2021.8.10

傾聴とは?ビジネスやマネジメントの技術で必要とされている理由

読了まで約 6

■コロナ禍がもたらしたチームマネジメントへの影響

■傾聴とは?

■ロジャーズの3原則

■傾聴がもたらすメリット

■傾聴をトレーニングする際の注意点

■傾聴のトレーニング方法

なぜ今、傾聴なのか

コロナ禍がビジネスの場にもたらした影響は様々あるが、中でも大きなものとして、リモートワークをはじめとしたコミュニケーション方法の変化があげられるだろう。

関連記事:テレワークで効果的なコミュニケーションは「雑談」!鉄板の雑談ネタ10選

今まで直接顔を合わせて行うことができたコミュニケーションの非対面化が進み、その難しさを実感している人も多い。
それは、ZaPASSJAPAN株式会社が行った「チームマネジメントに関するアンケート」(調査対象:日本企業に勤めているマネージャー以上の役職を持つ会社員、会社役員 調査方法:Web 実施時期:2020年12月19日〜12月23日 有効回答数:253)の結果からも伺える。
「テレワークになったことで、チームマネジメントの難易度に変化がありましたか?」という設問に対して、「とても難しくなった」と「やや難しくなった」の回答が合わせて67.6%と、7割近くの人がリモートワークによって、チームマネジメントが難しくなったと感じていることがわかり、非対面によるコミュニケーションの難しさが多くの管理者の頭を悩ませているということが明らかとなった。
今後も進んでいくであろうリモートワーク下におけるコミュニケーションのテクニックとして、今注目されているのが「傾聴」だ。
同調査の「テレワークになったことで、チームマネジメントにおいて傾聴力がより必要になったと思いますか?」という設問に対しても、「はい」の回答が86.2%となっており、9割近くの人がリモートワーク下における傾聴力の必要性を感じているという結果となった。

参考:ZaPASS JAPAN 株式会社「チームマネジメントに関するアンケート」

耳を傾けて聴くと書く「傾聴」(けいちょう)であるが、それはどういうことなのだろうか。
まず、「傾聴」とは、相手のいうことに対して否定をせず、相手の話に耳も心も傾けて「聴く」会話のテクニックのことを指す。
もともとはカウンセリングにおける技法で、心理学などの分野では以前からよく使われている言葉であった。
「ただ熱心に話を聞くだけなのでは?」と思うかもしれないが、意識すべきなのは、相手に共感し、信頼していると示すことであり、傾聴ができるようになると、信頼が生まれ、社内の人間関係が良好になるといわれている。
また、経済産業省が提言している「社会人基礎力」の要素にも「チームで働く力(Teamwork)」の一つとして「傾聴力」は含まれている。

参考:経済産業省「社会人基礎力」

そこで本稿では、ビジネスの場でも重要視されるようになっている傾聴について解説をしていこう。

ロジャーズの3原則と傾聴のメリット

傾聴は、アメリカの心理学者でカウンセリングの祖といわれるカール・ロジャーズによって提唱された。
カール・ロジャーズは傾聴を「積極的傾聴(active listening)」と呼び、自らが行った多くのカウンセリングの事例を分析して、話を聴く側には3つの要素が必要であると説いている。

<ロジャーズの3原則>
1. 自己一致(congruence)
これは、相手と自分が見ているものを一致させることである。
相手への理解が十分でないと、話を進めた先で見解の違いが生じてしまうため、話を聴いて理解ができないことやわかりにくいことをそのままにせず聴き直すなど、常に相手の真意を確認することが必要だ。
そうすることで、やりとりの過程で相手の感じ方や考え方を正確に把握できるようになる。

2. 共感的理解(empathic understanding)
相手の話を、相手の立場で、相手の気持ちに共感しながら聴いて、理解しようとすることである。
相手の言葉を受け入れるためには、まず相手の言葉を引き出すことが必要となるため、「思ったことを素直に言ってもいい」という雰囲気を作り出さなければならない。
そのため「共感」は、相手に心理的な安心感を与えるためにも重要なポイントとなるのだ。

