2020.8.25

1on1ミーティングとは?テレワーク・在宅勤務だからこその1on1の必要性とは

読了まで約 6

・テレワークによって上司や同僚との直接のコミュニケーションが減少している。

・テレワークに適したオンラインによる1on1ミーティングとは?

・1on1ミーティングは育成のためのミーティング。

・従来の人事評価面談では部下の実態が把握できなくなっている背景とは?

・1on1ミーティングに期待される効果は?

・1on1ミーティングを導入し運用するポイントは?

1on1ミーティングの目的、なぜ必要なのか

新型コロナウイルスの影響により、事業活動に大きな変化が起きている。少なくともこれからの1年はテレワークへの移行が増え続け、組織内でのコラボレーションはオフラインからオンラインでのテレワーク中心へと変化していくことはほぼ間違いない。

新型コロナという突然の大きなインパクトによって、特に社内コミュニケーションの面で大きな変化が起きている。テレワークによって上司や同僚との直接のコミュニケーションが減少したため、組織として一体感が無くなったと感じる社員も増えている。特に、多くの企業では、部下の仕事を評価するために定期的に評価面談の機会を設けていることだろう。しかし、面談の目的が十分に理解されず、雑談や当たり障りのない話で終えているケースも多かった。しかもコロナ禍で、その面談すら設けることが困難になっている。

そこで注目されているのが、オンラインによる1on1ミーティングだ。

1on1ミーティングとは、定期的に部下と上司が1対1で行う対談のことで、テレワーク下においても組織が同じ方向を向きながら、円滑なコミュニケーション・チームワークを維持するための施策として、導入する企業が増えている。

これまでも各企業は上司と部下の間で1対1のコミュニケーションを行ってきてはいた。 例えば、目標管理制度(MBO)における、半年に1回程度の人事評価面談などがあげられるだろう。

しかし、その他に上司と部下が1対1で話す場となると、上司からの指導・指示を伝えるため、他のメンバーがいないところで直接話さなければならない時など、どちらかというとネガティブな場面が多く思い浮かぶかもしれない。それはこれまで上司と部下の関係性が「上司から一方的に指導・指示をする」という「一方通行」であったからだ。

一方、1on1ミーティングでは上司と部下はマンツーマンで「双方向」の話し合いを行うことに特徴がある。

外資系企業や大手IT企業の多くが導入をはじめており、なかでもシリコンバレーでは「1on1 meeting」という言葉が企業文化として定着しているほどだ。

このような企業で行なわれている1on1ミーティングでは、部下の業務において成功したことや失敗したこと、仕事上の悩みや困りごとなどの情報を共有し、上司が対話を通じて部下をサポートすることを目的としている。

こうしたコミュニケーションの機会を定期的に用意することによって、上司・部下ともに取り組むべき課題が明確になり、経験による学習のサイクルが回るようになる。 その結果、部下の成長が促され、社内全体の生産性向上につながっていく。

また、以下のような理由で従来の人事評価面談では部下の実態が把握できなくなっていることも1on1ミーティングが普及する背景となっている。

1.従業員の価値観の多様化
働くことに対する意義や納得感がより大事にされるようになった。

2.働き方の多様化
多くの企業でテレワークや副業が認められるなど働き方の選択肢が増えた。

3.雇用の流動化
転職へのハードルが下がり、長年同じ会社にいる必要がなくなったため、より自身の価値観や理想に近い会社を選べるようになった。

4.ミレニアル世代、Z世代が入社
スマホ、ネット、SNSを駆使し、即時的なフィードバックや対話を求めるデジタルネイティブ世代が入社し、これに即応できるスピード感のあるコミュニケーションが必要となった。

1on1ミーティングとこれまでの評価面談の違い、その効果は?

