践してみよう。OKR(Objective and Key Result)とは、「目標と主な結果」を意味する目標管理の手法である。

一般的な目標設定では、「売上を上げる」「認知を広める」などのゴールのみにスポットが当てられる。一方で、OKRは結果を具体的な数値で表すのが特徴だ。

例えば、「売上を上げる」をOKRにする場合は、「新規顧客を◯人増やす」のように具体的な指標も検討する。目標と目指すべき数値をリンクさせることで、目標達成までの筋道を立てやすくなったり、失敗した際の原因究明をしやすくなったりするのがメリットだ。

目標がはっきりと定まっていない状態では、真面目に仕事に取り組む社員と、怠ける社員が出てきてしまい、フリーライダー化が進みやすい。社員ごとの目標をOKRで明確に設定し、上司が適切に進捗を管理すれば、社員へのフォローが行き届いてフリーライダー化の防止につながるだろう。

関連記事:
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職務分掌や業務分掌、ジョブディスクリプションを整備する

社員が怠惰になってしまう現象を防ぐためには、仕事の見える化に取り組むのも賢明だ。仕事の見える化に重要な考え方として、職務分掌や業務分掌、ジョブディスクリプションを理解しておく必要がある。

職務分掌とは、組織におけるさまざまな職務の責任の範囲および所在を明らかにすることを指す。役職や担当者の業務を整理し、「誰が責任を負うのか」を明確に定義するのだ。職務分掌をきちんと規定することで、社員に責任感をもたせることが可能となる。

業務分掌は、職務分掌をさらに細分化したものだ。組織単位ではなく、部署単位で役割や権限を配分するのが特徴である。

ジョブディスクリプション(=職務規定書)とは、職務の内容をまとめた文書を指す。ジョブディスクリプションを作成する目的は、必要なスキルや求められる成果を職務ごとに明確化し、一人ひとりが背負う役割のあいまいさを排除することだ。

職務分掌や業務分掌、ジョブディスクリプションの仕組みを整備すると、社員が担う職務・業務の範囲がきちんと定義される。それぞれの仕事の進捗を把握できるため、真面目に取り組んでいるか、怠けているかどうかを判断しやすくなるだろう。進捗が思わしくない社員に対してフォローを行うことで、フリーライダーの発生を防ぐ効果も期待できる。

関連記事:職務分掌とは?必要な理由やデメリットは何か

評価制度の新設、見直し

フリーライダー発生の抑止には、評価制度の新設や見直しも検討すべきだ。評価制度を導入していても、きちんと機能していなければフリーライダーを見過ごすことになりかねない。

社員の働きぶりを可視化できるように、評価制度が公正なものであるか、貢献度に応じて評価される仕組みであるかどうかを見直してみよう。本人の主張だけでは正当に評価できない可能性があるため、評価対象者に対する評価を第三者にヒアリングするのも有効である。

評価制度がきちんと整備されていると、社員は評価を得るために試行錯誤するようになり、フリーライダー化しにくくなるだろう。

関連記事:テレワーク・在宅勤務での人事評価制度はどのように変わる?評価の軸はプロセスから成果へ

トップマネジメントの実施

社員をフリーライダーにしないためには、トップマネジメントを実施するのも有効である。トップマネジメントとは、組織運営や経営計画の策定などを組織のトップが行う仕組みだ。負担が集中しないように、通常は3〜4人で経営・管理を行うのが基本である。

トップマネジメントによって管理職がマネジメントする基盤を構築し、業務分担の見直しや適切な人員配置などを徹底すると、社員一人ひとりが責任感をもって働けるようになる。また、頑張りを正しく評価したり、少人数のチームを作って競争原理に火をつけたりすることで、社員のモチベーションアップも期待できるだろう。

フリーライダー問題を解消するためには、トップマネジメントによって管理体制を強化することを視野に入れるべきだ。

関連記事:トップマネジメントとは?ISOにおける定義、役割と責任

まとめ

「ただ乗り」を表すフリーライダーは、ビジネスシーンにおいて「仕事をせずに報酬をもらう人」「他者の成果を横取りする人」を意味する。怠惰な社員を抱えている場合は、他の社員のモチベーションが低下したり、優秀な人材が離職したりすることになりかねない。

円滑な組織運営のためには、明確な目標設定や評価制度の見直しなどを取り入れて、社員のフリーライダー化を防止する必要があるだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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