インターネットを活用していると、通信の暗号化として「TLS」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。TLSはプロトコルの一種ですが、よく耳にするSSLやHTTPSとは異なります。
本記事では、TLSの概要やSSL、HTTPSとの違い、TLSの特徴を解説します。また、TLSの仕組みや導入方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
TLSとは?
TLS(Transport Layer Security)は、インターネット上でのデータ通信を暗号化し、セキュリティを高めるためのプロトコルです。TLSはデータの送信と受信を保護する役割を担っており、中間者(第三者)攻撃からデータを守ってもらうことが可能です。
具体的には、TLSには公開鍵認証や共通鍵暗号、ハッシュ化などの機能があり、盗聴やなりすまし、セキュリティ妨害を防いでもらえます。
TLS(Transport Layer Security)とSSLの違いは?
先ほど、TLSの概要を解説しました。ところで、TLSとSSLはどのように違うのでしょうか。結論として、TLSとSSL(Secure Sockets Layer)は基本的な目的は同じではあるものの、異なるプロトコルであるという違いがあります。
SSLは旧来の古いバージョンであり、TLSはSSLの改良版となっています。TLSはセキュリティ強化と性能が向上しており、SSLと比較してより安全な通信を確保できることがメリットです。
また、SSLではPOODLE(Padding Oracle On Downgraded Legacy Encryption)と呼ばれる深刻な脆弱性が発見され、これに対応するためにTLSが開発されたという背景があります。
その上で、TLSはより安全な暗号スイートやプロトコルを導入し、セキュリティの向上を図ることに成功しました。そのため、より安全な通信を行う場合はTLSを導入することを推奨します。
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TLS(Transport Layer Security)とHTTPSの違いは?
次に、TLSとHTTPSの違いを見ていきましょう。TLSは通信プロトコルの一部であり、HTTPS(HyperText Transfer Protocol Secure)は、Webサイトで安全な通信を実現するためにTLSを使用する一つの方法です。
そのため、HTTPSはプロトコルではありません。また、HTTPSはWebブラウジング時のセキュリティを確保できたり、データの盗聴や改ざんを防いだりするためにTLSを活用します。
HTTPSは、通信先のWebサーバーがTLSを用いて通信を行っていることを示すものです。
検索エンジンで多大なシェアを占めているGoogleは、HTTPSになっていない通信を「安全ではありません」と表示し、Webサイトの運営者及び利用するユーザーに注意喚起を払う動きも強めています。
HTTPの状態だと、第三者に盗聴されたりデータを改ざんされたりする可能性が高くなります。自身がユーザーとして検索エンジンを活用する際は、URLの先頭に「https://」が付いていることを確認し、安全な通信が行われていることを確認した上で利用するようにしましょう。
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TLS(Transport Layer Security)の特徴
ここまで、TLSの概要やSSLとの違いを解説してきました。ここでは、TLSの3つの特徴を見ていきましょう。
● 暗号性
● 認証
● 安全性
それぞれ順番に解説します。
暗号性
TLSは、暗号性が高いという特徴があります。データを暗号化し、第三者がデータを解読できないようになっており、機密情報の保護やプライバシーを確保することが可能です。これらの暗号性は「公開鍵暗号化」という機能が使われており、SSLより強固なセキュリティ対策を行えるメリットがあります。
認証
TLSには認証機能もあります。主に通信相手の認証を行い、クライアントとサーバーが確実に相手の正当性を確認することが可能です。正当性を確認することができれば、盗聴や改ざんといった中間者攻撃を防いだり、証明書を用いて通信相手の身元を確認し、安全な通信を実現できたりします。
安全性
最後に、TLSは安全性が高いことも特徴です。TLSはセキュリティプロトコルであり、データの完全性を確保し、データが改ざんされていないことを保証するのです。これにより、データの正当性を保ち、運営者や通信する側が信用できる状態で通信を行うことができるメリットがあります。
また、TLSは定期的にアップデートされ、新たな脆弱性への対応が行われます。そのため、TLSを導入して終わりではなく、常に最新のバージョンを利用することが重要です。
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TLS証明書とは?
