・誰にでも陥る可能性がある内定ブルー
・内定ブルーの調査結果からみえること
・内定ブルーに陥る時期
・なぜ内定ブルーは起こるのか
・内定ブルーを起こす5つの原因と解決策
・内定者のために企業ができる対策と注意点
誰でも陥る可能性がある内定ブルー
「内定ブルー」という言葉がある。就職活動で企業から内定を得た学生が、内定を受諾した後で本当に自分の選択は正しかったのだろうか、と不安になることを表す言葉だ。例年そのような状態になる学生は多いといわれるが、今年は追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの影響も出ている。
では、実際にはどの程度の人数が内定ブルーになるのか、学生への調査から見てみよう。
マイナビが行った「2021年卒 学生就職モニター調査 7月の活動状況」(調査期間 2020年7月27日~2020年7月31日 有効回答数:1,954人)によると、「入社予定企業を決めたあと不安になったことがあるか」という設問に対して、「ある」と回答した学生の割合は50.0%(前年比2.8pt減)と、半数の学生が不安を抱えていたことがわかる。
また、不安になった理由で最も多かったのは「この会社できちんと務まるかどうか」の36.0%であり、次に「自分自身の能力やスキルに自信がない」が25.9%だった。以下に続くのは、「口コミでの悪い評判」の19.0%と、会社に対する不安よりも、自分自身に対する不安を抱えている学生が多いことがわかる。
さらに、不安があった学生に対しての「不安は解消されたか」という設問に、「解消された」と回答したのは38.3%だったが、一方で61.7%が「不安が解消されなかった」と答えており、すなわち6割以上の学生が不安を抱えたままで入社していることになる。
不安が解消されなかった学生に対して「もしこうだったら不安は解消されたのにと思うこと」を聞く設問には、「内々定者同士で交流がある」という回答が27.0%(前年比12.5pt増)と最も多かった。新型コロナウイルス感染症の影響で、内々定者同士で知り合う機会が減り、不安解消の妨げになっていることが読み取れる。
こうした調査結果から、学生の不安を取り除くには、学生自身が内定先への入社に納得感を持つことはもちろんだが、企業側が内々定者同士の交流の場を提供するなど、内定ブルーにならないような施策を設けることも重要であることがわかる。
なぜ内定ブルーは起こるのか、その原因
内定ブルーは「他の選択肢(もしかして自分が生きたであろう別の仕事・人生)を捨てることに対する悲しみ(ブルー)」であるとも言われている。就職活動で企業から内定を得た学生が、内定を受諾したものの「本当にその会社に就職してよいのか」「自分が活躍できるのか」などの不安にかられたときが内定ブルーへの入り口だといえる。
背景には「他社への未練」がある場合もあれば、単純に入社意思が固まっていなかっただけということもある。入社意思が本当に固まっているかどうかを外側から判断するのは難しいが、もっともわかりやすいポイントとしては、就職活動をその後やめているかどうかだといわれている。
内定ブルーの悩みや解消策は、陥った原因によって異なる。
そのため、まずは原因について整理していこう。主なものとしては、6つあるといわれている。
1. 社会人になることへの不安がある
2. 内定先の選択が正しかったのかわからない
3. 企業のイメージにギャップが生じた
4. 企業の悪い口コミや意見ばかりが気になってしまう
5. 入社後に活躍できる自信がない
6. 周囲の人の理解が得られない
などだ。以下に少し詳しく見ていこう。
1. 社会人になることへの不安がある
学生から社会人になることは、環境が大きく変化するため、その不安感から内定ブルーに陥ることがある。
自身の経験値の少なさやメンタル面での心配、未知なる領域へ一歩を踏み出すことへの期待や不安な気持ち入り混じり、それによるストレスが積み重なり、実際の就職間近になると顕著に表れる傾向がある。また、社会人になると、企業成長のために社員の一人として責任を持ち成果を出すことが求められることから、責任感のある人ほど不安になりやすい。
企業の一員としての役割や責任をネガティブに捉えるのではなく、大事な仕事を任されるのだというポジティブな気持ちへの切り替えを意識できるかどうかが内定ブルーに陥らないポイントとなる。環境の変化に対して緊張しすぎたり過度な不安を抱いたりしないように、穏やかな気持ちで社会人になるまでの日々を過ごすことが大切だ。
人事視点で述べると、このような内定者の不安を徐々に解消していくためにも内定出しで終わりではなく、入社日までに定期的な内定者フォローを行うことも効果的だ。
関連記事:内定者フォローのポイントとは?コロナ禍でもオンラインで内定者との接点を強める方法
