2022.2.16

アンダーマイニング効果の意味は?どのような現象か、具体例と防ぐ方法は

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自発的に取り組んでいた行動に対して報酬を与えることで、やる気や意欲の低下が引き起こされる現象は「アンダーマイニング効果」と呼ばれる。モチベーションマネジメントを実践するうえでは、反対の現象を指すエンハンシング効果によって部下のやる気をコントロールするのが有効だ。

この記事では、アンダーマイニング効果の意味や防止する方法などを詳しく解説する。

アンダーマイニング効果とは?なぜモチベーション低下が起こるのか

アンダーマイニング効果は、ビジネスシーンで度々登場する言葉だ。日本語では抑制効果や過正当化効果とも呼ばれる。

社員のモチベーションを維持させるためには、アンダーマイニング効果の意味を正しく理解しておかなければならない。また、反対の意味をもつエンハンシング効果についても知っておくべきだろう。

ここでは、アンダーマイニング効果とエンハンシング効果の意味や、モチベーションに関連する2つの動機づけについて詳しく解説する。

アンダーマイニング効果とは?

それまではやりがいや好奇心(内発的動機づけ)を原動力として行動していたのに、評価やご褒美などの報酬をもらった途端、報酬をもらうこと(外発的動機づけ)が行動の目的になりやすい。その結果、報酬をもらえない状態ではやる気になれず、モチベーションが低下することがある。

このように、内発的動機づけに基づく行動に対して外発的動機づけを行い、結果的にモチベーションが下がる現象をアンダーマイニング効果と呼ぶ。

例えば、子どもが家事の手伝いをするシーンを想像してみよう。大人と同じように家事ができるのが嬉しくて手伝いを続けていたが、ある日お礼としてお小遣いをもらったとする。すると、子どもにとって手伝いの目的が「できなかった家事ができるようになること」から「お小遣いをもらうこと」に変化してしまう。

次第に「ご褒美なしでは手伝いたくない」という意識が芽生え、お小遣いをもらわなければ手伝う気が起きなくなるのだ。子どもの頃を思い返すと、このような経験をした人は多いのではないだろうか。

アンダーマイニング効果が引き起こされるのは、自己決定感や有能感の低下が原因だと考えられている。自己決定感や有能感は内発的動機づけを支える要素で、前者は「自分のことは自分で決定している」という感情、後者は「頑張れば自分でもできる」という感情を指す。

「物質的な報酬を与える」以外では、「締め切りを定める」や「罰を与える」なども自己決定感や有能感に影響を及ぼし、アンダーマイニング効果につながるとされている。

モチベーションとは?

アンダーマイニング効果を理解するためには、そもそもモチベーションに影響する2つの動機づけをおさえておく必要がある。「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の意味をおさらいしておこう。

内発的動機づけ

モチベーションを生み出す動機づけのうち、好奇心や向上心などの個人的な満足感に起因するものを内発的動機づけと呼ぶ。内発的動機づけに基づく行動は外的要因の影響を受けておらず、やりがいや興味などの内面的な欲求によってモチベーションが向上するのが特徴だ。

例えば「人の役に立つ仕事がしたい」、「自ら設定した目標を達成したい」などは、内発的動機づけに基づく行動といえる。

外発的動機づけ

内面から発生する内発的動機づけに対し、外的要因によって引き起こされるものは外発的動機づけと定義される。外的要因として挙げられるのは、報酬や評価、懲罰などだ。

「成果を挙げれば報酬がもらえる」、「〇〇をすれば褒めてもらえる」のように、外発的動機づけには他者の存在が絡んでいる。内発的動機づけは自発的な意欲によって発生するもの、外発的動機づけは評価や罰など他者の干渉によって発生するものだと覚えておこう。

反対にモチベーションが上がるのはエンハンシング効果

モチベーションが低下する現象であるアンダーマイニング効果に対し、モチベーションが上昇する現象はエンハンシング効果と呼ばれる。エンハンシングは英語の「enhancing」に由来しており、「強化すること」や「高めること」を意味する。

エンハンシング効果が引き起こされる仕組みは、言語的な報酬(外発的動機づけ)によって内発的動機づけが高められることだ。例えば信頼している上司に褒められると、部下は「もっと評価されたい」という気持ちが強くなりやすい。その結果、モチベーションがアップして求められた以上の結果を残すこともある。

モチベーションアップや生産性の向上のためにエンハンシング効果を取り入れたいのならば、人員配置において上司と部下の相性や関係性を考慮すべきだろう。

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アンダーマイニング効果を防ぐには

内発的動機づけに基づいて行動している社員がアンダーマイニング効果を引き起こすと、企業やチーム全体の生産性が低下してしまうだろう。上述のとおり、社員のやる気や意欲の低下は、金銭的な報酬や評価などによってもたらされる。

