2021.9.14

オーセンティック・リーダーシップの意味とは? 近年人事領域で注目されている理由

読了まで約 7

■オーセンティック・リーダーシップとは?

■他のリーダーシップとの違いとその歴史

■オーセンティック・リーダーシップが求められている背景

■オーセンティック・リーダーシップがもたらすメリット

■オーセンティック・リーダーの特性

■オーセンティック・リーダーシップを開発する4つのステップ

オーセンティック・リーダーシップとは? 他のリーダーシップとどう違うのか

時代の移り変わりやビジネス環境が変化するとともに、求められるリーダー像もまた変遷していく。
近年はマインドフルネスが社会に浸透するのと歩調を合わせるように、「オーセンティック・リーダーシップ」という新しいリーダー像が語られることが増えている。
オーセンティック・リーダーシップとは、ひとことで言えば「自分らしさを大切にするリーダーシップ」である。
オーセンティック(authentic)は、日本語に直訳すると「本物の、確実な、真正な」という意味を持ち、それはまさに、「自分らしさ」ということになる。
つまり、オーセンティック・リーダーシップとは、人の真似をするのではなく、自分自身の価値観や信念に基づいて、リーダーシップを発揮することを意味しているのだ。
この概念は、現在、ハーバード・ビジネススクールの教授であるウィリアム・W・ジョージ (William W. George)などが中心となり世界に広めたといわれている。
オーセンティック・リーダーシップが新しいリーダー像として注目されているのは、従来のリーダーシップ論とは大きく異なる特性を持っているからである。
そこで、まずはリーダーシップ論の推移について整理しておこう。

リーダーシップ論の歴史は長く、古くは1800年まで遡る。
1800年頃から1940年頃までは、リーダーシップとは天から与えられた才であり、生まれながらの天才がリーダーとしての能力を発揮すると考えられていた。
しかし、20世紀半ば頃になると、リーダーシップとは技能の一種であり、訓練をすることで体得できるものと考えられるようになっていく。
つまり、これまでは「才能」で片付けられてきたリーダーシップは、努力次第で体得可能なものであるという認識へと変わっていったのだ。
さらに、20世紀後半には、環境によってリーダーシップのタイプはさまざまであると考えられるようになり、リーダーシップの多様性が語られることとなる。
そして、21世紀初頭にかけて、平時と改革時におけるリーダーシップは異なるものであると考えられるようにもなった。
このように、リーダーシップ論はカリスマ型リーダーというステレオタイプから脱却し、少しずつ多様性を帯びて、時代と共に変化を遂げてきたことがわかる。
本稿では、近年注目を集めているオーセンティック・リーダーシップについて、求められている背景やメリット、その特性や育成方法について解説をしていこう。

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なぜオーセンティック・リーダーシップが求められているのか? そのメリットとは?

ではなぜオーセンティック・リーダーシップが注目され、必要とされているのだろうか。
その背景には、時代の移り変わりとともに、働き方が多様化していくにつれて、組織が成長し続けていくためにはリーダーシップへの考え方も大きく変えていかなければならないという事情がある。
これまでは、組織を牽引するリーダー、パワフルなリーダー、権力のあるリーダーといった強力なリーダーシップが求められ、いわば人間のハード面が重視されてきたが、現在では知識や価値観といった、よりソフト的な面に基づくリーダー像が求められるようになってきたのだ。
これは、高度情報化社会となるにつれて扱う情報量が膨大になり、1人の人間が持つ力だけでは組織を運営することが困難になっているという要因もある。
さらに、新型コロナウイルスのパンデミックによって、社会にまつわるさまざまなことが予測不能になっている現代で、従来型のリーダーシップに頼っていては、ビジネスを成功させ続けることは困難であることもあげられる。
予測不能なこの時代、人は「過去の実績」よりも、「その人そのもの」についていくようになるだろう。
これからのリーダーには、自らのことをきちんと理解し、自分自身をマネジメントし、ありのままをさらけ出せる、そのようなしっかりとした自分軸を持ち、人間力が備わっている、まさにオーセンティックなリーダーが求められているのだ。