3. 無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard)
相手の話に対して、善悪や好き嫌いの評価をせずに、一旦すべて承認するということである。
言葉を引き出すためには安心感が必要であると述べたが、口から出した言葉を承認することでためらいを和らげることができる。
重要なのは、相手の話を否定せず、なぜそのような考えに至ったのか、その背景に対して肯定的な関心を持って聴くことだ。
そうすることで、相手は安心して話をすることができ、核心に迫る言葉を引き出すことが可能となる。

では、傾聴にはどのようなメリットがあるのだろうか。
順番に紹介していこう。

<傾聴がもたらすメリット>
1. 信頼関係の構築がしやすくなる
傾聴を意識しないコミュニケーションでは、相手の話を軽く流してしまったり、興味関心があることだけを熱心に聞いたりするといったことも珍しくない。
しかし、そのような態度で相手の心を開くことはできないだろう。
傾聴を意識して、相手の話を真剣に聴き、共感や理解しようとすることで、相手も肯定的な感覚を得ることができ、心を開くこと、すなわち信頼関係の構築につながっていく。

2. 心情や問題の整理ができる
傾聴してくれる聴き手がいることで、話し手は自らの心情や意見、現在抱えている問題などを整理することができる。
人はさまざまな悩みや意見を持っているが、具体的な言葉にして表現できるレベルの考えもあれば、まだ他人に伝える程度にはまとまっていない考えや、自らも気づいていないような考えもあるだろう。
それを言葉にして把握するのは簡単なことではないが、傾聴することで、話し手は自分の考えを何とか伝えようと言語化し、それを口に出すことで自分の本心や意見に気付くことができる。
これを繰り返し行うことで考えや感情、問題などの整理ができ、具体的な行動へとつながるのだ。

3. 仕事が円滑に進む
傾聴は仕事の効率にも良い影響を与える。
ビジネスでは、互いへの理解不足や信頼関係が築かれていないことなどが原因となって、仕事が円滑に進まないといった事態が生じることもあるだろう。
傾聴によって、相手の意見や考えに真摯に耳を傾け、時に効果的な質問を挟むことで、話し手の伝えたいことを引き出すことができ、コミュニケーションが深いものとなる。
スムーズなコミュニケーションを行えることは、結果として仕事が効率的に進むことにもつながるのだ。

傾聴を行う際の注意点とトレーニング方法

さまざまなメリットが享受できる傾聴であるが、傾聴には技術が必要であるため、準備せずに行ってしまうことは、自身の心理的なストレスがたまる要因となりかねない。
ここでは、傾聴のトレーニング方法を紹介するが、まずは、トレーニングする際の注意点を見ていこう。

<傾聴をトレーニングする際の注意点>
1. 聴いた内容は基本的には他言しないこと
2. 聴いた話に関する自分の責任がどこまでなのかを見極めること
聴いた話を気軽に他人に話してしまったことで、相手が「あなただから話したことなのに、どうして他人に言ってしまったのか」と思ったとしたら、信頼関係を築くことは困難となる。
しかし、「会社のお金を横領した」などと打ち明けられた場合には、決して自分の中に留めておくというわけにはいかないだろう。
傾聴する際には、「他言はしない」というルールをよく理解したうえで、自分がどの程度の話なら責任を負うことができるかや、自分では扱いきれない話を聴いたときにはどうするのかは明らかにしておきたい。

注意点を確認したところで、次は傾聴のトレーニング方法について見ていこう。

<傾聴のトレーニング方法>
1. 話しやすい環境を自分自身で考えてみる
話しやすい雰囲気や環境とはどのようなものなのか、また、どういった身振りや手ぶり、表情をすれば話しやすい雰囲気を生み出すことができるのかなど、自分自身を点検してみると良いだろう。

2. 4つの技術を使って話を聴く
相手の話を聴くうえで、「うなずき」「あいづち」「繰り返し」「言い換え」」という4つの技術を使い分けると、話に共感していることが伝わるため、話しやすい空気をつくることができる。
たとえば、「繰り返し」は、「あなたは〇〇と思っているのですね」と相手の言葉を繰り返すことで、話をしっかり聴いているという印象を与え、さらなる会話を引き出すことができる。
傾聴を行うと、相手に共感をしようという意識が強くなり、会話が行き詰ってしまうこともあり得るが、そんなときにはこれらの技術を使うことで、相手からさらに話を引き出すことや、話題を膨らませることができるだろう。

