2023.9.25

同一労働同一賃金とは、ガイドラインや制度の背景などを解説

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同一労働同一賃金は、雇用形態にかかわらず公正な待遇を確保するための制度である。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差を解消し、誰もが納得して働ける環境を整備するのが目的だ。今回は、同一労働同一賃金の概要や具体的な取り組みについて解説する。

同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金は、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇差を解消するために導入された制度である。正規雇用労働者とは、雇用期間に期限がない無期の労働契約として雇用される労働者だ。一般的に正社員、正規従業員、正規雇用者と呼ばれている。

正規雇用労働者の要件を満たさない労働者が、非正規雇用労働者である。契約社員や派遣社員、パートタイム労働者などが該当する。同一労働同一賃金を適用すると、同一企業内において雇用形態にかかわらず、公正な待遇を確保しなければいけない。待遇差の解消に向け、賃金格差に加えて賞与や福利厚生、教育訓練などを含めた取り組みが求められる。

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差の現状

厚生労働省の調査によると、正規雇用労働者の給与は時給換算で1時間あたり2,021円であるのに対し、非正規雇用労働者は1,337円であることが報告されている。同じ業務量を同じ時間内で完遂しても、非正規雇用労働者は正規雇用労働者の3分の2しか受け取れないのだ。

また、正規雇用労働者に支給される賞与や特別手当、福利厚生などについて、非正規雇用労働者はほとんど受けられない企業も存在する。こうした雇用形態別における賃金格差が、少子化や貧困などの社会問題を招いているという指摘もあるのだ。正規雇用労働者と非正規雇用労働者との不合理な待遇差を解消するために、早急な取り組みが求められる。

参考:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査 結果の概況

関連記事:ジタハラ(時短ハラスメント)の放置はなぜまずい?労務が知っておきたい対策方法

同一労働同一賃金の目的

同一労働同一賃金の目的は、同じ業務をする労働者に対して雇用形態に関係なく待遇差を解消することだ。同一労働同一賃金の導入により、従業員間の均等待遇が期待される。

企業には基本給や福利厚生などの待遇面を、均衡待遇規定や均等待遇規定にまとめる決まりがある。均衡待遇規定とは、不合理な待遇差の禁止を定めた規定のことだ。正規雇用労働者と非正規雇用労働者の業務内容に違いがあれば、それに応じた給与を支払う必要がある。

均等待遇規定は雇用形態にかかわらず、同じ業務内容であれば同じ賃金を支払うことを規定する制度だ。給与だけではなく、福利厚生や賞与などの扱いも同等に行わなければいけない。ただし、均衡待遇規定や均等待遇規定には、従業員間の待遇差まで明確にされておらず、雇用形態で不合理な待遇差が発生していたのだ。

同一労働同一賃金が導入されたことにより、企業はどのような待遇差が不合理になるのかを明確することが求められる。また、企業には基本給や賞与など待遇面についての説明義務も生じるため、労働者は納得感を持って働くことができる。

同一労働同一賃金の導入背景

同一労働同一賃金が導入された背景には、労働の多様化が挙げられる。非正規雇用労働者数は、2020年と2021年に一時減少したものの、2010年以降は基本的に増加が続いている。しかし、非正規雇用労働者が正規雇用労働者と同じ業務量を完遂しているにもかかわらず、ほとんどの企業で雇用形態によって賃金格差が生まれている。

同一労働同一賃金は、雇用形態による賃金格差を解消するために導入されたものだ。同一労働同一賃金の導入は段階的に進められ、2020年4月には雇用形態による不合理な待遇差を禁止する「パートタイム・有期雇用労働法」が大企業に適用されている。続いて1年間の猶予期間を経て、2021年4月には中小企業にも適用された。

しかし、同一労働同一賃金が導入されても、非正規雇用労働者の待遇が変わらないといった声が多く報告されている。このような声が生まれる原因として、企業が人件費高騰を抑えるために、正規雇用労働者と非正規雇用労働者で業務を切り分けたり、同じ業務内容でも責任の所在を正規雇用労働者にしたりしていることが挙げられる。

