2020.11.3

オファー型採用(逆求人型採用)が増加?新卒採用市場で注目を集める理由

読了まで約 6

・ダイレクトリクルーティングのひとつであるオファー型採用とは?

・オファー型採用が広まった背景とは?

・オファー型採用における企業のメリット、デメリット。

・オファー型採用における学生のメリット、デメリット。

・オファー型採用を採用に導くポイントとは?

・急速に進化し続けるオファー型採用を取り巻く環境。

オファー型採用(逆求人型採用)が注目を集める背景

オファー型採用(逆求人型採用)とは、学生側がインターネットや逆求人イベントを通じて自己アピールを行い、企業から声が掛かるのを待つ仕組みの就職活動のこと。

オファー型採用は、知名度の低い企業でも積極的に採用を考えている中小企業と、企業名にはこだわらず幅広い選択肢から就職先を見つけようと考える学生とのマッチングに効果を発揮している手法で、企業がSNSや人材バンクなどから必要な人材に直接声をかける採用手段であるダイレクトリクルーティングのひとつだ。

ダイレクトリクルーティングは英語ではDirect Sourcing(ダイレクトソーシング)といい、従来の応募を待つタイプではなく攻めの姿勢で採用を進めるのが特徴で、この手法の代表的なものがオファー型採用である。

ダイレクトリクルーティングでは、優秀な人材に狙いを定めてピンポイントでコンタクトを取れるため、スピーディーかつ効率的に採用活動を進めることから、海外ではよくある採用手法だが、日本でも近年、優秀な人材を確保するために急速に導入が広がっている。学生側にとってもスカウトを待つタイプのオファー型採用は、通常の採用よりも企業に自分自身の強みをよく知ってもらうことができるのでメリットが大きいとされる。

オファー型採用が広まった背景としては、以下のようなことが挙げられる。

1.学生の間に高まるニーズ
これまでの新卒の就職活動は長い期間を要する場合が多く、会社説明会への参加や会社ごとに必要なエントリーシートの作成などに手間も時間も取られてしまっていた。しかしオファー型採用なら、一度自己PR文などを作成すれば、自分の持つ知識やスキルに興味のある企業からオファーをもらえることが増える。手当たり次第にアプローチをかける従来の就職活動と比べて効率よく就職活動が行えるため人気が高まっているのだ。また、自分を高く評価してくれる企業と出会える確率も高まるため、特に研究などで忙しい理系の学生にニーズがあるという報告もある。このような理由から、近年オファー型採用が就活生に注目されている。

2.企業規模に関係なく採用につなげられる
大手企業や有名企業には比較的多くの人材から応募があるため母集合形成に困らないが、あまり名の知られていない中小企業やベンチャー企業の募集には応募が少なく、思うように採用活動が進まないことも多い。しかしオファー型採用なら、企業側から興味のある人材に直接コンタクトを取ることができるので、積極的な採用活動が可能となる。また、学生の側もオファー型採用を利用する場合は企業規模にこだわらず、自分の思考やスキル、価値観などにマッチすることを重視して就職先を探す傾向にあり、そういった人材とじっくり対話することで、企業と学生のマッチング度も高まる。

3.多彩な人材が必要とされている
ダイバーシティ採用が主流になりつつある昨今、オファー型採用はこの流れに合致する採用方法である。オファー型採用では、興味や関心のない(業界や自社を知らない)人材とも積極的にコミュニケーションを取ることができるため、企業が求める多様な人材獲得を実現できる。業界や自社の魅力を知らない人材に直接アプローチすることで、優秀な人材に出会える確率も高まるのだ。

オファー型採用のメリットとデメリット

オファー型採用にはメリットもデメリットもある。企業側と学生側のそれぞれから見ていこう。

企業側のメリット

1.直接人材にアプローチすることで獲得の可能性が高まる
従来の採用活動では自社に興味のある人材からの応募を待つ受け身の活動が主流だったが、オファー型採用では企業側から学生側に直接声をかけるため、自社を意識していなかった学生にもアプローチが可能となる。従来の採用広告などに頼った「待ち」の採用方法では出会えなかった学生を採用できる可能性があり、人材多様性の向上も見込めるのだ。さらに、従来は選考される側だった学生が、「企業の方から欲しいといってくれたこと」で意中の企業でなかったとしても心を動かすというケースも考えられる。