これまでの評価面談では、会社や上司が主体となって部下を面談し、1回が60分以上と長く、四半期や半期に1回の頻度で行うというものがスタンダードだった。

これに対して1on1ミーティングは、あくまで部下が主体であり、時間も30~60分と短く、頻度も最低でも月に1回以上という高頻度で行うことに違いがある。

整理すると、1on1ミーティングと従来の評価面談の違いは次の通りとなる。

1on1ミーティング
<主体>部下
<頻度>月に1回以上
<時間>30~60分
<目的>部下の育成とそれによる生産性の向上

評価面談
<主体>会社や上司
<頻度>四半期や半期に1回
<時間>60分以上
<目的>目標や進捗の確認

このような違いを見てくると、1on1ミーティングは、評価面談で行っていたような、上司が報告を求め、進捗や勤務態度をチェックしたり、できていないところを指導・指摘したりする「管理のためのミーティング」ではないことがわかる。

双方向のコミュニケーションによって部下の言葉を引き出し、そこに現れた悩みや困りごとに寄り添いながら、部下の能力を引き出すためにはどうしたらいいのかを話し合う「育成のためのミーティング」なのだ。

では、1on1ミーティングに期待される効果はなんだろう。

それは「部下の経験と学習が深化すること」と「部下のモチベーションを高められる」という二つに集約される。具体的には以下のような効果だ。

・部下の経験と学習が深化
1on1ミーティングでは部下が意識的に自分の経験を振り返ることができ、学習するきっかけとなる。双方向で上司と対話することにより、与えられた業務を無難にこなす、という姿勢ではなく、具体的に何をポイントに行動すればより成長できるのか、どうすれば課題を克服できるのかということを明確にさせることができるからだ。

・強みや弱みのセルフチェックができるようになる
上司から具体的なポイントを示されることにより、部下が自ら自分の強みや弱みに気づいたり、要求点・達成目標を具体的に認識でき、セルフチェックすることができるようになるなどの効果がある。

・新たな採用や能力に気づく
部下は自分の経験を振り返りながら上司と話すことで、いままで自分では気付かなかった才能や能力を見出す可能性がある。新たな才能に限らず、すでに得意なことについても、より深化させるにはどうしたらいいか、今の仕事に生かすにはどうしたらいいかなども見出せるようになる。

・新たなイノベーションにつながる
1on1ミーティングを通じて相互に築いた信頼関係を土台として、業務に直接関係のない個人的な悩みや、自身のキャリアについてまで話せるようになると、現在の仕事の課題だけでなく、これから取り組んでいくべきことについても話ができるようになる。

そこから新たなイノベーションにつながるアイデアが生まれることも多く、これを目的として1on1ミーティングを重視している企業もあるほどだ。

・部下のモチベーションを高め離職率を低減できる
1on1ミーティングによって上司は、具体的に部下の状況を把握できるようになり、部下のモチベーションの源泉や、なにがモチベーションの低下を招いているのかを知ることができる。円滑なコミュニケーション状態を構築できれば、それはそのままモチベーションの低下を防ぐ効果にもなる。その結果、副次的にではあるが離職率の低減も期待できるのだ。

1on1ミーティング導入のポイント

では効果的に1on1ミーティングを導入し運用していくポイントとして、どのようなものがあるだろう。以下に列記してみよう。

・上司と部下の信頼関係の構築が大前提
事実の把握を中心とした評価面談とは異なり、1on1ミーティングは、部下の成長や信頼関係の熟成、コミュニケーションの質の向上などを目的として行う。

そこで、前提として最も重要なのは上司と部下の信頼関係の構築ということになる。信頼関係が成立していなければ、部下が心を開いて話すことは難しく、話の中で気づきを得ることも少なくなってしまうからだ。

自社の人間関係を検討してみて、現状で信頼関係に不安があるなら、1on1ミーティングを通じて信頼関係を醸成できるようなステップを踏んだ会話を用意したり、最初は雑談部分を多くするなどの工夫が必要となる。

・1on1ミーティングの目的を定義し、有益であることを周知する
1on1ミーティングは上司が部下の話を聞くものであるため、部下は「本音で話すと評価が低くなるのではないか」「秘密を知られたくない」「何をどこまで話せばいいのかわからない」と考えてもおかしくはない。

全く業務と関係のない人物が行うカウンセリングならば部下も話しやすいかもしれないが、1on1ミーティングの目的は、部下の成長や生産性の向上など業務に密接したところにある。そのため部下に適切なアドバイスができるのは、その業務内容を把握し、直接指導している上司が最適任者ということになる。