同一労働同一賃金に係る「パートタイム・有期雇用労働法」は法律ではあるものの、具体的な罰則が規定されていない。明らかな格差を是正せずに放置した場合は訴訟に発展する場合もあるが、罰則がないために前向きに取り組んでいない企業がいるのも事実だ。同一労働同一賃金が導入されても、賃金格差が解消されていない企業も存在する。

参考
・厚生労働省「「非正規雇用」の現状と課題
・厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法 の概要

関連リンク(外部サイト):「パートタイム・有期雇用労働法」社労士頻出の同一労働同一賃金をわかりやすく解説 | 社会保険労務士(社労士)の通信教育・通信講座ならフォーサイト

同一労働同一賃金のメリット、デメリット

同一労働同一賃金は労働者にメリットがあるように思えるが、実は企業も得られるものが多い。一方で制度の導入時には、考慮すべきデメリットがあるのも事実だ。ここからは、同一労働同一賃金のメリットとデメリットについて解説する。

同一労働同一賃金のメリット

同一労働同一賃金の導入で企業と労働者が得られるメリットは、以下のとおりである。

• 【企業】労働意欲を向上できる
• 【企業】人材不足を解消できる
• 【企業】スキル向上が見込める
• 【労働者】安心して働ける
• 【労働者】働き方を選択できる
• 【労働者】キャリアアップを目指せる

それぞれの項目について詳しく解説する。

【企業】労働意欲を向上できる

同一労働同一賃金の導入では、従業員一人ひとりの労働意欲を向上できるメリットが挙げられる。意欲的に仕事に取り組む非正規労働者の中には、「努力しても正当な評価を得られない」「業績に貢献しても給与も変わらず賞与もない」といった不満を抱く人が少なくない。

雇用形態における待遇差を改善することで、賃金に対する納得感が高まり、非正規雇用労働者の労働意欲を向上できるのだ。賃金だけではなく、賞与や役職手当、福利厚生などを提供すれば組織への満足感が高まり、エンゲージメントの向上も期待できる。

【企業】人材不足を解消できる

待遇格差が是正されると、人材不足を解消できるメリットがある。日本は少子高齢化により労働人口が急激に減少しており、人材不足の課題を抱える企業は少なくない。企業間における人材獲得競争も激化し、優秀な人材を採用するのが難しい状況だ。

同一労働同一賃金で雇用形態による待遇差を解消できれば、労働に見合った賃金を得られる。正規労働者との待遇格差がないことに魅力を感じた非正規雇用の求職者増加が見込まれるのだ。また、出産や介護などの理由で一度退職した元従業員など、未就労者の就職意欲を高められる。企業は多くの労働力を確保でき、人材不足の課題を解消できるのだ。

【企業】スキル向上が見込める

同一労働同一賃金で改善されるのは、賃金や賞与、役職手当、福利厚生だけではない。企業で議論される待遇改善には、教育訓練も含まれている。非正規雇用労働者の教育機会を増やすことで、従業員一人ひとりのスキルアップが見込めるのだ。

非正規雇用労働者の知識やスキルが上がれば、生産性向上も期待できる。人材不足の課題を抱える中、限られた人材でも個々の能力を最大限に発揮できれば、大きな成果を生み出すことも可能だろう。同一労働同一賃金により、好循環が生まれるメリットがあるのだ。

【労働者】安心して働ける

同一労働同一賃金の導入におけるメリットは、安心して働けることだ。企業には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差を解消することだけではなく、待遇に関する説明義務も生じる。労働者は自分の待遇面の疑問や理由を解消できるため、納得感を持って働けるのだ。

企業は待遇に関する疑問や理由を説明できるように、均衡待遇や均等待遇について要点を整理しておくことが求められる。従業員の納得感を得るには、合理的な説明を意識することが重要だ。経験や能力、過去の成果などを提示して説明するのが有効である。

【労働者】働き方を選択できる

同一労働同一賃金によって待遇差が是正されると、多様な働き方を実現できる。結婚や出産、介護などの理由でフルタイム勤務が難しく、非正規雇用労働者を自ら選択する人もいる。雇用形態による待遇差が解消されることで、正規雇用労働者と同等の待遇で働けるのだ。