2.採用方針を絞ってアプローチができる
「特定の資格やスキルを持っている」「特定の分野の研究をしている」など、採用要件を満たす学生に絞ってピンポイントでアプローチすることができる。また、従来の就職活動と比べると1対1で業務の内容や本人の希望などをじっくりと話し合えるため、結果としてミスマッチを回避でき、早期退職の予防も可能となる。

3.採用プロセスの効率化
従来の採用活動では、まず母集合を形成し、膨大な量のエントリシートをチェックして、何次にもわたる面接を行うなど、大きな手間と時間を費やしてきた。しかし、オファー型採用では書類選考を省いて面接を行ったり、その場で内定を出したりすることもできるので、効率的に採用活動が行え、採用のコストダウンにつなげることができる。

企業側のデメリット

1.採用基準の明確化が負担となる
企業側からプレゼンを行うオファー型採用では、あらかじめ採用したい学生の人材像や採用基準を明確にしておく必要がある。このためジョブディスクリプションを策定しておくジョブ型採用との組み合わせとしてのオファー型採用は親和性が高く、より効果も引き出すことができる。しかし人材像や採用基準の明確化、ジョブディスクリプションの策定などの作業が煩雑で負担となる可能性もある。

2.大企業が導入をはじめている
現在のところオファー型採用は主に中小企業にマッチした採用手法だとされているが、最近では採用コストをかけることができ、マンパワーもある大企業がオファー型採用によるリクルーティングを導入しはじめている。中小企業はブランド力のある大企業に学生が流れていく可能性を考慮して独自性のあるオファー型採用を設計する必要がある。

学生側のメリット

1.自己分析に役立つ
企業からより多くのオファーをもらうには、自分を深く分析して、どう自己アピールをするかを考えることが重要となる。逆求人で多様な企業からさまざまなアプローチを受ければ、多角的に自己を分析することができ、自分でもまだ知らなかった長所などを発見できる可能性がある。さらに、インターンシップのオファーに応じてビジネスの現場で実際に働いてみれば、自身の価値観や強み弱みが浮き彫りになり、自己成長へとつなげることができる。

2.未知の企業と出会える
現在、会社説明会や就職サイトなど企業を知る方法は数多くあるが、自分自身で検索して知ることができる企業や口コミで知る企業の数にはどうしても限界がある。しかし逆求人を利用すれば、自分が知らなかった企業からオファーがくる可能性が高まり、未知の企業と出会える。さらに、オファーを出す企業は自分に関心のある企業であることが前提なため、自分の経験やスキル、ポテンシャルに合う企業であれば入社後のミスマッチも起こりにくくなる。

学生側のデメリット

1.自己アピールの上手下手に左右される
自己アピールが苦手な学生は、自分の魅力を十分に伝えられず、企業からオファーをもらえる確率が低くなる。自己分析をしっかり行い、自分がこれまでやってきた実績を整理して、自分の自信に裏付けを持っている学生がより多くのオファーを獲得することになる。

2.企業の見極めが難しい
オファーを出した企業が必ずしも自分に合う企業とは限らないし、自分のやりたいことができる企業ではないという可能性もある。これまで知らなかった企業からオファーが来た場合は特に、自分なりにきちんと企業分析を行うことができなければ失敗につながる。

もちろん、これまで興味のなかった業界からのアプローチであればなおさら、しっかりとした業界研究が必要となってくる。これらのことを短期間に行い、自分の思考やスキル、価値観と照らし合わせて、本当にマッチする企業かどうかを見極めることが求められるのだ。

オファー型採用のポイント

オファー型採用は応募者が少なく、定員割れが起きるようなベンチャーや中小企業に向いているといわれていて、採用者の多様性を確保したい企業や、採用担当者がおらず採用にマンパワーをかけられない企業にとっても導入しやすい採用手法だ。近年では逆採用イベントやオファー型採用サイトなども充実してきているので、これらを活用してポイントを押さえれば採用活動を成功に導くことができるだろう。

1. 逆求人イベントに参加する際のポイント。

・親近感と誠実さをバランス良く
企業の担当者があまりに硬い態度で接してしまうと、学生が萎縮するため、できるだけ親近感を覚えるような態度で接する必要がある。相手を萎縮させては、長所や個性、人となりなどを正しく知ることができなくなるからだ。