2. 内定先の選択が正しかったのかわからない
何かさらに良い選択肢があるのではと思い、決断やコミットができないことを作家のパトリック・マクギニス氏は「Fear of better options(以下FOBO)」と提唱した。
選択肢がひとつしかなければそれしか選べないわけであるが、FOBOは選択肢があるゆえの悩みである。例えば、内定をもらえたとしても、第一志望の会社に内定をもらえない場合に、納得できないままの気持ちを持つことだ。仮に第一希望に内定を勝ち得たとしても、その決断に対して確信を持てないようなケースにもあてはまる。そもそも複数の企業からの内定を1件に絞るということは、大きなストレスにつながるものであり、入社までに不安が大きくなることが内定ブルーの原因の一つとなる。
ただ、就職は実際に入社し働いてみないとわからないものであり、選んだ選択肢が正しかったのか、選ばなかった選択肢が正しいのかは誰にもわからないものだ。そのため、決断できたことに自信をもち、その選択は自分にとって最善だと信じ、その選択を出来たことに感謝することが大切である。自分の選択を肯定することで、入社前の内定ブルーを軽減し、入社後満足度高く働けるであろう。
3. 企業のイメージにギャップが生じた
志望する企業については企業研究をし、内定を得るまでに十分に情報収集をしているはずであるが、懇親会などを通して実際に企業と関わっていくうちに、内定前に想像していた姿との間にギャップを感じることがある。その結果、内定ブルーに陥ってしまうケースも多い。就活中は企業のポジティブな部分ばかりに注目しがちであるが、就活が終わり冷静になると、就活中には気が付かなかった部分が見えてくることがあるからだ。
そして、イメージと現実の差が大きいほど内定ブルーになりやすい。
就活生としては認識の違いや気になることがあれば、ギャップを埋めるべく積極的に内定企業へ問い合わせをすることが内定ブルーへの対策となる。
4. 企業の悪い口コミや意見ばかりが気になってしまう
昨今は、インターネット上で企業の良い情報を得ることもできるが、同様に悪い情報も入ってくる。
入社企業の口コミを検索し、内定後に改めて就職先企業を調べた結果、マイナスな書き込みやこれまで知らなかったネガティブな一面に気づき、不安に襲われていることも少なくない。そのように内定先の悪評ばかりを気にしていると、モチベーションが低下し、内定ブルーに陥ってしまうケースも多い。
一旦企業のネガティブワードを見つけてしまうとその印象が強く影響してしまい、内定時には入社の意思があった企業への不信感が強まってしまうのだ。
インターネットからはさまざまな情報を得ることができるが、信ぴょう性に欠ける情報は鵜呑みにしないように注意すべきである。また、どうしてもマイナス面が気になるようであれば、直接会社の人事や交流のある先輩などにヒアリングを試みることも1つである。企業側も内定者から問い合わせが来たら真摯な対応が求められる。
関連記事:内定者面談とは?実施の目的や流れ、質問例を採用担当者視点で解説!
5. 入社後に活躍できる自信がない
社会人としての自覚や働いていくことに対する自信がない学生も内定ブルーに陥ることがある。自分が置かれた環境の変化を受け入れ難い、自分が企業の社員としてしっかり成果を出しつつ働くことができるのか不安を感じる人は少なくない。
加えて、同僚や上司とよい人間関係を構築できるか、企業が求めているスキルを自分が持っているのか、はたしてそれらを身につけることができるか、と悩みは尽きない。内定を受承諾し、入社することがリアルに感じられることで、本当にこの会社でやっていかれるのだろうかという不安が頭をもたげ、自信を喪失しがちだ。
しかし、初めて社会人になる中でそのような不安感を抱いてしまうのは、誰にでもあるごく普通のことだと認識することが重要だ。
そして、実際に働いてみないことには活躍できるかどうかはわからないし、就職してすぐに思うようにはいかないということも念頭においておくことだ。どうしても不安がぬぐえない場合、懇親会やインターンシップなどがあれば参加し、実際の職場や先輩社員の雰囲気を知る機会を作るといいだろう。
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6.周囲の人の理解が得られない
家族など周囲の人間が内定先に納得していない場合も内定ブルーになりやすい。社会に出たことのない就活生は、その不安を軽減するためにも周囲の承認が欲しいと思ってしまうのは当然のことだろう。
特に親は就活生にとって一番親身になって話を聞いてくれる社会人であることが多く、いくら自分が望んだ企業であっても親が納得していないと、「本当にここに就職して良いのか」と不安に陥ってしまうこともある。