待遇差の改善により「給与が減るかもしれない……」といった不安感が軽減され、従業員はライフイベントに合わせた柔軟な働き方を実現できる。多様な働き方を実現することで求職者が集まり、企業は人材不足の解消につなげられる可能性がある。

【労働者】キャリアアップを目指せる

同一労働同一賃金で教育訓練を拡充すれば、誰もがキャリアアップを目指せる環境を構築できる。非正規雇用労働者は教育機会に恵まれ、今まで以上に活躍の場を広げられる。キャリアアップを望む人にとって、教育機会を平等に受けられる環境は魅力的だ。

厚生労働省の調査によると、非正規雇用労働者のうち、正社員になりたい者の割合は上昇傾向にあることが報告されている。知識やスキルを積極的に習得し、企業に正当に評価されれば、非正規雇用労働者から正規雇用労働者への移行も実現可能だ。

参考:厚生労働省「第3節 労働者のキャリアアップに向けた課題

同一労働同一賃金のデメリット

同一労働同一賃金の導入で企業と労働者が得られるデメリットは、以下のとおりである。

• 【企業】人件費がかかる
• 【企業】人事評価制度の再構築が必要
• 【労働者】正社員の待遇が悪化する
• 【労働者】非正社員の採用が縮小する

それぞれの項目について詳しく解説する。

【企業】人件費がかかる

同一労働同一賃金の導入によって企業を悩ませるのが、人件費の増加だ。同一労働同一賃金には雇用形態による待遇差が解消できるメリットがあるが、従業員一人ひとりに正当な給与を支払う必要があるため、人件費が高くなる場合があるのだ。

労働契約法第9条では、労働者の合意のない給与引き下げを禁じている。雇用形態による待遇差を解消できても、人件費の負担がかかって経営を圧迫する可能性があるのだ。教育訓練や福利厚生にかかる費用も考慮すると、さらなる人件費増加の懸念がある。

参考:e-Gov法令「労働契約法

【企業】人事評価制度の再構築が必要

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に不合理な待遇差がある場合、それを是正する手段として人事評価制度の見直しが挙げられる。人事評価制度とは、従業員の業績や能力を定量的かつ定性的に評価し、その結果に基づいて処遇を決定する制度のことだ。企業によっては抜本的な改革が必要な場合があり、人事評価制度の再構築には時間がかかる。

不合理な待遇差を改善するには、今までの人事評価制度を見直して取り組んでいく必要がある。基本給や各種手当を変更する場合には、就業規則の改定も必須だ。就業規則とは、労働者の賃金や労働条件、職場内の規律などを定めた規律集である。就業規則の改定が必要な場合には、同一労働同一賃金を適用させるまでに相応の時間がかかる。

【労働者】正社員の待遇が悪化する

同一労働同一賃金が導入される目的は、雇用形態による不合理な待遇差を改善する点にある。しかし、非正規雇用労働者の給与を正規雇用労働者の水準に合わせると、膨大な人件費がかかって企業経営の圧迫要因になる。企業は人件費の高騰を避けるため、止むを得ず正規雇用労働者の給与や賞与の引き下げを検討するのだ。

不合理な待遇差が改善されると、非正規雇用労働者には大きなメリットをもたらすが、既存正社員の待遇が悪くなる可能性がある。待遇が悪化すると、従業員満足度の低下が見込まれる。最悪の場合、優秀な人材が離職してしまうかもしれない。同一労働同一賃金の導入時は、均衡待遇と均等待遇の理念に基づいて待遇を検討する必要がある。

【労働者】非正社員の採用が縮小する

同一労働同一賃金の導入により、採用縮小や派遣切りが行われる可能性がある。とくに資金力が乏しい中小企業には、同一労働同一賃金の実現によって経営悪化を招く事例もある。経営悪化を避けるには、非正規雇用労働者の採用縮小が避けられないのだ。非正規雇用で仕事を探す労働者は、新規で採用してくれる企業が見つからない可能性がある。

派遣社員の場合は、契約の満了時期に更新されないなどの可能性があるのだ。企業との間で労働契約を結ぶ派遣社員は、基本的に契約期間中に解雇されることはない。しかし、業績悪化を理由に契約期間満了時に契約が更新されないことがある。

関連記事:ジョブ型雇用とは? メリットやデメリット、メンバーシップ型雇用との違いや企業事例を解説!