とはいえ、報酬や評価が発生しないビジネスは存在しない。そのため、別の角度から社員のやる気を継続させる工夫を取り入れることが重要だ。例えば、企業やチーム内でエンハンシング効果の促進を意識すると、アンダーマイニング効果を防げる可能性が高くなる。

社員のモチベーションを維持させるために、内発的動機づけの高め方やエンハンシング効果の取り入れ方を学んでおこう。

内発的動機づけを高め、エンハンシング効果を意識する

社員のモチベーションをキープするためには、以下の3つを意識するのがポイントだ。

1. 金銭的報酬ではなく、言葉で褒める
2. 褒める際は結果ではなく、過程や努力を褒める
3. 個別ではなく、人前で褒める

報酬の与え方や評価の仕方を工夫して社員の自発的な意欲を刺激すれば、モチベーションの維持や生産性の向上につながるだろう。ここでは、3つのポイントの具体的な実践方法を詳しく解説する。

金銭的報酬ではなく、言葉で褒める

アンダーマイニング効果を防止するためのキーワードは、「言葉による評価」だ。金銭的な報酬を与えることによって評価する仕組みが根付いていると、部下は「管理されている」、「仕事をやらされている」という意識になりやすい。これでは自己決定感や有能感が低下してしまい、意欲的な態度で仕事に取り組むのは難しいだろう。

部下の意欲が削がれることを防ぐためには、部下の自己決定感や有能感を尊重しなければいけない。そのために有効なのは、賞賛や期待の気持ちを言葉にして伝えることだ。

金銭などの報酬と言葉による報酬とを比較すると、言葉による報酬のほうが自己決定感や有能感を保ちやすいことがわかっている。特に尊敬している上司や先輩から褒められるとエンハンシング効果が増大するため、モチベーションの維持に大いに役立つだろう。

社員が内発的動機づけによって行動を起こしているのならば、その行動に対して正当に評価する必要がある。その際は金銭的な報酬を与えるのではなく、「高く評価していること」や「能力を認めていること」を言葉にして伝えよう。そうすれば部下の内発的動機づけがさらに高まり、やりがいや意欲をキープしたまま仕事に取り組んでもらえるはずだ。

褒める際は、結果ではなく、過程や努力を褒める

エンハンシング効果を実践する際には言葉による評価が重要だと述べたが、「何を褒めるか」にも気を配りたい。効果的とされているのは、結果ではなく結果に至るまでの過程や努力を褒めることだ。

例えば、部下が頑張って進めていた企画を成功させたとしよう。その際に「よくできたね」と褒めるよりも、「大変なこともあっただろうに、たくさん努力したから成功したんだね」と褒めるほうが相手の心に響きやすい。

言語的報酬を活用して部下のモチベーションを向上させるのならば、部下が頑張ってきたことや努力してきたことを具体的に褒めるように意識しよう。

また部下を高く評価していても、心からの称賛だと伝わらなければエンハンシング効果は期待できない。部下を褒める際は言葉の抑揚や仕草などにも気を配り、本心で褒めていることが伝わるように工夫すべきだ。

個別ではなく人前で褒める

アンダーマイニング効果を防止するためには、部下と1対1のシチュエーションで褒めるのではなく、ほかの社員がいるときに褒めるのが有効である。

例えば、他者に見られている中で叱責や注意を受けると、心理的に大きなダメージを受けることは想像しやすいだろう。「怒られている姿を他者に見られている」という事実に自尊心が傷つき、モチベーションを保ちにくくなるのだ。

反対にエンハンシング効果では、「他者に見られていること」を自尊心の向上に活用する。周囲にほかの社員がいる環境で褒めることで、部下の自尊心や褒められる喜びを刺激するのだ。自尊心が満たされるとモチベーションが上がり、やりがいや意欲の高まりが期待できるだろう。

まとめ

アンダーマイニング効果は、やりがいや好奇心などの内発的動機づけに基づく行動に対して報酬を与えることにより、目的がすり替わってモチベーションが下がる現象を指す。主な要因は数パターンあり、金銭的な報酬や締め切りの設定、罰を与えることなどが挙げられる。

企業やチームの生産性を向上させるためには、アンダーマイニング効果を防止することが重要だ。そのためには、褒め方を工夫してエンハンシング効果を起こし、モチベーションを維持させるのが有効である。

社員のやる気や意欲に関連する2つの効果について正しく理解し、モチベーションマネジメントに役立てよう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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