プレイングマネージャーとは、現場に立つプレイヤーとしての役割と、チームを管理するマネージャーとしての役割を担う人を指す。現場に合わせて素早く意思決定できるのがメリットだが、解決しなければいけない課題は少なくない。この記事では、プレイングマネージャーの役割や課題解決の方法などを解説する。
プレイングマネージャーとは?マネージャーとの違い
プレイングマネージャーとは、現場に立って実務を行う役割と、マネジメントを行う管理職としての役割を兼任する人を指す。主に課長クラスの人が担当する役割で、近年では多くの企業が取り入れている。
詳しくは後述するが、人材不足や商品市場の変化などの要因から、今後も重要視されるポジションの一つだと考えられる。まずは基本的な知識として、プレイングマネージャーの意味や役割、マネージャーとの違いを確認しよう。
プレイングマネージャーとは
プレイングマネージャーとは、現場で実務を担当しつつ、管理職としてマネジメント業務を兼務する人を指す。もともとはスポーツ界で使われていた言葉だが、近年ではビジネスシーンにも登場している。
主な役割は、個人として成果を出すことはもちろん、目標達成に向けてチーム全体をマネジメントすることだ。また、チームの代表者としてチームと組織の橋渡しも行う。
なかでも、特に重要度の高い役割は人材育成だ。部下の得意分野や性格をきちんと理解し、組織が必要とする人材に近づけるよう指導することが求められる。
マネージャーとの違い
プレイングマネージャーとマネージャーの違いは、簡単にいうと「現場に出ているかどうか」である。マネージャーの主な役割は、部下の育成やチームの目標管理だ。マネージャー自身が現場で実務を行うことはなく、責任者としてチームのマネジメントに注力する。
序列はマネージャーのほうが上で、プレイングマネージャーはマネージャーの下に配置されるケースが多い。プレイングマネージャーとマネージャーの区別に迷った際は、プレイヤーとしての側面があるかどうかに注目するとわかりやすいだろう。
プレイングマネージャーの課題
組織にプレイングマネージャーを配置すると、現場感を理解している人が決定権をもつ仕組みを作れるため、スピーディーな意思決定が可能となる。部下にとっては、現場感をわかっている上司に指導してもらえるのがメリットだ。
恩恵を受けられる一方で、さまざまな課題がつきまとうのも事実である。プレイングマネージャーの配置を検討するならば、課題についても理解を深める必要があるだろう。
ここでは、プレイングマネージャーが求められる背景や、起こりうるリスクについて解説する。
プレイングマネージャーが存在する背景
プレイングマネージャーが日本のビジネスシーンに登場したのは、1990年代のバブル崩壊後である。それまではプレイヤーとマネージャーがはっきりと区別され、各々が役割を果たすことで組織の成長や維持ができていた。
しかし、バブル崩壊によって景気が悪化すると、企業は人件費カットのためにリストラを余儀なくされた。組織に所属する人数を減らしつつ、業績をアップさせたい企業は、プレイヤーと管理職を兼任できる人材を求めるようになったのだ。
このような背景のもと、プレイングマネージャーというポジションが誕生し、昨今ではさまざまな企業が取り入れている。
また、商品市場の変化も大きな要因の一つである。VUCA時代ともいわれる現代は、商品の短サイクル化が著しい。商品市場の移り変わりの早さに対応するためには、現場を理解してスピーディーに意思決定できるプレイングマネージャーの存在が重要視されているのだ。
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プレイングマネージャーが抱える問題
プレイングマネージャーを配置すると、組織はさまざまな恩恵を受けられるだろう。一方で、起こりうるリスクも考慮する必要がある。
問題を解決しないままでいると、プレイヤーとしての機能も、管理職としての機能もうまく働かない可能性が高い。具体的な支援方法を見る前に、プレイングマネージャーが抱える問題を正しく理解しておこう。
業務を抱え込んでしまう
プレイングマネージャーはプレイヤーとマネージャーを兼任するため、必然的に仕事量が増える。その結果、プレイングマネージャーが業務を抱え込んでしまうケースは少なくない。
管理職としての責任感をもっていると、大量の仕事を「すべて自分でこなさなければ」と考えがちだ。業務過多の状態では仕事に割く時間が多くなり、長時間労働を余儀なくされることもある。労働時間が長引くことによって疲れがたまると、生産性の低下につながり、さらに労働時間が伸びることも考えられるだろう。
プレイングマネージャーを設置する際は、プレイングマネージャーの業務量をいかにコントロールするかが重要なポイントだ。
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評価基準が不明瞭になる
