2021.7.12

フロー状態(体験)とは?社員の生産性向上につなげるポイントを解説

読了まで約 6

■フロー状態とは?

■仕事においてフロー状態が注目されている理由

■フロー状態がもたらす3つの効果

■フロー状態いたるための条件

■フロー状態を生み出す3つの重要なポイント

フロー状態とは何か? その定義と注目される背景

仕事や趣味など、何かに取り組んでいる際に時間を忘れて没頭した経験は、誰しもが持っているだろう。
そのように、人が完全に集中して、時間が経つのも忘れて夢中になっている心理状態は「フロー(flow)」と呼ばれる。
東洋哲学でいうところの「無我の境地」、あるいはスポーツ選手が使う「ゾーン」と同じ状態を表しているとされている概念だ。

「フロー状態(体験)」はアメリカのポジティブ心理学研究者M.チクセントミハイによって研究・提唱された理論で、著書『フロー体験 喜びの現象学』にてまとめられた。
いまや「幸福」や「創造性」に関するポジティブ心理学の代表格ともいえる概念である。

世界で活躍するスポーツ選手やトップレベルのアーティストなどは、このフロー状態によく入ると言われているが、フローは一部の人間だけが持っている特別な才能というわけではない。

例えば、ゲームなどに没頭することで、とてつもない集中力を発揮するとともに、満足感や自己統制感の高まりを感じられることがある。
まさにこれがフローと呼ばれる状態で、フロー状態に入っているときには高難度のテクニックを簡単に習得できた、高得点を出せた、というような結果を得た人も多い。
このような高いモチベーションのフロー状態を繰り返し体験することで、満足感を得ながら自らの限界を超えたスキルを育てることができるのだ。

仕事においても意識的にフロー状態を作り出せるようになると、外部のことに気を取られることなく、楽しく集中して課題に取り組むことができる。そのため、高いモチベーションの維持やパフォーマンスの向上を見込むことができる。
従業員のモチベーションを高めるためには、インセンティブや昇格などの自らコントロールすることができない外的動機付けだけでは不十分である。「楽しいからやる」などというような、内的動機付けが不可欠という認識が広まる現代において、仕事に対するやりがいや満足感を得られたうえで、成長につながるフローは注目されているのだ。
そこで本稿では、フロー状態がもたらす効果やフロー状態にいたるための条件について解説していこう。

フロー状態がもたらす効果とは?

前項では、フロー状態の概要をお伝えした。
では、はたしてフロー状態には具体的にどのような効果があるのだろうか。
以下で順番に紹介していこう。

<フロー状態がもたらす3つの効果>
1. パフォーマンスや能力の向上を見込める
フロー状態に入った人は、その人の持つ最大限の力を発揮することができる。
集中力が極限まで高められることで、雑念にとらわれることなく目の前にある課題に対してだけに全神経を注ぐことができるため、パフォーマンスが向上するのだ。

例えば、フロー状態を経験したトップクラスのテニスプレイヤーの話によると、フロー状態に入るとボールがいつもよりも大きく見えて、スピードもゆっくりに感じるという。
フロー状態に入ることができれば、仕事やスポーツ、勉強などそれぞれの場面で高いパフォーマンスの実現を期待することができるだろう。

2. 目の前の課題に楽しさを感じることができる
目の前の課題に没頭することができる状態は、その作業を心の底から楽しめることにつながる。
例えば、ゲームに熱中するあまり、あっという間に時間が過ぎていたというような経験を持つ人は多いだろう、これが「楽しさ」だ。

また、次の項で改めて解説するが、集中力を高めるには自分の能力に対して、取り組む課題のレベルがちょうどいいバランスである必要がある。
今の自分にとって実現が難しすぎる課題に挑戦しても、スキル不足を感じてしまうだけで楽しむことはできないだろう。

適切な難易度の課題に対して自分の持っている最大限の能力を使うことで、楽しさを感じることができるのだ。

3. 自己成長を促すことができる
先述したように、フローは自分の限界を引き上げることができる。
能力を最大限に発揮することで、今まで認識していなかった能力に気が付いたりするのだ。
また、自分の能力より少しレベルの高い課題を解決するためには、新しい力を身につける必要がある。
そのような課題を解決するために、自ら調べ試行錯誤を重ねることは、自然な能力の向上へとつながる。
自分の能力を発見し、今までの自分にはなかった能力を身につけることで、自己成長を促すことに役立つだろう。

