2022.3.10

OJTとOFF-JTの違いは?人材育成におけるやり方やメリット

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OJTとOFF-JTは、どちらも人材育成用語である。指導の仕方や指導者などに違いがあり、前者は社内で上司や先輩が実践的な指導を行うこと、後者は外部講師を招いて社外で指導を行うことを指す。

それぞれの相違点や効果的な取り入れ方、今後の研修方法の傾向などを見ていこう。

人材育成用語「OJT」と「OFF-JT」

OJTとOFF-JTは、どちらも人材育成の手法を指す。字面が似ているが、「どこで教育するか」、「誰が指導するか」などの相違点がある。OJTとOFF-JTの特徴や重要性などを確認しておこう。

OJT(On The Job Training)とは

OJTは、社内で実施する教育訓練を意味する。業務を行ううえで必要な知識やスキルを、実際に仕事をしながら学ぶのが特徴だ。

基本的には上司や先輩が指導を担当し、部下とのコミュニケーションを深めながら教育を行う。指導の仕方は、初めに指導者がお手本を示し、部下が実践しながらスキルを習得する形であることが多い。

業務の完了後は、指導者がフィードバックを行って改善につなげる。「指導、実践、フィードバック、改善」のサイクルを繰り返して目標のレベルに到達したならば、次のステップに進むのが一般的だ。

OFF-JT(Off-The-Job Training)とは

OFF-JTとは、社外で行う教育訓練のことである。セミナーや研修、e-ラーニングなどで実施されるケースが多く、外部講師や人材育成の担当者などが指導を行う。

業務で求められる基礎的な部分を座学で学ぶのが基本だが、グループワークのように作業形式の指導が取り入れられることもある。OFF-JTで行われることが多い内容には、新入社員向けの新人研修や若手・中堅向けのセミナー、マネジメント研修などが挙げられる。

リスキリングの高まりでOJT以外も必要

これまで、日本企業における人材育成の手法はOJTが主流だった。しかし、DX時代に突入した昨今においては、「OJT以外にリスキリングを行うべきだ」という見方が強くなっている。

リスキリングとは、新しい仕事を手に入れるため、または現在の職場で求められるスキルの変化に対応するために、新たなスキルを身につけさせる教育のことだ。近年は、特にビジネスのデジタル化に伴う業務の変更に対応することを目的としている。

OJTとリスキリングでは教育の内容が異なり、前者は「いまあるもの」を、後者は「いまないもの」に関する指導が行われる。DX化が進む昨今においては、「今の職場にはないスキル」が必要な場面に直面することも増えていくだろう。

その点、社員がリスキリングによってデジタルの知識やスキルを身につければ、企業はDX戦略を成功でき、社員はデジタルやAIに雇用の機会を奪われるリスクを抑えられる。これまでは人材育成の方法がOJTのみだった企業も、今こそOJT以外の手法に目を向けるべきタイミングなのだ。

関連記事:DX人材育成で注目を集めるリスキリングとは?導入し成功させるためのポイント

OJTとOFF-JTはオンボーディングでも重要

OJTとOFF-JTは、オンボーディングでも重要な役割を果たす。オンボーディングとは、飛行機や船に乗り込んでいる状態を指す造語であり、人事領域では新入社員に対するサポートを意味する。

新卒に限らず、すべての新入社員に対して行われるのが基本で、入社前から実施されるケースも多い。オンボーディングを行うと、「新入社員が早い段階から戦力となること」や「社員の定着率が向上すること」などの効果が期待できる。

成功すれば大きなメリットが得られるが、実施するうえでは「5つの壁」と呼ばれる課題があり、その一つに「学びの壁」が挙げられる。入社後は学ぶ内容が多岐にわたり、業務の進め方はもちろん、社風やカルチャーなどたくさんのことを把握しなければいけない。

新入社員が学びやすい環境を整備するためには、OJTやOFF-JTによって実地的に教育することが有効だ。このとき認識にズレが生じないように、OJTとOFF-JTの指導者間で教える内容をすり合わせておくことが重要である。

関連記事:オンボーディングとは?組織の生産性向上と離職防止のためにできること

OJT、OFF-JTのメリット

OJTとOFF-JTは仕組みが異なることから、得られるメリットにも違いがある。OJTとOFF-JTを行うことで、どのような効果が期待できるのかを見ていこう。

OJTのメリット

OJTのメリットには、以下の2つが挙げられる。

・ 実務に基づくため必要な知識がすぐに習得できる
・ 指導者や周辺担当者との関係構築に役立つ

実務に基づくため必要な知識がすぐに習得できる

OJTは実務を体験しながら学ぶ方法であるため、業務に必要な知識をスムーズに習得できるのがメリットだ。また仕事をやり遂げる感覚が身についたり、「求められる品質やペースはどのくらいか」を把握しやすくなったりする。

OJTでは学んだ内容をすぐに実践できるため、座学だけでは得られない学びが多い。OJTが終了する頃には、即戦力としての活躍が期待できるだろう。

指導者や周辺担当者との関係構築に役立つ

OJTでは、指導者と部下の間で頻繁にコミュニケーションが行われる。例えば、部下が指導者にアドバイスを求めたり、指導者が部下に対して不明点がないかを確認したりするケースだ。