3. 5W1Hを意識する
相手の話をよく理解するには、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのようにした」の5W1Hを意識することがポイントだ。
会話に行き詰ってしまった場合や、話をよく理解できなかった場合には、5W1Hのうち、どれかを聴き逃していないかを考え、確認すると良いだろう。

ここまで傾聴について解説をしてきた。
カウンセリングなどでよく用いられており、社会人の基礎的な能力にもあげられている「傾聴」は、信頼関係の構築や仕事をスムーズに進めることができるなど、ビジネスにおいてもさまざまなメリットがある。
リモートワークなど非対面での業務が多くなり、コミュニケーション不足によるチームマネジメントの難しさに直面しているという人は、参考にしてほしい。

まとめ

・新型コロナの影響で、ビジネスにおいてもコミュニケーションの非対面化が進み、その難しさを実感している人も多く存在する。実際に、ZaPASSJAPAN株式会社が行った調査でも約7割近くの人がリモートワークによってチームマネジメントが難しくなったと回答している。そのような状況下で今、注目されているのが「傾聴」だ。同調査においても、9割近くの人がリモートワーク下における傾聴力の必要性を感じているという結果となり、その注目度が伺える。

・「傾聴」(けいちょう)とは、相手のいうことに対して否定をせず、相手の話に耳も心も傾けて「聴く」会話のテクニックのことを指す。もともとはカウンセリングにおける技法で、心理学などの分野では以前からよく使われている言葉であったが、傾聴ができるようになると信頼が生まれ、社内の人間関係が良好になるといわれている。また、経済産業省が提言している「社会人基礎力」の要素にも「チームで働く力(Teamwork)」の一つとして「傾聴力」は含まれており、近年、傾聴はビジネスの場でも重要視されるようになっているのだ。

・傾聴は、アメリカの心理学者でカウンセリングの祖といわれるカール・ロジャーズによって提唱された。ロジャーズは傾聴を「積極的傾聴(active listening)」と呼び、自らが行った多くのカウンセリングの事例を分析して、話を聴く側には3つの要素が必要であると説いている。それは次のとおりだ。1.自己一致(congruence)、2.共感的理解(empathic understanding)、3.無条件の肯定的配慮(unconditional positive regard)。

・傾聴がもたらすメリットとして次のようなものがあげられる。1.信頼関係の構築がしやすくなる:相手の話を真剣に聴いて共感や理解しようとすることで信頼関係の構築につながる、2.心情や問題の整理ができる:聴き手がいることで、話し手は自らの心情や現在抱えている問題などを整理することができる、3.仕事が円滑に進む:互いに信頼や理解をしてスムーズなコミュニケーションを行えることは、仕事が効率的に進むことにもつながる。

・傾聴をトレーニングする際の注意点は、次のとおりだ。1.聴いた内容は基本的には他言しないこと、2.聴いた話に関する自分の責任がどこまでなのかを見極めること。聴いた話を気軽に他人に話してしまうと信頼を得ることは困難となるが、もし、犯罪行為などを打ち明けられた場合には、自分の中に留めておくわけにはいかないだろう。傾聴する際には、「他言はしない」というルールを理解したうえで、話を聴いた際に自分が負える責任についても考えておく必要がある。

・傾聴のトレーニング方法を見ていこう。それは次のとおりだ。1.話しやすい環境を自分自身で考えてみる:話しやすい雰囲気や環境、身振りや手振り、表情などを考え、自分自身で点検をする、2.4つの技術を使って話を聴く:「うなずき」「あいづち」「繰り返し」「言い換え」という4つの技術を使い分けることで話しやすい空気をつくることができる、3.5W1Hを意識する:相手の話をよく理解するには、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのようにした」の5W1Hを意識することがポイントとなる。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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