2021.3.26

新卒・新人社員の意欲向上につながる「ポジティブフィードバック」とは?効果的に活用するポイント

読了まで約 6

■ポジティブフィードバックとは?

■フィードバックを行う目的と、コーチングとの違いとは?

■フィードバックを行うことの極意とは?

■ポジティブフィードバックを行う5つのメリット

■仕事に関わることを褒め、定めた次なる目標は広くシェアしよう

■ポジティブフィードバックは「終わり」ではなく「はじまり」

ポジティブフィードバックとは何か? その目的は?

これまで、日本企業における評価制度の根底に流れる考え方は、「上手くいったら褒め、だめだったら叱る」といった𠮟咤激励などの、いわゆる「アメとムチ」に基づくものが普通だった。

しかし、仕事上で上司が部下へ、失敗した時や過失を指摘する際に、激昂して叱るなどの行為に出てしまうと、部下は萎縮して次の業務に取り組むときに、同様の厳しい指摘や悪い評価を気にしてしまう。そのため、集中して業務に取り組むことができないなど、必ずしもこの「アメとムチ」が効果的に機能しているといえない状況もある。

部下のやる気を引き出して、目を輝かせながら元気に働くことができ、結果としてチーム全体の業績向上に結びつくように導き、管理していくことがこれからのリーダーには求められており、決して感情に任せて部下を責めることが仕事ではない。

部下が失敗や改善を必要としている場合は、しっかりと改善するべきポイントを伝え、どのように改善していくかについてアドバイスを出すことができる上司像が求められている。そこで、注目されている考え方が、「ポジティブフィードバック」である。

本稿では、ポジティブフィードバックと通常のフィードバック、あるいは他のマネジメント方法との違いについて、ポジティブフィードバックを企業の職場環境に取り入れることのメリットについて、そして最後に、ポジティブフィードバックを活用していくにあたってのポイントについて解説していく。

まず、そもそもフィードバックとは何なのかという点を中心に、職場においてフィードバックを行う目的や、フィードバックの種類、そして他のマネジメントとの違いについて確認していこう。

電子工学や解剖生理学などの学術用語に端を発した「フィードバック」という単語は、ビジネス用語としては「行動したことによる結果を伝える行為」を指して使われる。

フィードバックの目的は主に2つあり、1つ目は業務で設定していた何らかの目標設定などの結果を伝えること、そして2つ目は、部下の成長を促進することである。

フィードバックは、マネジメントにおいて不可欠の要素だといえ、客観的な視点から、設定した目標に対する行動の結果を伝える行為を通じて、部下の業務改善につなげていく狙いがある。

そんなフィードバックには、ポジティブなものとネガティブなものという2つの種類がある。

ポジティブフィードバックとは、評価対象である従業員に対して、否定的な言い回しを一切せず、相手を褒め、前向きな気持ちの中でフィードバックを行うことを指す。

対してネガティブフィードバックとは、部下が起こした行動の問題点を具体的に指摘していくことで、問題行動がもたらした好ましくない結果について振り返り、同じ問題をくり返さないように指導していくためのフィードバックだ。

類似したマネジメント手法としては、コーチングがあげられるが、コーチングは上司による傾聴の姿勢によって、部下との双方向対話を通じて、部下自らがさまざまな気づきを得ることに重点を置いている点でフィードバックとは性質が異なっている。

それでは、ポジティブフィードバックを企業組織において行うメリットとはどのようなことがあげられるのだろうか。次項では、ポジティブフィードバックがもたらすメリットについて見ていこう。

職場で取り入れるメリット

前出のとおり、ビジネスシーンにおけるフィードバックとは、行動したことによる結果とその評価を当事者へ伝える行為を指している。行動した結果から、何を改善すべきで、どのような点が良かったのかを伝えることを通じて部下の成長を促進していくという、マネジメントで欠かせない手法のひとつだ。

至らなかった点や、マイナス面を指摘していくのがネガティブフィードバックだが、ここでは部下がやる気を出して自発的に動けるようになるための、ポジティブフィードバックがもたらすメリットについて整理していこう。

1. フィードバックの過程が円滑に進行できる
そもそもフィードバックに限らず、人と人との話し合いにおける停滞の主な原因のひとつは、他者の考えや行動、あるいはそれらに伴う結果に対する批判である。

