・ミレニアル世代、Z世代、その違いとは?
・X世代と呼んだきっかけは、写真家のロバート・キャパ?
・Z世代の7つの特長とは?
・Z世代獲得のための先進的な採用活動の動画選考とは?
・企業も採用動画を作成してYouTubeにアップし、SNSなどで拡散する時代。
・Z世代に向けたオウンドメディアで訴求すべきこととは?
Z世代とは?
数年前まで、さまざまな市場で注目を集める存在だったミレニアル世代。彼らはデジタルスキルを有していて、多様な価値観を持ち、就職先やキャリアの選択にも独自の考え方でアプローチするため、多くの企業がこの若い世代を獲得するためにさまざまな採用活動を行ってきた。しかし今、ミレニアル世代が占めていたポジションは新たな世代に取って変わられようとしている。それが、ミレニアル世代に続く世代として新たに登場した「Z世代」だ。
彼らが、就職活動をはじめる年齢となった今、世界中の企業が彼らに注目している。
では、Z世代とはなんだろう? ミレニアル世代との関連で見てみる。
そもそも、アメリカで1960年~1974年生まれをX世代と呼びはじめたことが、その後Y世代、Z世代とつながる流れの源流となるのだが、そのきっかけは著名な写真家であるロバート・キャパが、自らのフォトエッセイのタイトルを「GenerationX」としたことだといわれている。第二次世界大戦後すぐに誕生したベビーブーマー世代よりも後に生まれた若者達をテーマにしたこの作品で、「未知の新しい世代」という意味でXと名付けたのだ。
その後、X世代は次第に人口統計学やマーケティングの用語としても広く使われるようになり、おおよそ1980年〜1995年頃の生まれをY世代、1995年以降の生まれをZ世代と名付けることが定着していく。
日本ではこれまで、おおまかにY世代とZ世代をひとくくりにして「ミレニアル世代」と呼ぶことも多かった。
このミレニアル世代は、年少の頃からデジタルデバイスに親しんでいることから、他の世代と価値観や嗜好性などが大きく異なるのではないかと考えられ、質、量ともにマーケティング調査でもっとも多く分析された世代でもある。
そして、その調査分析が進んだ結果、ミレニアル世代の中でも更に特徴的な要素が見受けられたため、新たな世代として呼称されるようになったのが、ミレニアル後期ともいえる1995年以降生まれの「Z世代」なのだ。
実は、ミレニアム世代とZ世代との区分はさまざまにあって明確ではない、Z世代は1990年代後半生まれ、といった、あいまいな表現も存在する。しかし本稿では1995年生まれ以降をZ世代とみなすことにしたい。
それは1995年にwindows95が発売されたという事実が象徴的だからだ。
インターネットにすぐ接続できるというイメージ戦略で成功したこのOSが普及した後に生まれたZ世代は、生まれてすぐにインターネットが利用可能な環境があったという意味で、真のデジタルネイティブと呼ばれる。
さらには10代でプログラミングやアプリ開発技術を駆使して会社をスタートアップさせる人材が出現するなど、Y世代を凌駕するほどのデジタルスキルをすでに身につけている世代なのだ。
そんなZ世代の特長とは、
1.デジタル(インターネット)ネイティブである
2.プライバシーを守る意識が高い
3.音楽をオンラインで大量消費する
4.ブランドではなく、本質に価値基準を置く
5.オンタイムで仲間とコミュニケーションをとる
6.起業家精神が旺盛
7.社会課題への意識が高い
の7つだといわれている。
つまり、インターネットネイティブであり、デジタルスキルとグローバルな規模で情報収集能力が高く、その能力を駆使して物事の本質を見定める眼を持ち、社会と積極的に関わっていくという傾向から、SNSなどにおいて強力な拡散力をもつインフルエンサーとなる可能性が高い世代として注目を集めているのだ。
Z世代が加速させる就活スタイルの変化
新型コロナの影響によるオンラインでの採用活動の進展で、動画での就活も当たり前の時代になりつつある。特にZ世代はスマホでの動画撮影などに長けているため、就職活動も動画で自己PRを作成するなどお手のものだ。
しかし企業側にデジタルネイティブであるZ世代を獲得するための採用手法は確立されているだろうか?