同一労働同一賃金の具体的な取り組み

同一労働同一賃金の具体的な取り組みには、以下のようなことが挙げられる。

• 不合理な待遇差の禁止
• 待遇における説明義務の強化
• 行政による事業主への助言・指導
• 裁判外紛争解決手続の整備

それぞれの取り組みについてチェックしよう。

不合理な待遇差の禁止

不合理な待遇差の解消に向けて、賃金や賞与、各種手当、福利厚生、教育訓練などを含めた取り組みが求められる。これらの待遇について、企業が行うべき取り組みを確認しよう。

基本給 労働者の能力や経験、成果など趣旨が複数あることを認め、実態に違いがなければ同一の、違いがあればそれに応じた賃金を支給する
賞与 会社の業績に対する労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあればそれに応じた支給を行う必要がある
各種手当 役職に対して支給するものについては、同一の役職には同一の、違いがあればそれに応じた賃金を支給する。そのほか、勤務手当や時間外労働手当、食事手当、単身赴任手当などは同一の支給が求められる
福利厚生 福利厚生施設の利用、転勤社用社宅や健康診断に伴う勤務免除は同一の付与を行う必要がある。有給休暇は、同一の勤務期間であれば同一の付与を行う。有期労働契約を更新している場合は、当初の契約期間から通算して勤務期間を評価しなければいけない
教育訓練 同一の職務内容であれば同一の、違いがあればそれに応じて実施する必要がある

同一労働同一賃金に取り組むにあたって疑問がある場合は、「 働き方改革推進支援センター 」で無料相談を受けられる。中小企業や小規模事業者の方々が抱える課題に対応するため、ワンストップ相談窓口として47都道府県に開設されている。同一労働同一賃金に関する就業規則の作成方法や、賃金規定の見直しを含めた無料相談をできるのが特徴だ。

待遇における説明義務の強化

同一労働同一賃金の導入にあたって、企業には待遇に関する説明義務が生じる。今後従業員は雇用形態にかかわらず、待遇差の内容や理由について企業に説明を求めることが可能だ。企業は、従業員からの求めに応じて説明しなければいけない。実はこれまで、有期雇用労働者や派遣労働者など一部の雇用形態に限り、企業に説明義務の規定が設けられていなかったのだ。

  パート労働者 有期雇用労働者 派遣労働者
雇用管理上の措置の内容 ◯ → × → ◯ →
待遇決定に際しての考慮事項 ◯ → × → ◯ →
待遇差の内容・理由 × → × → × →

改正前:◯(規定あり)×(規定なし)、改正後:(規定あり)

同一労働同一賃金の導入にあたって、合理的な説明ができない待遇は是正しなければいけない。正当な理由があって待遇差を設ける場合は、従業員に合理的に説明できる準備が必要だ。待遇における説明義務を強化するには、待遇差に関わる取組手順書の準備が推奨されている。待遇差の内容や理由をまとめた取組手順書は、労働者からの求めに応じて活用できる。

参考:厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書

行政による事業主への助言・指導

同一労働同一賃金により、有期雇用労働者も行政による事業主への助言や指導の対象になる。派遣労働者や短時間労働者の雇用管理の改善を図るために必要があると認められた場合、厚生労働大臣は事業主に報告を求め、助言や指導を行える。

  パート労働者 有期雇用労働者 派遣労働者
雇用管理上の措置の内容 ◯ → × → ◯ →

改正前:◯(規定あり)×(規定なし)、改正後:(規定あり)

これまでは有期雇用労働者への規定はなく、対象外とされていた。2020年の法改正により、有期雇用労働者についても行政による事業主への助言や指導の対象となった。行政が事業主に対して報告を求め、助言や指導を行えるのだ。

裁判外紛争解決手続の整備

裁判外紛争解決手続(行政ADR)とは、労働者と企業との間の紛争を裁判以外の方法で解決する手続きのことだ。当事者の一方、または双方の申し出があると、都道府県労働局が問題の早期解決に向けてサポートしてくれる。