また、社内に所属するメンバーが保有する能力やノウハウがわかってくると、周辺担当者に質問や相談をする機会も増えるだろう。このようなコミュニケーションを繰り返すことで、指導者や周辺担当者と部下の間の信頼関係が強まり、円滑な関係を構築できるのだ。

OFF-JTのメリット

OFF-JTを実施すると、以下のようなメリットが得られる。

・ 業務に役立つ知識のインプットが体系的にできる
・ 指導者のばらつきが抑えられ、研修内容が均一になる

業務に役立つ知識のインプットが体系的にできる

OFF-JTのメリットは、業務の遂行に求められる知識を体系的に学べることだ。業務に必要な知識はOJTでも学べるが、現場で使える内容に絞られることが多く、論理的に理解することが難しい。目の前の業務に追われていると、学びの時間を確保することも困難だ。

その点、OFF-JTとしてセミナーや研修を開き、学習するためのまとまった時間を設ければ、業務に役立つ知識をじっくりと身につけられるだろう。

指導者のばらつきが抑えられ、研修内容が均一になる

OJTの場合は、指導者の育成スキルや部下との相性によって、部下の成熟度が左右されやすい。それに対してOFF-JTは、多数の社員に対して一人の指導者が指導する形が基本である。

そのため、指導者の能力によって教える内容が左右されにくく、研修内容が均質化される。同じ内容を同時に学べることから、OFF-JTを受けた社員の成熟度に差が生じるリスクも抑えられるだろう。

OFF-JT:研修の傾向とやり方

主にテレワークの増加を理由として、OFF-JTの実施方法や今後強化する研修に変化が生じている。ここでは、OFF-JTの研修の傾向とやり方について見ていこう。

関連記事:テレワークとは?課題や調査から見る多様化が進む働き方を解説

高まる研修の「オンライン化率」

現在もテレワークを継続している企業は多い。2021年9月に実施したHR総研の「人材育成(テーマ別研修)」に関する調査によると企業規模にかかわらず、およそ半数以上の企業において出社率は70%未満という結果だった。

■現在における社員出社率

グラフ:現在における社員出社率

出社率と研修のオンライン化率は密接に結びついており、出社率が低い企業ほどオンライン化率が高く、反対に出社率が高い企業ほどオンライン化率が低い傾向にある。ただし、出社率が高い場合でも、オンライン上で研修を行う企業が一定数存在することもわかっている。

調査の結果から、昨今の働き方の変化に伴い、オンラインでの研修が定着しつつあることが読み取れるだろう。(ProFuture株式会社/HR総研

今後強化する研修は

出社率の違いは、今後強化する研修にも関係している。以下は、今後強化する研修の上位回答を出社率ごとにまとめたものだ。

【出社率30%未満】
・ コンプライアンス研修
・ キャリア研修
・ チームビルディング研修

【出社率30〜70%未満】
・ コンプライアンス研修
・ コミュニケーション研修
・ チームビルディング研修

【出社率70%以上】
・ リーダーシップ研修
・ ハラスメント研修
・ コンプライアンス研修

■社員出社率別 今後強化する研修

グラフ:社員出社率別 今後強化する研修

出社率が低い企業の回答では、個人情報の取り扱い方や、オンラインでのチームビルディングを重視していることが読み取れる。また、テレワークを中心とする働き方への変化により、自身のキャリアについて考える社員が増えたことから、キャリア研修を強化すべきという見方も強まっている。(ProFuture株式会社/HR総研

OJTとOFF-JTを組み合わせる

OFF-JTを実施する際は、OJTと組み合わせるのが有効だ。OJTとOFF-JTには異なるメリットとデメリットがあるため、それぞれを組み合わせることで不足する部分をカバーすれば、育成の効果をより高められる。

例えば、OFF-JTで社員のマインドセット教育を行い、そのうえでOJTによる実践的な指導を行うと、社員は効率的に学びを得られるだろう。社員がスムーズに学べる環境を構築するのならば、OJTとOFF-JTがもつ役割を明確化し、両者を組み合わせた指導プランを検討すべきだ。

研修のフォローアップを行う

OFF-JTを実施したあとは、研修のフォローアップを欠かさないことが重要である。フォローアップとは、「ある事柄を強化すること」や「ある事柄の効果を確認すること」を目的とし、繰り返し行うことを意味する。

OFF-JTで学んだ内容を業務に活用できるかどうかは、OFF-JTを受けた社員次第だろう。フォローアップを行うことで研修の効果が定着しているかを確認できるほか、社員ごとのスキルのばらつきを抑えることも可能だ。

フォローアップを行うべきタイミングに明確な決まりはないが、研修から3ヶ月後や1年後に行われることが多い。

まとめ

OJTとOFF-JTは、どちらも社員の育成方法を指す言葉だ。前者は社内で実践的に指導する手法、後者は社外で業務の基礎的な部分を指導する手法である。それぞれにメリットとデメリットがあるため、指導を行う際は両者を組み合わせてデメリットをカバーするのが有効だ。

テレワークの推進に伴い、OFF-JTの実施形式や強化する研修は出社率によって違いがある。指導プランを練る際は、働き方の変化を考慮し、オンラインでの研修も視野に入れるべきだろう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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