プレイングマネージャーは、個人としての目標とチームとしての目標の達成を目指すこととなる。目標が複数あることから、仕事に対する評価基準が不明瞭になりがちな点も課題の一つだ。
例えば、プレイヤーとしての成果と、マネージャーとしての成果のどちらを重視するのかによって、評価の仕方に違いが出るだろう。達成率で評価する仕組みを取り入れている企業では、個人とチームの目標を両方達成できなければ評価されないケースが多い。
頑張りに対して正当な評価が受けられないと、プレイングマネージャーのモチベーションが低下したり、離職しやすくなったりするだろう。
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部下育成や業務の仕組み化に十分な力を割けない
プレイングマネージャーにありがちな課題として、部下育成や業務の仕組みづくりが疎かになる点も挙げられる。プレイングマネージャーに任命される人材は、プレイヤーとしての優秀さを認められていることが多い。そのため、プレイヤーとしての業務に注力してしまい、マネジメント業務に時間を割けないケースは少なくないだろう。
または、現場に立つことに自信をもっており、「部下に任せるよりも自分が対応すべき」と考えてしまうこともある。その結果、部下の育成が疎かになってしまうと、自身のマネジメントスキルやチームの習熟度は一向に上がらないだろう。
自分のやり方を部下に押しつけてしまう
自分のやり方を部下に押しつけてしまうことも、プレイングマネージャーが陥りやすい課題の一つだ。プレイングマネージャーはプレイングで成果を出しているケースが多いため、数々の成功体験があるだろう。
成功体験があるのは悪いことではないが、成功体験をベースにして部下を育成しようとすると、単に自分のやり方を押しつけることになりかねない。なぜなら、部下にはそれぞれの特性があり、適したやり方は部下によって異なるからだ。
プレイングマネージャーとしてマネジメントを行うのであれば、自身の成功体験に囚われるのではなく、一人ひとりの部下に合わせて指導する必要があるだろう。
プレイングマネージャーの支援方法
プレイングマネージャーを適切に機能させるためには、さまざまな問題を取り除く必要がある。プレイヤーとして、さらにマネージャーとして活躍してもらうために、プレイングマネージャーを支援する方法を理解しておこう。
成果の明確化
プレイングマネージャーを配置する際は、成果を明確化することが重要だ。上述のとおり、プレイングマネージャーの成果に対する評価基準は不明瞭になりやすい。プレイングマネージャーの離職やモチベーション低下を防ぐためにも、評価基準をきちんと定義し、何を求めるのかを伝える必要がある。
具体的には、プレイヤーとしての機能を重視するのか、マネージャーとしての成果を求めるのかなどを整理し、プレイングマネージャー自身が組織から求められているものを理解できる状態を目指すべきだろう。
業務量の調整
プレイングマネージャーが無理をせずに働くためには、業務量の調整が不可欠である。プレイングマネージャーが業務過多の状態になってしまうと、生産性が低下するなど負のスパイラルに陥りやすい。
プレイングマネージャーの負担軽減に有効なのは、チーム内で業務を分担する仕組みを整備することだ。人材育成に注力し、部下に仕事を任せられる状態を構築できれば、プレイングマネージャーの業務量をコントロールしやすくなるだろう。
組織としては、プレイングマネージャーが人材育成に集中できるようにサポートする必要がある。例えば、プレイヤーとマネージャーの役割をバランスよく行うためのタスク管理や、モチベーションの維持などについてアドバイスするのが効果的だ。
マネジメント研修
プレイングマネージャーの課題を解決する方法として、マネジメント研修を実施するのもいいだろう。プレイングマネージャーに任命された人は、プレイヤーとしては優秀でも、マネジメントに長けているとは限らない。
プレイングとマネジメントはやり方が大きく異なるため、結果としてプレイングに集中しがちになりやすい。このようなマネジメント不足を解消するためには、プレイングマネージャーにマネジメント研修を受講させるのが効果的だ。
マネジメント研修とは、管理職やマネージャーになった社員を対象とした講座である。経営や人材育成のノウハウを学べるため、プレイングとマネジメントの両立に役立つ知識を習得できるだろう。
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まとめ
プレイングマネージャーとは、プレイヤーとして現場に立つことと、マネージャーとしてマネジメントすることを兼務するポジションである。バブル崩壊によって生じた人材不足や、VUCA時代の到来による商品市場の変化に伴い、プレイングマネージャーを配置することが重要視されている。
現場の状況を把握して素早く意思決定できるのがメリットだが、マネジメント不足や評価基準の曖昧さなどの課題も多い。プレイングマネージャーを配置する際は、業務量のコントロールやマネジメント研修などに取り組み、課題の解決に努める必要があるだろう。