では、オーセンティック・リーダーシップを通して、実際にはどのようなメリットが期待できるのか、見ていこう。

<オーセンティック・リーダーシップがもたらすメリット>
1. コンプライアンスの強化ができる
組織においてリーダーの影響力は大きいものであるため、高い倫理観を持ったリーダーが従業員の教育や管理にあたることで、その意識は自然と社内に浸透していくだろう。
つまり、組織としての理念やスローガンを強く意識したうえで、組織全体を統率することができれば、内部統制にもつながる。
オーセンティック・リーダーシップを用いたクリーンな経営によって、社内のコンプライアンスを強化できる効果が期待できるのだ。

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2. 良好なコミュニケーションを生み出す
オーセンティック・リーダーシップでは、周りにいる人間との関係性を大切にする能力も必要とされており、それはつまり、リーダー自らが積極的に仲間からの信頼を勝ち取っていくことが重要であることを意味する。
そこでオーセンティック・リーダーシップに基づいて、組織のトップが人間関係の構築に注力すれば、その分従業員同士の連携は強くなる。
さらに、互いの交流が深まることは、コミュニケーションにも良い影響を与え、情報共有や意見交換なども活発になる好循環を生み出すことが期待できる。

3. 従業員のエンゲージメント向上につながる
後ほど紹介するオーセンティック・リーダーシップの特性にある「真心を込めて人をリードする」ことを意識することで、組織の従業員との距離感は近くなる。
リーダー側から積極的に親睦を深める働きかけをすることで、周りの仲間は「この人についていきたい」と思えるようになり、仕事へのモチベーション向上が期待できるだろう。
さらに、組織のトップにも意見しやすい構造を作ることで、従業員にとっては「自分は認めてもらえている」と実感できる環境ができていくのだ。
そういったことの積み重ねが従業員エンゲージメントの向上へとつながっていくだろう。

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4. 多様な人材の活用を促すことができる
オーセンティック・リーダーシップで重要視されている特性は、古くから用いられてきたような、いわゆる「強い」要素だけではなく、時には自身の弱さや本心も周りに見せながら信頼関係を構築し、自分らしい価値観によって周囲を引っ張っていくのが理想であるとされている。
オーセンティック・リーダーシップを意識することで、従来ではあまり表舞台にはあげられなかった人物像もリーダーの候補に含まれるようになり、より多様な人材活用の促進につながっていくだろう。

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オーセンティック・リーダーの特性 どう育成するのか?

時代に求められ、企業も注目しているオーセンティック・リーダーシップだが、どのようにすればオーセンティックなリーダーなれるのだろうか?
冒頭で触れたオーセンティック・リーダーシップを提唱する第一人者であるジョージ教授は、その著『ミッション・リーダーシップ』(生産性出版:著者名は愛称のビル・ジョージ名義)において、「本物のリーダー」に備わる5つの特性をあげている。
それは、

1.目的観:自らの目的をしっかり理解している
2.価値観:しっかりした価値観に基づいて行動する
3.真心:真心をこめてリードする
4.人間関係:しっかりした人間関係を築く
5.自己統制:しっかり自己を律する

に要約できる。
これら5つの特性を考えると、リーダーが「人としてまともであること」「善の道を進むこと」、つまり「倫理観」を強調していることがわかるだろう。
「自分らしく」「ありのままの自分」を大切にすればいい、という考え方だけではなく、そこに「倫理観」をともなうのがオーセンティック・リーダーシップなのだ。
オーセンティック・リーダーシップを身に付けるステップは、自分自身や自分の倫理観への理解を深め、それに則した行動ができているかを確認し、その考えを軸として周囲と良い関係性を構築することにある。
具体的な手法としては、自分や周囲の中で最もオーセンティック・リーダーに適切であったと思う行動をあげ、なぜそのような行動を取ったのか、背景を分析することだ。
また、オーセンティック・リーダーの育成では、研修などを通じて、企業が企業として存在し続けていくために求められる価値観や倫理観を確認することが重要となる。
個々が重視する価値観や倫理観について考えるワークを行って、それぞれの考え方について話し合ったり、実際に社内で発生した倫理が問われる事例を題材にして、倫理について改めて考えるワークを実施することも有効だ。

また、オーセンティック・リーダーシップを開発するためのステップがあり、それは次の4つがあげられる。

<オーセンティック・リーダーシップを開発する4つのステップ>
1. 自分自身を理解すること
自分の強み・弱みや、自分の態度が周囲にどのように評価されているのかを把握する。
また、自分が納得できる行動と納得できない行動がどのようなものなのかを確認したうえで、自分はどのような行動を取るべきであると考えているのかについて観察することが必要だ。

