数多くの有名企業や大企業も行っている協賛は、マーケティング戦略において重要な存在です。しかし、広報担当者の中には協賛企業になるメリットや効果がわからない方もいるでしょう。
そこで、本記事では協賛の意味や関連用語との違い、実際の事例やメリットなどを解説します。
目次
協賛とは
協賛とは、企業・団体がイベントやプロジェクトなどの趣旨に賛同し、資金や物品を提供する代わりに広告や宣伝の機会を得る取引の形態です。主催者は、協賛により、必要な資金や物品や人員を集められます。協賛者は、イベントやプロジェクトを支援することで、イメージや認知度の向上、ターゲット層へのアピールが可能です。
協賛は、物品協賛・技術協賛・人的協賛・貸与協賛・現金協賛の5つに分類できます。
・物品協賛
企業・団体側から商品や消耗品などを提供して支援する協賛です。物品が広く配布されるため、多くの人に認知してもらえます。
・技術協賛
プログラムやツールなど企業・団体が保有する技術を提供して支援する協賛です。技術力をアピールできるため、ブランド力の強化や新たなビジネスチャンスにつながります。
・人的協賛
企業・団体側の人員を提供して支援する協賛です。豊富な人材をアピールできるだけでなく、企業・団体がイベントやプロジェクトに参加している姿を見せられるため、イメージ向上につながります。
・貸与協賛
機材や会場など企業・団体が持っているものを貸し出して支援する協賛です。イベントやプロジェクトに参加する多くの人に利用してもらえるため、イメージや認知度の向上につながります。
・現金協賛
イベントやプロジェクトを運営するうえで必要な資金を支援する協賛です。最も一般的な協賛方法で、協賛金によって企業・団体側が得られるメリットが異なります。
ProFuture株式会社では、人事支援サービス企業から協賛を募り、例年「HRサミット」を開催しています。
関連記事:「HRサミット2024 ONLINE」開催決定!テーマや4つの特徴、協賛メリットをご紹介します!
スポンサーマーケティングとは
協賛は互いにメリットを生むスポンサーマーケティングの一つです。
ここでは、スポンサーマーケティングの意味を解説します。
スポンサーマーケティングの意味
スポンサーマーケティングとは、イベントやスポーツなどへの協賛をマーケティング戦略の一部として活用することです。協賛を通して商品やサービスの販売促進やターゲット層との関係構築を行い、ブランドの価値や認知度の向上を目指します。
協賛内容はアプローチしたい内容によって異なります。例えば、ターゲット層との関係構築を目指す場合、ターゲット層が多く利用するイベントへの自社の商品や人員の提供が効果的です。
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スポンサーシップ
スポンサーシップとは、企業がイベントやスポーツや文化活動に対して資金や物品や人員などを提供して支援することであり、協賛とほとんど同じ意味です。
近年、スポーツイベント・eスポーツ産業の拡大により、スポンサーシップ市場は急成長しています。
株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、2023年のスポーツスポンサーシップ市場
規模は推定で約16.4兆円でした。1年ごとの平均成長率は8.73%で、2024年には約17.8兆円、2030年には約29.5兆円に成長する見込みです。
参考:スポーツスポンサーシップ市場| 市場規模 分析 予測 2024-2030年 【市場調査レポート】
関連用語との違い
ここでは、協賛の関連用語との違いを解説します。なお、実際には区別されずに使われる場合があり、ケースごとに関係性が異なることも少なくありません。
スポンサー
協賛とスポンサーとでは、イベントやプロジェクトへの関わり方やニュアンスが異なります。協賛は、資金だけでなく物品や人員なども提供しますが、スポンサーは資金提供が中心です。
また、スポンサーは宣伝効果を期待するマーケティング活動という側面が強いですが、協賛は相互の利益を追求するパートナーシップという要素が強調されます。ただし、実際には協賛もスポンサーもマーケティング目的であることが多く、区別されないケースも少なくありません。例えば、テレビ番組の番組協賛とCMスポンサーは一般的に同じ意味として使われます。
後援
後援とは、団体や事業の趣旨に賛同している企業・団体が応援・援助することを指します。資金を提供することもありますが、名義の貸し出しやチラシの設置や賞状の交付など、基本的には広報活動が中心です。そのため、協賛のように実務面で支援するケースはほとんどありません。
また、団体名の使用の承認も後援の一つです。主催者は後援団体の名義を使い、イベントやプロジェクトなどの信頼性が上がることを期待します。そのため、後援団体は営利目的の企業ではなく公的機関や公共性の高い企業・団体が応援・援助する傾向です。
パートナー
ビジネスにおけるパートナーとは、共同事業者や提携先など同じ目的のために働く個人や企業のことです。互いの強みを生かし、弱点を補完し合うことで相互成長が期待できます。協賛やスポンサーとは異なり、資金提供を超えて協力するのが特徴です。商品やサービスの共同開発やマーケティングのサポートなど、目的達成のために共同で取り組みます。
また、パートナーを組む際は合意・契約や協定を結ぶことが一般的です。
さらに、パートナーの関係は一時的なものから継続的かつ長期的なものまであります。
協力
協賛と協力はほとんど同じ意味ですが、協力は協賛よりも資金提供が少ない傾向です。あくまで金銭的な支援ではなく、物品の貸し出しや公共施設の使用許可やボランティアによる支援などを中心に行います。営利目的ではない公的機関や公共性の高い企業・団体では、協賛ではなく協力という形で支援するケースが一般的です。