そのため、自社の実情に合わせた目的を明確にしておき、あらかじめ「1on1ミーティングは部下の成長のために行う」「部下の才能を解放して新たなイノベーションを起こすために行う」など、なぜ上司に部下が話す必要があるのか、その目的をしっかりと伝えておきたい。1on1ミーティングの目的が達成されれば、その恩恵は部下自身にとっても企業にとっても大きなものになることを理解させることが重要だ。もちろんこれは部下にだけでなく、上司の側にこそ十分に周知・理解されていなければならない。

・何のための時間なのかを理解していないと開始・継続されない
目的が理解されたとしても、意欲的に取り組む部下がいる一方で、「忙しいから時間が取れない」「面倒だ」などと反発をする部下が出ることも考えられる。

確かに、目先の業務にとらわれていると無駄な時間に見えたり、効果がわかりにくい面もある。そのような時のために、中長期的な視点での意義を明確にし、会社としてどのように成長していってほしいのか、を明確にして伝えておくことが重要だ。

・準備は上司と部下の双方で行う
1on1ミーティングでは、短時間で「何をどう話すか」が最も重要になる。会社がある程度のテーマとアジェンダを用意して会話の流れをコントロールすることになるが、実際に「話す内容」「聞きたい内容」は上司と部下のそれぞれが考えることになる。そのため、まず部下が「話したいこと」を上司と共有し、上司は部下の内容を見たうえで1on1ミーティングを実施する流れが望ましい。

・ログを残して、お互いが振り返られるようにする
部下からの話がしやすいように、1on1ミーティングではできるだけリラックスした雰囲気で会話した方が良い結果が得られる。しかし、話した内容に「言った」「言わない」「そうは解釈しなかった」ということが起こりやすいのも事実だ。こうしたことがないように記録を文書として残しておくことも重要だ。テレワークではZOOMの録音機能を使って自動で記録しておき、それを文書にまとめるという作業も比較的簡単に行えるので、必ず実行したい。これは、次回に「前回は何を話したっけ?」という状態をなくすためにも有効だ。

・上司1名あたりの担当部下の人数を制限する
あまり多くの部下から話を聞いていると上司の負担になり、ミーティングの質の低下にもつながりかねない、上司1名あたりの担当部下は最大で7~8名程度にして、できるだけ少人数から話を聞くようにした方が効果は期待できる。

以上のようなポイントが主なものだが、1on1ミーティングはあくまで「部下の話」ありきでの施策であることを忘れてはならないだろう。ミーティング終了後に部下が「話してよかった」と思えるかどうかが重要となるので、1on1ミーティングに関するアンケートを実施するなど効果測定も上手に組み込みながら継続していくとよい。

まとめ

・新型コロナの影響により、テレワークによって上司や同僚との直接のコミュニケーションが減少したため、組織として一体感が無くなったと感じる社員が増えている。

・1on1ミーティングは、定期的に部下と上司が1対1で行う対話のことで、テレワーク下においても組織が同じ方向を向きながら、円滑なコミュニケーション・チームワークを維持するための施策として、導入する企業が増えている。

・1on1ミーティングは、双方向のコミュニケーションによって部下の言葉を引き出し、そこに現れた悩みや困りごとに寄り添いながら、部下の能力を引き出すためにはどうしたらいいのかを話し合う「育成のためのミーティング」である。

・1on1ミーティングに期待される効果は、「部下の経験と学習が深化すること」と「部下のモチベーションを高められる」という二つに集約される。

・信頼関係が成立していなければ、部下が心を開いて話すことは難しいため、1on1ミーティングを実施する前提として最も重要なのは上司と部下の信頼関係の構築である。

・1on1ミーティングは終了後に部下が「話してよかった」と思えるかどうかが重要。アンケートを実施するなど、効果測定も上手に組み込みながら継続していきたい。

監修者

古宮 大志

古宮 大志

ProFuture株式会社 取締役 マーケティングソリューション部 部長
大手インターネット関連サービス/大手鉄鋼メーカーの営業・マーケティング職を経て、ProFuture株式会社にジョイン。これまでの経験で蓄積したノウハウを活かし、マーケティング戦略、新規事業の立案や戦略を担当。
また、事業領域の主軸となっている人事関連の情報やトレンドの知見を有し、ご支援している顧客のマーケティング活動を推進する上で人事分野の情報のアップデートに邁進している。

執筆者

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『MarkeTRUNK』編集部

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