  パート労働者 有期雇用労働者 派遣労働者
雇用管理上の措置の内容 △ → × → ◯ →

改正前:△(規定あり)×(規定なし)、改正後:(規定あり)

パートタイム・有期雇用労働法は、行政ADRの対象だ。また、同一労働同一賃金における「均衡待遇」「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、行政ADRの対象に含まれる。企業は行政機関を活用して、労働紛争の解決を図る選択肢を広げられるのだ。

参考
・厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン
・厚生労働省「同一労働同一賃金

関連記事:EVPとは?設定するメリット、項目を検討する流れを解説

労働者へのアドバイス

同一労働同一賃金の導入にあたって、労働者へのアドバイスは以下のとおりである。

• 待遇に不満がある場合は直接聞く
• 待遇差別は労働局に申告する
• 企業に補償請求を行う方法がある

企業には、待遇に関する説明義務がある。自分の待遇に関して疑問や不満がある場合は、企業に対して直接説明を求めるのが有効だ。厚生労働省では、同一労働同一賃金が実施されているかどうかを確認できるチェックシートが公開されている。待遇に疑問を感じるときは、「パートタイム・有期雇用で働く方へ」から職場環境を確認しよう。

企業の説明で納得できない場合、厚生労働省の出先機関である「都道府県労働局雇用環境・均等部(室)」や、全国47都道府県に設置されている「働き方改革推進支援センター」で相談可能だ。これらは、会社の説明内容を整理して丁寧に説明してくれる相談窓口である。

待遇差別を受けている場合は、違反内容を行政庁に申告し、行政処分や行政指導を求めることができる。行政処分または行政指導が行われると、待遇改善が期待できるのだ。より迅速に解決したい場合には、弁護士に相談して会社に直接補償請求を行う方法もある。同一労働同一賃金の考え方や事例などを踏まえ、法的な裏付けを持った主張を展開できるだろう。

事業主への支援

同一労働同一賃金の導入は、以下の手順である。

• 情報収集と社内点検
• 就業規則と賃金体系の見直し
• 同一労働同一賃金の導入後の検証

情報収集と社内点検に関しては、パートタイム・有期雇用労働法の「パンフレット・リーフレット」を見たり、自社の法遵守の状況を法対応チェックツールで確認したりする方法がある。法律に関して詳しく知りたい方は、「相談窓口」を活用するのも有効だ。

社内点検は、以下のポイントをおさえて確認する。

従業員の雇用形態の確認 • 正社員と比べて労働時間が少ない従業員の有無
• 契約期間がある従業員の有無
労働条件の確認 • 法を遵守した雇用契約書であるか
• 雇用形態による待遇差があるか

同一労働同一賃金に取り組むにあたって、就業規則と賃金体系の見直しが必要である。厚生労働省では、以下の支援が行われている。

働き方改革推進支援センター 中小企業・小規模事業者に対する社労士などの労務管理の専門家による無料の相談支援を実施
キャリアアップ助成金 非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善の取り組みを実施した事業主に助成金を支給する制度
職務分析・職務評価の導入支援 従業員の基本給に関する均等・均衡待遇を確認し、等級制度・賃金制度を見直す支援

最後は、各従業員の労働意欲や離職率の変化などの検証を実施する。同一労働同一賃金の導入は見直す項目が多く、1回だけでは終わらない取り組みである。従業員の変化を注意深く観察しながら、各項目に着実に取り組んでいくことが重要だ。

参考:厚生労働省:「同一労働同一賃金特集ページ

関連記事:デジタル人材の定義は?採用・育成方法~定着のポイントを解説

まとめ

同一労働同一賃金の導入により、企業は雇用形態にかかわらず公正な待遇を確保する必要がある。賃金だけにとどまらず、賞与や各種手当、福利厚生、教育訓練の待遇格差も解消しなければいけない。さらに、人事評価制度の再構築や就業規則の改定も必要だろう。

同一労働同一賃金を適用させるまでには相応の時間がかかるが、従業員における労働意欲の向上や人材不足の解消など、企業が得られるメリットも多い。厚生労働省が提供する支援をうまく活用しながら、同一労働同一賃金の取り組みを進めよう。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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