例えば、北海道札幌市で行われるさっぽろ雪まつりでは民生協力の一環として1955年から陸上自衛隊が協力しています。雪の輸送や大雪像の制作や音楽隊によるブラスバンド演奏などを行っており、協賛やスポンサーのように金銭的な支援は行っていません。
タイアップ
タイアップとは、複数のブランドや企業が提携し、共同のプロジェクトやキャンペーンを行うことです。
具体例として、映画やドラマの主題歌として楽曲を使用する、期間限定で有名なキャラクターグッズが当たる商品を出すなどが挙げられます。協賛の場合、イベントやプロジェクトを通じて企業・団体名や商品などをアピールしますが、主催者が協賛者を取り立てて宣伝することはほとんどありません。一方、タイアップはコンテンツにタイアップ先の商品を登場させたり、登場人物にタイアップ先の商品を使わせたりして直接的に宣伝する傾向があります。
また、協賛は主催者と協賛者で立場が異なるケースが多いですが、タイアップは同じ価値や影響力を持つもの同士で協力するケースが一般的です。
さらに、協賛は長期間関係が続く傾向がありますが、タイアップは比較的短期間で関係が終わる傾向があります。
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共催
共催とは、複数の団体が協力してイベントを運営することです。
具体例として、学会と企業の共催セミナーやNPOと行政の共催による復興支援イベントが挙げられます。イベントへの権限や責任は基本的に主催者と同じであり、協賛のように立場の違いはありません。異分野の技術や知識、互いの意向をイベントに反映させられるため、新たな価値を生み出せるでしょう。ただし、関係者が増えるため、イベントの方向性が定まりづらくなるというデメリットもあります。
また、協賛はイメージや認知度の向上などが目的ですが、共催はイベントを成功させ、共同の利益を得ることが目的です。
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協賛の例
ここでは、実際の協賛事例を紹介します。
実際の事例を参考にして、協賛を効果的に活用しましょう。
イベントの協賛
イベントの協賛事例として、2025年大阪・関西万博が挙げられます。企業・団体の参加メニューの一つである会場整備参加・運営参加では、大和ハウス工業や三井住友銀行や浜松市など、計300名の協賛企業・団体が集まりました。
協賛企業・団体には、協賛金額に応じて呼称権・名称表示権・社名掲載権・万博公式ロゴマーク使用権が与えられます。公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、開催に向けて継続して協賛者を募集しており、現在も多くの企業や団体と契約協議中のようです。
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スポーツの協賛
野球やサッカーなどのスポーツに協賛する事例もあります。福岡ソフトバンクホークスは福岡県の現地の店舗やECサイトにある百貨店や商業施設を運営する協賛者と連携し、福岡ソフトバンクホークスの応援セールを開催しました。リーグ優勝時に優勝おめでとうキャンペーンを実施し、球団のファンや住民の訪問を促し、来場促進と売上向上を図っています。
また、日本サッカーのプロリーグであるJリーグには明治安田生命やNTTドコモなどの協賛企業がついているほか、各チームについている協賛企業も有名企業ばかりです。浦和レッズでは三菱重工や三菱自動車、FC東京では東京ガスや三井物産、ガンバ大阪ではパナソニックやロート製薬などの企業が協賛しています。
これにより、企業の認知度向上やメディアへの露出増加だけでなく、チームが取り組んでいる地域貢献や青少年育成にもつながっています。
企業が協賛をするメリット
ここでは、企業が協賛するメリットを解説します。
協賛には、認知度やイメージの向上だけでなく、採用ブランディングやCSR活動につながるというメリットもあります。
企業の信頼性や安定性を印象づける
協賛企業になることで、資金力に余裕がある印象や事業に成功している企業であるという印象を世間に与えられます。そのため、顧客に信頼や安心感を与えられるでしょう。企業のブランドイメージも上がるため、ファン化する顧客が増え、安定した集客や収益が見込めます。
他社との差別化にもつながるため、広告を打ったりメディアへの露出量を増やしたりするだけでは得られないメリットです。
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企業名や商品名の認知度アップ
協賛を募集する企業や団体は、さまざまな方法で協賛企業やその商品・サービスの名前を宣伝してくれます。
具体的には、公式サイトやイベント会場内の広告・看板への企業名の掲載、衣装やユニフォームへの企業ロゴの掲載、新商品や試供品、ノベルティの配布などです。メディアへの露出や消費者に知ってもらえる機会が増えるため、企業名や商品・サービス名の認知度を上げられるでしょう。
また、協賛を通して他の協賛企業と交流できる場合もあります。異業種の経営者や大企業の経営者と関わりを持ち、新たなビジネスにつなげられれば、ターゲット層以外にもアプローチできるでしょう。特に、設立したばかりの企業や新商品・サービスを開発した企業、企業名や商品・サービス名を変えたばかりの企業にとっては認知度を上げられる貴重な機会です。
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協賛先のイメージが企業イメージに