ネガティブな言い回しや批判を行わないポジティブフィードバックでは、指摘や改善を要求する点も含めてポジティブな言い回しで評価対象者へ伝える。そのため、フィードバックを行っている間の雰囲気も明るく保たれ、その後のコミュニケーションも円滑にとることが容易となる。

フィードバック後を考えた場合、コミュニケーションの円滑化という意味において、評価する側とされる側の双方にとってメリットが大きいといえる。

2. 話し手と聞き手の双方がポジティブになれる
フィードバックをポジティブな内容に限って行った場合、あるいは、指摘すべき点や改善を要求する点なども含めてポジティブな言い回しで行った場合、フィードバックを行う側と、フィードバックを受ける側の双方が、ネガティブな印象や気持ちには陥りにくいものとなる。

特に、評価対象者がフィードバックに対して抱く印象もマイナスになりにくく、業務へのモチベーション低下を招くことなく評価を伝えることが可能な点でメリットが大きい。ポジティブな言い回しで、更なる業務への積極性の向上が期待できる。

3. 従業員のエンゲージメント向上が期待できる
評価対象者のモチベーションを維持しつつ、業務へのエンゲージメントを向上させるには、ポジティブフィードバックを通じて、評価対象者へのアドバイスや長所を伝えていくことで大きな効果が期待できる。

これにより、働く個人が、日々取り組む業務をより身近に感じることができ、漠然と業務をこなしているだけではなく、自身の秀でている点や、良かった点が業務に生かされているという実感を持てる。何よりも業務に対して自信を持つことにより、より前向きな姿勢で業務を遂行することが期待できる。

4. 業務配置の最適化や社内戦略に活用できる
評価対象者へのフィードバックが、良かった点や長所などのポジティブなことでまとめられているからこそ、それが広く社内で共有されている場合、評価対象者の自律的な社内でのキャリア形成を助けるものとなりえる。その点において、働く個人にもたらすメリットは大きい。

同時に、企業側においても、従業員それぞれの長所を把握できている状況は、限られた社内の人的リソースから、最適な人材配置を考え、経営戦略を立てていく上で大きなメリットとなる。

5. マネージャーの評価対象者に対する理解が深まる
設定された目標に対する行動の結果を評価する時、指摘すべき点や、改善を要求しないといけない点などもある中で、評価対象者の長所を探す行為は、意外にも難しいものだ。

また、ポジティブな言い回しのみ使用可能である点を考慮した場合、フィードバックを行う側も真剣に評価対象者と向き合うことが必要となる。

指摘すべき点や改善を要求する点を含め、ポジティブに伝えることで次回以降のパフォーマンスに期待するという行為には、評価する側が評価される側を深く理解することに繋がり、マネジメントを行う観点からメリットが大きい。

ポジティブフィードバック活用のポイント

前項では、適切なポジティブフィードバックが企業(フィードバックを行う側)と働く個人(評価対象者)の双方に数々のメリットをもたらすことを確認した。しかし、これらのメリットも、ポジティブフィードバックが適切なかたちで導入され、運用されない限り、強みとして生かされなくなってしまうものだ。

ここでは、評価する側であるチームリーダーやマネージャーなどが、今までにないアプローチを行う際に戸惑うことがないよう、ポジティブフィードバックを導入する際に気を付けたい5つのポイントについて解説していく。

1. 評価する際は業務と絡めて話すこと
ポジティブフィードバックの利点を最大限に活用していくため、評価対象者のことを褒めたり、長所を自覚させたりすることは必須だが、必ず業務に係る部分を評価することが重要となる。

このため、闇雲に評価対象者を褒めれば良いということではなく、業務にあたる際の勤務態度や、ものごとをお願いする際の言葉づかい、普段の同僚との話し方などといった、業務と関連のある事項について褒めることがとても重要だ。

前提となるのは、普段から評価対象者をよく観察することとであるため、評価する側にも日頃からの継続的なアクションが求められるのだ。

2. 実現を見据えて目標を立てること
フィードバックを通して上司とともに設定する目標は、評価対象者の技量や性格から判断されるべきものであり、過度に高い目標は決して定めるべきではない。