Z世代獲得のために先進企業が行っている先進的な採用活動の代表的なものとして、動画選考という潮流がある。
これは、スマホ等で企業から指定された質問に回答する動画や自己PR動画など撮影して提出し、企業側はそれをベースに選考するというもので、今までのエントリーシートにテキストと証明写真だけ、といった選考よりも、より応募者の印象やコミュニケーション能力を見ることができるため、大手企業やIT企業では導入がかなり進んでいる。中にはAIを使って内容を判定している会社もあり、主観によらず公平性を担保できるとして学生側にも好感をもって受け入れられている。
一方、企業側からの発信としても、採用対象となるZ世代の多くが日常的にYouTubeを視聴していることから、採用活動のためのさまざまな動画を制作し、YouTubeにアップする動きも活発だ。
従来のイベント型の企業説明会やセミナーでは、限定された日時にその会場に訪れた就活生にしか接触することができないうえ、説明の善し悪しは担当者の能力に依存するので、均質なものとすることが困難だった。
ところが採用動画を作成してYouTubeに公開すれば、誰にでも、いつでも、何度でも視聴してもらえることができ、内容も常に最高のクオリティーのものを就活生に届けることができるのだ。
YouTubeで採用活動をしている企業事例としては、ソニーミュージックグループ、吉本興業グループ、KDDIなど数多くあり、しかも、YouTubeには企業各社が作成した採用動画のまとめページがいくつか存在する。
このまとめページでは、前掲企業のほかNTT西日本や佐川急便、ロフト、日本経済新聞社など、業種も規模も異なる各社の「採用コンセプトムービー」や「社員インタビュー」などを何度でも視聴して比較することができる。
そこでは各社が就活生に向けて、「届く」「刺さる」メッセージの発信を多彩な表現方法で競っていて、普通に視聴しているだけでも楽しく、興味を引く内容となっている。就活生はこれらのなかから自分の仕事観にフィットする企業を選べばよいだけだ。
さらに、幼い頃から動画に慣れ親しんでいるZ世代は、採用動画だけではなく、就活の情報収集にもYouTubeを活用している。
例えば、Z世代の多くが就活に利用している「しゅんダイアリー」というYouTubeチャンネルでは、「サイバーエージェント新オフィス社員食堂に潜入」といった普通の就活生ではなかなか実行できない「企業潜入シリーズ」や、「就活失敗しないための自己PRの方法を辛口人事に教えてもらってみた!」という現役人事に就活ノウハウを伝授してもらう「面接挑戦シリーズ」などの人気コンテンツがいくつもあり、チャンネル登録者数 は3.79万人を数えている。
Z世代の就活生は自力ではアクセスできない情報を、こういったサイトから入手して、就職活動に活用している。企業はZ世代をターゲットにした採用活動を行おうとすれば、動画コンテンツでの情報発信が成否を分ける時代になったといえるだろう。
こうした動画就活時代においては、採用動画を作成してYouTubeにアップし、SNSなどで拡散している企業としていない企業では母集団形成に大きな差が出るのは当然といえよう。しかも、母集団は小さくても、自社のファンになってくれてエンゲージメントが高い人材だけを獲得したい、という企業にとっても、自社の魅力や主張をしっかりと届けることができる採用動画は、有効な採用ツールなのだ。
Z世代に対応した採用活動のキモとは?