ただ、内定先の企業について、就活中に研究した自分よりも、周囲の人間がよく知っているということはなかなかないだろう。自分が決めた選択を信じて、納得できる人生を歩むことが大事だ。
内定者のために企業ができる対策と注意点
これまで見てきたとおり、内定ブルーは「内定した会社に対して、社会人になる不安や入社する会社への不安」から引き起こされる問題であるため、最悪の場合は内定辞退にまでつながり、企業の採用活動に少なからぬ損失をもたらすことになる。
こうした事態を防ぐため、採用担当としては、学生から社会人になることや選んだ会社を選んだことに対するためらいなど、多くの不安を抱える内定者の状況を敏感に察知して、内定者フォローなどで丁寧に不安を払拭する働きかけが必要となる。そのためには安心して入社し、活躍してくれる環境を整備したうえで、入社前から何でも話し合える関係性を構築しておくことが重要だ。
具体的に企業が行える対策としては、以下のようなものが考えられる。
定期的なフォローアップを行う
既に多くの企業で導入が進んでいるかと思うが、入社までの期間に内定者が何か不安に思うことは無いかの確認や、企業情報の発信など、定期的なフォローを行うことが内定ブルー対策として重要だ。懇親会やイベントを実施して、実際にコミュニケーションを図るのもいいだろう。しかし、あまりに頻繁に連絡をしては学生が負担に感じてしまう可能性もあるため、適切な頻度を心掛けるようにする。
先輩社員とのコミュニケーションの場を設ける
先にも少し触れたように、コロナ感染対策を十分に行った上でという前提ではあるが、開催が可能なのであれば懇親会や交流会・座談会など、内定者と社員がリアルに対面してコミュニケーションを取れる機会を設けることは内定ブルー対策として有効だ。
内定者と年齢や社歴の近い若手社員にも出席し話をしてもらえれば、内定者は、より入社後のイメージがしやすくなるし、年が近いという親近感から質問もしやすくなるため安心感に繋がるだろう。
内定者同士がコミュニケーションできる場を設ける
オンラインでもオフラインでも内定者同士が交流できる場を設ければ、同期にどんな人たちがいるのか入社前に知ることが出来るため、入社後のイメージがしやすくなり、安心感を高めることが出来るだろう。
入社時にすでにフォローし合える仲間がいることは、入社へのモチベーション維持にもつながる。
関連記事:内定者懇親会の内容とは?内定者のエンゲージメント・入社意欲を高める方法、オンラインでも実施できる内容をご紹介
実際に仕事を体験してもらう
業務の内容を知ってもらうことはもちろん、社風やメンバーのキャラクターなどを身近に感じてもらうために、インターンや内定者アルバイトを通して実際に働いてもらうことも有効だ。実際の職場で仲間と一緒に働き、リアルな就業体験をすることで、必要とされるスキルや自分に足りないスキルを具体的に理解できると同時に、キャリアデザインを思い描くこともできる。
企業側としても、面接だけではわからなかった内定者の特性を把握できることで、入社後に適切なポジションに配置することが出来たり、仕事への理解を深めてもらいやすいというメリットがある。
まとめ
・「内定ブルー」は、就職活動で企業から内定を得た学生が、内定を受諾した後で本当に自分の選択は正しかったのだろうか、と不安になることを表す言葉で、例年内定ブルーを感じる学生は多いといわれるが、今年は新型コロナウイルスの影響も出ており、増加傾向にある。
・学生への調査からは、入社への不安が「ある」と回答した学生の割合は50%と約半数が不安を抱えており、さらに61%が「不安が解消されなかった」と答えている。6割以上の学生が不安を抱えたままで入社しているため、学生に寄り添い「内定ブルー」の解消に努めることは重要。
・「内定ブルー」は陥った原因によって、抱える悩みや解決策が変わってくるため、どのような状況のときに内定ブルーになってしまったのか(しまうのか)を理解しておく必要がある。
・「内定ブルー」になってしまう原因は主に「社会人になることへの不安がある」「内定先の選択が正しかったのかわからない」「企業のイメージにギャップが生じた」「企業の悪い口コミや意見ばかりが気になってしまう」「入社後に活躍できる自信がない」「周囲の人の理解が得られない」の6つであり、内定者は各々について対応策、解決策を講じながら、社会人になる準備を徐々に進めていくことが大切だ。
・「内定ブルー」は内定した会社に対して、社会人になる不安や入社する会社への不安から引き起こされる問題であるため、最悪の場合は内定辞退にまでつながり、企業の採用活動に少なからぬ損失をもたらすことになる。
・こうした事態を防ぐため、採用担当は、多くの不安を抱える内定者の状況を敏感に察知して、内定者フォローなどで丁寧に不安を払拭する働きかけ行い、安心して入社し、活躍してくれる環境を整備したうえで、入社前から何でも話し合える関係性を構築しておくことが重要。