・年々早期化する内定出しと内定辞退の増加で重要度の増す内定者フォロー
・ウィズコロナ、アフターコロナ時代における内定者フォローのポイントとは
・学生は内定後のフォローをどのように感じているのか
・他社を諦めさせるのではなく、自社を選んでもらえる内定者フォローとは
・選考は急激にオンライン化したが、内定者フォローでの最適な接点チャネルとは
・入社後のギャップを最小限にし、イメージを最大限沸かせるフォロー施策とは
コロナ禍で変容する内定者フォロー
売り手市場が続いてきた近年の新卒採用において、「内定者フォロー」とはもっぱら内定辞退を防止する意味合いで行われることが多かった。しかし現在、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、2021年卒の採用活動では内定者フォローの役割が大きく変わろうとしている。
これまでの売り手市場では、年々早期化する内定出しによって、複数内定を保持しつつ企業の動きを伺い、学生が最終的な内定承諾先を選ぶという流れにあった。そのため、増加する内定辞退は企業にとって深刻な問題となっており、内定者フォローには「いかに内定辞退を減らすか」という軸が重要視されていたといえる。
ディスコ社の調査「2021年卒・新卒採用に関する企業調査-内定動向調査(2020年10月調査)」によると、2021年卒の内定辞退は、約4社に1社(23.7%)が増えたと回答しており、依然深刻な問題であることに変わりはないが、その一方で、約4割の企業が前年度と比較して内定辞退が減ったと回答している。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響により、従来のような内定者フォローが難しい状況が続くなかで、今後の内定辞退を懸念する声も存在する。内定出しが早期化していた近年では、内定から入社までの期間が長いことから、企業による学生の志望度向上へのコミットメントや、学生の不安を解消してあげることが、課題となっていた。
さらに、コロナ禍の影響で、内定取り消しによる就職留年が発生した2020年卒の状況を見てきた2021年卒の就職活動は、より慎重な動きとなっていることからも、内定者フォローの重要性が一層増していくものといえる。テレワークやリモート営業など、急激にニーズが高まった経済活動におけるニューノーマルのなかで、今後の内定者フォローでは、いかに内定者の不安を解消し、自社への志望度を高めていけるかが重要となる。そしてその取り組みの結果として、どれくらい内定辞退を防げるのかが重要になってくるだろう。本稿では、そのようなウィズコロナ、アフターコロナ時代における内定者フォローのポイントを確認していく。
内定者(学生)が内定者フォローに求めることとは?
ひとくちに内定者フォローといっても、その内容は多岐にわたり、企業によってフォロー実施の目的や目標が異なる。ここでは自社にとってふさわしい内定者フォローとは何かを考えるため、「学生が何を求めているか」という視点から考える。
そもそも、学生は入社意思を固めるための施策として内定者フォローの必要性を感じているのだろうか。ディスコ社「<確報版>6月1日時点の就職活動調査 キャリタス就活2021学生モニター調査結果」によると、90.8%の学生が「内定を得た企業からのフォローが必要である」と回答した。また、この数値は2019年卒(88.7%)や2020年卒(86.7%)と比べても年々上昇する傾向にある。これは、新型コロナウイルスの感染拡大が原因で選考が大幅に停滞したことに加えて、経済活動を含めた社会全体のニューノーマルが求められている現状から、採用活動のオンライン化を行ったことも関係している。会社への理解度や自身への評価などで、学生が企業とのミスマッチを懸念する声が上がるなか、半数を超す学生(「強くそう思う」が13.4%/「やや思う」が46.3%)が、WEB面接がミスマッチにつながると感じているようだ。就活生が、学生時代の頑張ってきたことや、その経験や自信を企業でどのように活かせるのかといった話題をトピックとしつつ、急激な選考フローのオンライン化による、学生の不安解消と自社への志望度向上を目指す内定者フォローこそが、今後必要とされる施策だといえよう。