デジタルネイティブであるZ世代だが、もう一つの側面として「ソーシャルネイティブ」であるという面がある。
Z世代は、すでに中学生時代にはソーシャルメディアを使いはじめ、高校生になると同時にスマートフォンを所有するなど、それまでの世代とは異なるスピードでソーシャルメディアに馴染んできた。
このため、すぐ上の世代であるミレニアル世代とも、デバイスやメディアとの接し方、コミュニケーションのあり方、ライフスタイルに関する考え方などに変化が見えるのだ。
2018年に「Z世代会議」が発表した「Z世代レポート2018」は、16~35歳のZ世代・Y世代を対象に、価値観やライフスタイルを明らかにする調査を実施したものだが、その調査結果からも、二つの世代の相違がうかがえる。
調査では16~21歳をZ世代、29~35歳をミレニアル世代と定義し、この二つの世代で差が大きかった項目をベスト10として掲載しているが、最も大きな差が生じたのは「1つのSNSで複数のアカウントを使い分けている」でZ世代が29.6ポイント多い。次に「直接会ったことのない人ともSNSでやりとりする」ではZ世代が16.2ポイント多くなっていて、SNSの使い方が大きく変化し、さらに身近なものになりつつあることわかる。
この結果から、ソーシャルネイティブであるZ世代へ対応する採用活動としては、SNSの活用を含めたオウンドメディアが有効と考えられる。
企業と求職者で双方向のコミュニケーションが行いやすいSNSを活用すれば、求職者は企業に対する理解を深めやすく、企業側からも求職者の人柄や性質を把握しやすいので、誤解やミスマッチが発生しにくい。万一問題が発生しても双方のコミュニケーションで解決しやすいというメリットがある。時間や費用などのコストの削減も可能だ。
もちろんデメリットもあり、継続して情報発信を行わなければならないため、アカウントの運用・管理担当者の負担があることや、不用意な投稿によって発生する「炎上」など、SNSならではのリスクもある。ただし、これらは全社的な取り組みとして十分な管理運用体制を整え、負担とリスクを分散させることで回避できる。「炎上」に対して真摯に向き合うことで、企業イメージをアップさせた例も多いのだ。
では、Z世代に向けたオウンドメディアでは、自社のなにをアピールすることがキモとなるだろう。
まず、Z世代が近年特に重視するになってきたものに「理念」がある。キャリアアップなどよりは、自分の知的好奇心を満たしてくれることや、大事にしている価値観に沿った社会的貢献などを重視して仕事を選択する傾向が顕著なのだ。
そのため、Z世代を採用したい会社は、自社の「理念」を上手に伝え、仕事の魅力や社会貢献への取り組みを端的に表現することが重要になる。
また、別の視点でZ世代にアピールすべきポイントを探るために、マイナビが調査した「2020年卒 マイナビ大学生就職意識調査」(2020年3月卒業見込みの就活生が対象、有効回答:48,064 件)をもとに、Z世代の学生へ何を訴えたらいいのか、を見てみよう。
これによると、まず学生の「就職観」は、「楽しく働きたい」が38.6%でトップとなっている。2位が「個人の生活と仕事を両立させたい」の24.4%という結果だ。
つまり、Z世代の就職観に訴えるには、社内の明るい雰囲気が伝わる動画やワークライフバランスへの取り組みを紹介する社員インタビューなどがコンテンツとして有効だろう。
次に、「企業選択のポイント」についての設問では、2001年から前年まで同様の調査でトップだった「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」を抜き、「安定している会社」が39.6%となった。ただ、「企業志向」では大手志向が52.7%で前年より1.8%減少し、中堅、中小企業志向が43.4%と前年から2%上昇している。
ここから、安定志向の一方で、それを企業規模で推し量ろうとはせず、大手だけではなく、自分がフィットする会社や、これから安定して成長しそうな企業などをしっかりリサーチして選択しようとする姿勢がみてとれる。
このため、大手企業でなくても、自社の安定性や成長性を訴えることでZ世代の心に届くコンテンツを作成することは可能だとわかる。
いずれにしても、今後一層デジタル化が進む時代の中で、Z世代が企業にとって貴重な戦力となることは間違いない。
このため、そのひとりひとりの価値観を把握して、能力を最大限に引き出ことができる職場環境をつくりあげることが、一番のキモなのだといえよう。
まとめ
・ミレニアル世代の中でも更に特徴的な要素が見受けられたため、新たな世代として呼称されるようになったのが、ミレニアル後期ともいえる1995年以降生まれの「Z世代」である。
・Z世代の特長とは、1.デジタル(インターネット)ネイティブである、2.プライバシーを守る意識が高い、3.音楽をオンラインで大量消費する、4.ブランドではなく、本質に価値基準を置く、5.オンタイムで仲間とコミュニケーションをとる、6.起業家精神が旺盛、7.社会課題への意識が高い の7つ。
・動画選考とは、スマホ等で企業から指定された質問に回答する動画や自己PR動画など撮影して提出し、企業側はそれをベースに選考するというもの。
・幼い頃から動画に慣れ親しんでいるZ世代は、採用動画だけではなく、就活の情報収集にもYouTubeを活用している。
・Z世代を採用したい会社は、自社の「理念」を上手に伝え、仕事の魅力や社会貢献への取り組みを端的に表現することが重要。
・今後一層デジタル化が進む時代の中で、Z世代が企業にとって貴重な戦力となることは間違いない。そのひとりひとりの価値観を把握して、能力を最大限に引き出ことができる職場環境をつくりあげることが、一番重要だ。