2. 自分の倫理観について理解すること
社会や組織、周囲に対して公平であるためにも、自分が一貫して持つべき倫理観について考察をする。

3. 自分の行動を確認すること
自分が目指すべき目標、大切にするべき価値観や倫理観に則した行動ができているのかを常に確認する。

4. 周囲と公平な関係性を保つこと
周囲とのコミュニケーションや行動が公平であり、秘密を持たない透明性のある良い関係を保つようにする。

オーセンティック・リーダーシップは、これまでの「強いリーダー像」に惑わされて自分を見失うことなく、リーダーが自分らしくあることで、情報社会において成果を出すことができるという新しいリーダーシップの考え方だ。
この機会に1度、組織にとって適切なリーダーシップについて考えてみると良いだろう。

まとめ

・時代の移り変わりやビジネス環境が変化するとともに、求められるリーダー像もまた変遷していく。近年はマインドフルネスが社会に浸透するのと歩調を合わせるように、「オーセンティック・リーダーシップ」という新しいリーダー像が語られることが増えている。オーセンティック・リーダーシップとは、ひとことで言えば「自分らしさを大切にするリーダーシップ」であり、この概念は、ウィリアム・W・ジョージ (William W. George)などが中心となり世界に広めたといわれている。

・オーセンティック・リーダーシップが新しいリーダー像として注目されているのは、従来のリーダーシップ論とは大きく異なる特性を持っているからである。1800年頃から1940年頃までは、生まれながらの天才がリーダーとしての能力を発揮すると考えられていたが、20世紀半ば頃になると、リーダーシップは訓練をすることで体得できるものと考えられるようになっていった。さらに、20世紀後半には、リーダーシップの多様性が語られることとなり、21世紀初頭にかけては、平時と改革時におけるリーダーシップは異なるものであると考えられるようにもなった。このように、リーダーシップ論は時代と共に変化を遂げてきたのだ。

・オーセンティック・リーダーシップが必要とされている背景には、時代の移り変わりとともに組織が成長し続けていくためには、リーダーシップへの考え方も変化させなければならないという事情がある。これまでのリーダーシップでは、人間のハード面が重視されてきたが、現在では知識や価値観といった、よりソフト的な面に基づくリーダー像が求められるようになってきた。高度情報化社会やVUCA時代で組織が存続していくためには、しっかりとした自分軸を持ち、人間力が備わっているリーダーが求められているのだ。

・オーセンティック・リーダーシップを通して期待できるメリットには次のようなことがあげられる。【1.コンプライアンスの強化ができる】オーセンティック・リーダーシップを用いたクリーンな経営によって、社内のコンプライアンスを強化できる。【2.良好なコミュニケーションを生み出す】オーセンティック・リーダーシップに基づいて、組織のトップが人間関係の構築に注力すれば、従業員同士のコミュニケーションも良好となる。【3.従業員のエンゲージメント向上につながる】リーダー側から積極的に親睦を深める働きかけをすることで、仕事へのモチベーション向上が期待できる。【4.多様な人材の活用を促すことができる】自分らしい価値観によって周囲を引っ張っていくのが理想であるとされているため、従来ではあまり表舞台にはあげられなかった人物像もリーダーの候補に含まれるようになる。

・オーセンティック・リーダーシップを提唱する第一人者であるジョージ教授は、著書である『ミッション・リーダーシップ』において、「本物のリーダー」に備わる5つの特性をあげている。
それは次のとおりだ。1.目的観:自らの目的をしっかり理解している、2.価値観:しっかりした価値観に基づいて行動する、3.真心:真心をこめてリードする、4.人間関係:しっかりした人間関係を築く、5.自己統制:しっかり自己を律する。

・オーセンティック・リーダーシップを開発するためのステップがあり、それは次の4つだ。【1.自分自身を理解すること】自分の強み・弱みや、自分はどのような行動を取るべきであると考えているのかについて観察する。【2.自分の倫理観について理解すること】自分が一貫して持つべき倫理観について考察をする。【3.自分の行動を確認すること】自分の目標、大切にするべき価値観や倫理観に則した行動ができているのかを常に確認する。【4.周囲と公平な関係性を保つこと】公平で秘密を持たない透明性のある良い関係を保つようにする。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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