次にフォローの頻度についてみてみよう。同社の6月調査段階では、一部学生の声として「内定を承諾してから一向に音沙汰がない」ことを不安視する声や、逆に「週に1度、電話面談をしなければならなかった」ことを、志望度が下がる理由として挙げている。このような傾向は、同社の「10月1日時点の就職活動調査 キャリタス就活2021学生モニター調査結果」にも数値で表れている。設問「企業に希望する内定後フォローのペース」に対して、毎週と隔週と回答した学生が全体の1割(8.7%)に満たなかったのに対し、4割を超す学生(44.6%)が毎月、2割ほどの学生(22.1%)が隔月と回答している。一方で、前年度と比較しても「フォローは必要ない」と回答した学生が16.9%から10.7%に減少していることからも、内定者フォローの必要性が高まりつつあることがうかがえる。ただし、他社選考の早期辞退を促したり、内定承諾期間の延長を申請された際の対応などで、学生からの不満の声も出ていることから、他社をあきらめさせるのではなく、自社を選んでもらえるような内定者フォロー施策の戦略が重要だ。
オンラインを活用した内定者フォロー
ニューノーマルが浸透しつつあるウィズコロナ、アフターコロナ時代において、学生が内定後に求める企業との接点も大きく変化している。前出のディスコ社6月1日時点での学生調査では、設問「内定を得た企業への意思決定に必要だと思うフォロー」に対して、「現場社員との面談」と回答した学生が半数を超す52.2%で、最も多かった。驚くことではないが、コロナ禍の影響を受けて前年度調査では首位だった「食事会などの懇親会」という回答は、31.0%(第5位)まで落ち込んでいる。しかし、依然おおよそ3人に1人の学生がバーチャルでない懇親の場を求めていることも事実だ。そのため、これからの内定者フォローにおいて重要になってくるのは、オンラインとオフラインの併用である。オンラインツールを活用しつつ、時には十分な感染症防止策を打った上で、リアルな接点も用意し、学生が知りたいことと、企業が伝えたいことをバランスよく織り交ぜながら伝えることが重要だ。そんな「これからの内定者フォロー」について、具体的な以下の4つのポイントとともに見ていこう。
1. 個別面談
1つ目のポイントとして、個別面談が挙げられる。内定を出した後に内定者の入社意志を確認したり、入社後のキャリアプランについて考えてもらうきっかけになるからだ。また、内定者にとっても、選考時には訊きづらい疑問や、入社にあたり不安な点などを質問できるため、双方にとってメリットが大きい。この場合、ニューノーマルに沿ったオンライン会議ツールを使用することも可能だし、内定者が望む場合、リアル接点での面談でもよい。ただし、個別面談の目的は、あくまで内定者との信頼関係の構築であるため、企業側本位の面談となったり、冗長で必要以上に長い時間拘束してしまうと内定者の集中力を削ぐかたちとなってしまい、かえって逆効果である点は注意したい。具体的な施策として考えられるものは、選考時の評価できた点を伝える、志望する職種を訊いて後日その業務を行う先輩社員との面談につなげる、今後の入社までのスケジュールを共有する、などだ。
2. 内定者同士のコミュニケーション促進
2つ目のポイントは、「横のつながり」、つまり内定者同士のコミュニケーション機会を増やすことだ。内定者にとっても、入社してから同期として働くことになる仲間は気になるところである点に加え、内定者同士でのコミュニケーションは、共通項が多い不安なども相談や共有ができ、入社後に向けてのモチベーション向上に資する。同時に、横のつながりを構築することで、内定辞退の抑止効果も期待できる点はポイントだ。ここでの具体的施策としては、業務を簡単なワークショップに落とし込み自社製品やサービスへの理解を深めてもらう、内定者に事前に自己紹介シートを作成してもらいオンライン内定者交流会で発表してもらう、などが挙げられる。社内SNSがある企業では、限定的な権限を与えた上で、こういったプラットフォーム上で交流してもらえれば、企業にとっても入社まで、より管理しやすい環境とすることが可能だ。
3. 先輩社員と話せる機会をつくる