協賛企業になると企業イメージを上げられる可能性があります。
例えば、スポーツチームの協賛企業になった場合「明るい」「クリーン」「カッコいい」というスポーツへのイメージが協賛企業のイメージになるでしょう。勝利に向かって努力し、一生懸命に戦う選手の姿が協賛企業へのイメージに重なるため、好感度の向上も見込めます。
また、学生イベントや教育機関が主催するイベントに協賛する場合「教育に力を入れている」「社会貢献や地域復興に前向き」というイメージを得られるでしょう。企業イメージの向上は顧客からの信頼獲得や他社との差別化につながるほか、従業員満足度を上げられる可能性もあります。
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社員への還元につなげられる
イベントやスポーツチームに協賛すると、協賛先からお礼として物品を提供してもらえる場合があります。
具体的には、イベントのグッズや記念品、試合のチケットやスポーツ教室への参加券などです。協賛特典を自社の社員に配布することで、福利厚生に生かせます。特に、子供がいる社員やスポーツが好きな社員にとっては魅力的です。福利厚生を充実させられれば、従業員満足度や定着率の向上にもつながります。
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採用ブランディングにつながる
協賛により企業のイメージや認知度が向上すると、入社希望者が増加する可能性があります。学生団体や大学サークルなどに協賛すれば、学生層への認知を拡大できるため、多くの新卒社員を獲得できるでしょう。障害者スポーツや障害者を支援するイベントに協賛すれば、障害者の雇用拡大も期待できます。
また、協賛を生かした福利厚生を求人でアピールすれば、協賛先に興味を持つ人材の応募も獲得できるでしょう。他社との差別化や求職者の信頼獲得にもつながるため、定着率の向上や採用コストの削減も期待できます。
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CSR活動として地域と関わることができる
CSR活動とは、企業が組織活動を行ううえで担う社会的責任のことです。環境保全や労働環境の改善、地域社会への貢献などが挙げられます。この、地域社会への貢献には、ボランティアや清掃活動だけでなく協賛も含まれるのです。
例えば、地域のボランティア活動に協賛すれば、住みやすい町づくりに協力できます。
また、地元のスポーツチームに協賛すれば、スポーツが盛んな町づくりに貢献できるでしょう。
協賛を通して地域社会に貢献することで、イベントやチームの関係者や参加者だけでなく、近隣の住民や企業にも認知してもらえます。地域に貢献する企業として地元メディアに取り上げられる可能性もあるでしょう。
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協賛を成功させるポイント
ここでは、協賛を成功させるうえでのポイントを解説します。
協賛を成功させ、最大限の効果を得るためには、自社と協賛先との連携や親和性に気を付ける必要があります。
マーケティング戦略の明確化
協賛することで自社にどのようなメリットがあるのか、目的を明確にしましょう。
例えば、企業の好感度を上げたい場合と社会貢献が目的の場合とでは取るべき施策が異なります。自社が抱えている課題や目標達成に向けた活動方針などを明確化することで、協賛を成功させられます。目的が複数ある場合は、優先順位を決めるか、必要なものだけ残しましょう。KPIなどの評価指標も併せて設定すると、目的の達成度を確認できます。
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協賛先がターゲット層と一致しているか
自社と協賛先との親和性は協賛を成功させるうえで特に重要です。自社のターゲット層と協賛先のユーザー層が一致していなければ、商品・サービスの販売促進や企業イメージの向上は期待できません。自社の業種や商品・サービスと協賛先のコンセプトがあまりにもかけ離れていると、かえって企業イメージを損ねる恐れもあります。そのため、自社の業種やターゲット層に合ったイベントに協賛することが大切です。
例えば、教育・学習支援業であれば子供向けイベントに、製薬業や医療機器メーカーであれば健康や医療に関するセミナーやシンポジウムに協賛するとよいでしょう。
また、自社が取り扱う商品とイベントで需要がある物品が一致している場合も効果的です。
例えば、飲料業や製菓業であれば飲食品の展示会やスポーツ系のイベントに協賛すると、来場者に興味を持ってもらいやすくなります。
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協賛先との連携を強化する
協賛する際は、協賛先と綿密なコミュニケーションを取り、連携を強化することが大切です。自社の目的と協賛先の目的をすり合わせることで、お互いのニーズに沿ったイベントを企画できます。広告やロゴの掲載方法も納得のいく形になるように、詳しく確認しましょう。
まとめ
さまざまなイベントやスポーツなどで行われている協賛は、スポンサーマーケティングの一つです。
協賛を行うことで、顧客に信頼感や安心感を与えられたり認知度やイメージを上げられたりするほか、採用ブランディングやCSR活動にもつながります。協賛を成功させる際は、マーケティング戦略の明確化や連携の強化、自社と協賛先との親和性の確認が重要です。協賛によるマーケティングを成功させ、売上の向上や事業の拡大につなげましょう。