達成が現実的でない目標は、評価対象者に達成感を与えることができず、最悪の場合、かえって業務へのモチベーションが下がる要因となる。

例えば、新入社員が独り立ちしはじめる頃に行うフィードバックならば、実務上での目標なども重要だが、まずは「1週間必ず定時に帰宅すること」などの、達成しやすい目標を定めていくことで、小さくて手の届く目標と小さな達成感から徐々に目標を大きくしていくというかたちが、最も望ましいといえる。

3. 立てた目標は、広く共有すること
ポジティブフィードバックを通して評価された側のみが次の目標を知っているという場合、より広範な意味において、次のフィードバックに向けた客観的な助言や評価を行うことが難しくなる。

このため、最も望ましいかたちは、社内ネットワークなどでそれぞれの従業員が掲げた目標を、他の従業員も閲覧できる状態とし、共有することだ。

こうすることで、従業員それぞれが、自ら設定した目標に向かって適切に行動できているかという点につき、フィードバックに先立って周りの同僚や上司からアドバイスをもらいやすい環境づくりが可能となる。

4. 「これから」に期待していると伝えること
最初の項でも言及したとおり、ビジネスシーンでのフィードバックを行う目的は、結果を伝えることと部下の成長を促すことにある。このため、ポジティブフィードバックを行う際、「ここまで」の振り返りに加え、評価対象者の「これから」に企業として、または同じチームの同僚や上司として、どのような期待をしているのかを伝えることが重要となる。

企業として、当人の今後に期待している旨を伝えることで、企業の考え方である行動方針などを、従業員が自身の関心ごととして捉えるきっかけを創出することも期待できる。

5. フィードバックだけで「終わり」にしないこと
どのような話し合いの場も、その席を設けて話をしただけで満足してしまうこともあるが、これではポジティブフィードバックを行う意義が皆無だ。

フィードバックを終わりとせず、むしろ新たなPDCAを回す始発点として従業員に自覚させることで、より良い生産性を期待できるはずだ。このため、評価を行った側は、フィードバック後のケアも重要となる。

例えば、フィードバック以外の場でも、適切なかたちで連絡先を交換するなどして、気軽に相談しやすい環境づくりを行うことなどは有効な施策だ。

まとめ

・フィードバックには主に2種類あり、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックだ。部下が起こした行動の問題点を具体的に指摘していくものがネガティブフィードバックであり、ポジティブフィードバックとは、評価対象である従業員に対して、否定的な言い回しを一切せず、相手を褒めることで前向きな気持ちの中でフィードバックを行うことを指す。

・フィードバックを行う目的は2つあり、1つ目は「業務において設定していた何らかの目標設定などの結果を伝える」ことであり、2つ目は「部下の成長を促進する」ことだ。類似するマネジメント手法にコーチングがあるが、部下自らが気づきを得ることに重点を置くのがコーチング、上司から評価対象者の部下へ評価を伝えることがフィードバックとなり、両者は異なる。

・ポジティブフィードバックを行うメリットは5つあり、次のとおりだ。1. フィードバックの過程が円滑に進行できること、2. 話し手と聞き手の双方がポジティブになれること、3. 従業員のエンゲージメント向上が期待できること、4. 業務配置の最適化や社内戦略に活用できること、そして最後が5. マネージャーの評価対象者に対する理解が深まることだ。

・ビジネスにおけるフィードバックは、行動がもたらした結果と評価を当事者へ伝える行為を指し、どのような点が良く、何を改善すべきかを伝えることを通じて、部下の成長を促すことを目的とする、マネジメントに欠かせない手法だ。マイナス面の分析を伝えることがネガティブフィードバックの主な目的となり、モチベーションやエンゲージメントを高めることを目的とするのが、ポジティブフィードバックだ。

・ポジティブフィードバックでは褒めたり長所を自覚させることが必須だが、闇雲に褒めるのではなく必ず業務と関連することに言及すべきだ。また、フィードバックを通して設定する次の目標は、評価対象者に達成感を与えるためにも、達成を見据えたものを設定するとよい。また、定められた目標は広く社内で公表し、常に同僚や上司から助言がもらえる環境づくりも重要である。

・ビジネスでフィードバックを行う目的は、結果を伝えることと部下の成長を促すことにあり、ポジティブフィードバックではこれまでの振り返りに加え、働く個人の「これから」にどのような期待をしているかを伝えることが重要だ。また、フィードバックを行っただけで終わりとせず、新たなPDCAを回してより良い結果を残すためのキックスタートとしていくことが重要だ。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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