TLSを利用する際に、TLS証明書を発行することも可能です。TLS証明書は、Webサイトやサーバーの身元確認を行うためのデジタル証明書です。証明書は信頼できる第三者(証明書発行機関)によって発行され、クライアントブラウザによって検証されます。これにより、通信の安全性と信頼性が向上します。
証明書の内容には、公開鍵、証明書の所有者情報、証明書発行者情報などが含まれています。これらの情報を見ることで、通信相手の正当性を確認できます。
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TLS(Transport Layer Security)の仕組みは?
TLSの仕組みは、ハンドシェイク、暗号化、認証のフェーズで構成されていることが特徴です。ハンドシェイクでは、通信相手の確認とセキュリティパラメータの設定が行われ、暗号化ではデータの暗号化と復号が行われます。また、認証では証明書を使用して相手の認証が行われます。
つまり、ハンドシェイク→暗号化→認証という3つのステップによって安全を確認するのです。具体的な流れとしては、ハンドシェイクではクライアントがサーバーに接続要求を送信し、サーバーは公開鍵と証明書を返します。次に、クライアントはこれらの情報を使用して通信相手を確認し、共通の暗号が行われる仕組みとなっています。
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企業はなぜTLS(Transport Layer Security)を使うべき?
ここまで、TLSとSSLについて解説をしてきましたが、企業はどちらを利用するべきでしょうか。結論として、可能な場合はTLSを使うべきです。なぜなら、企業はTLSを使用することでクライアントデータや機密情報の保護、信頼性の向上、法的コンプライアンスの遵守など多くのメリットを享受できるためです。
また、TLSの導入によって企業はセキュリティ対策を強化し、顧客からの信頼を獲得することにも繋がります。
特にインターネットを介したオンライン取引が増えている現代においては、よりセキュリティ性の高い通信が必要不可欠です。もちろん、SSLも安全性が高いため問題ではありませんが、今後もインターネットがより発展していくことを考えると、現段階からTLSを導入するのは良い選択と言えるでしょう。
TLS(Transport Layer Security)の導入方法を解説
TLSを導入する方法は複数存在します。ここからは、TLSの導入方法の一例を詳しく説明します。
CSR(証明書署名要求)を発行する
まずは、TLS証明書を取得するためにCSRを発行する必要があります。CSR(Certificate Signing Request)は、サーバーが証明書発行機関(CA)に対して証明書を要求する際に必要な情報をすべて含んでいることが特徴です。
CSRは、以下の手順にしたがって生成しましょう。
● サーバー上で秘密鍵(Private Key)を生成:秘密鍵は証明書の暗号化と復号に使用されます
● 秘密鍵を使用してCSRを生成:CSRにはサーバーの公開鍵と、証明書に含まれる情報(ドメイン名、組織情報など)が含まれます
● CSRを証明書発行機関(CA)に提出:CAはCSRを検証し、正当な要求であることを確認します
上記3つの手順を踏むことで、CAがCSRを承認し、TLS証明書を発行するという流れです。
サーバーに証明書をインストール
次に、CSRが承認されると証明書発行機関からTLS証明書が提供されます。このTLS証明書をサーバーにインストールすることで、はじめてセキュリティ性の高い通信が開始されます。
なお、証明書をサーバーにインストールする手順は使用しているWebサーバーによって異なりますが、一般的なステップは以下のとおりです。
● サーバーに証明書ファイルをアップロード:証明書ファイルには証明書の公開鍵が含まれています
● サーバーコンフィギュレーションを更新:サーバー側で対応できます
● 証明書を使用するよう設定:場合によってはSSLから変更する必要あり
● サーバーを再起動または設定をリロード:ここまでできたら変更が適用されます
なお、3つ目の手順である「証明書を使用するよう設定する」部分に関しては、各Webサーバーによって手順が異なります。多くのWebサーバーではTLSの導入マニュアルが用意されています。それでも不明点が多い場合は、サーバーのカスタマーサポートに問い合わせてみましょう。
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まとめ
本記事では、TLSの基本的な仕組みやSSLとの違いについて解説をしてきました。TLSは、インターネット通信のセキュリティを確保するために不可欠なプロトコルであり、企業やWebサイト運営者にとって非常に重要です。
また、TLSを使用することで、接続している顧客の安全性を確保することにも繋がります。ただし、導入後も定期的にアップデートが行われるため、常に最新の情報にアップデートするようにしましょう。
まずは本記事を参考に、TLSの導入を進めてみてはいかがでしょうか。