「どのような先輩社員が働いているか」という点は、前述のディスコ社調査の通り、内定者の最も大きな関心ごとだ。不明なことや不安なことが多くある内定者にとって、頼れる先輩社員がいるということは、入社後の自分の活躍をより具体的にイメージすることを可能にする。そのため、事前に仕事のミスマッチを抑止し、入社後の定着度に影響を与えることから、企業にとってもメリットが大きい。また、従来だと現場社員のマンパワーを割いて内定者フォローを行っていたが、オンラインツールを使うことによって、これまで以上に時間の調整が利くようになるため、より多くの社員が内定者との接点をもてるようになる。具体的な施策として考えられるのは、若手から課長クラスまでの社員との座談会でキャリアアッププランを考えるきっかけにしてもらう、現場社員に一日の流れや仕事のやりがいを説明してもらい入社後のイメージをしやすくする、若手社員のパネルディスカッションを行い自分たちが内定者だったころの話をしてもらう、などだ。
4. 社内の魅力を定期的に発信する
内定者が、選考時と入社後で大きなギャップを感じてしまうことは今までの採用活動でも珍しい課題ではない。しかし、急激な採用活動のオンライン化により、企業と学生とのミスマッチがこれまでよりも多くなることが懸念される。そのため、内定者ごとの面談や、内定者同士のつながり、また現場社員との交流の場などを設けるとともに、学生の高い要望がある(ディスコ社6月1日時点調査の学生調査では39.8%の学生が必要なフォローとして「社内や施設などの見学会」を挙げている)にもかかわらず、会社見学などが気軽に行えないコロナ禍の今だからこそ、例えば会社の近況を伝えるメッセージや、社内をバーチャル見学できるVR動画の配信など、選考終了が終了した後も、入社時までは内定者に対して積極的なアピールを行う必要がある。
まとめ
・売り手市場と言われてきた近年の採用市場だが、コロナ禍を迎え大きく変化した。20卒の内定取り消しなどを見てきた21卒は就活がより慎重であり、内定を複数保持しつつ企業の様子を見る学生も多い。その中で、内定者の志望度を高め、不安を解消するための内定者フォローは、内定辞退の抑止にもつながる重要な施策となる。
・ウィズコロナ、アフターコロナ時代においては、これまでのような社内見学や懇親会などが気軽に行えなくなった。逆にいえば、より工夫された内定者フォローの施策が求められているということになる。年々早期化していた内定出しだが、入社までの長い期間、これからのニューノーマルに沿った、内定者フォロー施策が求められる。
・多くの学生が、企業による内定者フォローが必要だと感じており、急激にオンライン化した選考活動もあって、企業に対する疑問や入社にあたり不安に感じることの解消を望んでいる。また、内定許諾から全く音沙汰のない企業や、逆に頻繁な面談を要求してくる企業などは、内定者に疎まれる傾向があり、適切な頻度での企業への好感度を上げるフォロー施策が重要となる。
・多くの内定者は、毎月または隔月での、何らかのかたちでの企業によるフォローが望ましいと考えている。フォローにおいては、他社の選考状況の訊き出しなどに終始するのではなく、学生の入社にあたっての不安に感じることや不明点などを丁寧にヒアリングし、回答をしてあげることで、入社後に自社で活躍するイメージ醸成の手助けを行うことが、内定辞退の抑止につながる。
・コロナ禍の影響を受け、急激なオンライン化を遂げた選考活動だが、学生からは全てオンラインで行うことへの不安や、企業とのミスマッチが起きることを不安視する声が挙がる。そのため、ニューノーマルな内定者フォローでは、必ずしも全てオンラインで行う必要はなく、内定者からの希望があればリアルな接点での面談や研修の場を設けることも効果的であり、今後はオンラインとリアルの両接点をうまく活用することがカギとなる。
・せっかく選考して内定を出した学生でも、ミスマッチが起きた場合、企業と学生の双方にとってもデメリットとなる。そのため、自社への理解度を深化させるため、そして入社後の仕事をする内定者自身のイメージのためにも、先輩社員との交流の場や、社内の近況などを定期的に内定者にすることで、自社の魅力訴求の取り組みを行うことが大切だ。