ビジネスシーンやIT業界でよく耳にする「ソリューション」。ソリューションが含まれるビジネス用語は多く存在しますが、ソリューションには本来どのような意味があるのか知っていますか?
今回はソリューションの意味や種類、今注目されているソリューション営業について紹介していきます。
目次
ソリューションとは
ソリューションはラテン語のsolut(束縛から解放された)が語源の英語「solution」のことで、解決や解答という意味です。
ビジネスシーンでは「企業が抱える課題・問題をシステムやノウハウ、知見、人材などの様々な方法で解決する」という意味で使われています。「ソリューション」はITや経営領域で使われることが多く、課題を解決するためのシステムそのものを指すこともあります。
ITや経営領域では近しい意味で「コンサルティング」という言葉が使われることがあります。コンサルティングは顧客の相談に乗ることから始め、複数ある選択肢から最適な選択を提供することを指します。
「ソリューション」は特定のサービスや商品を対象とした言葉ではないため、何のサービスなのかと分かりやすくするために「金融ソリューション」「教育ソリューション」のように使われることも多くあります。
問題解決を意味するソリューションという言葉を使う場合、業務上の個人的なミスやクライアントとの一時的な問題を解決する際に使用するのは適しません。あくまでも、企業が抱える長期的な課題、難易度の高い課題に対して使われます。
ソリューションの意味
「ソリューション=solution」の意味は「解決」「解答」「問題を解くこと」となっており、主に問題解決の糸口を見つけるシーンなどにおいてよく使用される言葉です。また、ソリューションという言葉は多方面で使用されており、それぞれの分野における意味としては以下のようになっています。
● 化学分野:「溶解」「溶けること」
● 法律分野:「借金返済」「債務履行」
● 数学分野:「(方程式の)解」
また、金融分野や医療分野、食品分野においても使用され、さらに官公庁・自治体、防災などにおいても使用される言葉です。
ビジネスシーンにおけるソリューション
ビジネスシーンにおけるソリューションの意味とは「顧客が抱える問題や課題を解決すること」となります。この問題や課題を抱えた顧客に対して、それらを解決するべくビジネスパートナーとして寄り添い、解決策を模索・提示していくビジネススタイルをソリューションビジネスと言います。
自社の商品やサービスを活用して、その顧客が抱える問題や課題を解決させることが対価となりますが、それができないと判断した場合は商品やサービスを売らないこともあります。また、仮に自社商品やサービスが顧客の問題や課題を解決できたとしても、また次の問題や課題が出てくることもあるため、「売り切り」という意識を捨て「ビジネスパートナーとして一緒に解決していく」という姿勢が重要となります。
ソリューションビジネスは個人を顧客とした個人的な悩みの解決から、企業を顧客とした大規模な問題や課題の解決に至るまで様々なケースがあります。
関連記事:ソリューションの意味とは?ビジネスシーンでの使用方法もわかりやすく解説
ソリューションの使い方
ソリューションという言葉は、様々な分野や方面においてよく見かけます。その利用シーンにおける使い方の例を紹介します。
● 官公庁・自治体における使い方の例
● 金融分野における使い方の例
● 医療分野における使い方の例
官公庁・自治体における使い方の例
当社は〇〇県庁様に対して、職員様が庁内でも自宅でも仕事ができるよう大規模なネットワークソリューションを提供しました。これによって、大規模災害時にも業務が継続できる上、平時においても場所を選ばず業務が行えるようになりました。
当社ネットワークソリューションを提供する以前はBCP対策が不十分で、激甚化する災害に対して脆弱な側面がありました。しかしながら、庁外利用における専用端末を揃えることはコスト的な負担が大きく、セキュリティ上の問題から実現が困難だったのです。
ですが、今回のネットワークソリューション導入によりコスト的な負担も激減し、セキュリティ上の問題も解決できたことから、BCP対策の強化に貢献することができました。
金融分野における使い方の例
弊社では、アナログで非効率の紙ベースでの事務処理を改善すべく、金融ソリューションを導入することにしました。社員全員にタブレット端末を付与し、デジタル媒体に直接入力してもらうことで情報の共有、作業の効率化を実現できました。
それまでは紙ベースでの運用ゆえ、記入漏れや記入ミスなどに加えてデータ反映までのタイムラグがあり、書類の保管場所や管理上のリスクもありました。また、業務時間も長引きがちで従業員の作業的負荷も大きかったのですが、今回の金融ソリューションの導入によりそれらの問題や課題がほぼ解決されました。
データ入力の簡素化に加え、データ反映までのタイムラグが縮小できた他、データ管理もセキュアになったおかげで職場環境が劇的に改善されました。
医療分野における使い方の例
〇〇病院では医師や看護師が抱えるストレスや不安の払拭、業務改善に向けた大規模な医療ソリューションを導入すると発表がありました。
