「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、スモールビジネス向け『freee会計』を中心とする統合型経営プラットフォームを開発・提供するfreee株式会社。
右肩上がりの成長を続けている同社では、以前から発信型の採用活動に注力しており、自社の社員が登場するインタビュー記事や社内イベントのレポートをブログ形式で掲載するオウンドメディア「freee採用ブログ」を運営している。
業界内外の人事・採用担当者から幅広く注目を集める「freee採用ブログ」は、どのような考えをもとに運営されているのか。freeeの採用にどのような効果をもたらしているのか。同社の採用活動をリードする北村峻氏に伺った。
【プロフィール】
freee株式会社 経営基盤本部 採用部 部長 北村峻氏
経歴
・2021年9月 freeeにジョイン。
・前職はオイシックス・ラ・大地にて、新規サービスの業務プロセス設計部門やカスタマーサポート部門の部門長を担当した後、Oisix商品開発本部本部長、HR本部本部長を歴任。
・「お客様に対して価値のある体験を届けきるためにプロダクトがある」という考えのもとでビジネスを展開している
・freeeはスタートラインに立ったばかりの会社であり、「すでに完成された会社」という候補者のイメージを払拭していきたい
・自社の価値基準を社員たちに五感で理解してもらうためのカルチャーイベントを開催
・「freee採用ブログ」を通して、多様性のある組織作りを重視していることを伝えたい
・自社の様々なメンバーを紹介することで「社員の言葉を通して会社を知ってもらう」ことを意識したブログ運用を推進
・多様性を伝える一方で、「お客様への価値提供に関してだけは誰もが共通意識を持っている会社」という認知も広げたい
会社もプロダクトも発展途上、求めているのは「ゼロイチ」人材
――会社・事業の特徴について教えてください。
北村:freeeは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションのもと、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」の提供を目指している会社です。
ただし、単純に自分たちのプロダクトを磨き続けるのではなく、お客様に対して価値のある体験を届けきるためにプロダクトがあるという考えのもとでビジネスを展開しています。
だからこそ、私たちはカルチャーマップの中で「マジ価値を届けきる集団」であることを謳っています。また、社員全員に持っていてもらいたいマインドとして「社会の進化を担う責任感」「ムーブメント型チーム」というマジ価値2原則を定義しています。当社はカルチャーフィットを重視した組織作りを行っていますし、これらの考え方に共感いただけるか否かを採用の判断軸にもしています。
――カルチャーへの共感以外に、候補者に求めていることはありますか?
北村:1を10にするような事業を成長させたい志向の方はもちろん、「ゼロイチを頑張りたい」という方に来てほしいですね。採用面接をしていると「freeeって出来上がっている会社ですよね」と言われることも少なくないのですが、実態としてはまだまだ発展途上の会社です。日本でスモールビジネスを展開している事業社様は660万社いるとされていますが、当社のお客様はそのうちの38万社程度です。
また、これまでに多くのプロダクトをリリースしていますが、最終的には統合型経営プラットフォームとしての提供を目指しているため、まずはそれぞれのプロダクトをグロースさせていく必要がありますし、足りていない領域のプロダクトを新規開発していく必要もあります。
そのような文脈で考えると、freeeは異なる領域のプロダクトを開発・運用するスタートアップの集合体であるとも言えるのです。freeeは完成された会社でもなく、完成されたプロダクトを持つ会社でもありません。今一度、スタートラインに立ったばかりの会社であることを周知していく必要があると考えています。
freeeの価値基準を、社員に五感で理解してもらうためのカルチャーイベント
――冒頭のお話では、会社の理念やカルチャーを非常に大事にされている印象を受けました。それらを社員に浸透させていくために取り組まれていることはありますか?
北村:大事にしたいカルチャーに関しては、かなり細かく言語化しています。また、私たちはカルチャーの一つひとつを価値基準と読んでいますが、それらを社員たちに五感で理解してもらえるようなカルチャーイベントを定期的に開催しています。
――どのようなカルチャーイベントがあるのでしょうか?