こうしたフローのメリットは、特に個人だけが享受するものではない。
職場や組織においても、このようなフロー状態がもたらすメリットを効果的に享受することができれば、企業にとって従業員の成長、モチベーションやエンゲージメントの向上を見込めるからだ。

そして、それは結果として企業全体の生産性やパフォーマンスの向上へとつながっていくだろう。

関連記事:
エンゲージメントとは?従業員の定着率をあげるためにできるエンゲージメント向上の施策
コロナで変わった人事業務の最新情報。問われるリモートワークでの生産性向上

フロー状態にいたるための条件とは?

多くのメリットが見込めるフロー状態だが、そうなるためにはいくつかの条件が必要だといわれている。
フロー状態を意図的に作り出すために必要な条件を順番に解説していこう。

<フロー状態に至るための条件>
1. 目標が明確であること
フロー状態に入るための第1歩であり、フローを体験した人が共通して持っていたもの。
それは、明確な目標があることだ。
明確な目標がある状態とは、何をもって課題が解決できたと判断するのか、そのためには今自分が何をすべきかをしっかりと自覚していることを指す。

目標を明確化するためには、次のようなことを行うと良いだろう。
・ 数値化する
・ 期限を設定する
・ TO DOリストを作成する など

例えば、「資料をまとめる」ではなく「3時間以内に10ページ分の資料をまとめる」と具体的に目標を定めることでフロー状態に入りやすくなるのだ。

2. 目標が適切な難易度のものであること
フロー状態に入るためには、自分の能力と取り組む課題の難易度を適切なバランスにすることが不可欠だ。

目標達成が見えない、困難な課題に取り組むと自分の能力不足を感じてしまう。
それにより、不安や絶望などの感情が生まれてしまい、簡単すぎる課題に取り組むと退屈に感じてしまい、そのどちらであってもフロー状態に入ることはできない。

達成は容易ではないけれど、不可能ではない、という個人にあった課題に取り組むことが大切だ。
目標設定の1つの目安としては、達成できると思える確率が70%以上であるものが望ましいだろう。

3. すぐに進捗確認ができる・フィードバックが得られる状態であること
目標までどれくらい進んだのか、今取り組んだことはどれくらいの効果があったのか、など目標に向けて行動した結果がすぐにわかることも大切なポイントだ。

確認を後回しにしてしまうと、間違っていたところがあった場合に気付くのが遅れてしまうことや、自分に力がついているのかどうかもわかりにくい。

そのため、細かな行動1つ1つに対してフィードバックを行い、より良い方法を考え出し、間違った考え方や行動をしていればその都度修正していくことが、力を限界まで引き出し、フロー状態を保つために必要となるのだ。

4. 取り組んでいる課題に価値を感じていること
フロー状態に入るためには、その目標に取り組むことでどのようなメリットを享受することができるのかを自覚している必要がある。
つまり、取り組んでいる課題に対して価値を感じられている状態であることが不可欠ということだ。

面倒に感じる仕事も、「面倒だから早く終わらないかな」とマイナスに捉えると集中力が途切れ、モチベーションも能率も下がるが、「これをやり遂げれば大きな山を超えることができ、困難と思われていた課題の解決につながるのだ」とプラスに捉えることができれば、仕事に対する価値を感じられ、フロー状態に入りやすくなるのだ。

5. 取り組んでいることだけに集中していること
フロー状態の人は、今取り組んでいることだけに集中している。
人は普段の生活で、さまざまなことに注意を向けて生活しているが、フロー状態では目の前の課題以外に一切の意識を向けない。
1種の瞑想のような圧倒的な集中力が必要となるのだ。

6. 体感時間の変化や意識が統制できている感覚がもてること
フロー状態は、時間の感覚と意識感覚を変えてしまう。
まず、体感時間には2つの変化があると言われている。
フロー状態が終わった後に振り返ってみると、いつもより時間が早く過ぎたように感じるが、フロー状態の最中は、通常ではありえないような時間が引き延ばされている感覚に陥るのだ。