オンライン診療や電子カルテ、デジタル問診サービスなどを導入し、医療DXにより地域との連携を強化します。また、カンファレンス支援サービスや医療事務システムにより医師や看護師の業務効率化をはかり業務負荷軽減を目指します。
関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や手法をわかりやすく解説
ソリューションの関連語
ソリューションの関連語は様々ありますが、その中でも以下を解説します。
● ソリューション企業
● ソリューションビジネス
● ソリューションサービス
● ソリューションアーキテクト
● ソリューション営業
ソリューション企業
ソリューション企業とは、自社の商品やサービスを活用して顧客の抱える問題や課題の解決を図り、対価を得る企業を指します。顧客へのヒアリングを実施し、どこが悩みのタネになっているのか、どこでつまずいているのかを分析、調査を行い、自社の商品やサービスが適しているかを把握していきます。
上項目の「ビジネスシーンにおけるソリューション」でも解説した通り、自社の商品やサービスで顧客の問題や課題が解決できないと判断した場合は、商品やサービスを売らないこともあります。ソリューション企業はコンサルティング業と似ている部分はありますが、ソリューション企業はあくまで「自社の商品やサービス」によって顧客の問題や課題を解決できるかを模索します。
それに対してコンサルティング業は、商品やサービスを売るのが目的ではなく解決を図るのが主目的です。自社商品やサービス以外のものを勧めることもありますし、他社の商品やサービスを勧める場合もあります。また商品やサービス以外の提案をすることもあります。
こういった辺りが、ソリューション企業とコンサルティング業の違いと言えます。
ソリューションビジネス
ソリューションビジネスとは、顧客が抱える問題や課題の解決を目的として、自社の商品やサービスを提供していくビジネスモデルのことです。ターゲットとなる顧客は「顕在顧客」と「潜在顧客」に分かれ、どちらのタイプの顧客であるかによってアプローチ方法が異なってきます。
問題や課題に気づいている「顕在顧客」においては、自社の商品やサービスが適しているかをすぐに判断できます。しかし、顧客自身も問題や課題について気づいていない「潜在顧客」である場合は、まず自社の商品やサービスがその顧客の問題や課題の解決に適しているかどうかを判断する必要があります。
ソリューションサービス
ソリューションサービスとは、クライアントの課題を分析して、解決するためのシステム構築などを提供することを言います。
ITソリューション
ITソリューションとは、企業が抱える課題をハードウェアやソフトウェアなどのITを用いて解決することを言います。主に、顧客情報のデータベース化や社内コミュニケーションツールの開発、社内研修のためのEラーニング導入などがあり、システムソリューションと呼ばれることもあります。
IoTソリューション
IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の頭文字です。IoTソリューションとは、センサーやデバイスといった「モノ」を活用してデータを収集し、データを分析して問題解決に繋げることを指します。
ITソリューションと似ていますが、IoTソリューションはモノとITによる問題解決と覚えるといいでしょう。
ソリューションアーキテクト
ソリューションアーキテクトとは、ソリューション(問題解決)を主な業務としたIT業界の職業です。クライアントと開発チームの橋渡し的な役割を果たしながら、クライアントのビジネス戦略に対して、最適なシステムをデザインしていきます。
SEやプログラマーがキャリアアップで目指す職種の一つでもあり、ハードウェアやソフトウェアの知識だけではなく、ビジネスリテラシーやIT業界・技術の動向に対する専門知識やプレゼン能力、コンサルティング能力なども必要とされます。
Amazonが提供するクラウドサービス「AWS」が主催の資格試験では、レベル別にアソシエイト・プロフェッショナルの認定を受けることができます。
ソリューション営業
ビジネスシーンにおいて、ソリューションという言葉はIT業界以外でも使われており、その一つがソリューション営業です。営業は様々な手法がありますが、クライアントを主体とした提案型の営業のことをソリューション営業と言います。
クライアントとの対話から、クライアントが抱える課題やニーズに対する解決方法(solution)を提供する営業手法です。従来の営業手法との大きな違いとして、目に見えている問題だけではなく、クライアントも気付いていない潜在的な問題にもアプローチしていくという点があります。
ソリューション営業が注目される理由
ソリューション営業が求められる背景には、下記のような理由が考えられます。
● インターネットの普及
● ビジネスモデルの複雑化
● 予算の減少
インターネットの普及
インターネットが普及したことで、様々な情報を簡単に手に入れることができるようになりました。その結果、担当の営業マンから情報を得る必要がなくなる、簡単に言い換えると「御用聞き営業」が不要になったため、新しいアプローチの方法としてソリューション営業を取り入れる企業が増加しました。