北村:たとえば当社では、毎年バレンタインデーに「ありバク」というイベントを開催しています。「ありがとうをバクハツさせる」の略なのですが、社員各自がバレンタインデーまでの期間を使って投稿フォームに誰かへの感謝を書き込んでおきます。バレンタイン当日のイベントでは、その感謝のメッセージが、感謝を届けたい相手に届きます。メッセージを届けた数だけ、チョコレートがもらえるという仕立てになっています。
日頃感じているものの、改めて伝える機会の少ない「ありがとう」という言葉を集め、みんなで感謝の気持ちを送り合おうという趣旨もありますが、「女性が男性にチョコレートを贈る」という慣習をダイバーシティやLGBTQ観点で考えるとモヤモヤしますよね。それをfreeeらしいイベントにしようということで始まったイベントでもあります。
大切にしているのは、社員の言葉を通して会社を知ってもらうこと
――採用における直近の課題感について教えてください。
北村:実数値を申し上げることはできませんが、昨年度に比べ、今年度の採用目標人数はこれまで以上に多いです。昨年度まではダイレクトリクルーティング主体の採用活動を行ってきましたが、今後はこれまで以上に採用エージェントの皆様とのタッグを強化していく必要があると考えています。
――採用活動における「freee採用ブログ」の位置付けについて教えてください。
北村:当社に興味を持っていただいた方が「freeeってどんな会社なんだろう」と知ろうとしたとき、やはり中で働いている人のことを知りたいと思うはずです。どんなバックグラウンドを持った社員がいて、どんな仕事をしているのか。何をやりがいに感じているのか。社員のインタビュー記事などを見ていただくことで、その辺りの解像度をグッと上げてもらえるのではないかと期待しています。
当社は多様性のある組織作りを重視しているので、「freeeには本当にいろいろな人が働いているんだ」ということを知ってもらえるようなメディアにしていきたいと考えています。
また、PVは見ていますが、採用マーケティング的な考え方でガチガチに指標を取っているわけではありません。
流入経路の裾野の広がりもありますが、アトラクト(惹きつけること)に効いている感じですね。私は新卒採用の面接も担当していますが、とくに女性の学生さんたちは、会社における「女性の働き方」を気にされる方が多いので、その辺りの観点をテーマにした記事を作成したこともあります。
――記事の意図や狙いが候補者に対して「どのように響いているか」については、ある程度感覚的に把握されているのでしょうか?
北村:当社にはジョブチェンジを目的に入ってくる方も少なくありません。たとえば経理出身の方が、当社に入ってカスタマーサクセスの仕事をしていたりするのですが、そのようなジョブチェンジを実現した社員のインタビュー記事をブログに掲載した際には、記事を読んだ候補者の方から「あの記事を読んで私にもできるんじゃないかと思いました」という声をいただいたことがあります。
こうした社員の事例を記事としてアウトプットすることで、LGBTQの観点もそうですが、働き方の多様性やキャリアの多様性についても発信できると考えています。
――「freee採用ブログ」には相当数の記事がアップされていますが、どのように運用されているのでしょうか?
北村:インタビューを含めた記事制作の実務については、採用広報担当が一人で行っています。私たち採用チームのメンバーが「先月入社したあの人の記事を出したい」「この職種にスポットを当てたいから、あの人にインタビューしてほしい」といった感じで採用広報担当に依頼し、優先度の高いものから順にインタビュー・制作を行い、記事化していくという流れです。
――採用ブログやオウンドメディアを始めようと考えている方々にアドバイスできることはありますか?
北村:「社員の言葉を通して会社を知ってもらう」ことを意識するといいかもしれませんね。あまりにも戦略的・マーケティング的に作りすぎると、読む人たちにもそれが伝わってしまうような気がします。様々な立場、様々な職種、様々な局面で頑張っている社員を紹介し、社員の言葉で会社やプロダクト、職場環境を語ってもらう方が、結果的には自社の正しいブランディングにつながると思いますし、候補者側から見た際の解像度も上がりやすいと思います。恣意的なコントロールをし過ぎないことがポイントかもしれませんね。打算的な考えなしに「どピュア」な思いで作っていますからね(笑)。大事にしていることをそのまま発信しているイメージです。
「お客様への価値提供を重視している組織」であることを発信していきたい
――最後になりますが、今後取り組んでいきたいことについて教えてください。
北村:今後は若手層に加えてシニア層、ミドル層、ベテラン層と呼ばれる方々も積極的に採用していきたいです。採用手法に関しては、ダイレクトリクルーティングや人材紹介に加え、リファラルを活性化させるような仕組み作りにも取り組んでいくつもりです。
また、採用ブログなどを通じて、freeeは単なるデジタルなテッキー集団ではなく、「お客様への価値提供を重視している組織」であることを発信していきたいです。ダイバーシティやキャリア・働き方の多様性を伝える一方で、お客様への価値提供に関してだけは誰もが共通した意識を持っている。そんな会社であるという認知を広げていきたいですね。
聞き手:ProFuture株式会社
執行役員 営業部長 森塚信之
マーケティングソリューション部 マーケティンググループ マネージャー 岡田京子