また、逆求人イベントはお互いを知り合う場という意味では対等だが、企業側から学生と心を開いて話せるような親近感のある場にできるように意識することが大切。できるだけカジュアルに笑顔で接することを心掛けるよいだろう。しかし、くだけすぎた態度や上から目線からの発言などは誠意を感じられない企業として認識されるので注意したい。

・気になる人材は事前にピックアップして積極的に連絡する
逆求人イベントでは事前に学生の自己PRをチェックすることができることが多いので、可能なら気になる人材に事前に連絡しておくと、自社への興味を高める確率が高くなる。自己PRをチェックせずにイベント当日を迎えるというのは論外だが、一歩踏み込んで、事前に連絡しておくぐらいの積極性が必要だ。事前連絡をしておけば当日の会話もスムーズになり、限りある時間の中で、より深い話をひきだすことも可能となる。

2. オファー型就活サービス(オファー型採用サイト)の活用

HR総研が行った「2021年卒学生の就職活動動向調査」では、「1年を通して最も利用した就職サイト」でトップは就職ナビの2強「マイナビ」、「リクナビ」だが、逆求人型サイトが「最も利用した就職サイト」のポジションをじりじりと確保し始めてきている。(ProFuture株式会社/HR総研

文系学生が1年を通して最も利用した就職サイト

理系学生が1年を通して最も利用した就職サイト

オファー型採用サイトはサイトやアプリにプロフィールと自己PRを登録しておくだけで、企業から面接の誘いや特別面談のオファーを受けとることができる。中には診断ツールを搭載したアプリもあり、自分にあった企業を探せるので、自己分析のために利用している就活生も多く、複数のサイトに登録することが普通となっている。

そのため、採用する企業側としては、
・オファー型採用サイトの特徴を見極めて利用する
ことが唯一最大のポイントとなる。

オファー型採用サイトには主に次のようなものがある。()内はその特徴。
■OfferBox(求人数が多い)
■dodaキャンパス(就活生のオファー受信率が高い)
■キミスカ(コンサルタントのサポートがある)
■LogNavi(アプリ1つで内定まで完結させることができる)
■iroots(診断ツールで自己分析ができる)
■JOBRASS新卒(特別ルートの案内などがある)
■逆求人フェスティバル(各種サポートが充実)
■intee(無料プログラミング講座がある)

以上見てきたように、オファー型採用は日本ではまだ新しい手法であり、対応するサイトやサービス、ツールなどの環境も急速に進化している。これらの情報を精査し、自社にあった取り入れ方をすれば、大きな効果をもたらす採用手法だといえるだろう。

まとめ

・ダイレクトリクルーティングは英語ではDirect Sourcing(ダイレクトソーシング)といい、従来の応募を待つタイプではなく攻めの姿勢で採用を進めるのが特徴。この手法の代表的なものがオファー型採用(逆求人型採用)である。

・オファー型採用が広まった背景は、1.学生の間に高まるニーズ、2.企業規模に関係なく採用につなげられる、3.多彩な人材が必要とされている、の3つである。

・オファー型採用を導入する企業側のメリットは、1.直接人材にアプローチすることで獲得の可能性が高まる、2.採用方針を絞ってアプローチができる、3.採用プロセスの効率化、である。反対にデメリットは、1.採用基準の明確化が負担となる、2.大企業が導入をはじめている、の2点にある。

・学生側がオファー型採用を活用するメリットは、1.自己分析に役立つ、2.未知の企業と出会える、の2つ。デメリットは、1.自己アピールの上手下手に左右される、2.企業の見極めが難しい、の2点にある。

・オファー型採用で、逆求人イベントに参加する際のポイントは、・親近感と誠実さをバランス良く、・気になる人材は事前にピックアップして積極的に連絡するの2点。オファー型就活サービスを活用する場合は、その特徴を見極めて利用することが唯一最大のポイントとなる。

・オファー型採用は日本ではまだ新しい手法であり、対応するサイトやサービス、ツールなどの環境も急速に進化している。これらの情報を精査し、自社にあった取り入れ方をすれば、大きな効果をもたらす採用手法だといえる。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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