インターネットの普及により、営業職に求められる知識や経験は信頼関係や人当たりの良さなどの感覚的なものだけでなくなってきています。
ビジネスモデルの複雑化
AI、IT技術の発達や消費者ニーズの多様化により、ビジネスにおける問題が複雑化する中で、問題解決にスピード感も求められるようになりました。そのため、従来の営業手法では対応できないことが増えました。そこで、複雑なビジネスモデルにも対応することができる、ソリューション営業が注目されるようになりました。
予算の減少
長引く不況により企業は予算を削減し、営業部門でも効率的に営業活動を行い、成果を上げる必要がでてきました。そのため、多くの企業でクライアントの潜在的な課題や、ニーズにもアプローチできるソリューション営業が行われるようになりました。
ソリューション営業の進め方
ソリューション営業ができる営業マンは、クライアントが抱える複雑な課題を分析して根本的な解決を提案できるため、クライアントから信用され長期に渡って必要とされます。AIやIT技術が発達したこれからの時代に営業マンが生き残る方法こそ、ソリューション営業ではないでしょうか。
それでは、実際にソリューション営業のステップを見ていきましょう。
● 分析
● ヒアリング
● 解決策の提案
● クロージング
分析
最初にすることは、クライアントの現状について事前に調査して分析することです。
クライアントだけではなく、業界や市場、競合企業についても調査をして、クライアントが抱えていると思われる課題やニーズに対して仮説を立てておきます。この仮説を基にクライアントへのヒアリングを行うと、後のステップがスムーズに進みます。
ヒアリング
ソリューション営業のポイントは、いかに時間をかけて徹底的にヒアリングができるかということです。ヒアリングの内容と事前に立てた仮説を照らし合わせて、クライアントとの認識のズレがないかという確認と、クライアントのニーズを理解します。
この時に分かるニーズは、クライアントも認識している「顕在的ニーズ」とクライアントも気付いていない「潜在的ニーズ」の2種類があります。従来の営業手法では潜在的ニーズまで理解することは難しかったのですが、ソリューション営業ではクライアントの本当の悩み・ニーズを引き出すことができるので、的確な提案をすることが可能になります。
ヒアリングは同じ企業・部署であっても、上層部と現場スタッフとでは認識している課題が違うケースがあるので、双方からニーズを引き出せると良いでしょう。また、ヒアリングや分析時には、「BANT条件」を意識することで、クロージングへ結び付けることができます。
解決策の提案
クライアントが抱えるニーズを理解できたら、具体的な解決策の提案(プレゼン)をします。この時、自社の商品やサービスを交えて提案をしていきますが、大切なことは「クライアントの立場になる」ということです。
商品やサービスを売るための提案ではなく、クライアントの課題を解決するための提案であるという軸がブレないように気を付けましょう。商品やサービスの機能、どのような課題をどのように解決するのか、導入におけるメリットとデメリットを説明します。時には、他社製品を提案する場合もありますが、クライアントの課題を解決するための最善の方法であれば正直に提案してください。
「この営業マンは本当に会社のことを考えてくれているんだ」とクライアントとの信頼関係を築くことができるので、解決策の提案はソリューション営業にとって非常に重要なフェーズになります。
クロージング
他の営業手法と同様に、ソリューション営業でも顧客と契約を締結することを意味する、クロージングを行います。
立てた仮説を基に提供したソリューションが効果を発揮しているのか、そうでないのか。
発揮していないのであれば、再度ヒアリングを行ってから仮説を立てて解決策の提案をする機会をもらいましょう。
関連記事:BANT(BANT条件)をBtoBにおける営業活動に活用するには?
ソリューション営業に必要なスキル
ソリューション営業を上手く機能させるためには、以下のようなスキルが必要とされます。
● コミュニケーション能力
● ヒアリング能力
● リサーチ能力
● 分析能力
● 問題解決能力
● プレゼン能力
このようなスキルを全て持っている人材はなかなかいないので、企業は社員がソリューション営業に必要なスキルを身に付けることのできる研修を行うと良いでしょう。
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まとめ
ソリューションの意味や営業職におけるソリューションについて解説しました。
ITソリューションやソリューション営業など「ソリューション」と組み合わせたビジネス用語が多いため難しく考えてしまいがちですが、企業が抱える問題・課題の解決策ということが基本です。
ソリューション営業では自社の商品やサービスを売り込むのではなく、あくまでもクライアント主体で課題を解決するために必要な商品・サービスを提案しましょう。