また、意識が統制できている感覚とはいつも以上に高いパフォーマンスを保つことができている状態を指す。
意識を他のことに向けず、目標に向けて順調に取り組んでいる感覚をもつことが大切だ。

先述したフロー状態にいたる条件を基準にして、重要なポイントをまとめると以下の3つがあげられる。
1. 自分に合っている明確な目標を立てること
2. こまめな進捗確認と、目標の修正を行うこと
3. 集中できる環境で取り組むこと

シンプルなことではあるが、意識的に行動していくことでフロー状態に入りやすくなるだろう。

高いモチベーションが維持され、活気にあふれている職場では、生産性やエンゲージメントの向上、イノベーションの促進などさまざまな効果が期待できる。
フローをうまく活用することができれば、従業員の能力を引き出すことができ、モチベーションを向上させることなどができるため、結果として組織力の強化や企業全体のパフォーマンス向上へと役立つだろう。

まとめ

・人が完全に集中して、時間が経つのも忘れて夢中になっている心理状態は「フロー(flow)」と呼ばれ、「フロー状態(体験)」はアメリカのポジティブ心理学研究者M.チクセントミハイによって研究・提唱された理論である。フロー状態に入っているときには、尋常ではない集中力を発揮するとともに、満足感や自己統制感の高まりを感じられることがあり、高難度のテクニックを簡単に習得できた、高得点を出せた、というような結果を得た人も多い。高いモチベーションのフロー状態を繰り返し体験することで、自らの限界を超えた能力を育むことができる。

・仕事においても意識的にフロー状態を作り出せるようになると、楽しく集中して課題に取り組むことができるようになるため、従業員のモチベーションの維持やパフォーマンスの向上を見込むことができる。従業員のモチベーションを高めるためには、内的動機付けが不可欠であるという認識が広まっている現代において、仕事に対するやりがいや満足感を得られたうえで成長につながるフローは注目されている。

・フロー状態がもたらす効果として次の3つがあげられる。1.パフォーマンスや能力の向上を見込める、2.目の前の課題に楽しさを感じることができる、3.自己成長を促すことができる。このような、フロー状態によるメリットを効果的に得ることができれば、高いパフォーマンスの実現や能力の向上が期待できるため、結果として従業員のモチベーションやエンゲージメント向上、さらには企業全体の成長へとつながる。

・フロー状態を意図的に作り出すために必要な条件は次のとおりだ。1.目標が明確であること、2.目標が適切な難易度のものであること、3.すぐに進捗確認ができる・フィードバックが得られる状態であること、4.取り組んでいる課題に価値を感じていること、5.取り組んでいることだけに集中していること、6.体感時間の変化や意識が統制できている感覚がもてること。特に目標の明確さや難易度はフロー状態に入るための第1条件ともいえるため、注意して設定しておきたい。

・先述したフロー状態にいたる条件を基準にして、重要なポイントをまとめると次の3つがあげられる。1.自分に合っている明確な目標を立てること、2.こまめな進捗確認と、目標の修正を行うこと、3.集中できる環境で取り組むこと。高いモチベーションが保たれている職場では、生産性やエンゲージメントの向上、イノベーションの促進などさまざまな効果が期待できる。フローをうまく活用することで、従業員の成長だけでなく、組織力の強化や企業全体のパフォーマンス向上へと役立つ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

get_field('cf_general_profile_name', 39);

『MarkeTRUNK』編集部

マーケターが知りたい情報や、今、読むべき記事を発信。Webマーケティングの基礎知識から
知っておきたいトレンドニュース、実践に役立つSEO最新事例など詳しく紹介します。
さらに人事・採用分野で注目を集める「採用マーケティング」に関する情報もお届けします。
独自の視点で、読んだ後から使えるマーケティング全般の情報を発信します。

関連記事 RELATED POSTS

関連資料ダウンロード RELATED POSTS

メルマガ会員登録で最新マーケティング情報やトレンド情報、セミナーイベント情報をチェック!

メールマガジンのサンプルはこちら